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それもらった>>347
創る名無しに見る名無し
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350 :それもらった>>347[sage]:2018/05/19(土) 01:41:41.69 ID:mTvt2KtC
「あはは……困っちゃったなぁ……」
人気の無い緑の中を、ひとり歩きつつ雪乃は苦笑した。
いや、ひとりではなかった。
「なーなー、さっきのどうやったの?」
「ねーちゃんすげーな!あんなの初めて見たぜ!」
「もっかいやって見せてよ!」
その周囲で、デーリッチとさして年の変わらぬ少年達が輪を作っていた。
「……どうしよう。助けてヤエちゃん」
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351 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/05/19(土) 01:43:01.59 ID:mTvt2KtC
ほんの数分前のことである。
ハグレ大祭りを親友のサイキッカーさんと仲良く楽しんでいた雪乃だったが、その友人が花を摘みに行くとの事でひとり待ちぼうけを食らっていた。
暇を持て余す雪乃の目に入ってきたのは、冥界の悪魔が営む射的場である。
「ヤエちゃん戻ってくるまで暇だし、ちょっとやってみよっかな?」
いつだったかヅッチーが、ここの景品だという駄菓子の袋を両手に抱えていたことがある。
射的に覚えがあるわけではないが、わたあめか何かのひとつも貰えればヤエと食べながら歩くのも悪くない。
そう思い、足を踏み入れた雪乃だったのだが。
「アンビリーバブル!新記録デス。仕方ない、持ってけドロボー!」
「ど、泥棒はやめてよ!人聞き悪いなぁ!」
まさかまさかの初挑戦でレコードホルダーになってしまったのである。
雪だるまキックやカタナシュートで狙いを定めるのは慣れているつもりだったが、射的にまでそれが生きるとは予想外である。
「お前、何気にワタシの天敵だったりするのか……?氷のヴェールといい……」
何だかよく分からない事を宣うイリスを尻目に、大量の景品を抱えて店を後にする雪乃。
そんな彼女を追って、慌てて店から出てきた一団があった。

「まってよお姉ちゃん!どうやったらあんなうまくなれんの?」
年端もいかぬ子供が五、六人ほど。
どうやら雪乃のスナイプテクニックに感動してくっ付いてきたようである。
目を輝かせて質問を投げかける少年に、しどろもどろに返答を返す。
「どうやってって……練習しかないんじゃない?」
「えー、だってお姉ちゃん、さっき初めてって言ってたじゃん!」
「それはそうなんだけど……じゃあマグレだよ。たまたまだって」
「えー、ケチー!コツくらい教えてくれよー!」
遠慮なく距離を詰める子供達に気圧される雪乃。
実はこれでも子供の相手は慣れているつもりだった。
風太や、その友人達と一緒に遊ぶことも多かった雪乃は、年下の少年のあしらい方など百も承知のつもりでいたのだ。
だがその風太が一緒にいたからこそ、のらりくらりと子供と一緒に遊べていた事を、今になって思い知らされる。
(ダメダメ、何を弱気になってるんだ、私。こんな時は、そう……)
雪乃にだってプライドがある。子供相手に押し負けてどうするというのだ。
満を持して、子供相手の秘密の奥の手を繰り出した。
「みんなー、お菓子食べるー?」
「「たべるー!」」
奥の手、プライドを捨てて物で釣る。
まあキャッチよりむしろリリースを狙っているのだが。
「はーい、じゃあひとりひとつずつねー!」
ともあれ、先程射的で当てた駄菓子を配ってやる。
どうせ多過ぎて困っていたくらいだ、むしろ貰ってくれれば有り難いくらいである。
子供たちがお菓子に気を取られている隙に、どうにかこっそりその場を離れる事に成功した。
「……でさー、さっきの射的なんだけどさー!」
「追いつかれたっ!?」
意外に隙がない子供たちである。少なくともヘルラージュなら今ので撒けていたと思われる。
「なー、聞いてんのかよー?」
「あはは……困っちゃったなぁ……」
そうして今に至るのだった。
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352 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/05/19(土) 01:47:10.43 ID:mTvt2KtC
「おねがい、もっかいもっかい!あんな点数見たことねーもん!」
「そ、そうかなぁ……?多分、すぐ誰かに抜かれちゃうと思うよ?」
纏わりつく子供に曖昧な笑みを返しつつ、雪乃は歩みを進めていた。
本当は射的屋の近くでヤエを待たなければいけないのだが、半ば子供たちから逃げる様に歩いている内にどんどんそこから遠ざかってしまっている。

