- 【剣と魔法】ファンタジークエスト【TRPG】
237 :シリル ◆X4hrf3EOqI [sage]:2018/11/22(木) 21:55:45.30 ID:n9k6B3vw - 192さんが放ったカタナがキングゴブリンに致命の一撃を与える。
巨躯のゴブリンはどっと倒れ伏してそのまま事切れた。 「すごい!流石シャンバラの神殿騎士だ!」 僕は思わずぱちぱちと拍手して192さんのもとへ駆け寄った。 冗談ではなくこの人が神託の勇者でいいんじゃないかな。 たまに思うけどなんで神殿騎士の人に神託しないんだろう。 はっきり言って僕やキャトラ如きにモノを頼まれる能力はないと思う。 勇者って柄でもないし……。だいいち僕は魔法使いだからね。 きっと勇者候補に碌なのがいないな……? 前回の勇者が訳の分からん帽子のおっさんなのも知ってるよ。 「ショック!」 僕はキングゴブリンをショックの電撃で焼き、最後の後始末をした。 瘴気に中てられてアンデッド化しないようにするための措置だ。 ケーユチ村に到着する前もやったので今回もせっせと始末する。 大半はアンフォーム・モルドが完全に分解したので処理の数も少ない。 まぁ、もしゴブリンゾンビになって復活しても聖水(余り)があるけど。 「処理も終わって……圧倒的勝利だ……!」 足を引っ張っておきながら寒い冗談を平然と口にして洞窟をあとにした。
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- 【剣と魔法】ファンタジークエスト【TRPG】
238 :シリル ◆X4hrf3EOqI [sage]:2018/11/22(木) 21:56:13.52 ID:n9k6B3vw - ゴブリン退治も終わり、ケーユチ村に戻った僕達は宿屋で歓待を受ける事になった。
魔物が活発化して被害が増え始めて以来、村はゴブリンに幾度も苦しめられてきたらしい。 作物を荒らされ、村人の数名も犠牲になったという。時には旅の商人も襲ったとか。 という訳で、宿屋はちょっとしたドンチャン騒ぎに包まれたのだった。 皆エールを片手に飲めや歌えやで僕も少し愉快な気分だ! 「……というわけで、僕は魔法を封じられてなお、 樹海でちぎってはなげ、ちぎってはなげの活躍を……」 皆、冒険の話を聞きたいらしく僕は真実をありのまま伝えた。 世界とは困難と危険に満ちており――しかし、知恵と勇気で乗り越えられる事を。 女神の話は流石にしないけど、それらしい冒険ならもう二度もしてるじゃないか。 「亡くなったアデクも浮かばれるだろうよ。 お前さんら、ありがとうな!おかげでこの村に平和が戻った!」 村人の一人が杯を掲げ、僕も楽しい時間をありがとうと杯を掲げた。 宴もたけなわの一方で心が急速に冷え込んでいくのを感じる。 彼らは知らないんだ。この平凡な世界に危機が迫っている事に。 闇の軍勢を率いる魔王が復活しつつある事を、皆は知らない。 魔王が復活すればこのオルビア王国にも闇の軍勢が攻めて来るだろう。 僕はこれまでの冒険で、故郷よりも広い世界を知った。 この国には今まで冒険してきた場所も、僕の故郷もある。 幻想殺しの樹海、ハジマーリの街、ルイージの墓場。そしてケーユチ村。 樹海やハジマーリの街、ケーユチ村が滅びるのはとても恐ろしいことに感じた。 つけ加えれば(占いを信じるならだが)この冒険には僕自身の命も懸かっている。 今までは"女神の神託を受けた"という事について深く考えてこなかった。 でも、これからの旅には強い決意や覚悟が必要な気がした。 「まぁ今はいいや。木苺のパイおいしいね!」
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- 【剣と魔法】ファンタジークエスト【TRPG】
239 :シリル ◆X4hrf3EOqI [sage]:2018/11/22(木) 21:57:12.90 ID:n9k6B3vw - 夜も更けて飲み会が落ち着いた頃。
僕達は広間に残って旅のルートを確認する事にした。 東の聖都シャンバラまでの道程は長い。 「湾港都市ナントカから海路で行くのかぁ……。 ナントカはオルビアの中でも貿易が盛んなんだって。 僕、海って見たことないなぁ。見渡す限り水が広がってるんだよね?」 地図を睨みつけながらじっと経路を見つめる。 そしてふとオルビア王国の国土の最西端の森の辺りを眺めた。 地図上には何も描かれていないが、そこには僕の故郷がある。 魔法使いだけの秘密の里、カルデア。 故郷には一般的に穢れた魔法使い扱いされかねない人も多くいる。 彼らは魔法の発展ために時として禁呪や古代魔法を研究する事もあるのだ。 無用な争いを避けるため場所を口外するのは厳禁となっている。 もっとも話したところで里の魔法使い以外出入りできない。 「そういえばキャトラの故郷ってどこなの?僕は西の方なんだ。 田舎過ぎてよく地図だと端折られててさぁ……ははは」 故郷の慣例でカルデアとは関係ない場所を適当に指差して笑った。 小さい嘘を吐くまでの事ではないが、僕はふと思ってしまったのだ。 この国のことを、世界のことをよく知らない。そして旅の仲間の事も。 これからどんな旅になるのか分からない。 長い旅路の仲間なんだ。皆の事を少しずつ知っていきたい。 「ところで192さん、シャンバラってどんなとこなの? 聖都ってくらいだしきっと壮麗な街なんだろうなぁ……」 僕は呑気な口調で椅子にもたれかかった。 【幕間タイム。このまま明日ってことにして旅を再開してもおkだよ】
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