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漂流列島
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第106章 [無断転載禁止]©2ch.net

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自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第106章 [無断転載禁止]©2ch.net
755 :漂流列島[]:2016/10/07(金) 16:03:45.58 ID:Zzk5YyfQ
 では、定期通りに投稿行いますね。
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756 :漂流列島[]:2016/10/07(金) 16:09:53.66 ID:Zzk5YyfQ
第一三話《日本の長き一日》――8

二〇三五年 五月二二日 午後三時〇九分 三重県伊勢市小俣町 明野駐屯地

 他の駐屯地とは違って航空科隊員の養成を行っている陸上自衛隊航空学校があって、また飛行場が完備されており、第五対戦車ヘリコプター隊、第三〇四対地無人航空機隊、第一〇飛行隊開発実験団などの航空部隊がそこに配備されている。
 明野駐屯地の格納庫と滑走路は喧騒に満ちあふれていた。

「急げ!! 怪物は待ってはくれんぞ!!」

 格納庫から外に出された計一六機のAH-64A改“アパッチ改”にパイロットと射手からなる二名の航空科隊員がコックピットに乗り込んでいく。
 高コストなどを理由としてAH-64D“アパッチ・ロングボウ”の調達が中止されたために見直され混迷していたAH-Xは、二〇二〇年代にモスボール保管されて倉庫で埃を被っていたAH-64Aを中継ぎ役として購入された。
 また、整備部品のライセンス生産と現在戦に適応するために機体改修が行われ不足分が補完された。
 最終的にはアパッチの最新型であるAH-64F“アパッチ・クロスボウ”が決定されたことで解決に至ることになる。
 数の若い対戦車ヘリコプター隊を順にAH-64A改と入れ替わるようにAH-64Fが配備されているが、予算の都合などで第五対戦車ヘリコプター隊は機種の改変が行われておらず、この中古リース機であるAH-64A改の運用が継続されていた。
 なお、余談であるがAH-64Dは改修を重ねて運用することが決定されており当分の間は一線に留まることは確定している。
 AH-Xが決定するまでに膨大な資金と資源、時間が掛かったものの、アメリカの力が頼れなくなり日本独自の防衛体制を整える上で必要な出費であったのは確かであった。
 話を元に戻そう。
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757 :漂流列島[]:2016/10/07(金) 16:12:03.86 ID:Zzk5YyfQ
 全機、離陸可能になった。
 AH-64A改の小翼(スタブ・ウィング)にある四つの兵装パイロンには対戦車ミサイルAGM-114“ヘルファイア”が一六発、機種下に備えてある一門のM二三〇 三〇ミリチェーンガンには三〇ミリ口径弾が最大で一二〇〇発が積みこまれていた。

「全員、ヘリの周囲から早く離れろ!!」

 整備班長の指示を受け、AH-64A改の周囲にいた整備員たちが離れ始めた。構造上の特徴でエンジン作動させたヘリは後部とローターが危険なためだ。誰だって火傷したり身体のどこかが泣き別れしたりすることは勘弁願いたいものである。
 全員が離れたのを確認すると、AH-64A改のメインローターが回転し始める。回転数が徐々に増していった。

「テイク・オフ!!」

 離陸する合図と共にAH-64A改が地から離れた。急速に上昇していく。
 ある程度の高度を取ると、一六機のAH-64A改は編隊を組んで京都がある方角に針路を向けて飛行していった。

