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All Star Battle -ROUND 2- ◆LvAk1Ki9I.
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル 3rd 第十部 [転載禁止]©2ch.net

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ジョジョの奇妙なバトルロワイアル 3rd 第十部 [転載禁止]©2ch.net
142 :All Star Battle -ROUND 2- ◆LvAk1Ki9I. [sage]:2015/04/12(日) 19:37:09.07 ID:QNpQ5rr1
「きさまが信頼していた仲間は誰一人、きさまの戦いの役には立たなかった……
 そして、きさま自身もこのDIOには及ばない……
 理解したか? 所詮きさまらの力など全て――――――」

「「「「「じょ……」」」」」



                            「無 駄 ァ ! !」


                      「「「「「承太郎(さん)ッ!!!!!」」」」」





                           周囲から叫び声が轟く中………



                     『世界』の腕は、承太郎の胸を正確に貫いていた―――



「空条承太郎、これできさまは死んだ………………
 さあ……きさまのその無残な姿を、他のジョースター共に見せつけてやろうではないか………」
「そん……な………」
「あ……あ………」
「………くッ……」

ジョナサンは目を見開き、仗助は呆然と眺め、ジョルノは目は逸らさないものの歯を食いしばっていた。
ジョセフは先程の叫びからして意識はあるようだったが……それ以上の言葉は無く………
いくら凝視しようとも、彼らの目に映る現実は変わらない。

「D……I………O……………」
「ふむ、やはりまだ息はあったか……どんな気分だ? 承太郎……」

体を貫かれてはいたが、承太郎はまだ生きていた……!
質問には答えず、ゆっくりと腕を上げる……眠っちまいそうなほどのろい動きで、震えながら振りかぶる。

「最後のあがきというやつか……いいだろう、よく狙って当ててみろ……きさまの好きなところをな………」

もはや時を止める必要もないとDIOは判断する。
胸板をブチ抜かれた状態では、本来の5割か3割か、はたまた1割以下か……その程度の一撃しか出せるはずがないのだ。
故に、警戒すべきは………

(この状況で逆転が可能だとしたら、狙うべきなのはただ一点………『首輪』だ)

それ以外なら頭だろうが心臓だろうが致命傷にはなりえない。
DIOは前方へと進みだした承太郎の拳の前に自身の右手をかざす。
正直なところ、承太郎のパンチはDIOの予想よりは速かった。
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143 :All Star Battle -ROUND 2- ◆LvAk1Ki9I. [sage]:2015/04/12(日) 19:58:50.99 ID:QNpQ5rr1
 

                        ボ ッ ゴ オ オ ッ !




                         ―――否、『速すぎた』。




                 軽く受け止めようとしたDIOの手が、完全に粉砕されるほどに―――!


「なにいいいいいィィィィィ―――――ッ!!? バカな……ッ! どこにこんな力が残って……ッ!!
 グッ……時よ止まれッ!」

慌てて時を止め、射程外まで下がる。
承太郎の追撃こそなかったものの、ここにきてDIOに初めて動揺が生まれた…!

(どうなっている……? ジョルノと仗助は真っ先に腕を落としたし、F・Fは沸騰させた……
 治療などできんし、支給品も妙なものなど存在しないはず……ム!?)

再び時が動き出したとき……DIOは物音に気づいた。
コツ、コツと誰かの足音がDIOへ向かって近づいてくる。
DIOの目は闇の中でもその姿を捉えることができたが、それは承太郎ではないどころか………全く覚えがない相手。
だが、数多くの見知らぬ他者を懐柔してきたDIOに恐れる者などいない……!

「おや、また客か………覚えのない顔だが、きみの名前を教えてくれるかな?」
「………おまえこそ、誰だ」

聴く者の心がやすらぐ、危険な甘さを持つ声で問いかけるが……興味すら示そうとしない相手の歩みは止まらず、妙な沈黙が訪れる。
これしきで気分を害すほどではなく、DIOは再び問いかけようとするが……

「質問を質問で返すんじゃあない……何がどうなって迷い込んだのかは知らんが―――」
「聞こえなかったのか? おまえは誰だと聞いている」

……今度は言葉を途中で遮られる。
またしても沈黙が訪れ、やはり相手の足は止まらない。
ややあって相手はDIOのすぐ真正面まで進んできたかと思うと、顔が付くのではないかというほどの近距離で、言った。

