- ロスト・スペラー 17 [無断転載禁止]©2ch.net
137 :創る名無しに見る名無し[sage]:2017/10/23(月) 19:11:58.26 ID:TswtOkxw - マトラが退室しようとした所、1人のシスターが小走りで駆け寄った。
「マザー、この子達が……」 彼女の後には、若いシスターが2人並んでいる。 「分かった。 こっちに来なさい」 マトラは若い2人のシスターを預かると、地下の別室に案内する。 「『出来て』しまったのね?」 彼女は打って変わって優しい声で、2人のシスターに問い掛けた。 2人は俯いて無言で頷く。 「大丈夫、ここで『処理』するから。 痛みは無いし、勿論、体に悪い影響が残らない様にする」 そう言うとマトラは1人のシスターを衝立の向こうに誘い、もう1人は待機させた。 だが、彼女は人間の体の仕組みに、然して詳しい訳では無い。 内臓の位置や、大凡の機能は把握していても、その生理に就いて十分な知識は持っていない。 取り敢えず、外面に問題が無い様にする事しか出来ないが、そんな事は微塵も気にしない。 「ここで横になって、呼吸を落ち着けて、楽にして」 彼女はシスターをベッドに寝かせると、額を軽く撫で、奇怪な魔法で眠りに落とす。 そして下腹部を撫でると、魔力の手を子宮に沈め、臍の緒を切って胎児を掴み上げた。 手の平に収まる程度の大きさしか無い子を見詰め、マトラは満足気に微笑む。 それから魔力で作った幾重もの黒い膜で胎児を包み、自らの体内に収めた。
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138 :創る名無しに見る名無し[sage]:2017/10/23(月) 19:13:41.87 ID:TswtOkxw - シスターは目覚めと同時に、体の怠さを感じる。
マトラは彼女に優しく言う。 「無事に終わったわ。 暫くは血が出ると思うけど、心配しないで。 出血が止まったら、又宜しくね」 そう言ってマトラはシスターに金封を差し出した。 詫び金とも、口止め料とも取れるが、マトラとしては謝礼金の積もりだ。 元手は協和会への寄付の一部である。 協和会に多額の寄付をすると、地下の特別室に案内される。 そこで寄付金額の大きかった者から、好きなシスターを選べる。 お相手をしたシスターには寄付金の5%が与えられる。 後日、妊娠が発覚すれば、更に5%を追加。 丸で人身売買組織……否、その物であろう。 協和会のシスターは心清らかな者ばかりではない。 寄付金を目当てに集まっている者も少なからず存在する。 貧しい者に権威と金品で言う事を聞かせ、それを利用して富める者の名誉欲と愛欲を満たし、 更に金品を集める。 協和会は主義主張の清潔さに反して、実態は堕落の象徴の様な所なのだ。 何も彼もが腐っている。 腐敗の塔は何れ瓦解する。 崩壊の時は近い。
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139 :創る名無しに見る名無し[sage]:2017/10/23(月) 19:16:27.53 ID:TswtOkxw - 時と所は変わり、ガーディアンは再び元仲間の自己防衛論者と接触を図っていた。
「よぅ、態々呼び出したって事(こた)ぁ、何か分かったんか?」 自己防衛論者は今回は執行者を連れていない。 一対一での対面だ。 ガーディアンは人目を気にしながら、神妙な面持ちで告げた。 「途んでも無い爆弾ニュース、持って来たったで。 協和会は本殿地下で、女囲っとる。 お偉いさん等の相手させとんのや」 「本真の話か?」 「嘘は吐かんて」 「証拠は……?」 証拠の有無を尋ねられたガーディアンは沈黙する。 彼は何の証拠も握っていない……が、強気に押し切ろうとした。 「この目で見たんや。 魔法でも何でも使えば良え」 実際は見てはいない。 僅かに聞こえた声から、それらしい事をしていると判断したに過ぎない。 張ったりはガーディアンの特技なので、臆面も無く嘘を言う。 だから、元仲間も彼の言う事を安易には信用しない。 「そやのうてなぁ、証拠が無いと動かれへんがな」 「打(ぶ)っ込み掛けりゃ良えやろ」 「何ぼ魔導師会でも、そら無理やで……」 緊急事態以外で執行者を動かすには、確実な証拠が無ければならない。 この2人は未だ共和会の影に潜む、恐ろしい物の正体を知らない。
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