トップページ > 創作発表 > 2014年01月29日 > GwXMP4xx

書き込み順位&時間帯一覧

2 位/46 ID中時間01234567891011121314151617181920212223Total
書き込み数0000000000013211000000008



使用した名前一覧書き込んだスレッド一覧
品陀 ◆TOrxgAA4co
プロローグ1
プロローグ2
プロローグ3
プロローグ4
プロローグ5
プロローグ6
プロローグ7
【長編SS】鬼子SSスレ7【巨大AA】

書き込みレス一覧

【長編SS】鬼子SSスレ7【巨大AA】
240 :品陀 ◆TOrxgAA4co [sage]:2014/01/29(水) 11:36:41.33 ID:GwXMP4xx
>>235
時丸さんどうもお疲れさまでしたー!
鬼衛門くんのその後がきになります。

ところで、かねてから本スレのほうで話していた
大長編・日本鬼子(仮)のプロローグが完成しましたので、
以下に投下しようと思います。


かねてより話していたとおり、まだ肝心の鬼子さんは出てこない、鬼崎を軸にした話で、
プロローグ一編にも関わらず前の「酒呑の〜」よりも長くなるかという分量になってますが、
楽しんで頂ければ幸いです。

以下、「プロローグ」でお送りし、本編の方向性をちょっと出してしまう本当のタイトルは
その後で公開させていただきます。
【長編SS】鬼子SSスレ7【巨大AA】
241 :プロローグ1[sage]:2014/01/29(水) 12:00:35.32 ID:GwXMP4xx
 コツーン コツーン コツーン ・・・


 拾い広い暗がりと、そこに規則正しく立ち上がり並ぶ柱に、堅い革靴の音がこだまする。

 辛うじてその空間を照らす、切れかかった裸電球たちは錆びたパイプが縦横に走る天井を
ぼんやり照らし、はがれたコンクリ片の散乱する地面にその今にも消えそうな光を投げかけ―

 そこは、もう打ち棄てられて十数年は経とうか、という巨大なショッピング・モールの廃墟の、
さらに日の当たらぬ地下駐車場だった。


・・・と―

「………。」

 足音が、止まる。

 靴音の主は、ダークスーツの下にノーネクタイ、よれたカッターシャツを着込んだ、
目つきの鋭い、中肉中背の男だった。
 そのまま、その口にくわえたシケモクの煙をくゆらせ―何か思案していたようだったが―

「………『時間』まで、まだ少しある……な…。少し『小遣い』を稼いでおくか……。」


 か細い電球の明かりに照らされた腕時計の文字盤を一瞥し、そんなことを呟くと、おもむろに
その時計を外し、ポケットにしまい込み、その鋭い視線を、弱々しい光を飲み込む暗がりへと向ける。

・・・・・・・・・・・・・・
 
【長編SS】鬼子SSスレ7【巨大AA】
242 :プロローグ2[sage]:2014/01/29(水) 12:18:21.04 ID:GwXMP4xx
 口にくわえた、煙草の焼ける火の音も聞こえてくるかのごとき、静寂だった。

 ジリジリジリ…

 そして、火の音の調子が、変わる―

 それは、限界まで吸い倒されたシケモクの火がフィルターを焼く音で、それは同時に
ほとんどそのくわえる口の近くまで火が迫っていることを示すものでもあったのだが、
男は眉ひとつ動かさず………

 ジャリ・・・!

 出し抜けに、体の向きを変えたかと思うと……


 フッ!!!


 すぐ近くにあった柱へと、その吸い尽くされ殆どフィルターだけの燃えカスになった
煙草の成れの果てを吹き付ける…!!


 ・・・と

 グアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・!!!


 突如として、柱から異形の影がわき出したかと思うと、その身がみるみる炎に包まれる―
その業火の種火は、むろん、さきほどまで男の口元にあったあのシケモクの残骸だ。

「…ふん。半幽体のくせして、この程度の初歩の呪炎で身を灼(や)かれるか………
……雑魚め。」

 身を灼かれ、地獄の亡者のごとき悲鳴を上げる異形の者とはうって変わって、男の声音は冷たかった。
【長編SS】鬼子SSスレ7【巨大AA】
243 :プロローグ3[sage]:2014/01/29(水) 12:42:52.07 ID:GwXMP4xx
「廃墟に住まい、人を廃墟や退廃にいざなう心の鬼、流陰鬼(るいんき)…か。
まあ、お前のような鬼(もの)でも売り込み次第では金になる。
 安心しろ。
 『売り物』にならなくなる前に俺が助けてやる……」

 そう言うと、男は火ダルマになって暴れもがく流陰鬼(るいんき)と呼ばれた…鬼へと、
先ほどまで時計の付けられていた腕を向ける。
 その腕はいつの間にかまくられており…


「!!?」


 炎に包まれながらも、男の、その身の変化に、鬼が目を剥く。

 男の頭頂から、一本の角が、にょきり、と生え出でたかと思うと……
 露出させられたその腕にも異形の…鬼の顔が、あたかも、人面瘡のごとく、現れ、

 ギロ…

 流陰鬼を、見据える。

 ・・・・・・―

 流陰鬼の、動きが、凍りついたように、止まる。
 その身を灼く、炎諸共に。

「……飲み込め。」

 男が、低く呟くと、人面瘡ならぬ、鬼面瘡の口から霧が吹き出され、炎ごと凍りついた流陰鬼の
身を包む。それは、たとえて言うなら、消火器の消火剤を吹き付けられたような光景で、鬼はほどなく
白い彫像と化し……

 ズズズズズズズズズズ!!!

