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◆fc44hyd5ZI
シノノメ・アンリエッタ・トランキル ◆fc44hyd5ZI
【ファンタジー】ドラゴンズリング4【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net

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【ファンタジー】ドラゴンズリング4【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net
297 : ◆fc44hyd5ZI [sage]:2018/01/13(土) 05:41:42.22 ID:tK4aegA2
今日、明日中には投下します。本当に申し訳ない……
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300 :シノノメ・アンリエッタ・トランキル ◆fc44hyd5ZI [sage]:2018/01/13(土) 22:59:48.77 ID:tK4aegA2
『帰らせて下さい?おかしな事を言いますね。あなたはトランキル。
 ダーマの建国、黎明。それらの裏に、澱のように積もっていく闇の全てを背負ってきた者。
 ……いえ、それらを積み重ねてきた者こそが、トランキル』

私の幻、その斬り落とされた生首が、あの闇竜のように声を発する。

『そう、あなた達は闇から生まれた。そして長い歴史の中で
 闇を生み出し、形造る者になった。
 今のあなたなら……誰の助けも必要としない。一人で、ここから立ち去る事が出来る』

それらの言葉に私は何の返事もしない。
ただ、右手の長剣をもう一度振るった。
トランキルの剣技が放つ黒の剣閃が闇を断つ。
空間に細い切れ目が走る。向こう側から眩い光が漏れる切れ目が。

「……ありがとう、ございました」

『礼ならあの槍使いに言いなさい。私はただあなたを試しただけです』

「はい。あの方にも、お礼は言います。だけど、あなたにも。
 ……それと、あなたは、もしかして」

『試練は終わりです。あなたが助けになりたいと願った者達は、既に試練を終えて待っていますよ』

……これ以上の問答をするつもりは、私の幻にはないみたいです。
私はもう二度、長剣を振るい……細い切れ目を、三角形の穴に変える。
そしてその向こうに見える光へと、足を踏み入れました。

「……ここは」

気付けば私は、どこかの神殿にいました。
元の世界ではない、どこか……だけどスレイブ様も、ジャン様も、皆が既に揃っています。
待たせてしまった……という様子ではなさそうで、ひとまずは安心ですが……。
しかし、ここはどこなんでしょうか。

>「さ、全員揃ったことだしとっとと辛気臭い場所からはオサラバしようぜ!」

「あ、アルマクリスさん。あの……さっきは、ありがとうございました」

「あー?何言ってんだ?お前。いや、なんの事かさっぱり分かんねーわー!
 異空間にありがちな幻でも見たんじゃねーの?いいからさっさと帰ろうぜって」

アルマクリスさんが私に目もくれず歩き出す。
だけど不意に、周囲の風景が再び闇色の渦と化した。
そしてそれが晴れると……私達は森の中にいました。
……子供の声が聞こえる。振り向いてみれば、淡い木漏れ日の中で子供達が遊んでいます。

>「何なんクソジジイ、ワンワン騎士の過去を見せろなんて頼んでねーんだけど!」

……これは、黒騎士アドルフの記憶?
この穏やかな時の中に……彼が最も忌み嫌う記憶があるんでしょうか。

>「お姉ちゃん、あげる! はめてみて!」
>「まあ綺麗。どこで見つけてきたの?」

……私には、彼らがどういう人で、どんな考えを持っていて、どんな行いをしたのか。
完全には分からない。だけど、あの指環。そして彼がこの記憶を忌み嫌っているという事は……。
今この瞬間こそが、きっと全ての始まりなんだ。
この大陸に戦争の火が燃え広がり、世が乱れ……多くの人達がトランキルの刃に掛けられた。
その始まりも……。
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301 :シノノメ・アンリエッタ・トランキル ◆fc44hyd5ZI [sage]:2018/01/13(土) 23:01:19.26 ID:tK4aegA2
>「ぜんぶ、ぼくのせいなんだ……。あのときゆびわなんてあげなければ……。
 ほんとうは、もうおねえちゃんはおねえちゃんじゃないってわかってた。
 せめてぼくがおわらせてあげなきゃいけなかったのに。
 おねがい、おねえちゃんをかいほうしてあげて……」

そう言い残して……アドルフは少年の姿のまま、消えてしまいました。
そして気付けば私達も、あの山頂に戻ってきていた。

>「……どういうことだ、爺さん」
>「あやつは自分の最も見たくない部分を虚無への妄信という形で向き合うことなく心の奥底に閉じ込めておった。
 それを無理矢理眼前に突き出し、心に直接問いかけてやれば……闇に飲まれるのは当然じゃよ」

……私は何も言えずにいました。
ティターニア様のように、彼に祈りを捧げる事も出来なかった。
気持ちが落ち込んでしまった訳ではありません。
ただ……何か、違和感がある。

