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シャドウ ◆ELFzN7l8oo
ルーク ◆ELFzN7l8oo
◆GM.MgBPyvE
【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ4 [無断転載禁止]©2ch.net
【TRPG】バンパイアを殲滅せよ【現代ファンタジー】 [無断転載禁止]©2ch.net

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【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ4 [無断転載禁止]©2ch.net
315 :シャドウ ◆ELFzN7l8oo [sage]:2017/03/21(火) 06:04:31.95 ID:JvqnOxdV
なんと息子は全世界の生き物をして【治癒】を唱えさせよと言う。簡単なことではない。渾身の攻撃呪文を行使するよりもよほど大仕事だ。

伝令のレンジは半径1ヤード(約1.6km)。
タリスマンやら魔法陣やらで強化をはかったとしてせいぜい1リーグ(約4.8km)。
ここベスマは大陸(※)の中心。半径にして200リーグ(約1,000km)。遠い所で400はある。
(※オーストラリア大陸程度の大きさ)
少なくとも複数の発信元が必要だ。
……腹を決めねばなるまい。父の体力もそろそろ限界に近い。

穿たれた大穴の縁にてこちらを眺めている五体の竜を仰ぎ見る。彼等であれば瞬時に各地に飛び、呼びかけるも容易だろう。
だが竜は大陸の守護神に等しい存在であり、当然気位が高い。
人間やエルフなど、チョロチョロ動き回る子猿かネズミ、程度にしか認識していまい。素直に頼みを聞いてくれるだろうか。

「ゴリュゴリュンォゴゴ!! グルワグワ! (大地の守護者たる竜達よ! ひとつ、頼まれてもらいたい!)」

自分でも驚くほど正確な発声と発音。遥か昔、興味本位で覚えたドラゴン語――Dragonish(ドラゴニッシュ)だ。
長い時を生きるドラゴンは当然人語、エルフ語を解する。エルフ語で話しかけても通じよう。
しかし自分は所詮一介のエルフ。彼等に取っては「耳の長い方のネズミ」。
そのネズミが「頼む」と叫んだ所で見向きもするまい。下手をすれば怒りに触れブレスを浴びかねない。
だがドラゴンの言葉でなら少しは違うかも知れない。
基本、「ガ行」で成り立つ彼等の言語。人間には難解かつ発音自体が無理な言語。
幸いこの自分は、幼い頃より妙な発音が得意だった。アヒルの真似など父をしてアヒルそのものと言わしめた。
少しは心を動かしてくれるに違いない。まさかドラゴン語を正確に理解し発音するネズミがいようとは。
五体が一斉にこちらを向き、口を開いた。

(以後、副音声でお送りします)

≪ナぁドゴのコドバしゃべっちゅう? (お前は何処の国の言葉をしゃべっているのだ?)≫

――!???
竜が何と言っているのか理解できなかった。そんなはずはない。その昔、この私に指南した竜は王族の末裔だと自称していた。
正確な発音と正確な文法。教科書通りのはずなのだ。しばし竜と対峙する。

>≪弾け飛べ!何もかも――!!≫

突然の魔王の怒号と共に何かが降ってきた。反射的に身を翻す。

「のぐわっ!」

落ちてきたのは父だった。
なんと言うことか。魔王は我らが「死の舞踊」の呪縛を解き、踊りの最中に攻撃してきたのだ。
見事に顔面から激突した父がむっくりと上体を起こし、右腕を振り上げた。さも悔しげに拳を地に叩きつける。
……気持ちは解る。自分を捨て、身体を張った攻撃がかわされたのだ。
「おのれっ! いま少し趣向が足りなんだか! 付け髭にコイン、長楊枝などの用意があればこんな事には!!」
「父上! 悔しがっている場合ではありません! 勇者は【治癒】にて魔王を打倒すると!」
「なんとその手があったか!!」
我が父ながら、頭の切り替えも飲み込みも早い。
即座に立ちあがり、血で顔面を染めたままの井手達にて五体の竜を眺め回した。

「さてはヴェルハルレン! 竜に言伝を頼んだか!?」
「何故それを!?」
「そしてその際――正当なる言語“King's Dragonish(キングズ・ドラゴニッシュ)”を用いたのではあるまいな!?」
「何故そこまでお分かりに!?」
「即座に状況を見極め、先を読むが水鏡の主たる証ぞ! 場の空気を読むなど朝餉前!」

……などと言っているが、さすがにそれはあるまい。踊りながらこちらに意識を向けていたのだろう。
「竜との会話はまかせよ! 其方は急ぎ魔法陣を描き、大陸中の者にビジョンを送れ! 我らが様を見せるのだ!」

ぐいっと、童児のように袖で鼻血を拭いた父が背筋を伸ばし、ドラゴンに向き直った。
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316 :シャドウ ◆ELFzN7l8oo [sage]:2017/03/21(火) 06:07:08.31 ID:JvqnOxdV
≪お願(ねげ)えだガら、ワだぢ(我々)の頼み、聞いでくれねべガ!!≫

