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159 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 11:09:50.45 ID:FsC5mv8q - ヘイロンはアパートに帰って母の世話をすると、再び外へ出た。
黒い手袋をきつく締め、帽子のように黒いマスクを被ると、駅で拾った自転車に乗って走り出した。 待ち合わせの場所へ行くと相棒は既に待っていた。 「アラン、待ったか?」 ヘイロンが聞くと、アランは小さな身体をくねらせて答えた。 「今来たとこだよ、ヘイロン」 「今日の依頼は何だ?」 「クルマにギザギザコインで傷つけた先輩への報復」 「なんだそりゃ。いくらで受けた?」 「800円」 「そんな安いの、受けるな!」 「だって他に仕事なかったし、俺は金額とかどうでもいいからさ」 「俺はどうでもよくねぇんだ。せめて1000円まで釣り上げろよ」 「最初は500円スタートだったんだぜ? これでも頑張ったんだ。誉めてよ」 「しょうがねぇ、行くぞ。案内しろ」 「わぁい」 喜びの声を上げると、アランと呼ばれた小男は、ヘイロンの自転車の後ろに立って乗った。
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160 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 11:36:14.95 ID:FsC5mv8q - 北京体育大学の4回生チョウ・ジンレンは、5回目のチャイムでようやく玄関を開けた。
黒いマスクで顔を隠したバットマンみたいな奴が立っていた。 「は? 誰?」 マスクの男は答えた。 「仕事人、リウ・パイロン」 「あっ。聞いたことあんぞ。お前、ネットで仕事引き受けて、暴力振るってる奴だな?」 チョウが開けたドアの隙間から、小男がするりと中へ入り込んだ。緑色のスーツで頭から足の先まで固めたコスプレ男だった。 「あっ! こら!」 目を逸らしたチョウにドアの隙間から拳が飛んで来た。 チョウがあっさりと床に倒れる。 黒マスクは手を伸ばしてチェーンロックを外すと、中に入って来た。 「テメェ!」チョウが顔を押さえながら立ち上がろうとする。「犯罪だぞ! わかってんのか!?」 その横から緑スーツが靴で顔を踏みつけた。しかし攻撃が軽すぎてダメージがない。 「おい、チビ」チョウが小男を睨みつける。「知ってんのか? 俺がフットボールのエースだってこと」 「ヒィッ!?」 「お前なんかボールだ、ボール!」 そう言いながら小男を蹴り飛ばそうとしたところを黒マスクが肩を掴み、こちらを向かせると顔に突きを入れた。 一撃で失神し、再び床に倒れたチョウめがけ、小男が靴箱の上にあった鉄製の花瓶を取り、振り下ろす。 「やめろ」ヘイロンは花瓶をキャッチし、取り上げた。 「キィーッ……キィーッ……! 殺らせろリウ・パイロン!」アランは激しく興奮している。 「800円で殺してどうすんだ。割に合わねぇだろ」 「クソーッ……クソーッ……! 俺のことボールとか言いやがってェーッ! 殺してェーッ!」 「じゃあもっといい仕事取って来いよ」 そう言うとヘイロンはアランの手を引っ張り、外へ出た。
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161 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 11:39:32.45 ID:FsC5mv8q - 「あっ、そうだ」
ヘイロンは気づくと戻り、玄関先にあったメモを1枚取ると、アランに書かせた。 『クルマにギザギザコインで傷をつけるな!』 そう書かせ、気を失っているチョウの顔の側に置かせると、帰途についた。
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162 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 11:53:19.84 ID:FsC5mv8q - 空港に見送りに来たのは3人だった。
ハオはずっとメイの足に抱きつき、帰りたくないよぅ帰りたくないよぅと泣いていた。 「お気をつけて」と美鈴が言った。 「ありがとう、美鈴ちゃん。わざわざ見送りに来てくれて」ララが微笑む。 「お酒はもう抜けました?」 「大きな声出さないでね、ガンガンするの」 「ママ。パパ可哀想」足元のハオを見ながらメイが言う。「パパだけ残して行ったら?」 「こんなパパでも待ってる生徒達がいるのよ。引きずって帰るわ」 「夏休みにはアメリカに帰るね」 「それもいいけど、たくさん友達作って青春を楽しみなさい」ララは優しくキスをした。「ヘイロン君とも仲良くね」ウインクをする。 「なぁ、今度いつ来る?」メイファンが聞いた。 「アンタ達の結婚式の時よ」ララはそう言うとため息を吐いた。「まさか自分の妹がリウ・パイロンと婚約するとはね」
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163 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 12:07:24.44 ID:FsC5mv8q - 【主な登場人物まとめ】