「これ以上は聞かないぞ……
 もう物言えぬ彼女に許可なく触れ、体を弄び、挙句の果てには盾にして、彼女の父親である承太郎さんを殺そうとしている……



          そんな、『徐倫を悲しませる』ようなことを笑いながらやってるおまえは、何様かと聞いているんだ―――」


                 殺人鬼にして、愛に生きる男―――ナルシソ・アナスイの登場だった………!
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144 :All Star Battle -ROUND 2- ◆LvAk1Ki9I. [sage]:2015/04/12(日) 20:18:55.14 ID:QNpQ5rr1
怒りは感じられず、顔全体から感情がすっぽり抜け落ちてしまったかのような表情……
だというのに、その声には恐ろしいほど迫力があった……!
周囲の者は即座に理解する―――これは怒りが限界を振り切れたことにより、逆に冷静になった顔だと。

―――アナスイはF・Fが徐倫の肉体を奪ったなんてことは知らず……
納骨堂に到着すると同時に目に飛び込んできた光景に一瞬頭が真っ白になったため、DIOやジョルノが言ったことも碌に耳に入っていない。
彼にとっての真実は、彼自身が言ったとおりの状況だけ―――

「………ふむ」

そんな彼にDIOもなんと言い返すべきか迷ったのか……その一瞬の沈黙の間にアナスイは行動していた。
予備動作なしでスタンドを出し、真正面から相手へと殴りかかるッ!!

「『ダイバー・ダウン』ッ!!」
「………! ほほお〜〜〜っ、なかなかいい一撃だが……無駄無駄無駄ァッ!!」
「……ッ!!」

だが……敵はDIO! 不意を突いた程度で何とかできるほど甘い相手ではないッ!
逆に反撃を食らったアナスイは衝撃で地面を滑り……承太郎のすぐ前まで後退させられた。
なおも立ち上がりDIOの元へ進まんとする彼を承太郎は静止しようとするのだが……

「……アナスイ、奴の『世界』は俺と同じタイプのスタンド……俺にすら負けたおまえでは勝てない、下がっていろ」
「悪いが、あんたの言うことは聞けない……『あんたにオレのことは理解できない』……
 どうしても止めたければ、さっきみたいにオレをブチのめすんだな……」

返ってきたのはかつて承太郎自身がアナスイに言った言葉。
感情を押し付けるのは勝手だが、それで言うことを聞かせられると思ったら大間違いだった。

「冷静になれ……おまえは状況が見えていない」
「あんたは、オレのこの顔が怒りで我を忘れてるように見えるのか? オレは『正常』だよ……」

さらりと返される。
本人が言っている通り、彼の精神は別段異常をきたしているわけではない。
だがそれは―――

「オレは極めて正常なことに……目の前のこいつが二度と徐倫にくっつくことができないよう、バラバラに『分解』する……それだけだ」

―――一般人のそれとは大きくかけ離れている、殺人鬼アナスイの尺度における正常という意味で……!

あくまでDIOへと突き進むアナスイ。
それを見ていたDIOはというと、半ば呆れに近い感情を抱いていた。
ハッキリ言ってこの男は青い、青すぎる。
ジョナサンのように怒りを表に出すタイプとは違うが、たかが女一人のために勝算のない戦いへ身を投じるその姿は滑稽以外の何物でもなかった。

(だが、どの道殺す必要はある……先程承太郎を始末できなかったのはおそらく、目の前の男が『何かした』ためだろうからな……
 ヤツの手が一部欠損し、血が吹き出ていることからしてスタンドで承太郎へのダメージを防御しつつ肩代わりした…そんなところだろう)

「フン、マヌケが……いいだろう、特別に見せてやる……井の中の蛙よ、『世界』を知るがいい………」

チラリと承太郎の方を見やった後、DIOはアナスイへと視線を戻す。
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145 :All Star Battle -ROUND 2- ◆LvAk1Ki9I. [sage]:2015/04/12(日) 20:41:44.75 ID:QNpQ5rr1
目の前に別の敵がいようが、最優先はあくまで承太郎である。
ジョースターとの戦いの最中邪魔に入られ、気分を害したDIOにとってアナスイは単なる路傍の石程度の存在だった。
詳しいスタンド能力はわからないが承太郎が制止した以上、時止めに対抗できる能力であるはずもない。

                           「『世界』ッ!! 時よ止まれ!」

ためらいなく時を止め……DIOはアナスイへと走る。
承太郎の時間停止が何秒程度かは判明した。
一応今の位置なら射程距離外ではあるが、万が一に備え『世界』は待機させておく。
完全に止まっているアナスイには何の策も労す必要はないだろう。

「ジョースター全員と話をする前に誰か一人でも殺してしまうと完全に聞く耳を持たれなくなるため生かしておいたが……
 おまえには手加減する理由などない………」

射程距離に入ると同時に下段から左手を振りかざし、相手の胸板へと一撃を放つ!
アナスイは動かない、動けるはずがない。
彼の胸板はあまりにもあっさりと貫かれ、絶命する―――


                       ―――そう思った瞬間、足元から何かが『襲ってきた』!

