- 【王道ファンタジー】ホワイトクロス騎士団【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net
19 :フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G [sage]:2017/04/22(土) 17:14:31.55 ID:yG25vrLP - >「私をお嬢様と呼ぶ人間はな、等しく私を誤解している。
本当に理解している人間はこう言うんだ……『聖騎士』とな!!」 セレスティーヌが負けじと啖呵を切る。そこに第二分隊員であり、 尤も信頼しているというアレクが合いの手を入れる。 >「いよっ! お嬢聖騎士様、かっこいい!」 「ぬおぉぉぉぉぉぉぉッ!」 そんな第二分隊に、セレスティーヌに遅れないように、フィッチャーが続いた。 フィッチャーは鋼鉄のグレートソードを半ば引きずるようにして駆け、時折飛んでくる矢やクォレルを受けながら、 廃墟を木材で覆っただけの簡素な砦に踏み込んだ。 「ギャァー!」「ひぃぃっ!」 その鉄塊は敵の剣や斧を分断し、そのまま皮鎧ごと叩き斬る。 三人があっという間に六つの肉塊へと変わる。 剣にこびりついた敵の顎から上の頭蓋骨を梁へと叩きつけると、 それが拉げて潰れ、同時に上の階層が揺れた。敵に動揺が走る。 しかし動揺していたのは味方も同じだった。 後方を突いた敵の伏兵は第三分隊の弓兵を二人不意打ちで斬り倒すと、 第二分隊に所属する女性隊員で、補助魔法を詠唱中のユニスにも斬りかかった。 聖歌隊にも所属する、「ホワイトクロスのアイドル」である。 「きゃあっ!」 ユニスが袈裟斬りにされ、その場に倒れると、神官兵たちは慌てて後方支援どころではなくなり、 剣を抜くか棍棒を構えるなどして、そちらへと注視する。 しかしフィッチャーはそれどころではない。ユニスの悲鳴を聞くと、一瞬だけ舌打ちをし、 そのまま鎧の大男に向かった。改めて見ると自分がどれだけ小さいかが分かる。恐らく身長だけでもセレスティーヌと同等かそれ以上だ。 重装兵役(タンク)というのが自分では役不足だとそれだけで分かるぐらいだ。 >「アレク!第二分隊の指揮は貴様に任せる。私はこいつを裁いてやるとしよう」 さすがは「指揮能力ではジェノア諸将にも引けを取らない」と言われているだけのことはある。 セレスティーヌが指揮を執ると、すぐに副官のアレクが代わりに下で喝を入れだした。 しかし、優れているのは指揮能力とカリスマ性までであり、若干無鉄砲なところがあるのが珠に傷なのだ。 >「大男!お前がこいつらを指揮しているな?生まれはどこだ、ガントリアか?デーニアか?」 >「……我が名はセレスティーヌ・ジゼル・ド・ラ・シュヴィヤール。 お前の名は?見た目から察するにどこかの貴族崩れとお見受けするが?」 その声に返答とばかりにウォーハンマーが振り回される。一撃目は寸でのところで外れた。
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20 :フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G [sage]:2017/04/22(土) 17:15:05.15 ID:yG25vrLP - 「俺はバルカス・ブライトだァ! 親父が元老院議員のハミルカルって言や分かるかァ? お嬢さんよォ。
ちなみにこの鎧は俺の家となーんも関係ねぇよォ… 盗品ってやつさァ」 ハミルカルは帝国と通じたという疑いで捕縛命令まで出ていたが、未だに捕まってはいない。 外見からして「カタギではない」と言われていたが、良い噂と悪い噂の両方を持つ地元の富豪だ。 一方で息子のバルカスはというと、評判は頗る悪い。少年時代から身体が大きく、裏の仕事に憧れており、 周囲に触れ回っていたほとだ。 セレスティーヌの「祝福剣ルクレール」が煌き、機先を制するように素早い連撃が入る。 「まだまだァ! お前ら、こいつらを取り囲め。女の方も殺しちまっても構わねェ!」 カンカンと、バルカスのず太いウォーハンマーと分厚いガントレットによりそれは弾かれ、 反撃が見舞われるとセレスティーヌはそれを往なし、再び鋭い一撃を放つ。 (くそっ、俺もいるってのにこれじゃ手が出せねぇ…!) 一方、下では既に第三分隊の傭兵上がり二名と第二分隊の従士一名が致命傷を負って犠牲になったものの、 次第に調子を取り戻していった。 >「ほい了解! ずんばらり三枚おろしだぁ! みんな落ち着いてー!お・は・し! 押さない走らない死なない――非常時の座右の銘! ワタシがみんなを治療するからその間囲んでくれるかな?」 そう、第二分隊員、アレクの存在が大きかった。 アレクは一般的に「デイドリーム」と呼ばれ、人間の突然変異で教会からは「聖天使」とも言われていた。 この世界では歴史の折々で「奇跡」が度々起こっている。その多くの場面に、彼らデイドリームの存在があったという。 通常ならば玉石混合のホワイトクロスのような集団には居ない筈だが、やはりシュタイン司教の意向なのだろう。 彼の存在もまた、ホワイトクロス騎士団の士気の高さの源なのだ。 >「《キュア・ウーンズ》」 >「おっ、いいところに来た海賊王! 第三分隊の面々もワタシがぱぱっと指揮して後ろから来る雑魚食い止めとくからセレス隊長に加勢したげて! 《ホーリィ・ウェポン》!」 見る見るうちに負傷した兵たちは立ち上がり、持ち直すと 後ろから迫る山賊たちを蹴散らしていった。
