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叶えたい願い-柊つかさ ◆ew5bR2RQj.
叶えたい願い-志々雄真実 ◆ew5bR2RQj.
叶えたい願い-ストレイト・クーガー ◆ew5bR2RQj.
叶えたい願い-翠星石 ◆ew5bR2RQj.
叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj.
叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj.
多ジャンルバトルロワイアル Part.16
多ジャンルバトルロワイアル Part.17

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多ジャンルバトルロワイアル Part.17
50 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:03:00.89 ID:jQ2D6Xxu
「……おい」

向き合って、気付かされる。

「なんでそんな顔してるんだよ」

女がとても悲しそうな顔をしていることに。

お嫁さんというのは、幸せで幸せで幸せの絶頂の時になるものだ。
だが、今の女は違う。
幸せの絶頂にいるはずの人間は、こんな悲しそうな顔をしない。

「分かってるよ、分かってるって、これは夢なんだろ」

とっくに気付いていた。
エレナは死んだ。
■■■■は死んだ、ガドヴェドは死んだ。
レイは死んだ。シノは死んだ。縁は死んだ。巴は死んだ。光太郎は死んだ。信彦は死んだ。
死んだ奴は蘇らない。
だから、これは夢なのだ。

「……これは」

エレナが持っていたのは蛮刀だった。
エレナが遺した形見であり、自分の復讐を手伝ってくれた愛刀。
まだ戦えと言うつもりなのか。
せっかく用意したタキシードは血塗れになり、身体はボロボロな上に右目は欠けてしまっている。
もう、十分だろう、休ませてくれ。
そんな弱音を漏らそうとして、男はぐっと飲み込んだ。
まだ何も終わっていない。
シャドームーンとの決着も付けていないし、カギ爪の男を殺していない。
男の旅はまだ途中なのだ。

男はエレナを愛した。
エレナは男を愛した。
馬鹿で無鉄砲で乱暴で一途な男を、エレナは愛したのだ。
だから、男が自分を裏切るわけにはいかない。
自分を裏切るということは、エレナを裏切るということだからだ。

「悪いな、心配掛けた」

男は蛮刀を受け取ると、教会の出口へと進んでゆく。
夢は所詮、夢なのだ。
いつかは必ず終わりが訪れるのである。

「いってらっしゃい、ヴァン」
「ああ、いってきます」

そして、男は夢から醒める。


  ☆ ☆ ☆


「……ヴァン」

背後に現れた男を見て、翠星石は呆けたように呟く。
彼の傷は相当深く、そのまま死んだと思っていたからだ。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
54 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:05:37.94 ID:jQ2D6Xxu
「まだ生きていたか」

傷だらけのヴァンを見て、シャドームーンはゴキブリのようだと評する。
つかさによって応急処置は施されているが、それでも完治には程遠い状態だ。
それなのに、ヴァンは敵意を剥き出しにしている。
ここまで傷付いて尚、ヴァンの瞳の中の炎は消えていなかった。

「いや、もしかしたら死んでたかもしれねえな」

先程見たばかりだというのに、夢の内容はハッキリと思い出せない。
多分、幸せな夢だったのだろう。
そのまま夢を見続けていれば、ずっと幸せなままだったのかもしれない。

「でもな、まだ何も終わっちゃいないんだ」

しかし、ヴァンは目覚めた。
目覚めたということは、夢の中の自分はそれを選んだのだろう。
だったら、突き進むだけである。
そもそも夫婦というのは、幸せも悲しみも分かち合うものだ。
夫が一人で幸せになるなど、妻に対する最大限の裏切りである。

「だったら死んでる場合じゃねえだろうがあああぁぁぁッ!!!!」

だから、ヴァンは吠えた。
全身を激痛に支配され、血液は足りず、視界は半分欠けている。
目の前に立ちはだかるのは創世王・シャドームーン。
ナイトのデッキは破壊され、彼に残された武器は一振りの剣だけ。
絶体絶命、しかし問題はない。
彼が持っているのは、世界で一番愛している人から託された剣なのだから。

