トップページ > 創作発表 > 2018年01月13日 > WtSa/prQ

書き込み順位&時間帯一覧

3 位/42 ID中時間01234567891011121314151617181920212223Total
書き込み数0000000000000000004000004



使用した名前一覧書き込んだスレッド一覧
創る名無しに見る名無し
ロスト・スペラー 17 [無断転載禁止]©2ch.net

書き込みレス一覧

ロスト・スペラー 17 [無断転載禁止]©2ch.net
375 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/01/13(土) 18:26:16.30 ID:WtSa/prQ
エイムラクは馬車の少し後ろを、早足で追跡して来る者の存在を認めていた。

 (こいつの仲間か……?)

単なる通行人にしては、気配を周囲に溶け込ませて、存在感を消している所が怪しい。
他の執行者であれば、彼に気付かなかったかも知れないが、それだけエイムラクは「優秀」だった。
しかし、この者の正体は親衛隊内部調査班の班員である。
エイムラクの警戒は全く無駄な物。
寧ろ、彼に気を取られている分、危険な状況にある。
エイムラクの知覚の鋭敏さは、班員の想定外だった。
馬車が十字路を左折しようとした所で、懸念されていた事態が発生する。
少年が馬車の進路に飛び出して来たのだ。
御者は慌てて馬を止め、手元のブレーキを引いて車輪を固定するが、間に合わない。

 「うわっ!!」

 「あぁーーーーっ!?」

少年が短い叫び声を上げた後、御者が大声で叫ぶ。
エイムラクとトレンカントは急ブレーキで、前倒(の)めりになった。
エイムラクは前面の壁板に手を突いて堪えるが、トレンカントは気を失った儘なので、
勢い良く頭を打ち付ける。
少年は馬の左側面に接触し、馬車の車体にも当たって、撥ね倒される。
馬車が衝撃で少し揺れる。
幸い、曲がり角で馬も馬車も速度を落としていたが、ブレーキを止めるのが僅かに遅かった。
気絶しているとは言え、指名手配犯を乗せていると言う事実に、御者は必要以上の緊張感を、
感じていたのだ。
体を強く打った少年は、瀕死でこそ無い物の、路上に倒れて痛みに呻いている。
事故だ、事故だと周囲の人間が騒ぎ立て、人集りが出来る。
ロスト・スペラー 17 [無断転載禁止]©2ch.net
376 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/01/13(土) 18:30:14.05 ID:WtSa/prQ
 「えぇい、こんな時に!」

エイムラクは思わず、苛立ちを口に出していた。
しかし、トレンカントの体を引き起こしつつ、思い付く。

 (いや、これなら直ぐ執行者が駆け付けんじゃねぇのか……?)

グラマー地方では都市警察の代わりに、魔導師会法務執行部が、治安維持活動を担っている。
「警察」と言う組織は無く、その職務は全て執行者が取り仕切っている。
通信妨害を受けて、応援が呼べない状況で、不幸中の幸いと言うか、禍転じて福と為すと言うか、
とにかく問題は無いとエイムラクは思い直した。

 「すっ、済みません!!
  人が急に飛び出して来て――」

御者は乗客であるエイムラクに謝罪するが、彼は気にしない。

 「俺の事は気にすんな!
  それより打付かった奴の心配をしな!」

 「は、はい」

御者は運転席から飛び降りて、少年に声を掛ける。

 「おい、君、大丈夫か!?」

少年は呻きながら、左脇腹から腰、背中の辺りを左手で押さえて、立ち上がろうとする。

 「わ、脇腹が……」

 「動くんじゃない、今、救急を呼ぶからな!」

それを御者は押さえ付けて制止した。
足腰は軽傷の様だが、胴を強く打ち付けた様だと言う事が見て取れる。
ロスト・スペラー 17 [無断転載禁止]©2ch.net
377 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/01/13(土) 18:32:00.94 ID:WtSa/prQ
filler
ロスト・スペラー 17 [無断転載禁止]©2ch.net
378 :創る名無しに見る名無し[sage]:2018/01/13(土) 18:33:26.24 ID:WtSa/prQ
御者は魔力通信機で救急に連絡すると、周囲の人に呼び掛けた。

 「誰か手当ての出来る人は居ませんか!」

そうすると数人が進み出て、互いに視線で譲り合い、結果1人が御者に応える。

 「一寸、私に診させて下さい」

善意の民間人の助けで、応急処置が進められる。
馬車の中で、一連の出来事を見ていたエイムラクは、歯痒い思いをしていた。
本来ならば、執行者である彼が真っ先に動いて、場を取り仕切らなければならない事態だ。

 (こいつさえ居なければ……)

だが、今は指名手配犯の運送中である。
隙を見せて逃亡されたら、それこそ大問題だ。
幸いにも、少年は命に関わる様な重傷ではないが……。
落ち着かない心持ちで、エイムラクは改めて周囲を警戒した所、怪しい者の気配が消えていたので、
人込みに紛れて見失ったのかと、彼は焦った。
今、馬車は事故で停止している上に、野次馬が多い。
これでは、どこから襲撃されるか分からない。

 (通信は……)

焦ってばかりでは何にもならないと、エイムラクは通信の状況を確認した。

 (おっ、通じる!?)

妨害が止んでいる事を、彼は耳に残る低く小さな「ブーン」と言う特有の音で察する。


※このページは、『2ちゃんねる』の書き込みを基に自動生成したものです。オリジナルはリンク先の2ちゃんねるの書き込みです。
※このサイトでオリジナルの書き込みについては対応できません。
※何か問題のある場合はメールをしてください。対応します。