「無事に帰ってこいよ……」

 第5対戦車ヘリコプター隊の勇姿を見つめながら整備班長は呟いた。
 関東に怪物の集団が上陸したことを受け、警戒しながらもこの駐屯地を含め近畿は平穏さながらであり、自衛隊員たちが通常の任務を遂行していたなかで、中部方面隊総監部から何も兆候もなく届いた航空部隊の全機出撃の指示――。
 この同時期に、テレビやネットなどのメディアで流れ始めたのは、兵庫県に巨大生物が上陸したという報道であった。
 皆、一体何が起きているのか理解できずに作業を機体の整備、対戦車ミサイルなどの武装の搭載などの作業を素早く実行した。
 内心で疑問を抱きながらも命令だと指令されたことを実行することに長けていた。武人思考なのか官僚思考なのか、誰にも分からなかった。
 確実に戦場であろうその場に赴く自衛官と、事態のなりゆきを後方で見守ることしかできない自衛官たちができるたった一つのことは全員無事に生きて帰ってきてまた平穏な日々が戻ることを祈るだけであった。
 祈ること位はタダなのだから……
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第106章 [無断転載禁止]©2ch.net
758 :漂流列島[]:2016/10/07(金) 16:15:59.92 ID:Zzk5YyfQ
 次に格納庫から現れたのは、AH-64A改などのアパッチファミリーを始めとする戦闘ヘリコプターと同じ迷彩色で塗装されたヘリコプターであった。
 数は一二機。
 大きさはさっき飛び立ったAH-64A改と比べるとほんの少し小柄だ。
 既に武器が搭載されており、左右にあるスタブ・ウィングにある四か所のパイロンには、ヘルファイア対戦車ミサイル計八発とGBU-44/2“バイパーストライク”誘導爆弾計四発が装備されている。
 AH-64A改と違いまた特徴的なのは、この機体にはパイロットや射手が搭乗するコックピットが存在しないことだ。
 これは無人機であること示していた。

「おっと、次はコイツらか……」
「“クナイ”ですね……」

 陸上自衛隊が保有する無人航空機(UAV)の一つであり、輸送、偵察、戦闘など様々な用途に対応できるように設計されている多用途UAVに属しているJMQ-2、愛称;クナイ――それがこの機体の名称であった。
 RQ-4“グローバルホーク”から始まった自衛隊のUAV運用は、長年にかけて培ってきた自衛隊側と民間側の技術を投入したことが功を奏して、国土防衛の重要な一役を担うまでに成長していた。
 陸自ではティルトローター型の無人戦闘航空機(UCAV)や、空自では比較的最近実用化されたF-3戦闘爆撃機型との共同運用が予定されているステルスUCAVが開発中であった。
 少子高齢化が進んだことで若い人材が希少となっている現状と、中国との軍拡競争によって軽く二〇兆は越えて三〇兆は目前という規模まで増加した防衛費はとても厳しい財政状況でこれ以上の増加は見込めない。
 そのなかで無人機は有人機と比べて人材資源の消耗とコストを抑えること可能だ、UAV……特にUCAVはオスプレイの次の標的として根拠のない非難に晒されており、疑念が未だ根強く残っている。
 だが、極度に厳しくなっていた前世界での日本の安全保障環境のなかでは積極的に活用するのは仕方のないことであった。
 空を切る回転音が、このUCAVの周囲にいる自衛官たちの耳朶に届く。
 JMQ-2のメインローターが回転し始めていた。瞬く間にローターが見えなくなって円状の形となった。揚力を得た機体は浮かびみるみるうちに上昇していった。
 この駐屯地内にいる操縦員たちの遠隔操作を受けて素早く編隊を組み、AH-64A改が飛行した方角に向けて移動していった。
 それで駐屯地に配備されている航空機の全てが戦場に向かうことになった。まさに全力出撃であった。この規模が持つ火力は連隊規模の地上部隊を壊滅に追い込める程で相当なものであった。
 その火力をぶつけなければならない敵はどんな生物なのか、想像がつかなかった。

「パイロットは乗っていないとは言え、一機ごとに億単位の金が掛かっているんだ。全機無事に帰って欲しいものだ……」

 AH-64A改の離陸時とは違い、心理的な不安は軽かったものの、決して安くはない札束の塊が無事に帰ってくることを整備班長は再び祈った。
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759 :漂流列島[]:2016/10/07(金) 16:17:26.12 ID:Zzk5YyfQ
二〇三五年 五月二二日 午後三時一七分 兵庫県伊丹市 伊丹駐屯地 中部方面総監部

 中部方面隊隷下の部隊を総轄する中部方面総監部が置かれている伊丹駐屯地は混沌の坩堝にであった。
 施設内にある指令室は報告と情報が交差し、部隊を動かす権限を持つ人々を惑わせていた。

「ふむ……まいったな」

 中部方面総監の田中和樹(たなか・かずき)陸将は渋い顔をして額と目元に新たな皺を刻み付けていた。
 内心では、まさか自分の任期中にこんな難事に遭遇することになるとはと不謹慎であるが運の悪さに頭を抱えていた。