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21 :フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G [sage]:2017/04/22(土) 17:15:32.23 ID:yG25vrLP - ――
二階部分での戦いはフィッチャーとセレスティーヌと大男でほぼ二対一に見えていたが、 気がつくと剣を持った敵二名が回りこみ、砦の要所からは弓が引かれている。その中にはオスカーもいる。 表情は相変わらずだ。余程フィッチャーに恨みがあるのか、砦側に肩入れしているのか。 当のフィッチャーはというと、獲物が大きい分、下手に振り回せばセレスティーヌを巻き添えにしかねない。 敵の矢を防ぐので精一杯だった。既に矢の一本が鎧の隙間に刺さり、そこから痛みが広がっていく。 「へへへ、バルカス様! 俺らも援護しますぜ…!」 敵の下っ端が下卑ていながらも戦慄した震え声で、セレスティーヌの脇腹から斬りかかった。 そちらの防御をしている一瞬の隙を突いて、それは起こった。 バルカスが不意にハンマーを振り回し、セレスティーヌを狙った。 (チッ、こいつ、味方ごと…!) セレスティーヌは驚いたことだろう。一人分の臓腑と血液が突然降りかかったのだ。 それらはビチビチと音を立て、フィッチャーの足元にも落ちてきた。 オオオオオオオオオオオ―― 慄く周囲に飲まれそうになったが、アレクの「加護」を受けてフィッチャーは辛うじて勇気を振り絞って 光を纏ったグレートソードを振り回し、バルカスの脇腹へと一撃を見舞った。 「ギャァァァ!!」 「ぐぉっ!」 それはバルカスにとっては脇にかすり傷を負わせるに留まったが、 結果としてはもう一人の雑魚を絶命させて再びこちら側が優位に立った。 「武器を置けやこら! そしたら命までは取らねえぞてめえ! 俺を誰だと思ってやがる……海賊王でホワイトクロス騎士団隊長、フィッチャー様よ!」 叫びながら回り込み、剣を持ち上げると二撃目の構えを取る。 そこでバルカスが、待ったの合図を出しながら凄い勢いで後ずさった。フィッチャーの攻撃は空振りに終わり、 怪訝そうな顔をする。動きがおかしいのだ。それは別の合図だったのだ。 「動くなよ、お前らァ、人質を殺されたくなかったら、大人しく武器を置け」 待ちかねていたかのように、奥から男二人が剣を突きつけながら、ロープで繋いだ人質を引っ張り出してきた。 オスカーがそちらに向かって弓を向ける。 (あれは…アンドリュー!)
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22 :フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G [sage]:2017/04/22(土) 17:16:56.15 ID:yG25vrLP - 奥にいた男たちの一人もまた、彼の海賊時代の友人だった。
フィッチャー、ハワード、オスカー、アンドリュー。仲良し四人組。 特にこの四人は親友といってもいい間柄だった。四人の名前が出てくる歌まで作ったほどだ。 人質は五人。女性と子供ばかりだった。 そういえばジェノアでは近頃女子供の行方不明事件が相次いでいたのを思い出した。無論、被害者はまだまだこの限りではない。 その時だった。一瞬だけ奥の方に黒いフードを被った人物が見え、バルカスたちに合図を送り魔法のようなものをかけると、その場を 立ち去っていくのが見えた。その時、瞬時に見知った顔が脳裏を過ぎった。雰囲気だけでだ。 刃物が人質に突きつけられる。フィッチャーにはフードの人物のことなどを考えている余裕はなさそうだ。 再びグレートソードを構え、セレスティーヌの表情を伺う。 ―― 一方、下でも異変があった。 >「まさかこっちに真打がいる……なんてことはないよね?」 意外にそうかもしれない。 徐々に後退する敵に意識が殺がれていく中、第二分隊の後ろを思わぬ敵が襲う。 「ぐぁぁ!!」 騎士の一人が首を一撃でやられ瞬く間にそれは命を奪っていった。 隙の無い鍛えられた戦士が一撃で、その理由はひとつだ。 攻撃してきたのが味方だからだった。 ラムスが最も重装備と思われる第二分隊の騎士を殺害した後、数人を切りつけながら 後ろにいた「味方」と合流した。そしてその剣は負傷したユニスへと突きつけられていた。 立ち上がるのがやっとな彼女にとってその切っ先は脅威のようで、涙がこぼれる。 他の生き残りもこぞってまだ生存している隊員を人質に取った。 「騙されたなお前ら。俺は「こっち」の人間だ。お前らは包囲されてんだよ、ホワイトクロス騎士団だあ? そんなのクソッタレよ。 盗賊は所詮、盗賊ってモンだぜ。分かったらお前ら、こっちに付けや」 ラムスと目が合った第三分断の一部は、ゆっくりとアレクたちから離れていった。 ラムスはフィッチャーの次に人望があったことも勿論ある。どちらかというと金と快楽を求めて騎士団に入った者たちだ。 思えば最初の妙にそわそわした動き、敵の察知の早さもラムスが通じていたと考えれば納得がいく。 と、ホワイトクロス騎士団は最初の戦から苦難に追い詰められることとなった。 【二階でセレスティーヌ、フィッチャーが人質を取るバルカスらと対峙、 階下ではセレスたち隊員が砦を背にしてラムスと他数名の盗賊が隊員の負傷者を人質に 降伏・寝返りを要求】 >>18【参加アリシャース! 隊員キタコレ! 世界観がだいぶファンタジーになって 良い味付けになりました! 他にもアイデアや思いついた設定があったら、、 遠慮なくキャラ参加してみてください!】
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