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創る名無しに見る名無し
ロスト・スペラー 8

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ロスト・スペラー 8
111 :創る名無しに見る名無し[sage]:2014/03/09(日) 18:33:54.78 ID:hMODyA3e
ルースはアックローに提案する。

 「もう一度、逆方向に進んでみよう」

2人して来た筈の道を振り返る。
視線を上げれば、既に先が見覚えの無い道と繋がっている。

 「本当に、どうなってんだろうな?」

ルースは呆れた様に言った。
こんな事が本当に有り得るのだろうか?
時間や空間を歪められているとでも言うのだろうか?
或いは、記憶を飛ばされていたり?
周囲は暗いので、時間の経過は時計頼り。
何を信じて良いのか、分からなくなる。
もしかしたら、何も彼も幻覚だったと言う事も……。
難しい顔で唸るルースを、アックローは心配する。

 「気分が悪いのかい?」

 「良くはないが……そうじゃなくて、納得行かないんだよ。
  進んでも戻っても、知らない道しか無いって、どう言う事だ?」

 「それなら後ろ向きに歩いてみたら、どうだろう?
  道が変化しているなら、その瞬間を見れるかも」

 「そんな方法で……?
  しかし……」

馬鹿気た話だが、他に方法も無かろうと言う事で、ルースはアックローの案に従った。
ロスト・スペラー 8
112 :創る名無しに見る名無し[sage]:2014/03/09(日) 18:38:37.62 ID:hMODyA3e
アックローに先を任せ、ルースは彼に背を預ける様に、後ろ歩きする。
来た道を戻っている筈だが、見覚えの無い風景が続く。
地形が一瞬にして変わると言う事も無い。
そして1点も経たない内に、ルースは後ろ歩きの欠点に気付いた。

 「後ろだけ見ていても、前の状態を知らないと、地形が変わったか判らないじゃないか!」

 「あ、迂闊だった。
  ハハハ、済まないね、蒼炎君」

アックローは明るく笑ったが、ルースは笑えない。
頭痛と耳鳴りに悩まされ続けていた事も相俟って、苛付きを抑え切れない口調で、
アックローに掴み掛かる。

 「あんた、こんな時に巫山戯て――」

そう言い掛けて、ルースはハッと閃き、振り返った。
彼の目の前には、見覚えの無い景色が広がっている。
本当に一瞬の事。
怒りは忽ち収まって、奇妙な引っ掛かりが生まれる。

 「……『振り返る』と言う行為が、引き金なのか?
  いや、それとも『目を逸らす』事?」

どう言う原理なのかは解らないが、「そうなっている」。
ロスト・スペラー 8
113 :創る名無しに見る名無し[sage]:2014/03/09(日) 18:46:18.03 ID:hMODyA3e
地形が変わる瞬間に気付いたのは良いが、現状の解決にはなっていない。
結局、どう進めば深度3から抜け出せるのか、不明な儘だ。
ルースは全ての疑問を、アックローに打つけてみた。

 「アックロー、俺達は何故、他の連中と擦れ違わないと思う?」

アックローは困り顔で含羞(はにか)む。

 「そこは僕も不思議に思うんだけどね……」

 「レフト村には、あれだけの冒険者が居て、毎日冒険に出ている。
  多くの者が深度3から進めない状況なら、この付近は『隘路<ボトル・ネック>』になって、
  冒険者で溢れている筈だ。
  そうならないって事は、深度3が桁外れに広いのか?」

そう問い掛けるルースに、アックローは低い唸り声で応じながら、地面に屈み込んだ。

 「分からない。
  だが……蒼炎君、よく見てくれ。
  新しい足跡が無いだろう?
  少なくとも、最近ここを通ったのは、僕達だけ……」

 「それは何を意味する?
  ここまで道は1本しか無かったのに、そんな事が『有り得るのか?』
  何十人もの冒険者が出入りしていて?」

ルースに強く質されても、アックローは困り顔しか出来ない。
異常である事だけは確かなのだが、誰にも本当の答は分からないのだ。
ロスト・スペラー 8
114 :創る名無しに見る名無し[sage]:2014/03/09(日) 18:47:18.06 ID:hMODyA3e
アックローは自信無さ気に口を利く。

 「普通に考えれば、1本道じゃなかったんだろう……。
  分岐路を見落としていたのかも知れない」

 「振り返った途端に、道が変わってしまうのは?」

 「魔法……かな?
  どんな魔法かって言われても困るけど」

ルースはアックローの答を聞いている内に、もしかしたら……と思い始めた。
これは間違い無く、魔法の効果だ。
深度3の秘密、それは……。
ロスト・スペラー 8
115 :創る名無しに見る名無し[sage]:2014/03/09(日) 18:49:08.16 ID:hMODyA3e
(思い付きで謎解き要素を挟もうとしたけど、真面な考察に堪え得る描写をしてなかったので断念)


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