>『さて、お主らの覚悟は十分に分かり、ワシも十分暇を潰せた。
 飲み込んだ者どもを戦わせて眺めたりヒトの悩み事を聞くことばかりしていては飽きるのでな……』
>『闇よ!汝を定義し、認め、自由自在に操る者へ授けるに相応しきものを!』
>「……これぞ闇の指環。ヒトの負の感情全てを受け入れ、逃げることのない者が、
 これを使いこなし、光の指環が放つ光を止められるじゃろう」

闇竜の呼び声が、闇の指環を現界させる。
漆黒の、竜の指環……本当に今更だけど、実在していたなんて……。

>「さて、これを扱える者は一歩前に出るがよい。
 ……名指しはせぬぞ?こういう時は自ら名乗り出るものじゃからのう」

ジャン様が自信に満ちた態度で大きく一歩踏み出す。
……そうですね。
ヒトの負の感情全てを受け入れ、逃げることのない者……。
故郷の人々を洗脳され、殺されかけても、それを許してしまえるジャン様になら相応しい……

>『ジャン!お主空気を読まない方のバカじゃろ!』
>「分かってるって爺さん!ただちょっと辛気臭かったから場を和ます冗談をだな……」

……えっ?そ、そうなんですか?

>『雰囲気が台無しじゃ!
 ……さて、指環の勇者たちよ。相応しき者は一歩前に出るがいい』

でも、だったら誰が……ティターニア様はあのユグドラシアの導師。
闇の魔法に関しても深い造詣があるはず……

>「お主もワルよのう。分かり切っておるくせに。第一、我の研究では指輪は一人一属性までだ」

そう言ってティターニア様は私の背中を……えっ?

「わ、私ですか……?」

私は指環が欲しくてここに来た訳じゃないってさっきも……
闇竜の方を見てみると……もう視線は逸らされない。
けどそれだけです。彼は私に何も言おうとしない。
……光栄に、思わない訳じゃないんです。
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302 :シノノメ・アンリエッタ・トランキル ◆fc44hyd5ZI [sage]:2018/01/13(土) 23:03:23.61 ID:tK4aegA2
だけど……私はこの、執行官の娘がわがままを言って連れ出してもらった短い旅の中で
……指環の勇者の名に相応しい事を成せたんでしょうか。
偶然スレイブ様を見つけて、偶然オーカゼ村の殲滅を命じられて
……そんな事したくないから、執行官の使命をねじ曲げて。

偶然に流されて、嫌な事から逃げて、
運良くそれらしい答えを見つけられただけの小娘。
私はまだ、その程度でしかない気がするのに……。

「……本当に、私でいいんでしょうか」

だけど、この状況で私にはやれません、自信がありませんとは言えなくて。
私は一歩前に出て、手を伸ばす。
そして指先が指環に触れて……瞬間、闇の魔素が溢れ返る。

「えっ……な、なに?なんで急に……!?」

『……うむうむ、愛い反応じゃのう。
 指環の試練など久しくしておらなんだが……
 指環を手にしたと確信した者達がそうして慌てふためく姿は何度見ても愉快じゃ』

周囲が急速に闇に染まっていく……。

「一体、どういう事なんですか?私は……指環に拒まれたのですか?」

『む、なんじゃ。思ったより勘が鈍いのう。拒まれたのではない。
 試練はまだ終わっておらぬ。ただそれだけの事。言うたはずじゃ。
 闇の指環が認めるは、ヒトの負の感情全てを受け入れ、逃げることのない者』

即ち……こういう事じゃ、と闇竜が続けた。
辺りに満ちた闇の魔素が形を得る。見覚えのある、ヒトの形を……。

「執行官……指環を寄越せ。俺は……責任を果たさねばならん。
 姉上を救うのは俺だ。闇に呑まれ、闇と同化した今、闇の指環を手にすれば……
 俺は俺自身を完全に律する事が出来る。姉上を、止められる」

……黒騎士、アドルフ。
 
「まっ、要するに……俺達の器になってくれやって事だぜ、トランキルさんよ。
 さっきは助けてやったり、姉上を救ってーなんて言ってたけどよ。
 生憎ここにいるのは指環に集積された闇そのもの……つまり」

そして……アルマクリスの姿を取った影が、矛の切っ先を私に向ける。

「殺し合おうぜ。殺し殺される、その絶対の運命を楽しめ。
 そして……指環は俺達のもんだ!俺達がここにいんだ。パトリエーゼもきっとここにいる。
 後はメアリを殺せば……やっとだ。やっと全部の辻褄を合わせられるって寸法よ!」

その咆哮と共に……アドルフが動いた。

一対の細剣から放たれる無数の斬撃……
五月雨のような手数を繰り出しながら、
しかし一つとして受けてもいいと思える一撃がない。
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303 :シノノメ・アンリエッタ・トランキル ◆fc44hyd5ZI [sage]:2018/01/13(土) 23:04:28.00 ID:tK4aegA2
「俺達は闇の指環と同化している。だから分かる。
 お前には大層な望みなどない。闇の指環を手にして何を願う?
 それは俺達の願いを踏み躙ってまで、叶えなければならないものか?」

