- ロスト・スペラー 7
140 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/10/10(木) 20:13:25.69 ID:jva/6KtQ - ルーンはくしゃくが死んでしまったので、領地の人びとは大あわてです。
上に立って命令する人が居なければ、人びとはまとまりません。 兵士もかなり減ってしまったので、急いできし団を呼ばなくてはなりません。 にせとうぞく団はクローテルがやっつけましたが、国境の土地は絶えず、だれかにねらわれています。 いくらクローテルが強くても、ひとりでは人びとを守りきれません。 最初の問題は、だれを新しい領主にするかでした。 本当なら子供があとをつぐのですが、クローテルはルーンはくしゃくの養子になって、 まだ3年しかたっていない上に、若すぎます。 そこでルーンはくしゃくのいとこの、ナクト男しゃくが、クローテルの後見人として、 領地を治めることになりました。 ナクト男しゃくは、きし団と領地の人びとの仲を取り持って、いさかいが起こらないようにしました。 それがあったので、クローテルが一人前のきしになるまで、ナクト男しゃくが土地を治めることに、 だれも反対しませんでした。
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141 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/10/10(木) 20:14:51.44 ID:jva/6KtQ - ナクト男しゃくは、将来きしになれたら領主になるクローテルを、うとましく思っていました。
そこでナクト男しゃくは、悪いうわさを流して、クローテルの信用を落としました。 「クローテルはきしを志す身でありながら、主であるルーンはくしゃくを守れなかった。 にせどうぞく団を全めつさせたと言うが、本当だろうか? ひとり生き残ったのだから、何とでも言える。 クローテルがきしになる資格はない」 ナクト男しゃくは、自分で広めたうわさを理由に、クローテルを戦に向かわせます。 「クローテルよ、領内のうわさは聞いているな? おまえが民の心を取りもどすには、武勇を示す以外にない。 今は亡き父に拾われた恩に報いるためにも、民をおびやかすぞくどもをこらしめるのだ」 ナクト男しゃくは領地だけでなく、国中で起こる戦いに、ことごとくクローテルを送り出しました。 戦い続けていれば、どこかで死ぬだろうと考えていたのです。 しかし、ナクト男しゃくのもくろみとは反対に、どの戦でもクローテルは活やくして、 勝利の報告と共に帰ってきました。
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142 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/10/10(木) 20:17:43.43 ID:jva/6KtQ - クローテルの活やくは、本人が言わなくても、人伝に国中へと広まっていきました。
彼は不死身の少年、きせきの勇者と、いくつものあだ名で呼ばれるようになります。 そのころ王都では、となりの国との戦が決まっていました。 原因はルーンはくしゃくが死んでしまった、にせとうぞく団の件です。 高まっていくクローテルの名声に、あせったナクト男しゃくは、これ幸いと、となりの国との大きな戦に、 クローテルを送り出しました。 「クローテルよ、ついにりん国との戦が決まったぞ。 今こそ父のかたきをうつ時。 戦の先じんを切って、敵の城を落とすのだ」 戦では、前に出て敵に近づくほど、死にやすくなります。 国と国がぶつかる大きな戦で、前に出ろと言うのは、死ねと言うのと同じです。 でも、クローテルは断りませんでした。 彼は今までの戦いでも、正面から敵をうちたおしてきました。 そして今度の大戦でも、ナクト男しゃくの言いつけどおりに戦うつもりでした。
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