トップページ > 創作発表 > 2018年07月12日 > 3JIxk3Sj

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創る名無しに見る名無し
ロスト・スペラー 19

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ロスト・スペラー 19
31 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/07/12(木) 19:42:48.18 ID:3JIxk3Sj
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ロスト・スペラー 19
32 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/07/12(木) 19:44:43.83 ID:3JIxk3Sj
父子の再会


第二魔法都市ブリンガー ヴィヴァーダ地区の喫茶店「コンティーヌ」にて


旅商の男ワーロック・アイスロンは、ブリンガー市ヴィヴァーダ地区の街中にある喫茶店で、
子供の姿をした魔法使いレノック・ダッバーディーと待ち合わせをしていた。
彼が喫茶店コンティーヌに着いた頃には、既にレノックが男性の親衛隊員と共に着席して、
待ち構えていた。

 「こっち、こっち!
  やー、漸く来たか……。
  こちとら男と一緒で、気不味いの何の」

レノックの手招きに応じて、ワーロックは席に近付く。
レノックの正面に居る親衛隊の男は、無表情で両目を閉じている。
眠っている訳では無いのは、背筋の伸びた姿勢と、時々卓上の茶に手を付ける所作で判る。
ワーロックは親衛隊を気にしつつ、立った儘でレノックに話し掛けた。

 「レノックさん、例の話は本当なんですか?」

 「そう隠さなくても大丈夫だよ。
  この人は居ない物と思って、話をして構わない」

ワーロックはレノックから、息子ラントロックの居場所が判ったと、呼び出された。
彼は父親として、レノックの呼び出しに応じない訳には行かなかった。
だが、この場に執行者が居るのは都合が悪い。
ラントロックは反逆同盟に所属しているとの情報があるのだ。
躊躇うワーロックに、レノックは笑って言う。

 「取り敢えず、座りなよ。
  立ちん坊じゃ馬鹿みたいだろう?」
ロスト・スペラー 19
33 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/07/12(木) 19:46:02.21 ID:3JIxk3Sj
それに反応して、親衛隊が腰を浮かして横に移動し、一人分の間を空ける。

 「あ、済みません。
  失礼します……」

ワーロックは小さく礼をして、親衛隊の隣に着席した。
大の男が並んで子供の正面に座ると言う間抜けな絵面を思い、ワーロックは眉を顰めるも、
親衛隊は気にしていない様子。

 「それで――」

もう一度、同じ問いをしようとするワーロックを、レノックは制した。

 「ああ、本当だよ。
  ウィローから連絡があった。
  彼女の所に居るってさ」

彼の返答を聞いたワーロックは、難しい顔をして黙り込む。
会いに行きたい気持ちはある物の、本当に自分が会いに行って大丈夫なのか、心配なのだ。
ラントロックはワーロックの教育方針に反発して、家出した。
レノックはワーロックの反応を窺いつつ尋ねる。

 「……どうしたんだい?
  今直ぐ会いに行かないの?」

試す様な口振りに、ワーロックは小声で返した。

 「そうしたい所ですが……。
  私が行って良い物か……」

 「確りしなよ、『お父さん』。
  自分の息子なんだろう?」

レノックは自信の無さそうなワーロックを励ますも、奮起させるには至らない。
やれやれとレノックは肩を竦めた。
ロスト・スペラー 19
34 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/07/12(木) 19:47:48.51 ID:3JIxk3Sj
男性親衛隊は沈黙を続けて、存在感を消している。
重苦しい空気の中、レノックは改めてワーロックに尋ねた。

 「君が行かなくて、どうするんだい?
  リベラに任せるのかな?」

ワーロックはラントロックの説得を、リベラとコバルトゥスに任せていた。
そうした方が良いと、コバルトゥスに助言されたのだ。
問題の原因であるワーロックが直接出て行っても、話が拗れるだけだと。

 「私は息子に嫌われているんです」

ワーロックは恥を忍んで告白した。

 「実の父親なのにか」

レノックは然して驚きも見せずに、淡々と返す。

 「『なのに』と言うか、『だから』と言うか……。
  私の教育が不味かったんです。
  息子を押さえ付ける方に行ってしまった物ですから。
  ……もう少し、あの子の事を信頼しても良かったかも知れません」

 「そこまで分かっているなら……。
  本当に、そう思っているなら……。
  やはり彼を連れ戻せるのは、君を措いて他に居ないんじゃないか」

後悔の言葉を口にするワーロックを、レノックは優しく諭した。

 「失礼します、御注文――」

 「悪いけど、後にしてくれないか」

直後、注文を取りに『給仕<ウェイター>』が来るも、それをレノックは追い払う。


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