「そうか。ならば二度と生き返らないように八つ裂きにしてやる」

距離を詰め、ヴァンへと斬り掛かるシャドームーン。
だが、その脚はすぐに止まった。
地中から伸びた無数の轍が絡み付き、シャドームーンの動きを阻害しているのだ。

「また貴様か、何度も何度も目障りな傀儡だ」
「お前を倒せるなら、何度だって繰り返してやるです!」

シャドームーンが強引に踏み出すと、轍は簡単に引き千切られてしまう。
それでも一秒だけシャドームーンを足止めできた。
背後を振り返る翠星石。
そこには蛮刀を握り締めたヴァンの姿があった。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
60 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:07:45.70 ID:jQ2D6Xxu
チリン、と音が鳴る。

蛮刀の鍔から切っ先に掛けて青色の電流が迸り、刀身に円形の穴がいくつも開いていく。
天空を仰ぐように蛮刀を掲げ、袈裟懸けに一閃。
腰を下ろし、逆袈裟に一閃。
綺麗に繋がった剣筋は、空中にV字の軌跡を描く。
それは剣を呼び寄せるための合図。
本来なら封印されていたはずの行為だ。
一個人が運用する兵器としては強力過ぎるため、ギアスによってそれは禁じられていた。
しかし、ギアスは決して万能ではない。
クーガーが、後藤が、翠星石が自力で破ったように、ヴァンも絶対遵守の力に打ち勝ったのだ。

天が鳴き、地が動く。
次元を越え、空間を突き破り、神は裁きが飛来する。
天空の白を切り裂き、地面へと突き刺さる剣。

その剣の名は――――ダン・オブ・サーズデイ。

「ロボット……?」

背後に現れた鋼鉄の巨人を見て、翠星石は呆気に取られている。
オリジナル専用ヨロイの一機、ダン・オブ・サーズデイ。
全てのヨロイの開祖であり、刀を武器として戦う機体。
胸や脚を白い装甲が覆い、その隙間から黒い身体が見え隠れしていた。
それがヴァンに残された、正真正銘最後の剣だ。

ヴァンが何処に居ようとも、呼び寄せれば剣は駆け付ける。
例えここが世界の片隅に捨て置かれた小さな空間だとしても、だ。
王が己の騎馬を呼び寄せることができるなら、騎士が己の剣を呼び寄せられるのも当然だろう。

「ヴァン……」

いつの間にかダンの胸部へと移動しているヴァン。
胸部の装甲が床のように開き、その上に彼は立っているのだ。

「何の用だ」
「そ、その、翠星石が色々と迷惑を掛けちまったです。だから……ごめんなさい」

あからさまに不機嫌そうなヴァンの態度に、翠星石は意味もなく怯えてしまう。
しかし、それでも彼に謝罪しなければならなかった。

「……俺よりももっと謝らなきゃいけない奴がいるだろ」

それだけ吐き捨てると、ヴァンは視線をシャドームーンへと据える。

「それが貴様の本当の力か、面白い」

自らの何倍も巨大なロボットと対峙しても、シャドームーンに動揺や畏怖はない。
創世王は全世界を支配する存在。
頂に立つ者は、大衆の前で定期的に虎を殺して見せなくはならない。
逆らう者は圧倒的な力で叩きのめし、二度と歯向かう気が起きないように屈服させる。
そうすることで自らに刃向おうと思わせる馬鹿が出ないようにするのだ。
倒す相手が強ければ強いほど、その効果は上がる。
故にどんな強者が相手になったとしても、王は真っ向から捻じ伏せなければいけないのだ。

「行くぜ」

ヴァンは蛮刀を逆手に持ち替え、G-ER流体で構成された床へと突き刺す。
開いていた穴が塞がり、右手と蛮刀の柄が一体化。
胸部の装甲が閉じると同時にヴァンを機体の奥へと送り込み、薄暗い青色で彩られたコックピットを形成する。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
62 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:09:30.10 ID:jQ2D6Xxu
「Wake Up! ダン!」