 うってかわって、先ほどとは逆に、吐いた霧を吸い込み出した鬼面瘡に…その霧ごと
吸い込まれ、飲み込まれる。

 あとには、何も残ってはいなかった―
【長編SS】鬼子SSスレ7【巨大AA】
244 :プロローグ4[sage]:2014/01/29(水) 13:07:59.00 ID:GwXMP4xx
 と―

 タッタッタッタッタッタ・・・


 先ほどの静寂が戻るかと思われた暗がりに、乾いた…小気味の良い駆け足の音がこだまする。


「ち……、見つかったか。悲鳴の大きさは予想外だったな…。」

 まくった袖を直し、腕時計もはめ直していた男が小さく毒づく。
 先ほどの鬼面瘡のみならず、頭頂の角もいつの間にやら無くなっていたが、流陰鬼を飲み
込んだ時にも微動だにしなかったその眉間に、小さくシワが寄っている。


「あー!!! やっぱりザッキーだー!! ほら、閻の言ったとおりだったでしょ?
ミキティー!!」

 駆け寄ってきた快活な足音の主が、やはり、快活な少女の声を上げる。

「……にんにん。」

 それに応えるように・・・落ち着いてはいるものの、どことなくかなりな背伸びをしているような、
少女の・・・おそらくは、返事なのだろう・・・奇妙な相槌が、交わされる。

「言われるまでもない。拙者もそう思っておったわ。閻ニャーどの。」

「えー? あの声が聞こえたときには『退却でござるよ!!』って言ってたじゃないー。
ここに来たときからもずっと怖がってたし、ミキティーは。」

「し・・・忍びに怖れなど、あ、有り得ぬ!!! あ・・・あれは、危険な場所におもむくえええ、
閻ニャーどのの身を気づかってのええええ演技でござる!!!そうでござる!!演技でござるよ!!!!」

「そうなんだー。 ミキティーって『てんまとう』なのに優しいんだなー。
たまに一緒にいる『じょうにんさん』はあんなに怖いのに。」

「待たれよ!! それは聞き捨てならぬぞ、閻ニャーどの!!! 『ヌエ』さまは
優しい方でござる!!!!!」


―・・・先ほどの静寂は、もはや、跡形も無かった―
【長編SS】鬼子SSスレ7【巨大AA】
245 :プロローグ5[sage]:2014/01/29(水) 13:50:30.30 ID:GwXMP4xx
 とりあえず、『ザッキー』と呼ばれた男は、シワの寄った眉根を軽くつまむと、天を
仰いだ。そこには殺風景な天井しかありはしなかったが。


「……何度も言ってることで、無駄は承知の上だが、一応言っておくぞ……閻、俺は

鬼崎(きざき)だ。」


 男―鬼崎は、苦虫を噛み潰すように、その…黒猫を模したフード付きパーカーを着込み、
大きなナップザックを背負う、快活な少女に言い放つ。
 その愛らしさとは裏腹の、尾ていから伸びる禍々しい尾をくゆらせ―鬼崎のほうを向き直る少女―

閻ニャー、もまた、

 鬼崎同様、人に非ざるモノであることは、あまりにも、明らかだった。

「えー? 『バッキー』と兄弟みたいで呼びやすいのにー。 ね? バッキー?」

 そういうと、閻・・・閻ニャーと呼ばれた少女は、被っている猫耳付きの黒フードをなでる。
フードには猫の目らしきものもあしらわれていたが、それが、とぼけるように、あさっての方へと
視線を移した。

「…このような闇社会の住人をも愛称で呼ばれるとは……、まったく、閻どのは本当に天衣無縫(てんいむほう)
でござるな。」

 もうひとりの少女が、明らかに寝不足を窺わせる隈のくっきり刻まれた目を軽くひそめ、口を開いた。
 こちらは、そのくの一装束に包まれる小ぶりな肢体にはおおよそ似つかわしくない、これまた禍々しい、
水牛のごとき角をその両のこめかみから生やしており、彼女もまた、人に非ざるモノであることが容易に
知られた。

「だって、ザッキーって閻が勝手に家に上がったときだって、何だかんだ言っても結局泊めてくれるし、ご飯も
くれるし、いい人なんだもん。
 ミキティーだってあの『じょうにんさん』を『ヌーちゃん』とか呼べばいいじゃない。ホントは優しい人なら、
皆もきっと怖くなくなるよー?」

「ヌエさまをそんな呼び方できるか!!! ・・で・・・ござる!!!!!」


 鬼崎は、それがどんな小金であろうと見落としてはならない、という、ブローカー・・という
より、商人、の鉄則をさきほど遵守したことを軽く後悔しそうになった。
 今しがたようやく、しつこくつきまとっていたのをまいたばかりだった、というのに。

