- ロスト・スペラー 16 [無断転載禁止]©2ch.net
13 :創る名無しに見る名無し[sage]:2017/04/28(金) 20:00:30.55 ID:FLWKSPyf - 元の宿に戻ったクローテルは、3人の従者にマルコ王子から挑戦を受けた事を話しました。
従者たちは青ざめて、クローテルを止めようとします。 「ま、まさか、お城へ行くとは言いませんよね?」 「良い機会なので、物見のつもりで行ってみようと思います」 「危険ですよ!」 「あちらも、こちらも、下手をすれば外交問題になります。 そう危ない事はしかけて来ないでしょう。 アーク国もルクル国も軍事力では同じくらい。 私も争いは望みません」 「……そこまで、お考えの事であれば……」 従者たちはクローテルの言い分を聞いて、大人しく引き下がりました。 問題の本質は、竜を倒すほどの強い力を持つクローテルの身の安全ではなく、 小さないさかいが外交問題に発展しかねない事にあるのです。 挑戦を受けても断っても角が立つなら、応じた上で上手く乗り切る他にありません。 従者たちはクローテルの神がかった力と運を信じました。 さて、城へ向かうのは明後日。 当日が心配ではありますが、とりあえずクローテルたちは観光を続ける事にしました。 せっかくの旅行なのに何もしないのでは、はるばる遠くから来た意味がありません。
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14 :創る名無しに見る名無し[sage]:2017/04/28(金) 20:01:36.31 ID:FLWKSPyf - ところが、人の多い場所に行くと、だれかが必ずクローテルに気づきます。
「あれはアーク国のクローテルじゃないか!」 「クローテル?」 「怪物退治の英雄クローテルだ! 大火竜をしずめ、巨人を退かし、魔竜を倒した男だぞ!」 「あのクローテル!? あれがクローテル!」 そうなると、もう大さわぎで観光どころではありませんでした。 「城で王子の挑戦を受けるらしいぞ」 「ええっ、マルコ王子が?」 「王子は領内の十騎士の継承者を呼び集めているとか」 「何が起こるんだ?」 人々は勝手な事を言って、盛り上がっています。 従者たちは、とまどいました。 「ど、どうなっているんです? 昨日の今日で、こんな急にうわさが広まるなんて……。 クローテル様……」 「初めから逃げ道は用意されていないようです」 すでにクローテルがマルコ王子の挑戦を受けるものと、うわさは広まっており、ここで応じなければ、 おく病者と笑われてしまうでしょう。 それはクローテル個人だけではなく、彼を英雄とたたえた国の名誉にもかかわります。 マルコ王子はクローテルが城に行かなければならなくなるように仕向けていました。
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15 :創る名無しに見る名無し[sage]:2017/04/28(金) 20:06:02.10 ID:FLWKSPyf - クローテルたちは、どこへ行っても人のうわさを耳にするので、気が休まる事は無く、
城へ行く当日を迎えました。 城内に入るとクローテルは従者とは別に、一人で練兵場に通されました。 錬兵場には城中の者が見物に集まっており、さらに城から場内を見下ろすバルコニーには、 ルクル国王夫妻とマルコ王子が並んでいます。 マルコ王子の手には白い布に巻かれた神器マスタリー・フラグがありました。 「よくぞ入らした、クローテル殿! まずは一国の貴族に対する非礼をわびたい。 私の無理な願いに、よく応じてくれた」 応じるしかないように仕向けておきながら、彼は平然と言います。 「しかし、私は聖騎士の号を持つ貴公の真の力を知りたいのだ。 ここに我が国が誇る3人の勇士を用意した。 貴公の実力を示してもらいたい!」 勇ましく語るマルコ王子の後ろで、国王夫妻は少し心配そうな顔をしています。 それにも構わず、マルコ王子は続けました。 「竜を倒したうわさが本当ならば、人間相手では物足りなく思われるかもしれない! だが、どうか侮りであるといきどおらず、真剣に相手をしてはくれまいか! 騎士エートス、前へ!!」 マルコ王子が呼びつけると、剣を持った1人の騎士が前に進み出ました。 「エートスは我が王国騎士団の剣術の教官である。 剣さばき、格闘術ともに、国内では指折りの実力者だ。 手かげんなどせず、本気で挑んで来られよ!」 騎士エートスはクローテルに一礼すると、剣を構えました。 クローテルが剣を抜かず、素手で構えるので、エートスはおどろきます。 「なぜ剣を抜かないのですか? こしに提げている物はかざりですか?」 「この剣を抜けば、あなたは無事ではすまないでしょう」 馬鹿にされたと感じたエートスは、実力で剣を抜かせようと決めました。 「ルクル王国騎士団剣術教官エートス。 いざ、参る!」
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