- 【TRPG】ブレイブ&モンスターズ! [無断転載禁止]©2ch.net
175 :ウィズリィ ◆ojxzobrjS9F. [sage]:2017/10/16(月) 04:25:39.07 ID:+jqZCTf6 - 「……ふうん」
窓から嫌でも見える、地に落ちる巨大な蝿の姿を見ながら、わたしは感心していた。 あの蝿はベルゼブブ……ニヴルヘイムに住まう上級悪魔族の一種だ。 基本的にはニヴルヘイム内にとどまっている彼らだが、時折こちら(アルフヘイム)に現れる事がある。 ここ、『赭色の荒野』にベルゼブブが時折現れている、という噂は聞いていた。 まさか、倒されている姿を目の当たりにするとは思わなかったが……。 あの蝿も、伊達や酔狂で上級悪魔と呼称されているわけではない。 強大な力を持ち君臨するからこそ、そう呼ばれ恐れられるのだ。 それを倒してのける。どうやら、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』達の力は本物のようだ。 幾つものスペル、魔物の使役、なにより……。 「……あの光。一瞬しか見えなかったけど、間違いない」 『捕獲(キャプチャー)』の術。 その名の通り対象を捕獲し、自らの思うままに動く手駒とする。極めて危険な術だ。 理論上は、この世界(アルフヘイムに限らず、ニヴルヘイムも、わたしたちのような『境界』の住民も含む)に住まう ありとあらゆる生物を隷属させることができると言われている。 その危険性から、基本的にはあらゆる魔術書から抹消され、その使い手はこの世界にはいない、とされている。 そもそも、現代ではごく一部の例外を除けば存在すら知られていない。禁術の中の禁術。 何故それをわたしが知っているのか、というのは、少々長い話になるのでまたいずれ語るとして。 「当たり前のように禁術を使う……『王』の言うとおりね。 彼らは良くも悪くもこの世界の存在ではない、か」 その存在をうまく御する事が出来なければ、世界の危機以前にそもそも彼らにこの世界が滅ぼされかねない。 責任は重大だ。警笛を聞きながら、わたしは大きく息を吐いた。
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176 :ウィズリィ ◆ojxzobrjS9F. [sage]:2017/10/16(月) 04:26:19.22 ID:+jqZCTf6 - 魔法機関車は建物の中に滑り込み、その動きを止める。
からくり仕掛けで扉が開くと、ほどなくしてどやどやと乗り込んでくる者たちがいた。 まず一人。それから遅れてさらに数名。 彼らが……『異邦の魔物使い』。 外見的には、わたし達『魔女術の少女』や『王』達とさほど変わらない、いわゆる『人型』族の特徴を備えているようだ。 見た目的には男性が二人、女性二人……いや、もう一人背負われている少女がいた。合計五人だ。 いずれも見た事もないような意匠の衣服を纏っているが、装飾過多な印象はない。実用性に優れた服装であることが窺える。 魔力的な防御はされていないようだが、恒常的でない魔力付与に関しては分からなかった。 他、レトロスケルトンやスライムなどの魔物も何体かいた。彼らは『捕獲』で使役されているのだろう。 さて、何を話したものだろうか。 内容を吟味しているうちに、第二陣でやってきた面々の先頭に立つ少女が先に話しかけてきた。 >「えーと……、こんばんは?」 >「この魔法機関車が、メロの言ってた王さまのお迎え……ってことでいいのかしら? わたしたち、アルフヘイムは初めてだから。右も左もわからなくて……。 あ、わたしの名前は崇月院なゆた。なゆって呼んでね。 こっちの無愛想なのが赤城真一。こちらの女の人が五穀みのりさん。あとは、えーっと……」 「……」 言葉が『石礫連弾(ストーンバレット:ガトリング)』のように撃ちだされてくる。 まずい。正直苦手なタイプだ。普段なら黙って聞き手に回るのだが、この局面ではそうもいかない。 「……こんばんは。メロという子は知らないけれど……ええ、この乗り物が『王』の迎えよ」 王の遣い、と一口に言ってもその数は軽く4ケタは下らない。いくらわたしでもその全員を把握してはいないのだ。 ……あるいは、『王』自身なら全員の名と顔を一致させているのかもしれないが。 「ナユに、シンイチ、それにミノリね。それから……」 意識がない様子の少女はひとまず置いておき、最初にこの車両に入ってきた青年を見る。 >「俺は……『明神』とでも呼んでくれ。本名プレイは好きじゃないんだ」 「……ミョウジン。分かったわ」 自ら本名でないと名乗るというのも怪しいが、現状ではそこまで突っ込むべきではないだろう。 あとから調べる方法はいくらでもあるのだから。彼はミョウジン。今はそれがわかればいい。