「ヌウッ!!?」

DIOは驚愕する……時は確かに止まっているのに。
承太郎のほうを見るも、彼は全く動いていない。
だというのに踏み込んだ自分の右足から衝撃が伝わり、歪んでいくッ!
このままでは胴体まで達すると判断し、DIOは素早く行動を変えた。

「UGUUッ……ま、まずい! 『世界ッ』! わたしの右足を切り落とせッ!!」

背に腹は代えられない。
自分の右足をスタンドで切断するッ!
上半身は止まらなかったが……足を切り落としたことによりバランスが崩れ、拳は狙った胸よりも下の腹部に突き刺さったッ!!

「これで済むと思うな……このままッ!! 腕を! こいつの! 腹の中に…………つっこんで! 殴りぬけるッ!!」

常人ならば痛みでそのまま倒れこむところだったが、DIOは違った。
足がなかろうと構わず……拳をそのまま前に突き出すッ!


                           ブ  ッ  ギ  ャ  ア  !


それによりアナスイの腹は………なすすべなくブチ抜かれたッ!!
さすがにバランスを崩し、残り時間は体勢を立て直して距離をとるのに使ってしまったが……十分に致命傷となり得る傷は与えた。

「限界だ……時は動き出す………」

動き出したアナスイは後ろに吹っ飛ばされる。
だが、その最中にDIOの切断されて吹っ飛ぶ足を見て……なんと、笑った。
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146 :All Star Battle -ROUND 2- ◆LvAk1Ki9I. [sage]:2015/04/12(日) 20:59:45.97 ID:QNpQ5rr1
「時が止まった世界で動けないなら……おまえに動かしてもらうことにしたよ………
 おまえが踏むだろう床の石にあらかじめ『ダイバー・ダウン』を潜行させておいた………
 潜行させたパワーとスピードは『止まった』世界の中おまえが触れたことで『動き出し』……解き放たれるッ!!」

「きさま……このDIOの世界に小賢しく忍び込んでくるとは………
 よくもまあこの短時間で思いついたものだが、哀れなものよ……
 なまじそんな小細工さえしなければ楽に死なせてやったというのに………」

(短時間で思いついた……? そんなはずがないだろう。
 アレは、承太郎さんにやるつもりだった戦法だ……妙なところで役に立ったもの……だが……な………)

アナスイは承太郎にボコられた後、彼を止めるために時止めの攻略法を考え続けていた。
その結果思いついた苦肉の策が先程の潜行を使った戦法である。
時を止めた後相手が近づいてくるとは限らない、来たとしても潜行させた位置を都合よく踏むとは限らないなど、策と言うには穴だらけ。
だが時を止めるという反則的な強さを持つ能力に対して、アナスイは他に方法を思いつかなかったのだ……文字通り『どうしようもない』のだから。
結果、DIOの油断もあったが策は見事に成功し……相手こそ違えど、時止めに対して一度きりとはいえ攻撃を食らわせることが出来たのだった……!

そして、吹っ飛ばされたアナスイと入れ替わるかのように飛び込む影がひとつ………空条承太郎ッ!
彼は時間停止が解除されるや否や、全速でDIOへと突っ込んでいたッ!!
そんな二人が交差する刹那……会話が交わされた。

「本当なら……全身…分解……してやりたかったが……承太郎……さん…後は……任せ…まし……た………」
「……ひとつだけ聞かせろ。何故、こんな無茶をした」
「徐倫に……自分が盾にされたせいで父親が傷つけられた、なんてことはさせたくなかった……
 あんたはさっき……あいつが徐倫を弄ぶのを見て……ちゃんと………怒ることができていた……それだけで…いい……
 それに…どうやらオレがいなくなっても……あんたを…止める人は……いるみたい…だ……から…な」
「………やれやれ、だ」

ジョナサンたちが集まるほうをチラリと見て返された答えに承太郎は嘆息する。
どこまでいっても、どれだけ打ちのめされようともアナスイは揺るがない。
彼はジョースターの血筋という意味では確かに無関係……だが彼の行動理由――徐倫のためという意志は、決して彼らの因縁に劣るものではなかったッ!
それは彼女の敵であるDIOに敵意を向けることに繋がり………結果的に周りのジョースター達に利をもたらしたッ!!

