- ロスト・スペラー 18
416 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/05/19(土) 17:15:17.11 ID:+h5eYUrN - 一方で、フェレトリとウィローは口論を続けていた。
「己の分も弁えず、太陽と月に挑んだ挙句、兄弟と妹が焼け死んだのであろう? 唯独り生き残った感想を、是非とも聞かせて欲しい物であるなぁ?」 「兄妹(きょうだい)達は壮大な物と戦い、雄々しく散って行った。 あんたの様に、人形遊びしながら卑屈に生きる物には解らないでしょうね」 「そして、貴様は隠れ住んでいると。 中々笑える結末ではないか」 「負け様も無い人間相手に敗北を重ねた愚か者には言われたくないわ。 あんたみたいなのを真の敗者と言うのよ。 生まれ付いて怯懦(きょうだ)な精神が招いた敗北なのでしょうねェ」 互いに「昔」を知る者同士、罵り合いは容赦の無い物になる。 「……貴様も兄妹の後を追わせてくれようか? 生憎と火は扱い慣れぬ故、死に様が『焼死』でない事は許してくれ給え」 「はぁ、自分が勝つ積もりなの? 人間に負ける様な奴(の)が、私には楽勝みたいな、頭悪過ぎて笑えて来るわ。 燃え尽きるのは、あんたの方だよ」 地の利はウィローにあるのを、フェレトリは気付いていない。 「妹が居た頃の貴様は、我より強かったであろうになぁ。 それこそ月に並ぶ程の……っと、及ばぬから負けたのであったな。 何とも残酷な事よ。 半身と半霊を失い、弱体化した貴様を誰が恐れる」 「御託は良いから、掛かって来たら?」 「愚か者程、早死にしたがる。 今生最後の会話なのだから、愉しみ給えよ」 「最後じゃないから、惜しむ事も無いわ。 それとも、あんたにとって最後なの? だったら諄々(ぐだぐだ)引き延ばすのも解るわ。 どうぞ御存分に」 「情けを掛けた積もりなのであるが、悔いは無いと見える!」 長々と無意味な会話を続けた後、フェレトリが仕掛けた。
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417 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/05/19(土) 17:18:37.78 ID:+h5eYUrN - ここはウィローの結界の中で、フェレトリの能力は抑えられる筈だが、瞬く間に周囲が闇に染まる。
光を遮るフェレトリの結界が、ウィローの結界を塗り潰したのだ。 しかし、ウィローも一方的な展開にはさせない。 自ら光を発して、一部ではあるが闇を振り払う。 「あんたは光に弱い。 日光でも、月光でも、『提燈<ランタン>』の灯でも、凡そ眩しい物は全て嫌った」 「中々の光量であるな。 月に成り代わろうとしただけはある。 然し、弱い! 我を追い詰めるには及ばぬ」 暗闇の中でフェレトリの正体を掴む事は出来ない。 彼女は結界内を覆う闇その物と化しているのだ。 ウィローが強い光を保っている内は、フェレトリは手を出せないが、それはウィローも同じ事。 では、互角なのかと言うと、そうでは無い。 ウィローはフェレトリの結界の中に閉じ込められている。 「その儘、命を削りながら明かり続けるが良い! 兄妹達の様に『燃え尽き』、『消し炭になる』までな」 今のウィローの魔法資質では、闇と同化したフェレトリを一気に払えない。 外部からの魔力の供給が断たれている現状、ウィローの力は次第に衰え、圧殺されてしまう。 打つ手は無い様に見えるが……。
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418 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/05/19(土) 17:20:52.26 ID:+h5eYUrN - 時は少し遡り、闇が結界を覆った直後。
ラントロックも闇の中に囚われていた。 彼と戯れていた鼠達は、再びフェレトリの支配下に帰って、闇の一部と化している。 この闇は霧化した血液が作り出した物なのだ。 (所詮は仮初めの命、主には逆らえないのか……) 血の霧は光を遮り、薄暮を深夜の闇に変える。 結界から脱出しようにも、「外」の方向も判らない。 (魅了する所の話じゃないや。 くっ、こんなの初めて見るぞ! 砦に居た時は、実力を隠していた?) ラントロックは血の霧を掻き分けながら、闇雲に「外」を探した。 彼の魔法資質は全方位にフェレトリの気配を感じ取っている。 丸で彼女の「内部」に囚われている様。 (フェレトリも俺の存在を解ってる筈。 何時攻撃されても不思議じゃない。 どうにかならないか? 誰かの助けを……。 ネーラさんやフテラさんの能力なら……。 駄目だ、攻略出来るイメージが思い浮かばない!) 当ても無く歩き回った彼は、偶然モールの木に辿り着いた。 (これはモールの木!! 魔除けの効果、魔力を通さない!) 危機的状況の中、これを利用出来ないかと直感したラントロックは、知恵を絞る。 (考えろ! フェレトリを封じる方法は無いか?)
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