- ロスト・スペラー 19
222 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/09/10(月) 20:06:33.77 ID:ASisGyrq - 「真面な用があるんだ。
取り敢えず、強い薬を試したい」 それを聞いたダストマンは小さく頷いた。 「判った。 今直ぐ、ここで試すのか?」 「ああ、1錠飲めば良いのか? 何か注意する事とかは?」 「特に無い。 1錠だけ飲んだら、効果が表れるまで大人しくしていてくれ。 効果が表れなくても、丸1日経つまでは2錠目を飲まない事」 「分かったよ」 潜入者は小瓶から薬を1錠取り出して、真っ直ぐダストマンを見詰める。 「良いか、飲むぞ」 「どうぞ」 ダストマンに促され、潜入者は覚悟を決めて、小さな薬を飲み込んだ。 変化は薬を飲んだ数極後に表れる。 心臓の鼓動が大きく早くなり、内から張り裂けそうな感覚に襲われて、胸が痛くなる。 「ウググググ……」 潜入者は両手で心臓の辺りを押さえて、その場に蹲った。
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223 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/09/10(月) 20:10:04.54 ID:ASisGyrq - 魔法資質が増大している感覚がある。
周囲半通程度の魔力の流れが直観的に理解出来る……が、それは激しい頭痛を引き起こした。 胸と頭の痛みに耐え兼ね、潜入者は両目を瞑り、呻き続ける。 頭の中に明瞭に浮かぶ周囲の魔力の流れは、潜入者の脳が処理可能な限界を超えていた。 脳も心臓も、今にも破裂しそうに痛い。 「た、助けてくれ……ダスト……」 潜入者は堪らずダストマンに助けを求めたが、何もしてはくれなかった。 「ダ、ダストマン……!」 見殺しにする積もりかと、潜入者は怒りを感じたが、それも一瞬の事。 余りの痛みに、怒りも長続きしない。 「大丈夫だ、ブロー。 落ち着け」 (これが落ち着いていられるかー! この野郎、俺は地獄の苦しみを味わってるんだぞっ!! 伝わる訳が無いよな、所詮は他人事なんだから!) その内、潜入者は俯(うつぶ)せに倒れ、気を失った。 再び目覚めた場所は気絶する前と同じ屋上で、ダストマンの姿は無かった。 「ダストマン……? どこへ行った?」 潜入者は素早く体を起こして、立ち上がる。 軽い頭痛はする物の、他に不調らしい不調は無く、妙に体が軽い、頭も冴えている。 空を見れば、太陽が傾き始めている。 気絶している間に、1角は経過したのだろうと、彼は当たりを付ける。
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224 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/09/10(月) 20:11:55.94 ID:ASisGyrq - 潜入者はダストマンを探しに歩き始めた。
取り敢えず、屋外にダストマンは居ないと判る。 彼の魔法資質は以前にも増して研ぎ澄まされ、魔力の流れが、より細かく読める様になっている。 (強化は成功した……みたいだな) 屋外にダストマンは居ない――が、禍々しい気配を屋内から感じる。 場所は娯楽室の辺りだ。 (魔力を遮る構造さえも意味を成さない程、魔法資質が高まっている……? それとも、この尋常じゃない禍々しい気配が……) 自分が気絶している間に、ダストマンが他人にも薬を試したのかと、潜入者は予想した。 (待てよ、俺が行って良いのか? もし面倒な事になってるんだとしたら、今が逃げ出す絶好の機会……) ここで安易に、事の真相を確かめようと駆け付けて良いのか、彼は一瞬躊躇った。 今、心に浮かんだ迷いは、禍々しい気配に関わるべきではないとの本能の警告なのかと。 潜入者は地下組織の構成員だからか、閃きや直感を大事にする性格なのだ。 実際の所、余り脅威は感じていないのだが、だからこそ気にする。 (とにかく少しでも危険を感じたら逃げよう) 潜入者は慎重に娯楽室へと向かった。
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