- 【ファンタジー】ドラゴンズリング6【TRPG】
204 :ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage]:2018/07/10(火) 01:38:50.19 ID:uP2jdR3j - >「え……あ……えぇっ!?ティ、ティターニアさんっ!い、良いんですか……?」
>「……帝国に指環をもたらす。確かに成し遂げましたね、バフナグリーさん。 他ならぬ指環の勇者様がこう仰っているんです。頂いておきましょう」 >「ほれ、帝国代表様が言っておられる。 とっとと嵌めて、帰ろうや」 「どのみち指輪は一人一属性しか使えぬ。 ジュリアン殿なら使えるかもしれぬがその指輪の力を最も引き出せるのはそなただろうからな」 指輪が原因になっての戦禍を懸念し戸惑うアルダガだったが、 ティターニアがまず第一に考えているのは、この後に控えたエルピスや虚無の竜との決戦である。 これは別にどちらが正しいというわけでもなく常に権謀術数渦巻く政治的思惑の中で生きてきた者と、 神々や英雄の伝説を現実に起こり得る身近なものとして研究してきた者の思考の違いであろう。 地上がどうなっているのかは分からないが、もうすでに虚無の竜が世界を破壊し始めていることだって有り得るのだ。 ゆえに指輪の力を最も効率的に引き出せそうな者に渡したという単純な意図であったのだが、アルダガの胸中を察し、ニヤリと笑う。 「”有効活用”される可能性があるのはどの勢力に渡ってとて同じであろう。 それに安心しろ、その指輪は誰にでも使えるものではない。もしも欲にまみれた元老院の爺様に奪われたとてウンともスンとも言わぬだろうよ。 いくら御託を並べようが巨大な力を手にしてしまえば世の中多少の無理は押し通せるものだ。 その指輪を手にして尚化石のような上層部の思惑に唯々諾々と従う必要などないのだぞ」 そこで帝国と教会に忠誠を誓うアルダガから見て穏やかではない物言いになっていることに気付き、慌てて仕切り直す。 「……おっと、随分と物騒な言い方になってしまった。つまり何がいいたいかというとだな。 そなたなら……その指輪を使って帝国を更にいい方向に変えていけると思うのは買いかぶり過ぎか? もしかしたらそれは国家や教会という枠におさまらない形になるかもしれぬがな――」 しかしアルダガは皆に指輪の所有者としてふさわしいと言われて尚、指輪の所有権は決闘で決めるという初志を貫徹するのであった。 >「……受け取れませんよ、ティターニアさん。帝国に指輪が渡れば、それは戦争の火種になります」 >「ですが、一時的に預からせていただきます。約束、覚えていますよね? 星都での旅が終わったら、指輪を賭けた立ち合いが待っています。真の所有者は、それを経て決めましょう」 「やれやれ――とことん頑固な奴め。約束してしまったのだから受けるしかあるまい。 地上に帰った時に虚無の竜どもが決闘するだけの猶予を与えてくれていたらだがな」 アルダガのあまりの初志貫徹っぷりに苦笑しながらも頷くティターニアだったが、一つの条件を提示した。
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205 :ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage]:2018/07/10(火) 01:40:11.91 ID:uP2jdR3j - 「ただし一つ条件がある―― そなたが勝ってそちらに指輪が渡ってももちろん我々も共に戦う。
だから……もしも我々が勝ってジュリアン殿が使うことになっても……共に虚無の竜と戦ってくれるか?」 これはもちろんアルダガが純粋に戦力として頼りになるというのもあるが、 “決闘に負けたので潔く散ります”は禁止という言外の意味も込められているのだった。 普通はそんな事はしないだろうが、星都の探索を通して黒騎士というのは そもそもぶっ飛んだ集団というのがよく分かったので先手を打っておくに越したことはない。 >「なあティターニア、やっぱり俺たちでやんないとダメかな…… 今のうちに俺の頭を覚えておいてくれ、きっとあのメイスでへこんで形が変わっちまうから」 「うむ……ちょっともうどうしようもなさそうだな……」 ジャンが耳打ちして来るが、自主的に指輪をあげて決闘回避しよう作戦(?)も失敗した以上どうにもならないのであった。 「全の竜殿よ、いい感じに我々を地上に帰らせてくれたりは出来るのか? 無理なら”リターンホーム”で帰るが――」 とりあえず元の世界に帰ろうと、ティターニアが全の竜に尋ねた時だった。 シャルムが意味ありげに問いかけてくる。 >「……ティターニアさん。