(あーもう、何やってんの私!さっさと戻らないと……)
頭ではそう思っているのだが、何故か強く押しきれない自分がいる。
もう辺りには出店どころか人通りも無い、会場外れの野っ原に差し掛かりつつあった。
言いし得ぬ嫌な予感に胸をざわつかせつつも、雪乃は流れのままに相槌を打つ。
「おねーさん射的の天才だな!」
「う、うん。ありがとう」
「お菓子ごちそうさまー!」
「はいはい、どういたしまして」
「ねー、なんで海でもねーのに水着なの?」
「これは水着じゃないよ!」
「じゃあ下着?」
「そ、そんなわけないじゃない!」

何か、問答の雲行きが怪しくなってきた気がする。
「そりゃ暑いけどさー、お外で下着になっちゃだめだぜ?俺も母ちゃんに怒られたもん」
「聞けよ!だから、これは下着でも水着でもなくて、こういう服なの!」
「おれ知ってるぜ!こーゆー人はろしゅつきょーって言うんだぜ!」
「ろしゅっ……!!」
反射的に辺りに目を配らせるが、幸い周囲に人の影はなかった。
ほっと息をつくと、憤然たる面持ち(あまり怖くないが)で間違いを正しにかかる。
「露出狂じゃないよ!こういう服だって言ってるじゃない!それに、そういう事を女の子に言っちゃ駄目でしょ!すっごく恥ずかしいんだからね!」
「えー、お姉さんの格好の方が恥ずかしいと思うけどなー」
「だからそういう事を言うなあ!大体ね……ひゃあっ!」
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353 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/05/19(土) 01:49:31.40 ID:mTvt2KtC
突然悲鳴をあげ、体を仰け反らせる雪乃。
背後に回っていた悪ガキのひとりが、ハーフパンツ越しにお尻を撫で上げたのだった。
「ちょっと何すんのよ!!」
「へへーん!タッチー!」
「何がタッチよ!エッチ!」
「あ、おねーちゃんうまいこと言ったな」
「茶化さないで!本気で怒ってるんだから!」
「わー、逃げろー!」
ちょこまかと走り回る狼藉を働いた悪ガキを、雪乃も必死に追い回す。
やがて悪ガキは、別の少年を盾にしてその後ろに隠れた。
年の割に上背のあるその少年越しに、ずんずんと距離を詰める雪乃。
間に挟まれた彼はちょっと居心地悪そうに顔を赤らめるも、今の雪乃はそれに気付く余裕はなかった。
「こら!悪い事したらごめんなさいでしょ!」
「へん!やーだねー!」
「もう、お母さんはどこにいるの!?ちゃんと叱ってもらうからね!」
お母さん、という言葉を口にした時、ほんの少しだけ、ちくりと胸が痛んだ。
みんな、元気にしてるかな。きっと、ううん、絶対に、また会いに行くから。
そんな事を思ったからだろうか、雪乃の顔から怒りが一瞬消えていた。
それが隙だった。

もみっ。
「っっきゃあああああっ!!」
間に挟まれていた少年が、その両手で雪乃の双丘を思いっきり鷲掴みにしたのだった。
反射的に手を払い除けたものの、それで触られた事実が消えるわけでもなく。
「やったー!おっぱい触った―!」
「あ、ずりーぞお前!」
「姉ちゃん、俺にも触らせてくれよ!」
「い、い、い、いい加減に……」
いくら子供でも、やっていい事と悪い事がある。
まして、少年とはいえ男性に胸を掴まれるなど、雪乃にとって生まれて初めての事である。
直接じゃないからどうとか、服越しだからどうとか、そんな問題ではなかった。
気色ばむ表情を携え、目の前の少年の顔を真っ直ぐに見据える。
「もう本当に本気で怒ったから!少し痛い目見て……」

そこで、雪乃の時間は止まった。

「風太……!?」
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354 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/05/19(土) 01:50:20.19 ID:mTvt2KtC
みたいな。
気が向いたら続き書きます。


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