「承太郎……きさまこれを読んでいたというのかッ!?」
「違うな……俺はアナスイが一方的にやられようが構わず、隙ができたてめーをぶちのめすつもりだっただけだ………」

承太郎は再びDIOに肉薄し、右腕でストレートを繰り出す!
片足のないDIOは上体を後ろに反らすことで攻撃を回避―――

「流星刺突(スターフィンガー)!!」
「ぬうッ!?」

―――しきれないッ!
伸びた指先があわや首輪を直撃しそうになり、DIOは腕でガードしてしまうッ!
そこへ勢いをつけた左拳が迫り―――

「オラア―――ッ!!」
「UGUOOッ!!」

『星の白金』の拳が『世界』の右腕を粉砕するッ!!
この瞬間ようやく、戦闘開始から初めてまともにDIOへ攻撃を食らわせることに成功したのだ!
その光景を周りの者たちもまた、しっかりとその目で見ていた!
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148 :All Star Battle -ROUND 2- ◆LvAk1Ki9I. [sage]:2015/04/12(日) 21:19:43.99 ID:QNpQ5rr1
 
「じょ、承太郎さん……」

―――見えていた。

「な、なんで……」

―――『見えてしまって』いた。



                           「『時を止めてない』んですかァ―――!!?」



止めて攻撃したが、DIOに相殺されただけ……?
違う、DIOは時止めを発動した直後だった。

まだ温存している……?
まさか、今のところ他に敵の姿は見えないし、承太郎ほどの男がこれ以上ない好機を理解できないはずがない。

では何故……?
仗助が目を白黒させる中、DIOが口を開いた……

「……汗もかいてないし、呼吸も乱れていないな、承太郎……
 正直言うとこのDIOですら、先程の一瞬は肝を冷やしたというのに……
 そしてこれはひょっとしたらというよりは、確信に近い推測だが………」


                          「おまえは今、『時を止められない』のではないか?」

                                 「………………」


―――承太郎は何も答えない。
何故相手の質問に対して否定しないのかと周りの者は不安を覚え……特に、仗助は戦慄する―――!
彼は『星の白金』の能力を『無敵』と言うほどである。
それと同等以上の能力を持つDIOが敵であるこの状況で、もし相手の言葉が正しければ……
いくら承太郎が強かろうとほとんど負けは確定なのだから。

(け……けど、さっきまで承太郎さんは間違いなく時止めが出来てたはず……だよな?)

自分ではイマイチ時が止まったことはわからなくとも、状況を踏まえれば徐倫の肉体で挑発された直後の時点から時止めが使えなかったとは思えない。
自らの希望を込め、彼は承太郎の背中へと言葉を飛ばす。

「じょ、冗談っスよね……? じゃなきゃあ、おれなんかのアタマじゃあ到底思いつかねー高度な作戦のうちってやつですよねッ!!?
 ………返事してくださいよぉ―――――ッ!!!」

彼の必死の問いかけにも承太郎は答えを返さず、ただ目の前のDIOを睨みつけるのみ。
時が止まらないのが自分でも信じられないのか、動いてDIOへ攻撃を繰り出そうとすらしない。
それを見て余裕を感じ取ったのか、DIOはこの状況で再び腕を組み……先の続きを語り始めた。
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151 :All Star Battle -ROUND 2- ◆LvAk1Ki9I. [sage]:2015/04/12(日) 21:38:48.71 ID:QNpQ5rr1
「スタンド能力というものは使い手の『精神』に大きく左右される……
 善であれ悪であれ、精神力―――自我が強い者ほどスタンドパワーは強くなるのはおまえも知っているだろう……?
 わたしとて最初から自在に時を止められたわけではない……最初はまばたきほどの一瞬、この首のキズがなじんでくるごとに2秒、3秒と長くなった……
 能力を『認識』し、できて当然と思う精神力があったからこそ今このように時を止めることができる………」

―――周りの者も動けない。
下手に飛び出せないという思いと、彼ら自身DIOの考えを聞きたいという思いが半々で、動こうにも動けなかった。

「承太郎……おまえの話に移るが、いまのおまえの精神はどのような状態になっているのだろうな……?
 この殺し合いの開始から順を追って考えても、おまえは碌な目に遭っていないそうじゃあないか……
 母親を、娘を、仲間を殺され…家を失い…見つけた娘は仇に乗っ取られた上ずうずうしくも仲間入りし…味方は当てにならず…信頼していた友にも裏切られたというわけだ……
 正直、このDIOには半分も理解できん感情だが……おまえは、心のどこかでこう思ってしまったのではないか……?」