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177 :ウィズリィ ◆ojxzobrjS9F. [sage]:2017/10/16(月) 04:27:52.19 ID:+jqZCTf6 - と、安心したのもつかの間。ナユはさらに言葉を連ねてくる。
>「とにかく、メロの言ったとおり王さまに会えってことなら、こっちもそのつもりよ。 わたしたちは元の世界へ帰りたいの。あなたたちの王さまなら、きっとその方法も知ってるはず……よね? いや、絶対知ってるはず。直接的な方法は知らなくとも、そのヒントくらいは知ってるはずよ、絶対! でないとユーザーフレンドリーじゃないクソゲーってフォーラムでまたアンチに叩かれちゃう! 「……」 思わず瞬きを数度する。傍目にはきょとんとしている、という風に見えるかもしれない。 『王』から、『異邦の魔物使い』は奇妙な言葉を話すかもしれない、と聞いてはいたが。 「(これほどまでなんて……最後の一文なんて文法以外何もわからないのだけど)」 こほん、と咳払いを一つ。その間に、ナユはシンイチと気絶した少女の席割を決め、さらにこちらに話しかけてきた。 >「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」 さらに、ミョウジンも続ける。 >「異論なしだ。俺が知りたいのはこの魔法機関車がどこに向かってるのかと、 そこでまともなメシと寝床が提供して貰えるか。それから――」 >「この列車、トイレある?」 次いで、ミノリも。 >「そうそう、とりあえずお水か何かあらしませんかしらねえ? 皆さんこちらにきてから何も飲んだり食べたりしてへんやろし、外は暑かったからねえ」 「……」 順を追って対処することにした。 まずはミョウジンの方を見る。彼の様子は急を要しそうだ。 「向かう先は王都よ。王都キングヒル……偉大なる『王』のおひざ元ね。 食事と寝床は提供されるはずよ。贅を尽くした、とまではいかないけれど料理人は全力を尽くすはず。 個人の嗜好に合うかまでは保証しないけど。あと、トイレはあっち」 機関車の最後尾の方を指す。 さすがに、乗り込むときにその辺りの事は聞いている……私は比較的我慢が出来る方なので、今のところ使ってはいないが。 ちなみに、出発前に軽く覗いた範囲では清潔でよい具合のトイレだった。 ミョウジンがそちらに向かうのを見届けてから、次はミノリの方を見る。 「水と軽食程度なら用意があるわ。必要があれば、あれに話しかければ『運転手』に伝わって、持ってきてくれるはず。 王都までは少し長い道のりになるから、呑まず食わずでいるならせめて喉を湿らすぐらいはした方がいいでしょうね」 あれ、と言いながら指すのは伝声管だ。 あらかじめ敷設した範囲であれば魔法抜きで声を遠隔で届けられる、驚異の技術である。 まったく、この魔法機関車に詰め込まれた技術の粋には驚かされるばかりだ。 最後にナユを見て、言う。 「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。 わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。 詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。 ……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」
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178 :ウィズリィ ◆ojxzobrjS9F. [sage]:2017/10/16(月) 04:28:22.46 ID:+jqZCTf6 - 最後に、小さく咳払いをしてから
「自己紹介が遅れたわね。 私はウィズリィ。忘却の森に住まう魔女術の少女の一人、『森の魔女』ウィズリィよ。 ……まあ、ウィズリィと呼んでくれればいいわ」 精一杯の笑顔を作って、言う。 「よろしくね、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の皆さん」 【ウィズリィ:邂逅。そして自己紹介】 【魔法機関車:停車中】 【トイレ:清潔】
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