- ロスト・スペラー 12 [転載禁止]©2ch.net
166 :創る名無しに見る名無し[sage]:2015/11/04(水) 19:39:41.55 ID:pALnHJsA - ラビゾーとバーティフューラーは、お互いに無様に濡れた姿を見て、苦笑いした。
「酷い有様。 でも、何時もよりは少し男前に見えるよ」 バーティフューラーが揶揄(からか)うと、ラビゾーは顔を赤くして俯く。 彼女の服は濡れて透け、鮮やかな赤の下着と、美しい体の線を浮き上がらせていた。 乱投祭に誘ったのはバーティフューラーの方なのだから、当然こうなる事は予想出来るので、 見られても良い物を着用している筈。 そう解っていても、ラビゾーは直視を躊躇う。 そこへ、背後から声を掛けて来る者があった。 「ラヴィゾール!」 2人が目を向けると、グラマラスな黒髪の美女を連れた、同じく黒髪の中年男性が歩み寄って来る。 美女の方は全身を色水で濡らしているが、男性は全く濡れても汚れてもいない。 ラビゾーは名前を呼ばれた物の、男性が誰だか判らず、不審の目で彼を睨んだ。 乱投祭の直後で服が綺麗な儘と言う不自然さが、怪しさと不気味さを増している。 祭りの最後に放水する、都市警察や消防隊でさえ、只では済まないのが乱投祭だ。 中年の男性は困った顔で、肩を竦める。 「僕が誰だか判らないのかい? 幾ら久し振りだからって、忘れるなんて……。 あ、バーティフューラーのカローディアも久し振り。 君は僕を覚えてくれてるかな?」 「ええ、久し振り」 一方で、バーティフューラーは彼の正体に気付いていた。 一体誰なのかと、ラビゾーがバーティフューラーに疑問の眼差しを向けると、彼女は小声で言った。 「あの魔楽器演奏家の……」 「もしかして、レノックさん!?」 ラビゾーは目を剥いて、中年の男性に向き直る。
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167 :創る名無しに見る名無し[sage]:2015/11/04(水) 19:44:12.86 ID:pALnHJsA - 彼は意地悪く笑って応えた。
「漸く気付いてくれたかい? 見た目に惑わされては行けないよ」 「確かに、俤はありますけど……」 レノック・ダッバーディーは魔楽器演奏家である。 普段は子供の姿をしており、それしか知らなかったラビゾーは吃驚して、暫し彼を凝視した。 端整な顔立ち、嫌らしい笑みを浮かべる口元、半開きの目、ウェーブの掛かった髪、無精髭。 斜に構えた皮肉屋を絵にした様な風貌に、ラビゾーは独り小さく笑った。 子供の内は可愛らしいが、あの性格の儘で大人になると、この様な顔付きになるのだなと、 妙に納得出来て、それが可笑しかったのだ。 「何だい、行き成り笑い出して……。 失礼じゃないか」 唇を尖らせるレノックを、ラビゾーは宥める。 「済みません、何でも無いんです。 所で、隣の方は?」 ラビゾーが話を変えると、レノックは未だ物言いた気にしながらも、拘らずに、女性の肩を抱いて、 少し前に移動させた。 「今日偶々知り合った娘(こ)。 可愛いだろう?」 ラビゾーは旧い魔法使いのレノックも女性に興味を持つのだなと、意外に思っていた。
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168 :創る名無しに見る名無し[sage]:2015/11/04(水) 19:45:37.13 ID:pALnHJsA - 旧い魔法使いの多くは、既に人間を辞めているか、人外の存在で、そうした者達には、
生理的な欲求は殆ど無い物と、ラビゾーは理解していた。 或いは、レノックが女性を連れているのは、性欲とは全く無関係なのかも知れないが、 彼が連れている女性の容姿を見ていると、そうとは思えなかった。 背丈は8分5身、肌はミルクチェリー、瞳は濃い緑、大人しそうな顔で、黒髪を真っ直ぐ伸ばし…… 何より、胸が大きい。 この「8分5身」が絶妙な数値なのだ。 唯一大陸で身長を計る時、「1身(いっしん)」は男性なら平均以上、女性ならモデル並みの長身。 「9分5身(くぶごしん)」は「0.95身」、男性なら最低でも欲しい身長で、女性にしては「高い」。 ラビゾーとバーティフューラーは、共に9分5身に近い。 「9分身(くぶしん)」は「0.9身」、これより低い男性は「小さい」、女性なら平均的な身長。 「8分5身(はちぶごしん)」は「0.85身」、唯一大陸に於いて最も女性が「可愛い」とされる高さだ (女性週刊誌ティナリア調べ)。 これに豊満な肉体が加わる所を想像して欲しい。 程好く男性の庇護欲を掻き立てる上に、性的な魅力を備えている。 背の低さで一層豊満な体が映える、相乗効果。 所謂「buxom and petite」。 そんな女性を隣に置いて、性的な事に興味が無いとは考え難い。
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