父の話す竜の言葉は、良く良く耳を傾ければ理解可能だった。なるほど。訛りだ。 
正確に言えば大陸北端の訛りと、西方、南方のイントネーションが少々。
さすがはエルフの長老。竜語の北方訛りまで会得しているとは。

≪ワイハぁ(何と)!? ワンドノ(我々の)言葉バ(を)!!?≫

ドラゴンの態度が一変した。いきなり和気あいあいとしゃべくり出した父と竜達。ここは任せて良さそうだ。
ゆっくりと息を吐き――自分の意識を静かに保つ。
目を閉じ、地の呼吸を感じ取る。星の揺らぎを。風のそよぎを。遠くの森の水のせせらぎを。

≪せやな! 頼まれてみっぺ。リヒトもそう思うっぺよ?≫
≪やっぺやっぺ!≫

否応なく耳から侵入する竜達の会話。ここで心に波風を起こしてはならない。

≪オイどんも賛成じゃキ! 面白か踊りっこも見してもらったバイ≫
≪んだばオレも手こ貸すっしょ?≫
≪んだんだ!≫

静かなる……新円の月が映り込む湖面を思い浮かべつつ――
右手首に短剣の切っ先を向け、一息に動脈を切断する。静かなる魂にて描く血の魔法陣は、他のあらゆる画材に勝る。

>≪このリュシフェールを排除することなど……誰にもできぬ!≫
>ガギィィィィンッ!!!

横合いではなんと魔王の攻撃を止めるリヒトの姿。

>≪……なぜだ……なぜ、我が征く手を遮る?リヒト――≫
>≪――リヒト!答えよ!≫
>「……御身のためを、思えばこそ」
>≪裏切り者め!!≫

ちょうど魔法陣が完成した、その時だった。魔王の闇の剣がリヒトの胸を刺し貫いたのは。

「リヒト!!?」
鼓動が跳ねた。瞬時に沸き立つ血流が右手首から迸り、完成間近の魔術紋様を汚す――それを阻止したのは父だった。
「たわけ者が!!」
体当たりにてこの身体を突き飛ばし、宙に舞っていたこの血液を自らの身体で受け止める。
「おのれは……いまだ頑健なる心を持ち合わせておらなんだか!!」

竜達が翼を広げ、ひと際高く咆哮した。胸を貫かれてなお魔王の身体をいだき、拘束するリヒトをじっと見おろしたまま。
リヒトの僕、リヒトの言葉のみを命とし動く竜達は、一度だけ父に目を向けると――飛んだ。
主であるリヒトに背を向け飛び去ったのだ。

「見よ。ドラゴンは心得ておる。リヒトが如何なる想いを抱くか。げに成すべきは何かと」

ごふりと血を吐くリヒトの壮絶な姿。
フェリリルの父親を殺し、血族を殺し、次は我が身をも殺さんとする男の姿だ。

【天地に棲まう数多の精霊よ! いまここに集い、汝らが力を示せ!】
【水よ! 風よ! 火よ! 地よ! 我らが姿! 映すべき“珠”をいまここに!】

以前の私ならリヒトを助ける呪文を唱えたかも知れない。
魔気を弾き、侵されたリヒトの身体を修復する、そんなスペルの応酬をしようと苦心したかも知れない。
しかしリヒトはそれを望まない。だからこそ竜は去った。

――承知したぞリヒト。その姿、永久にこの目に焼き付けよう。
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317 :シャドウ ◆ELFzN7l8oo [sage]:2017/03/21(火) 06:09:08.35 ID:JvqnOxdV
魔法陣のすぐ上に、巨大な宝珠(オーブ)が出現した。
宙に浮く水滴を集めたオーブだ。風の力にて浮き、大地の重力にて完全なる球体と成し、炎の力で赤々と照らしだされるオーブ。
地水火風それぞれの精霊達は、この場にて我らの行動を見、記憶している。

【水よ! 其処らに宿るすべての「水」を通じ、我らが様を映し出せ!】
【風よ! 其が大元は流れ! 気流! 水が映しし“映像”を蠢く“動画”と成せ!】
【地よ! この地は音と想いを伝える媒体なり! “音声”を須(すべから)く伝播、伝達せよ!】

ひとつ、ひとつは単純で容易な仕事。
しかし精霊を三つ同時に動かすは非常に困難。想起は出来、オーブまでは作れても……あとひとつ。
発動に至るまでは大いなるブーストが必要だ。

「父よ! そのタリスマンの力、お貸し願いたい!」
「承知!」

父はとうに用意をしていたらしい。はためき翻る白い魔道衣のその下に、チャージし終えた七つの青光。
青白い光がオーブを包む。
珠の中心に立つ白い天使と、相対する勇者の一行。しかし――