                  「―――こんな『現実(いま)』には、1秒たりとも留まっていたくない―――と」


その言葉にジョナサンも、仗助も、ジョルノも、離れた何処かにてジョセフも……全員が息を呑む。
無表情で、淡々と自らのやるべきことへ向けて進んでいるように見えた承太郎が、そこまで追い詰められていたのか……と。
無理もない……それほどまでに承太郎は周りから『信頼』されていたのだから。
故にほとんどの者が『彼なら心配ない』というイメージを持っており……それが逆に足枷となったのだ―――!

「承太郎………」「承太郎ッ!」「承太郎さんッ!」

悲痛な叫びと化した仲間たちの声が承太郎に投げかけられる。
それでも、彼は何も言わない。
もし……彼と長く行動を共にしていた川尻しのぶであったなら。
すなわち彼の近くで、ここ半日以上における彼の行動や感情の変化を見る機会が多かった者さえいれば、こんな事態になる前に分かったかもしれない。

―――仲間と合流してからの承太郎は、自分の感情をかなり無理矢理押さえ込んでいた……ということに。

「つまらん……家族だの仲間だの友情だの、そのようなものに縋るから肝心なときに裏切られるのだ……
 このDIOを見るがいい……必要ないものは全て切り捨て、配下は服従、絶対なのは己のみである……
 裏切られる信頼など元より存在しないのだから、そのような無様な姿を見せる可能性などゼロということ………
 これがおまえたち人間と、わたしの『差』だ………」

そして、そんな彼らにDIOは嘲笑を浴びせ……同時に、茶番はもう飽きたとばかりに腕組みを解く。
気づいたジョナサンたちはなんとか対処しようとするも、既にそれは始まっていた。


                            「『世界』ッ!!」


時が止まる……
もはやこの場において、DIOだけの時間が訪れる……!

「さて……随分と無駄話をしてしまったが、結局のところ実際に確かめてみなければわからん……
 承太郎……できるのならばせいぜい何とかして見せるがいい……
 これをかわせるかどうかが、おまえの……おまえたち全員の命運を分けるということだ………」
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152 :All Star Battle -ROUND 2- ◆LvAk1Ki9I. [sage]:2015/04/12(日) 21:52:20.29 ID:QNpQ5rr1
戦いの最中に割れた床石の欠片を拾い上げ、承太郎目掛けて投擲しようとする。
欠片といってもその大きさは拳ほど……吸血鬼の腕力で投げられた場合、まともに食らえば骨が砕けるだけでは済まない質量……!
ところが、いざ腕を振りかぶったところでDIOは『それ』に気づいた。

ズルリ………

「……む?」

妙な音が聞こえる。
自分以外に動くものがないはずの、時が止まっている世界でどこからか音が聞こえてくるというのだ。
先程痛い目を見たこともあり、DIOは一旦攻撃を中止し様子を伺う………!

ズルウウウウ………

「承太郎……今度は何をしたというのだ……?」

承太郎は動かない。
時間停止を認識できていないのか、認識できても動けないのか。
………それとも、動けないふりをしているのか。

グオオオオオ………

「それとも、アナスイとかいう男か……?」

ちらりとそちらを見やるが、彼もまた吹っ飛ばされて地面に倒れた姿勢のままである。
第一今度は一歩も足を動かしてはいないし、時を止めてから唯一手に取った石も特に異常はない。

ギャルギャルギャル………

「周りのジョースター共でもなさそうだ……
 ―――考え方を変えるとしよう……この『音』はどこから聞こえてくる?」

最初に聞こえたのはどのあたりだったか正確には覚えていないが、床側だった気がする。
そしてこころなしか、聞こえる音はだんだん大きくなっている。
となれば今現在の―――時が止まっているのにこの表現は妙だが―――発生源は自分のすぐ近く……下を見たDIOはすぐにそれを見つけた………

ギャアアアア!

「……これはッ!?」


―――自分の体を這い上がってくる『穴』を。


「動いている……まさか『生きている』とでもいうのかッ!?」

何故止まった時の中で動けるのか―――時を止めた時点で既に自分と一体化していたため、体が動く以上は共に動けるとでもいうのだろうか?
正体はわからないが、少なくとも自分に益をもたらす存在では無さそうである……
反射的にDIOは穴をひっぺがすべく、無事なほうの手で触れた―――


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