「よくもまぁ、あの巨体で……と思える位の速さですね」
「全くだ……今のところ攻撃を仕掛けてはこなくても、家屋倒壊などのかなりの被害が出ているからな。歩く災厄だ」

 幕僚長兼伊丹駐屯地司令の職に就いている堀内大輔(ほりうち・だいすけ)陸将補の半ば呆れた声に、同感と言わんばかりに田中は答える。
 二人の目の前にある二次元式の戦術情報表示端末に投影されている、推定身長一二〇メートルの大きさを誇るインスマス面をした半漁人の姿。
 真に信じられないことだが、これは映画ではなく、現場に派遣された偵察ヘリOH-1改“ニンジャ”と多目的ヘリUH-72“ラコタ”が捉えた情報を、スタブ・ウィングに搭載されているデータリンクポットによって地上指揮所である伊丹駐屯地に送信された――現実のものであった。

「準備が完了しました。ただ今より統合した視覚情報を3Dディスプレイに表示します」
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760 :漂流列島[]:2016/10/07(金) 16:18:39.31 ID:Zzk5YyfQ
 情報幕僚が報告を行うと同時に、幕僚たちの傍にある机の真ん中に置かれていた機器が淡い光を放ち、瞬く間に立体的な姿となった。
 これは民生品を多用した自衛隊用の3Dディスプレイだ。最新型で、OH-1改とUH-72また空自のRF-15JとグローバルホークUが捉えている視覚情報を共有し誤差を修正されて表示されたのだ。
 表示された光景は、兵庫県と京都の県境の近くにある朝来市の市街の姿、そして――怪物、怪獣いや巨大生物は地を這って尋常ではない速度で走行していた。
 おそらく速度は自動車並みに出ているのではないか、そんなことを田中が思っていたら巨大生物の推定速度が3Dディスプレイに表示された。時速八〇キロ!! 数値にすると信じられなかった。

「あんな巨体で出せられるとは思えない速度だ……実に気持ち悪い動き方だ」
「報告によると、難民たちがこの巨大生物のことをダゴンと呼んで畏れ崇めていたようだ。クトゥルフ神話と何か関連性があるのか?」
「関東で確認された敵性生物群の一つ……インスマスと似ていますね。何かの関連性が存在するのですかね?」
「今のところは断定できないな。情報が少なすぎる」

 堀内に問いに、田中がそう切って捨てると、巨大生物いやダゴンは眼球を不規則に動かし始める。
 3Dディスプレイでは何も感じることはなかったが、二次元式の戦術表示端末からのその姿は見る者に嫌悪感を与える。大きさと鮮明の違いなのだろうか?
 運悪く、二次元式を見てしまった幕僚とオペレーターたちは今にも盛大に吐きそうな顔になった。

「魚の目はこんなに気持ち悪いものだとは思いもしなかったな……」

 苦い顔をした田中は呟く。できることなら目を背けたかったものの、指揮官としての意地が許さなかった。部下が見ている手前でこんな醜態を晒す訳にはいかなかった。
 これでしばらくは魚を真っ正面から眺めることはできなくなったと彼は思う。
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761 :漂流列島[]:2016/10/07(金) 16:21:17.75 ID:Zzk5YyfQ
「総監、統合幕僚監部からの通信です」

 オペレーターの報告に、田中は頷いて言う。

「分かった、繋げてくれ」

 田中は近くにある電話の受話器を取る。
 短い会話であったが、会話を重ねるごとに田中の顔をみるみるうちに青く渋くなっていった。

「まいったな、本当に……」
「どうかなさいましたか?」
「陸上幕僚長が精神的疲労で錯乱して公務に耐えられないと判断されて解任されて病院に担ぎ込まれたようだ、今は副長が混乱を収めているようだ。
 それと、統合幕僚監部からの指示で、関東の一件で近畿に構っている余裕は今のところはないので、全て統合任務部隊(俺たち)に任せるということだ……」
「……」

