トップページ > 創作発表 > 2018年06月14日 > UQ8PGfK8

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創る名無しに見る名無し
ロスト・スペラー 18

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ロスト・スペラー 18
509 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/06/14(木) 19:59:57.49 ID:UQ8PGfK8
filler
ロスト・スペラー 18
510 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/06/14(木) 20:00:43.17 ID:UQ8PGfK8
ヴァリエントとタタッシーはアマントサングインの真意を伝えるべく、本部に撤退した。
愈々本格的な戦闘に入ると言う時に、ニージェルクロームの横槍が入る。

 (止めろ、アマントサングイン!
  俺は嫌だぞ!)

 (それでも同調者か!
  お前は竜の力を欲したのだ!
  竜の宿命も受け容れろ!)

 (嫌だね!!)

 (恩恵だけを受け、責任を果たさない事は許されない!
  お前は願った筈だ、『竜になりたい』と!
  竜の宿命を拒むのであれば、その力を捨て去る決意もあるか!)

アマントサングインに「竜となるか」、「力を捨てるか」の決断を迫られた彼は、答に窮した。
そこにディスクリムが囁き掛ける。

 (ニージェルクローム殿、どうやら少々困った事になった様ですね)

 (ディスクリム、どうにか出来ないか?)

 (私としても、竜に復活されては困ります。
  アマントサングインには負けて貰うのが良いでしょう。
  出来れば、魔導師会と共倒れになって欲しい物ですが……)

ディスクリムはアマントサングインには同盟に対する忠誠心が無いと見て、切り捨てに動いていた。
主従は似る物なのだ。
竜となって滅びた世界で生きたくなかったニージェルクロームは、ディスクリムを頼った。

 (俺は何をすれば良い?)
ロスト・スペラー 18
511 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/06/14(木) 20:04:37.36 ID:UQ8PGfK8
ディスクリムは悪意を持っていた。
アマントサングインが共通魔法使いに敗北して、ニージェルクロームが無事である保証は無い。
竜の命が絶えると同時に、彼も死んでしまう可能性が高い。
それを解っていながら、ディスクリムは敢えて指摘しなかった。

 (取り敢えず、決着を長引かせましょう。
  ニージェルクローム殿は、出来るだけ竜に抵抗して下さい。
  元は貴方の体なのですから、貴方の意志が全く何の影響も及ぼさないと言う事は無いでしょう。
  私は撤退の準備をします)

 (分かった)

自らの内で、企み事が進んでいるとも知らず、アマントサングインは魔導師会本部に向かって、
悠然と歩き始める。
腐蝕ガスの霞の向こうから、高速の火炎弾が何発も飛んで来る。
執行者達の攻撃だ。
魔力を遮るガスの所為で、魔法での攻撃が通用しないので、魔力で加速させた弾丸を撃ち込み、
燃え尽きない内に当てようと言うのだ。
狙っているのは、竜の胴体。
魔力を遮るガスの所為で、正確な狙いは付けられないが、気体の揺らめきを頼りに、
竜の位置を計算している。
しかし、何れの攻撃も胴の中のニージェルクロームに届く前に、燃え尽きてしまう。
不安定なガスは強力な外圧を受けると、小規模な爆発を起こす。
これが銃弾の勢いを減衰させ、軌道を逸らしてしまう。
奇跡的な確率で腐蝕ガスを通り抜けても、未だ赤黒い液体の壁がある。
自分が狙われていると察したニージェルクロームは、危機感を覚えて、一層強く抵抗した。

 (止めろ、アマントサングイン!
  撤退だ、俺が殺される!)

 (この程度、何を恐れる事がある?
  竜の力があれば魔導師会とて敵では無いと豪語した、あの時の勇ましさは、どこへ行った?)

ニージェルクロームは完全に戦意を喪失している。
何一つ自分の意の儘にならない状態で、戦場に放り込まれるのは、恐怖でしかない。
ロスト・スペラー 18
512 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/06/14(木) 20:11:09.46 ID:UQ8PGfK8
ここで象牙の塔の研究者達も現場に到着し、執行者達の攻撃に加わる。

 「先ずは、この腐蝕ガスをどうにかしなければなりません。
  魔力を遮る効果もある様で、中々厄介です」

執行者の説明を受けた禁呪の研究者達は、淡々と応えた。

 「では、『C』で行こう。
  所詮ガスはガス、魔法が通じずとも、理法たる物理法則には逆らえんよ」

禁呪の研究者達は、執行者よりも知識が豊富で分析が早い。
恐れずに、腐蝕ガスが充満する結界内に手を突っ込んで、自分の体で解析する。

 「どうやら複雑な分子構造の化学ガスの様だ。
  『海素<バールゲン>』、『変素<ミュートン>』、『融素<フルクスゲン>』の混合……。
  『燃素<ファラムトン>』も含まれているな」

猛毒のガスで皮膚が爛れても動じず、無反応で手を引いて回復魔法を使い、淡々と修復する姿は、
人間離れし過ぎていて、執行者でさえ怯んでしまう。

 「魔力を遮っているのは、モールの木の脂(やに)か?
  あれと似た様な性質の液体が、ガスに混じって飛散している」

 「それで、どの『C』で行く?
  水か、風か、火か、土か」

 「火が良い。
  周囲の被害が最も少なく済む」

 「良し、執行者にも協力して貰って、一丁派手にやったるか!」

禁呪の研究者達は頷き合い、執行者達に指示を出して、C級禁断共通魔法を実行する。


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