いえ、先生」 >「もし、この滅びた世界に……まだ、誰も答えを知らない謎が残されているとしたら」 >「どう、思いますか?その謎の正体を、知りたい、ですか?」 「それはもちろん知りたいが……そんな深刻な顔をしてどうしたのだ?」 仲間の一人一人に問いかけるシャルムを見て、気付いてはいけないことに気付いてしまったのだと察する。 考古学者としての個人的興味としては、喉から手が出る程知りたいに決まっている。 しかし、好奇心は猫を殺す、深淵を覗く者はまた深淵に覗かれる―― 世の中には謎のままにしておいた方がいいことがあるのかもしれない。 純粋に真実を探求し過ぎた結果狂気に堕ち破滅の道を歩んだ魔術師は枚挙にいとまがないのだ。 そして今回の場合、下手すれば破滅するのは自分達だけではなく世界の全てなのかもしれない 逡巡している間にも皆の後押しを受け、シャルムは全の竜にいくつかの問いを投げかける。 そしてシャルムが自身の本性を見抜いたのだと悟った時、全の竜の態度が豹変した―― シャルムがドラゴンサイトで開けた穴は事も無げに修復され、彼女は決断を委ねるようにこちらを見つめる。 迷う素振りも見せず宣戦布告するスレイブとジャンだったが、ティターニアは最終判断の材料を得るために追加で質問をした。 「毎度頃合いを見計らって自分で虚無の竜を目覚めさせては滅びない程度に力を貸す…… 一人でマッチポンプしておったのではないか? しらばっくれておるが本当は虚無の竜を呼び出したのもそなたなのだろう? 退屈のあまり世界を破壊する存在を望んでしまったのではないか?」 『さぁ、そうかもしれないしそうでないかもしれない』
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206 :ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage]:2018/07/10(火) 01:42:15.05 ID:uP2jdR3j - からかうように曖昧な答えを返す全の竜。
単にふざけているのか、あるいは……ほんの少し願っただけでその事象が起こってしまうのだとしたら、 本当に本人にもどこまでが自分が起こした事象なのか分からないのかもしれない。 決断に窮したティターニアは、仲間の中で唯一冷静なジュリアンに視線で意見を求める。 「指輪の勇者ではない俺が決めることではないが慎重に考えることだな。 ……正直お前の推測のとおりの可能性はかなり高いと思う。だが万が一違っていたら……」 ティターニアの推測が当たっていれば、全の竜が全ての元凶ということになり、これを倒すことは大きな意味を持つ。 しかしもしも、世界を救う側に干渉しているだけで、世界を滅ぼす要因の方に直接は干渉していないのだとしたら―― 全の竜を倒すことは何のメリットもないどころか、世界滅亡の爆弾を抱えたまま世界存続の保険のみ失うことになる。 つまり、もしも首尾よくこの全の竜を倒した後で虚無の竜を倒し損ねたら、最悪の事態。 英雄どころか世界を滅ぼした大罪人だ。 そんな中、決断の決め手は、意外な者によって齎された。 「……頼む、力を貸してくれ」 「アルバート殿!?」 アルバートが素直に他人に物事を頼むのを初めて目撃し、驚愕するティターニア。 アルバートは確信に満ちた目で言葉を続ける。 「コイツを倒しこの虚無の指輪で全ての属性を吸収し尽くせば……新世界から属性を奪わずともこの世界を再建することが出来る!」 この言葉は戦う決め手を探していたティターニアにとって、十分すぎるほどの一押しになった。 「そなたには恩義があるからな――頼みを聞かぬわけにはいくまい。 あの時炎の山で出会わなければこんなに凄い冒険をすることはできなかった。 それに、打ち捨てられたはじまりの世界を救う――か、なかなか悪くないではないか!」 全の竜が、メンバー全員が宣戦布告したのをみとめると、ついに戦いは始まった。 >『そら、第一楽章が始まるぞ。まずはロンドから踊って貰おうか――"破滅への輪舞曲"』 >「これは、空間の書き換え……滅びをもたらす天災を、『創造』した――!?」 「おそらく一種の異空間だろうな……単なる幻ではなくここで受けたダメージは現実のものとなるだろうから気を付けよ!」 最初の試練は、船旅での転覆寸前の嵐。 しかしジャンが指輪の力によって難なくそれを鎮め、船は滑らかに進んでいく。
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207 :ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage]:2018/07/10(火) 01:43:49.76 ID:uP2jdR3j - >『観客は刺激を求めるものなのだが……では、次の章に移るとしよう。
