- チャイナ・パニック
167 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 19:02:49.66 ID:B/Kx+ZrZ - ふと誰かの気配を感じ、振り返る。
すると植え込みの陰に慌てて隠れる女がいた。どこかで見たことある女だった。 確かめようとメイが立ち上がり、近づくと猛ダッシュで逃げ出した。派手目の茶色のロングヘアー、赤地に金の派手なセーター、黒いショートパンツ。 「あっ。やっぱりムームー先輩だ」 メイは彼女をあっさり追い越し、前に回って確認すると、言った。 「うわぁぁぁぁ!?」 ムームー先輩と呼ばれた女は腰を抜かしかけたが立ち直り、モデルのような姿勢でキリッと立つと、咳払いをして言った。 「私のことを知ってるの?」 「もちろんですよ〜」 メイは嬉しそうに笑う。 「去年のミス北大。モデルの仕事もやってて親はあのポアウェイの社長の弟のお嫁さんの従兄弟。 とにかく北大1の美人のツァイ・ミンムー先輩ですよね!」 「あら。御存知頂けて光栄だわ」 そう言うとムームー先輩は長い髪をふぁさりと手でなびかせた。 「どうしてあたしのこと見てたんですか?」 メイが聞くとあからさまに挙動不審になった。 「あ、あ、あなたのことを見てたんじゃないわよ!」 「え〜? じゃあ……」 そこへ通りすがりの学生三人組が声を掛けて来た。 「きゃー! ムームーとリー・メイメイちゃんだ! 素晴らしいツー・ショット発見!」 「え! お二人は仲良しなんですか?」 「いいなぁ。美女二人が並んでると花が咲き乱れてるみたいだなぁ」 「え……」メイは笑顔がひきつってしまった。「何であたしの名前……」 「とっくに有名人だよ〜、メイメイちゃん」 「アメリカから凄い可愛い子が来たって」 「みんな友達になりたがってるよ〜」 「そ……そうなんだ?」 「いいわね。早々人気者で」ムームー先輩がわざとらしい高い声で言った。 「いやぁ〜。にゃはは!」メイは照れて頭に手をやった。 ムームー先輩は舌打ちすると、背中を向けた。 「私、忙しいので。失礼するわ」
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- ふみえさんはいつも突然に 〜 シーズン3 〜
667 :創る名無しに見る名無し[]:2019/01/27(日) 22:29:13.01 ID:B/Kx+ZrZ - ふみえさん「それでも私は美しい」
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168 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 23:02:58.09 ID:B/Kx+ZrZ - 学校の帰り、待ち合わせの公園へ行くとヘイロンはまだ来ていなかった。
「まぁ、ね。まだ10分前」 時間ちょうどになっても来なかった。メイはベンチに座ったまま脚の体操をしはじめた。 「遅れちったよー」 男の声がしたので顔を上げると後ろのベンチで待っていた女の子の連れだった。遅れて来た男はさらに言った。 「でも大したことないから気にしない、気にしなーい」 『あぁ、そう言えば中国人って滅多なことじゃ謝らないんだっけ』メイは思った。『で、遅刻も当たり前ってか』 『そのくせ大学は遅刻にも無断欠席にも厳しいって……変なの』 約束の時間を20分過ぎた。 メイが暇潰しにパズルゲームをやっていると、遠くのほうからヘイロンがぶらぶらと歩いて来るのが見えた。 「おっそーい! 30分遅刻!」 「26分だ。馬鹿め」 「うっわー……。やっぱり中国人て謝んないんだ……」 「バイトが長引いたんだ。仕方ないだろ」 「バーガー・ショップ暫く休業じゃないの?」 「だから代わりに現場仕事入ってたんだよ」 「何でそんなにバイトばっかりやってんのよ??」 「お前にゃ関係ないだろ」 しかし、ぶらぶら歩いて来たにしてはヘイロンは汗をかいていた。現場仕事の汗ならとっくに乾いているはずだ。 「ははーん。悪いと思って全力で走って来てくれたんだ? 近くなってからぶらぶら歩きに変えたな?」 「知らねぇよ。さ、行くぞ」 「待ってよ! 稽古つけてから!」 舌打ちするとヘイロンは面倒臭そうに大きな荷物を置いた。
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169 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/27(日) 23:28:18.40 ID:B/Kx+ZrZ - 「ね? 汗かいてからのほうがお腹も減るでしょ?」メイが笑う。
二人は日式焼肉バイキングの店のテーブルに向かい合って座っている。 店員がやって来てコンロの火を点け、言った。 「じゃ、今から90分。食べ残し、持ち帰りダメね」 「Alright。じゃ、取りに行こうよ」メイが立ち上がる。 「おっ、おう」ヘイロンも立ち上がった。何だか興奮していた。 メイは肉と野菜と惣菜をバランスよく取って来た。ヘイロンは肉ばかり山盛りで取って来た。 「ケーキとかもあったね〜。あとで取って来よ?」 「ケーキなんかいらん。グチャグチャになるだろ」 「は? グチャグチャって?」 「とにかく肉だ。目移りは決してせん!」 「……変なの」 メイはそう言いながら焼けたカルビを口に入れた。 「……美味しい! 食べ放題の肉って捨てるとこみたいなのよくあるけど、ちゃんとしてるじゃん、ここ!」 そう言ってヘイロンを見ると、何だか変だった。次々と肉を焼いては物凄い勢いで消費している、大きなバッグを膝に開いて……。 「……何してんの?」 「ドカ食いしてんだよ」 「店員さんの目はごまかせても、あたしの目はごまかせないんですけど……」 ヘイロンは箸で肉をタレもつけずに口に運び、口に入れる寸前で素早くバッグの中に仕込んだ45リットルのゴミ袋の中へ叩き込んでいた。 「持ち帰り……ダメだって言われたよね?」 「しっ! 見逃してくれ」 「面白いひとだなぁ……」 メイは鮮やかなヘイロンの箸捌きをじっと見つめながらエビフライを食べた。 「……でも最後にケーキだけ一緒に食べよ? なんか一人で食べてて寂しいよ……」
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