- ロスト・スペラー 10 [転載禁止]©2ch.net
406 :創る名無しに見る名無し[sage]:2015/04/12(日) 17:23:38.49 ID:P0kbmA4t - それに反応して、エピレクティカはワーズの体を啄食むのを、一旦止める。
「ん? 私の魔法を破ったのか? 魔力は全く感じなかったが……、はぁ、未だ満足に動けない様だな。 今は食事中なのだ。 邪魔をしないでくれ」 彼女は一層強力な呪縛の魔法で、ラビゾーの行動を完全に封じに掛かった。 ラビゾーの体は強い力で押さえ付けられた様に、動かなくなる。 (畜生、侮るなよ! こっちにはレノックさんの音楽があるんだ!) ラビゾーは諦めずに足掻いた。 頭の中では音楽が続いている。 それに魔を打ち破る力があると信じて。 (負けて堪るか! 動けっ、這ってでも!!) 強く念じれば、指先が動く。 音楽に乗って、レノックの助言が聞こえる。 (戦え、ラヴィゾール。 君の名前が持つ意味を思い出すんだ) 「あ゛……、ラ゛……、ラ゛……」 (叫べ、君の名を! 奴を倒せ!) レノックの命令が引き鉄となって、遂に、その呪文が飛び出す。
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407 :創る名無しに見る名無し[sage]:2015/04/12(日) 17:36:38.71 ID:P0kbmA4t - 「ラ゛ァア゛ア゛ア゛、ヴィ、ゾォオ゛オ゛オ゛」
無理に搾り出した声は、嗄れて濁った物だったが、それは確かに彼の名前だった。 不可視の力に逆らい続けて、何とか背を起こし、片膝を突く所まで漕ぎ着けると、 今まで押さえ付けられていたのが嘘の様に、体が軽くなる。 ラビゾーは敢然と立ち上がって、エピレクティカを睨み付けた。 (ラヴィゾール、解っているな? エピレクティカの言葉には、耳を傾けるな。 問答無用で叩き伏せるんだ。 今、この場では、暴力こそが正義。 話を聞くのは、奴の抵抗力を奪ってからにしろ!) 「な、何故動ける!? 魔力は少しも――」 驚愕するエピレクティカに構わず、レノックの助言に従って、ラビゾーは全力で突進する。 エピレクティカは回避を試みたが、ラビゾーは彼女の大きな翼を掴んで、逃がさなかった。 「痛い、痛い、折れる!!」 エピレクティカの悲痛な叫び声に、彼が怯み掛けても、透かさずレノックが喝破する。 (怯むな、良心を殺せ! 奴の魔法は、その隙を突いて来るぞ!) ラビゾーは握力を込め、エピレクティカの翼を引っ張って、暴れる彼女を手繰り寄せると、 手羽先の関節を、曲がらない方向に折った。
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408 :創る名無しに見る名無し[sage]:2015/04/12(日) 17:46:22.86 ID:P0kbmA4t - 「いっ、あぁっ……!」
エピレクティカの顔が恐怖の色に染まる。 一瞬の隙に、ラビゾーは体術を駆使して、エピレクティカを屋上に転がした。 彼女は見る見る力を失い、簡単に組み伏せられる。 ラビゾーはエピレクティカを俯せの状態で取り押さえ、漸く一息吐いた。 彼の頭の中で続いていた音楽は、何時の間にか止んでいた。 格闘が終わったのを見計らって、レノックが屋上に姿を現す。 エピレクティカは彼を認めて、忌々しさを露に言った。 「お前が裏で手を回していたのか!」 「馬鹿だなぁ。 姿が見えないから、居ないと思っていたのかい? 魔性と知性を得ても、『鳥頭<バードブレイン>』は治らない様だね」 「このっ……くっ……!」 皮肉を言われて、エピレクティカが暴れ出そうとすると、ラビゾーが力を入れて締め付ける。 エピレクティカは反抗的な態度を、直ぐに引っ込めて大人しくなった。 レノックはエピレクティカの前に屈み込んで、顔を上げさせる。 「取り敢えず、あれだ、ワーズ・ワースの魂を返して貰おう」 「無理だね! 一度呑み込んだ物を、吐き出せるか!」 「あっ、そう言う事を言うんだ? ラヴィゾール、吐き出させてやってくれ」 「……えっ、僕が? どうやって?」 ラビゾーが困り顔で尋ねると、レノックは呆れて溜め息を吐く。 「腹を殴るとか、咽喉に手を突っ込むとか、方法は決まっているだろう」
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