そしてアドルフの連撃を目眩ましにして襲い来る刺突。
受け止められない。防御すればこちらの剣が一瞬止まる。
そうなればアドルフの双剣が私に届いてしまう。

「アイツらの力になりてえか?それなら別に俺達の器になったって叶えられる。
 なあ、頼むわ。俺達の願いを叶えさせてくれよ」

黒騎士と、その命を狙い続けた男の、
いえ……命を落としてやっと、その手を組む事が出来た二人、その連携……。
……強い。

それだけじゃない。闇の魔素は次から次へ、影を生み出し続けている。
数え切れないほどの民兵に、エルフ達……。
見覚えのあるリザードマン……私が、いえトランキルが首を刎ねた罪人達も。
それに、彼らは……かつて指環の勇者を志して、そして叶わなかった数多の冒険者達。

こんなの、私に勝ち目があるとは思えない……だけどそれでも、私もこの体を、そして指環を渡す訳にはいかない。
こうして追い詰められてこそ、改めて分かる事がある。
それは、私には、私の……

……アルマクリスの天戟、私はそれを長剣の切っ先で受け止める。
そしてその反動で後方へ大きく飛び退いた。

「……私は、ただ幸運に恵まれて、嫌な事から逃げ出して、ここに来ました」

無数の影は……緩やかな歩みで、私に迫ってくる。
ありがたい事です。

「だから、せめて最後くらいは……自分の意志で何かをしないと。私は……」

アドルフが地を蹴った。低く、低く、懐に潜り込む動き。
同時にアルマクリスが槍を支点に宙へと飛び上がる。
天と地からの挟み撃ち……私はそれを、

「――指環の力よ」

長剣を上から下へ、蛇のように。

「私は、あなた達の器にはなりません。私には私の……願いがある」

その一振りで、彼らの首を薙ぎ払った。二人だけでなく、全ての影の首を。

「私は、私に恥じない私になりたい。たったそれだけの事だけど。
 あなた達の願いよりも、ずっとちっぽけな願いだけど……」

闇の属性が持つ力。見えず、理解出来ず、無形である事。
その概念を以って生み出した刃によって。

「あなた達の願いは叶えられない。
 誰かが首を刎ねられ、誰かが首を刎ねなければならないように。
 願いを叶えるのは私です。あなた達じゃない」

「俺達を、拒むのか……いや、ならば何故、闇の指環が……」

斬り落とされたアドルフの、アルマクリスの首が、私を見つめる。
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304 :シノノメ・アンリエッタ・トランキル ◆fc44hyd5ZI [sage]:2018/01/13(土) 23:05:14.68 ID:tK4aegA2
「いいえ……拒みはしません。拒める訳がない。
 あなた達の願いは、とても尊いものです。
 叶うべきで、叶わない方が間違っている……」

「ならば……」

「それでも、叶わない。罪なき者が、時に死の運命から逃れられないように。
 あなた達はもう何も叶えられない。その無情と、無念を、私は受け入れます。
 そう……世の中は、そんなものだと」

私はヒトの首を斬り落とした。
その願いを断ち切って、決して未来へと辿り着かないようにした。
だけど……いつも処刑台に立っていた時のようには、私の心と鼓動は荒ぶらない。
胸の内が静かです。無風の湖のように、だけど水面よりも遥かに硬く。
心がまるで……罪人の首を断つ長剣のように変わっていくのを、私は感じていました。
……父も祖父も、きっといつも、こんな気持ちで処刑台に立っていたんだ。

「……要するに、開き直ってるだけじゃねーか」

「ええ。だけどそれでいいんでしょう。なんと言っても闇の指環です。
 きらきら眩しい心より、こっちの方がお似合いでしょう?」

……それに。

「あなた達はもう何も出来ないんだから……何も気負う必要もないんですよ。
 あなた達の願いが叶うか叶わないかは、私の気分次第……。
 なら、叶わなかったならそれは私のせい。でしょう?」

だからあなた達はもう何も気負わなくてもいいし、自分を責める必要もない。

「……さぁ、私は闇の指環の力を引き出した。今度こそ、試練は終わりです」

私がそう言って、数秒……不意に周囲の闇が渦を巻いて、消えた。
……今のは、幻?それとも……いえ、どちらであっても、関係ありません。
私は、確かに試練を乗り越えた。

気付けば私は、闇の指環に手を伸ばした時と同じ場所で、同じように右手を伸ばしていました。
いえ……一つだけ、違う事があります。私はいつの間にか、右手を握り締めていました。
その拳を、手のひらを上にして開く。
……闇の指環は、私の手の中にありました。



【遅くなってごめんなさい!】


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