・リー・メイメイ(李 苺妹)……通称メイ。主人公。18歳の健康的な黒い肌の女の子。身長168cm。太極拳の使い手。美脚自慢。 生まれも育ちもアメリカだが、北京大学に入学したのを機に両親の祖国へ帰って来た。 前スレ主人公リー・チンハオとララの一人娘。両親とはバカがつくほど超相思相愛。メイファンとは同一人物? ・ヘイロン(黒竜)……20歳の体格のいいイケメン。スレタイにある25歳は誤り。マーシャルアーツの使い手。 リウ・パイロン大統領の非嫡子。母と自分を捨てた父を憎んでいる。超がつくほどの貧乏。 メイに想いを寄せられているが、ヘイロンの気持ちは不明。 ・リウ・パイロン(劉 白龍)……民主化を遂げた中国の大統領を20年勤めているカリスマだが、変態。53歳。 股間に悪い子を更正させる「マジカル・ステッキ」を持つ。 若い頃は中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり、国民的英雄だった。メイファンにプロポーズをする。 ・ラン・メイファン(lan mei fang)……前スレで習近平にその存在を消去され、22年もの間全キャラへの復讐を胸に異次元に落とされていた女豹。 元習近平国家主席のボディーガード兼最強の殺し屋だった。全キャラと和解し、リウのプロポーズを受け、平和な主婦になる……のか? 異次元の時間の進みは遅く、前スレの17歳から22年経っても27歳である。黒い『気』を使い、様々なことが出来る。メイとは同一人物? ・リー・チンハオ(李 青豪)……前スレの主人公。ララと結婚し、アメリカに渡り太極拳の教室を開く。メイのパパ。 気が弱く、基本ダメ人間だが、愛する者のためには凄まじいパワーを発揮する。52歳。 ・ラン・ラーラァ(lan 楽楽)……通称ララ。ハオの最愛の妻。メイの最愛のママ。メイファンの最愛の姉。43歳。 身体を持たない『気』だけの存在であり、元々は妹メイファンの身体の中に住んでいた。現在の身体はリウ・パイロンの肉を引きちぎって作ったもの。 白い『気』の使い手。大抵の傷なら治す能力がある。ただし戦闘能力はほぼない。性格は優しく明るく女らしいが、発狂しやすい。 12歳の自分をレイプしたリウ・パイロンを激しく憎んでいる。 ・リーラン……ヘイロンの母。昔リウ・パイロンの恋人だったが捨てられた。43歳。 身長2m22cmに鬼婆の顔を持つバケモノだが、性格はおだやかで優しく、そして非常にだらしない。 ・美鈴(メイリン)……リウ・パイロンの秘書。年齢不詳。クビになる寸前なのを頑なに居座っている。 透明の『気』を使い、相手のやる気を吸い取ることが出来る上、相当強い。眼鏡をかけている。
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164 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 12:23:05.86 ID:FsC5mv8q - 「じゃあ、あたし、学校があるから」
両親を見送り、空港を出ると走り出しかけたメイをメイファンが呼び止めた。 「今夜お前んとこ行くぞ。ビール用意しとけ」 「ええっ!? なんで!?」 「お前は私の弟子だと言っただろーが」 あぅあぅあと口を動かすも言葉が出て来ず、仕方なくメイは返事もせずに走り出した。 「青島ビールだぞ!」 メイファンはその背中に大声でリクエストすると、美鈴のほうを見もせずに言った。 「……送って」 「『送ってください』でしょ」 「お願いします」 「いい子ね」 満足した笑いを浮かべると、美鈴はタクシーへ向かって行った。
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165 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 12:49:47.31 ID:FsC5mv8q - 大学の昼休み、メイはヘイロンに電話をしてみた。
腕のボタンを押し、電話帳のHの欄を目の前に並べると、ヘイロンの名前を人差し指で突っついた。 耳許で呼び出し音が鳴る。 メイは自分の心音が高鳴るのを楽しんだ。 電話が繋がる。 「ただいま電話に出ることが出来ません。ピーッという音の後にメッセージをどうぞ」 いや、こんな旧式のメッセージの残し方、知らんし。辟易してメイは電話を切った。 今日も稽古、つけてくれるのかなぁ……。そう思っていると、すぐにヘイロンのほうから電話がかかって来た。 電話を取ると、5秒ほどメイは無言で彼の言葉を待った。暫く不思議な無音が続き、やがてヘイロンの声が聞こえた。 『おう』 「ハイ」メイは笑ってしまいながら挨拶した。 『あのな』 「うん?」 『昨日、お前、俺のお願い一つ聞くって言ったよな?』 「うん。変なのじゃなけりゃ何でも聞くよ」 『じゃ、今日、学校終わったらデートしろ』 メイは飛び上がるように背中を伸ばすと、嬉しさを顔いっぱいに表現した。 「え〜? それ、変なお願いかもぉ〜」 『なんでだよ。まだ襲ったりしねぇよ』 「『まだ』って何よ。こっわ〜〜!」メイはくすくす笑う。 『あのな。○○街に焼肉食べ放題の店あるだろ。あそこでデートするぞ』 また何でそんな臭そうな店で……と思いながらもメイは承諾した。 「ね、稽古は?」 『あ? あぁ、デートの前につけてやるよ』 「それもデートのうちじゃないの〜?」 『どうでもいいだろ。じゃな』
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166 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 13:02:48.81 ID:FsC5mv8q - 電話を切ると、メイは小さく踊り出した。
そこへすぐにまたヘイロンから電話がかかって来る。 『もちろんお前の奢りだぞ!? いいな!?』 「ん。いーよ。で、あたし、どんなの着て行ったら嬉しい?」 メイがそう言おうとした途中で電話は切れた。 可愛い奴め、照れちゃって。そう思いながらメイは小さなダンスを続けた。
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