喜劇か悲劇かは君たち次第――"終わりよければ全てよし"』 用意された状況は、口減らしのために捨てられた老人や子どもが村人を脅して食料を奪っているというものだった。 >『さて、世界を救いたいと願う指環の勇者たちはどちらを救うのか? あるいはどちらも等しく滅ぼすのか?役者の演技に期待するとしよう』 >「……クソ、どっちをぶん殴ればいいってんだ……!」 「落ち着け、所詮は全竜の茶番劇だ――セオリー通りにやればよい」 ティターニアはそう言って、混乱の渦中からは少し外れたところの村人と呑気に話をしている。 「五年前に食料が片っ端から持っていかれたそうだが……帝国が急に税を増やしたということか?」 「いや、その年から急に作物がとれなくなったのに税は減らなくて……」 『引き延ばしはいけないよ、退屈するからね。どちらを救うのか、どちらも滅ぼすのか――決断を』 「気が短い奴だな。時間制限付きクイズじゃあるまいし……」 決断を煽ってくる全の竜にぶつくさ言いつつ、ティターニアは抗争している村人達に向かって杖を構えた。 「双方ともいい加減にせぬか――」 杖を一振りしてファイアボールを放つ。すわ全員吹き飛ばすのかと思いきや、着弾したのは横の畑。 「早く逃げねばそなたら自身が食料になるぞ!」 爆発が巻き起こり、地中から鋭い歯の生えた大きな口を持つ巨大なミミズのような虫――サンドワームが現れた。 作物が取れなくなったという情報から、大地の指輪に宿るテッラの力で見抜けたのだ。 村内は先刻までとは別種の阿鼻叫喚となり、逃げ惑う人々。 『何等かの理由で狂暴化したサンドワームが土の中で作物を食い荒らし ついには地上に出て人間を食べようとしていた――というわけですね』 サンドワームがすぐに無力化されると、ティタ―ニアは虫と会話できるフィリアに要請。 「フィリア殿、事情を聞いてみてくれ。もしかしたら黒幕の名でも聞けるかもしれぬな」 そう言った後、明後日の方向に向かって全の竜に語り掛ける。
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208 :ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage]:2018/07/10(火) 01:46:12.75 ID:uP2jdR3j - 「……もうこの辺りで良いか?
情報を集めることで現れるもう一つの選択肢、ド派手な怪物の登場で有耶無耶になる当初のいざこざ、 満を持して姿を現す黒幕――歴代勇者の伝説を研究すれば分かる、定番のパターンではないか」
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209 :ティターニア ◆KxUvKv40Yc [sage]:2018/07/10(火) 01:46:44.87 ID:uP2jdR3j - 『ハハハ、まさか質問に答えないとはね!』
「ハハハじゃないわ、全てそなたのシナリオ通りだろう? 馬鹿正直に最初に提示されたどの選択肢を選んでも鬱展開にしかならぬからな。 エンターテイメント型の劇を好むそなたが都合よく解決する追加選択肢を作らぬはずがない。 いい加減無意味な茶番劇はやめて普通に戦わぬか」 『全く……今代の勇者は情緒がなくて困る。 こういうのは土壇場で活路を見出すから燃えるのであって最初から余裕綽綽でやられると……』 「やかましいわ!」 『仕方がない、次に行こう――”常闇の牢獄”』 次の瞬間、辺りは闇に包まれた。夜の闇より昏い漆黒。上下左右の間隔も無い、音も聞こえない。 唯一聞こえて来るのは頭の中に響く全の竜の声だけだ。 「これは……何の試練だ……!?」 『単純なことさ、いつまで耐えられるか根競べだ―― ちなみに一説によると感覚を遮断した闇の中に3日もすれば発狂するらしい。 降参ならいつでも受け付けるよ』 「流石に形振り構わなくなってきたな……。 何、すぐに終わるだろう。こちらには闇の勇者シノノメ殿も光の勇者ラテ殿もおるからな」 『それはどうかな? 彼女らはまだ指輪の真の力を引き出せていないからね―― テネブラエとルクスは……果たして彼女らを認めるかな?』 意味深な言葉を最後に、それっきり全の竜の声は聞こえなくなった。 テネブラエとルクスは、それぞれ闇の竜と光の竜の本体の名前だが、真の力を引き出すにはそれらと対話する必要があるということだろうか。 もちろんその言葉の真意やそれ以前に真偽自体も不明で、単に不安を煽るために言っただけかもしれない。 そんなことを考えながらティターニアは、状況に変化が起こるのを待つことにした。
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