「遅い! 遅すぎて何をしているのかさっぱり解らん! 何故に“火”を使わぬ!」

確かにそうだ。これでは閲覧者が見終えるに一日かかる。火の力が必要だ。
火とは熱。あらゆる分子の運動速度を上げる単純な作用によるものだ。“風”を烈風と化すためにはどうしても……しかし……
「ヴェルハルレン! 何故に其方が“火”を苦手とするか解らぬ! 火は“凍気”の想起と同様であろう!?」
「同様ですと!?」
「左様! どちらも粒子の動きを制御するもの! 速めるか遅らせるかの違いなり! 其はまこと幼い頃より――」

父がくどくどと昔の話などし出したので、耳に入れずにおく。
なるほど。火は凍気に同じか。
いつも暴走させてしまうのは、ブレーキの掛け方を知らなかったからなのだ。引けばいい。頃合いを見て引けばいいのだ。

【火よ! これな“映し”に其が魂を込めよ!!】

火の精霊はこの時を待っていたに違いない。一瞬にして大気の温度が上昇し、映像も一転してリズミカルなものとなった。
大地は小刻みに律動し、風の余波が大気を震わせる。宝珠が煌めきを増す。稀に見る四大精霊の連携。
その消費魔力は当然大きい。

「ヴェルハルレン! いま一度耐えよ!」

父はすでにこの魔力が尽きたことを見抜いている。そして父も――

「父上こそ! いま気を抜けば、制御を失いし精霊が何をしでかすか解りませぬ故!」

いま少し! みなに届くまで、あと少し!! 

術者の命そのものを魔力へと変換する賢者の魔紋がいま、この額を焼いていた。
ゆらめく父の銀髪が白髪と化している。おそらくこの自分も同様。両者の――命の蝋燭が消えていく。


何か聞こえた気がした。何者かが呼ぶ声だ。
「シャドウどのーーー!!! 皆皆様―――!! ご無事かーーー!!?」
身を乗り出し、姿を見せたあの声は、エミルだ。ベルク王にマキアーチャの姿も見える。その横に、魔狼が一匹。

大気に満ちていた緊張が解けた。地の律動が止む。
役目を終えたオーブが蒸発し、消えたその場を一陣の風が吹き抜けた。
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318 :ルーク ◆ELFzN7l8oo [sage]:2017/03/21(火) 06:10:09.07 ID:JvqnOxdV
≪天地(あめつち)の命 現(うつつ)と虚(うつろ)の命 しばしその断片をかの者に分け与えん≫

さざ波のように聞こえてきたのは呪文だった。集まったみんなが口ずさんでる、治癒のスペル。
あの時を思い出す。剣闘士村で、腕折った俺をみんなが治してくれた時の事。
シオとリリスと、ライアンと祖父ちゃん、ベリル姉さんが一晩中それを唱えてくれた時のこと。
あの時は5人だったけど、今度は大陸のみんなが唱えるんだ。これって――すごくない?

何度も何度も合わせる声は、次第に「旋律」を持ちはじめた。
なんだろう、子守唄? それとも家帰る途中父さんが歌ってくれたあの歌?
店仕舞いする店主たちが何となく口ずさんでたあの歌にも聞こえる。
何かこう……安らぐ歌だ。まさに大地を癒す、そんな調べ。懐かしい歌。鎮魂の歌。

俺達を囲む合唱の輪は広がっていった。
ベスマだけじゃない。各地に散ったドラゴン達が作った輪も。――いつしか大陸全土に。何百、何千、何万、何億。


アルカナンの謁見の間で、女王と王女が手を取り合ってるのが見える。
もとルーンの王城に集まった兵士達が歌ってるのも。
ドワーフの神殿で生き残ったドワーフ達が口を張り上げてる。
エレド・ブラウの水鏡の横で、こっちを見上げるベリル姉さんと二人のエルフ。
どこかの貴族のお屋敷に佇んでるシオとリリス。
名も知らない小さな漁村、その砂浜に立っている子供達も。魔狼の森の魔狼も、その他多くの生き物達も。
人間もドワーフも、エルフも、今までいがみ合ってたかも知れないみんなが、声を揃えて歌ってる。


涙が止まらなかった。フェリリルも、父さんも。たぶんあそこに居る、みんなも。
「天」が震えるのが解る。「地」が本来の活力を取り戻すのが解る。漲る力。音量はさらに大きく――強く――!

リュシフェールは何も言わずに立っていた。
閉じた翼。輝く身体。目を閉じて。手を広げて。まるで歌の旋律を身体で受け止めてるみたい。



「いくよ、フェリリル」

俺は刀身の無くなったインベルの柄を、魔王に向かい高く掲げた。
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53 : ◆GM.MgBPyvE [sage]:2017/03/21(火) 17:45:52.95 ID:JvqnOxdV
【お疲れ様でした! エンドロール兼導入を用意するまで少々お待ち下さい】
【水原桜子はそちらで動かしますか? それとも貰っても?】


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