- 【防衛】要塞を守りきれ!ファンタジーTRPGスレ3 [無断転載禁止]©2ch.net
306 :皇竜将軍リヒト ◆khcIo66jeE [sage]:2016/10/07(金) 21:20:04.34 ID:acCSLJtc - ベルク・ビョルゴルフル率いる一団が封印された氷の巨人を蘇らせるのを、皇竜将軍リヒトは凝然と見下ろしていた。
氷の巨人のことなら、知っている。伝承としても、そして無影将軍の創造した駒としての役目も。 前無影将軍ベテルギウスの手によって生み出された、魔王の兵器。 そういう点では、氷の巨人とリヒトは兄弟と言えるかもしれない。 >【凍れる騎士――ブリザード=ナイトに告ぐ 我等と共に魔を滅ぼす矛とならん】 ―――オオオオォォォォォ……ンンンンン…… 男の詠唱に応じ、氷の巨人が永きに渡る眠りから目を醒ます。 その咆哮が極北の峡谷に響き渡る。 巨人――ブリザード=ナイトの力は強大無比。勇者側の持ち駒には、これほどの巨躯と膂力を持つ存在はふたつとあるまい。 これが真に勇者側に与すれば、魔王軍にとっては看過できない脅威となるはずだが、リヒトは動かない。 ただじっと、兜の面貌の奥から覗く双眸で一部始終を見届けるのみである。 >「我が名はベルク。北方の王を任されし者。魔王に似た黒き御仁よ。まずは御用向きをお尋ねしよう」 しばらく様子を見ていると、不意に声をかけられた。 リヒトは足場としていた場所からふわりと飛び降りると、全身鎧を身に着けているとは思えない軽やかさで着地する。 血色のマントを翻すと、ちゃり、と胸元のメダイが鎧に触れて澄んだ音を立てる。 視認できるほどに濃い漆黒の魔気を芬々と漂わせ、リヒトはベルクと対峙してなお沈黙していたが、 「――三つ問う」 すい、と流れるような仕草でベルクへと左手を突き出すと、親指と人差し指、中指を立てて告げた。 「ひとつ。なぜ我が王の奉戴を拒む?」 「ふたつ。“それ”は元々我が王の手駒。知った上で御せると思ったか?」 「みっつ。『平和』とは、一体なんだ?」 まるで、神話にある人面の獅子の謎かけのようにも聞こえるそれ。 それをベルクへ向けて言い放つと、リヒトは左手をマントの内側へと降ろした。 むろん、単なる問いかけではない。ベルクがこれから告げるであろう答えによっては、リヒトはこの場の全員を殺す気でいる。 殺戮は速やかに、一方的に、容赦なく遂行されるであろう。 裁定者として、リヒトには戦う両者を見定める必要がある。 どちらの言い分により正当性があるのか。どちらの方が、世界にとって有用な存在であるのか。 消えるべきは魔王か、それとも勇者か――。
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