 女三人寄ればかしましい、とは言うが、この二人は妙に波長の合うところがあるせいか、二人だけでも五人十人
以上にかしましかった。
【長編SS】鬼子SSスレ7【巨大AA】
246 :プロローグ6[sage]:2014/01/29(水) 14:13:49.91 ID:GwXMP4xx
 何を言ったとしても、この調子に油を注ぐだけになりそうなので、鬼崎は観念し、必要な
ことだけを聞くことにした。

「……おいミキティ…いや、黒丑ミキ。そもそもなんでお前がここにいる?」

「だいたい閻ニャーどのは!!・・・って・・・む?」

 どこまで本気で怒っているのかも判らない、いつもどおりの口論のさなか、フルネームを
呼ばれ、ミキティ……もとい、『天魔党』下忍・黒丑ミキは鬼崎のほうに向き直る。
 「いつもどおり」に戻られてはかなわないので、鬼崎は畳み掛ける。

「そもそもくの一・・・というか、忍(しのび)としてのお前の務めは、お前の仕える『天魔党』に
楯突いているとかいうアイツ・・・

『日本鬼子(ひのもとおにこ)』―

 ・・・の、監視だろう?それが、なぜ、アイツと関係ない・・・というか、険悪極まりない
俺なんかに付きまとう?
 それともなにか?
 お前の上忍(じょうにん)・・・上司の、奴(やつ)、が俺を見張れ、とでも?」

 そう言うと、鬼崎は、先ほど流陰鬼を難なく飲み込んだ・・・あの腕を軽くまくった。

 『奴(やつ)』と言った口調も静かなものではあったが、その呼称の主への底知れぬ嫌悪と憎悪
の念が込められており、それが黒丑ミキ、と呼ばれた少女・・・くの一に対する威嚇であることは、
あまりにも明らかだった。

 が・・・

「あー、そういえば、ミキティ、鬼子ちゃんを見失っちゃったんだよねー。」

 あっけらかんと、そう答えを返したのは、閻ニャーだった。
【長編SS】鬼子SSスレ7【巨大AA】
247 :プロローグ7[sage]:2014/01/29(水) 15:04:20.84 ID:GwXMP4xx
「な・・・・!!ななななな何を申される閻ニャーどの!!!せせせせ拙者は、
べべべ、別に鬼子どのを見失ったわわわわけではござらぬ!!な・・・なにやら、
神社で何者かと暗号のやりとりをしようとしていたから・・・!!
 それを解読する間、泳がせて・・・、そ・・・そう!!泳がせているだけでござる!!!」

「あー、そういえば、ミキティー、神社で鬼子ちゃんの書いた絵馬を一生懸命さがしてたねー。
でも、ああいうところで、人の願い事を勝手に見るのって良くないよー? パパもそう言ってたし。」

「ね・・・願い事・・・!? そ・・そんな筈はないでござる!! 昔の忍(しのび)はよく絵馬で伝言
していたと黒金蟲さまも言っていたでござる!! だから・・・!!!」

「情報古すぎじゃないかなー、ミキティー?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 頭が痛くなりはしたが、状況はだいたい飲み込めた。
 おおかた、そのまま帰るわけにもいかないので、たまたま通りかかり、声をかけてきた閻ニャーに
くっついて来たのだろう。
 さらに不幸にして迷惑なことには、その閻ニャーの気分と足が自分に対して向かっていた、という
ところだろうか。


「……ここから一番近い俺のアジトは知ってたな? 閻? メシもおごってやるし、泊まってもいい。
……とりあえず、今は帰れ。 頼む。」

 なにか・・・ なにか、物凄くなにかに負けたような気がしないではなかったのだが、このあと控える
『仕事』の障りになられてもたまらないので、鬼崎は、閻にそう、懇願するように告げた。
 この放浪少女の行動パターンと原理は閻『ニャー』という名からも判るとおり、猫のそれ、だ。

 今までの経験からして、多少プライドが傷付いたとしても、そう言っておけば、嬉々として、自分の寝ぐら
に帰ってくれるはずだった・・・

・・・の、だが、

「それが、そうもいかないんだよねー。」

 このときばかりは、違った。

 そう言ったかと思うと、閻ニャーは背負っていた少し大きめのナップザックを下ろし・・・

「?」

 その答えの調子に違和感を覚えた鬼崎は、そのまま、閻ニャーがその口を開くのを見守る。


 そして、その中にあったモノは、鬼崎自身、かねてより知ってはいたものの、まったく、まったく、
思いも寄らない、奇妙なモノ、だった。

「・・・・・・・・・・何やってんだ・・・・・アンタ。」

 そこにあった…否、いた、のは、古式の烏帽子(えぼし)と水干(すいかん)に身を包んだ、
一匹の兎、だった。


※このページは、『2ちゃんねる』の書き込みを基に自動生成したものです。オリジナルはリンク先の2ちゃんねるの書き込みです。
※このサイトでオリジナルの書き込みについては対応できません。
※何か問題のある場合はメールをしてください。対応します。