- リレー小説「中国大恐慌」
861 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/15(火) 22:15:12.20 ID:sg2oXUSb - ふとあの白梅の咲く寺院の裏庭へ行ってみたくなり、足を運んだリウは驚いてしまった。
口の周りの肉が齧り取られたままの姿のジンチンが、あの時と同じように石のベンチに座っていたのだ。 「ジンチンさん」 声を掛ける前から彼女はリウに気づき、嬉しそうに笑っていた。 「よかった。また会えただなァ」 「病院には行っていないのですか!?」 「必要ねェだよ。元々ひでェ顔だァ」 ジンチンはそう言って、裂けた口を大きく開け、黄色い歯を剥き出しにして笑った。リウはその顔を心から美しいと思った。 「僕が連れて行こう。僕がつけた傷だ」 「いいってェ。それより……」ジンチンはリウの中を覗き、言った。「ララちゃん、無事に出ただな?」 「ええ、彼女の一番好きな、愛くるしい顔をした妹の中へ無事帰りました」 「よかったァ」ジンチンは心から嬉しそうに笑った。「本当によかったァ」 「隣に座っても?」 「オデなんかの……」ジンチンは頬を染めた。「本当に……オデなんかの隣でよかったら」 どこかで聞いた台詞だった。などと記憶を辿るまでもなく、リウにはわかった。 (『こんな私で……』シューフェンは泣きながら笑顔を浮かべた。『本当に……こんな私でよろしければ』) そうだ。プロポーズをしたシューフェンの返答の言葉だ。 リウはジンチンの横顔を激しく見つめた。 自分にはジンチンやメイファンのように、ララが誰かの身体の中にいてもはっきりとわかることは出来ない。 もしかして……リウは思わずにいられなかった。もしかして、ジンチンの中には、シューフェンがいるのではないのか?
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