 幕僚たちを含め指揮所により一層濃い緊迫した空気が漂う。
 総理大臣はすぐさま迎撃と排除を指示、それを受け防衛大臣が統合任務部隊(JTF)の編成を指示、陸自の中部方面隊隷下の各部隊と空自の第六航空団と海自の第五護衛隊群などの部隊に編入された。
 中部方面総監の指揮下にあることから『対巨大生物統合任務部隊―中部』と名付けられていた。
 余談であるが、硫黄島と関東を襲撃した生物群の対処のため、陸自の東部方面隊と空自の第三、七航空団と海自の第一護衛隊群が編入されて東部方面総監の指揮下に置かれている統合任務部隊、通称『対敵性生物群統合任務部隊―関東』が編成されている。
 過去に、二個の統合任務部隊が編成されたことは例になく、規模は二つとも合わせても東日本大震災で投入された規模とは及ばなかったが、後に陸海空の他の部隊も投入されることになってしのぐ規模となる……。

「第六航空団、三二四飛行隊が現地に到着しました!!」

 3Dディスプレイには、三二四飛行隊所属のUCVA――MQ-9“リーパー”一二機の姿が視覚と文字などで表示された。
 搭載している武器を確認するために文字を読み取ってみると、全機にバイパーストライク計四発、ヘルファイア計八発、“APKWS” 七〇ミリレーザー誘導式ロケット弾の発射ポットの計二つ――などが翼下に搭載されていた。
 ダゴンの頭上に、パイロットが搭乗していないために人の血が通っていない無人機らが旋回し、これらによる軌跡が円形を作りまるで天子の輪っかとなっていた。
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762 :漂流列島[]:2016/10/07(金) 16:24:43.23 ID:Zzk5YyfQ
「偵察機は照射の準備はできているのか?」
「はい、準備はできております。
 総監が指示を行えば、標的に向けてレーザーを照射します……」

 田中は念のため問いかける。
 標的が巨大生物、ダゴンであることは言わずと知れたことである。
 ヘルファイアは撃ちっ放し(ファイア・アンド・フォーゲット)能力を持つが、バイパーストライクとAPKWS二つの空対地兵器は、レーザーという指向性と収束性が優れている光波の誘導がなければただの無誘導の爆弾となってしまうのだ。
 なので、レーザー照射機を搭載しているOH-1改が攻撃する際に誘導するために照射することになっている。

「では、よ……」

 指示を下そうとした途端、極度の緊張が田中に襲いかかる。

「……」

 田中のひと指示があれば、リーパーはハイエナのように襲いかかるだろう。全責任が彼の両肩にかかり指示を下すのを躊躇させた。
 指揮下にある部隊と民間に大きな損害が生じれば確実に自分に責任が掛かるのは確実だったからだ。
 まあ上陸を許した時点で責任は追及されるのは間違いないことだが、今行う自分の判断によってさらに自分の自衛官歴に傷つくかもしれない――その事実が彼の心のなかに重しがかかり躊躇させる要因となっていた。

「総監!?」

 強い口調で堀内が問いかけてくる。また彼は鋭い視線で田中を見る。
 それで決心が着いた田中は指示を下す。もはやこうするしかない、この手段しか残されていない、選択肢のないたった一つの選択を行うのはかなり辛いものなのか!! と彼は思わずにはいられない。

「ふむ、手筈通りに足止めをしろ、攻撃を許可する」

 ダゴンの進路予想先の民間人の非難を時間稼ぎするための足止めとダゴンの実力を図るための情報収集を目的とした威力偵察――二つの目的が含まれているUCVAの対地攻撃が実行されようとしていた。
 これは、自衛隊初めての“実戦”での対地攻撃であり、市街地での“爆撃”であった。

(これが実戦というものか……)

 日本本土が戦場になるのを想定した軍事戦略、いわゆる専守防衛がどれだけ戦略の観点からして机上の空論であることを、田中は痛感した。また、その無力さを教えたのは中国などの仮想敵国ではなく一匹の巨大生物と無数の敵性生物だということに皮肉を感じていた。
 田中の口元が歪む。乾いた笑いしか出てこなかった。
 目の前にある3Dディスプレイは特に異常はなくダゴンに蹂躙されている現場の状況、リーパーがダゴンに襲いかかっている姿を映し出していた。
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第106章 [無断転載禁止]©2ch.net
763 :漂流列島[]:2016/10/07(金) 16:28:30.09 ID:Zzk5YyfQ
 投稿は以上です。
 本当に、AH-Xはどうなるのでしょうか?
 あと、3Dディスプレイではなく立体映像表示ディスプレイの方が分かりやすかったかなと今さらながら思っています。
 近未来感を出せと要望され、近未来と思い浮かんだのが立体映像でした……。
 
 では、返信は後程に……。


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