- ロスト・スペラー 20
60 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/12(土) 20:34:43.48 ID:2Yllsqvt - 3階には多くの魔物たちがひしめいていました。
その中で一室だけ魔物たちが近づけない部屋があります。 そこに聖なる旗を持ったマルコ王子たちが居るとクローテルは確信しました。 彼は片っぱしから魔物を切りふせて行き、部屋に突入します。 「マルコ王子、ご無事ですか!?」 中ではマルコ王子が旗を床に突き立てて、10人の供を守っていました。 「クローテル殿! なかなか来ないので、やられてしまったのかと思ったぞ。 それにしても、とんでもない事になってしまったな」 悪魔をすう拝しているどころか、公爵が悪魔になってしまうとは思いもよらず、王子は困っています。 クローテルは王子にたずねました。 「これから、どうなさいますか?」 「どうも、こうも……。 何か出来る事があると言うのか? この状きょうで……」 逆に王子に聞き返されたクローテルは、力強く答えます。 「オッカ公爵を倒します」 「確かに、公爵を止められれば……。 だが、外は魔物でいっぱいだ」 本物の悪魔が現れるという、想定外の事態にマルコ王子は、いつに無く弱気でした。
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61 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/12(土) 20:36:01.66 ID:2Yllsqvt - 何を恐れる事があるのかと、クローテルは王子をはげまします。
「しょせん相手は悪魔です。 ベル・オーメンの力で追い払えませんか?」 そう言われたマルコ王子は、ベルリンガーのレタートに目をやりました。 しかし、レタートはベルを抱えて座りこみ、ふるえているだけです。 王子はクローテルに言いました。 「年少のレタートには、しげきが強かった様だ」 よく見れば、兵士の中で3人は手足に包帯を巻いています。 マルコ王子はクローテルに向かって、小さく首を横に振りました。 「けが人を置いては行けない。 マスタリー・フラグを持つ私が去れば、ここに魔物たちがなだれこんで来るだろう」 クローテルは無言で、けがをした兵士たちに近づきます。 そして一人の兵士の傷ついたうでに手をそえました。 何をするのかと王子は疑問に思って、たずねます。 「クローテル殿、何を?」 「私にはふしぎな力がある様なのです。 こうすれば……」 それまで苦しそうな顔でうつむいていた兵士は、ゆっくり立ち上がりました。 彼は自分の足を触って言います。 「痛みが消えた! 傷も治っている!」
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62 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/12(土) 20:39:16.85 ID:2Yllsqvt - >そして一人の兵士の傷ついたうでに手をそえました。
「うで」じゃなくて「足」ですね。 腕を触って足が治っても、まあ良いとは思いますけど……。 直感的なイメージを優先するなら、やっぱり足です。
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63 :創る名無しに見る名無し[sage]:2019/01/12(土) 20:39:52.22 ID:2Yllsqvt - クローテルは残る2人の兵士の傷も治しました。
兵士たちは本来は彼に礼を言うべきところでしたが、それよりも恐れが先に立ちました。 「あ、あなたは一体……」 マルコ王子も彼を怪しみます。 「クローテル殿、あなたは本当に人間なのか……? こうもきせきを見せつけられると、あなたを聖君や神王と呼ぶ事さえおそれ多い様に思う」 「大げさですよ……。 とにかく今は出来る事をしましょう。 この城は危険です、王子はみなさんを連れて脱出を。 私が道を開きます」 「分かった。 だが、公爵は放っておくのか?」 「みなさんを安全なところまで送り届けるのが先です」 とにかく今は頼れるのがクローテルだけなので、王子は反対しませんでした。 「みなの者、クローテル殿に続け! ……レタート、何をしている! それでも十騎士の後継者か!」 マルコ王子の一行は脱出を決めましたが、レタートだけは正気に返りません。 クローテルは怒るマルコ王子を抑えて、レタートに歩みよりました。 「レタート殿、ベルをお借りします」 レタートが抱えているベルにクローテルが触れると、ひとりでにベルがゆれて鳴り出します。
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