彼の合図により、一面の青は輝かんばかりの白へと変化する。
機体の黒い部分はG-ER流体の青に点滅し、それが収まると共にダンの目は赤色に染まった。

「掛かって来い、捻り潰してやる」

勢いよく刀を振り上げ、そのまま垂直に振り下ろすダン。
サタンサーベルを横に構え、剣撃を受け止めるシャドームーン。
たったそれだけのやり取りで、想像を絶する衝撃をもたらす。
地面は陥没し、粉塵が舞い散り、烈風が巻き起こる。
だが、それでも互いに微動だにしない。
己の剣に力を込め、全力で鎬を削り合う。
人間の何倍もの体躯を持つダンは、その大きさに見合った力を持つ。
それを相手にして尚、シャドームーンは互角に渡り合っていた。

「それで全力か、創世王さんよ」
「減らず口を叩いている余裕があるのか?」

空いている左腕を掲げ、シャドービームを照射するシャドームーン。
狙いはコックピット。
操縦者を直接潰した方が手っとり早いと考えたのだ。

「あるから言ってんだろ」

しかし、シャドービームは届かない。
コックピットに到達する寸前、白い障壁によって阻まれる。
メッツァとの戦いで会得した電磁シールドを展開したのだ。
シャドービームにエネルギーを割いたことで剣を握る力が弱まり、それが一瞬の隙となる。
その結果ダンの力が上回り、シャドームーンの身体を巨剣が押し潰した。

「シャドームーンさんを倒した……?」
「あの程度で倒れるなら、とっくの昔に翠星石がボコボコにしてるですよ」

翠星石が解説した瞬間、粉塵の中から翠緑の光線が伸びる。

「人形のように障壁を張ることが出来たか、下等な虫共の考えることは同じだな」

粉塵の中から現れたシャドームーンに目立った外傷は無かった。
自身の何倍もの大きさの剣に押し潰されたにも関わらず、シャドームーンは致命傷には至らない。
それどころか即座に反撃を仕掛けてくる始末だ。

「テメエの方がよっぽどゴキブリだぜ」

皮肉を吐きながら、ダンは再び刀を構える。
シャドームーンもその双眸でダンを見据え、静かにサタンサーベルを突き出す。
轟音が再び鳴り響く。

「つかさ、一端離れるですよ!」

二人の激突は衝撃波を生み、周辺一帯に甚大な被害をもたらしていた
翠星石はバリアでそれを遮るが、彼らの激突は何度も何度も続いている。
翠星石には問題なかったが、つかさは身動きを取ることができない。
黒翼から龍の顎を伸ばし、その場に立ち尽くしているつかさを呑み込む。
間髪入れずに翼を広げ、衝撃波の届かない地点まで飛行する。
一度体勢を立て直す必要があると判断したのだ。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
66 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage 一端→一旦]:2013/10/10(木) 02:11:26.10 ID:jQ2D6Xxu
「ごめんね、やっぱり戦うことになると役立たなくて……」
「バカ! つかさがそんなこと心配しなくていいんです!」
「でも……」

二人が剣を打ち合う度に、爆発でも起きたのかと勘違いするような音が轟く。
衝撃波は届かなくても震動は伝わり、まるで断続的に地震が起きているかのようだ。

「……それなら、私と契約してくれますか?」

少しの間悩んだ後、翠星石はその言葉を口にする。
先程シャドームーンを足止めした際、翠星石は数秒は稼げると考えていた。
だが、轍は一瞬で引き千切られてしまった。
志々雄との契約を破棄したことで、茨が轍に戻ってしまったからだ。
今のシャドームーンを相手にするには、キングストーンとローザミスティカだけでは力不足である。
人間と契約しなければ、シャドームーンと渡り合うことはできない。
たった一度のやり取りだが、翠星石はそれを痛感していた。

「うん、私が役に立つなら力を貸すよ」
「ちょっ、いくらなんでも早過ぎですよ! ちょっとは悩まないのですか!?」

悩む素振りを見せず即答するつかさ。
翠星石にとってはありがたいが、あまりの即答ぶりに拍子抜けしてしまう。
こんな簡単に人を信用してしまって、この人間は大丈夫なのだろうか。

「だって、翠星石ちゃんが必要だと思ったんでしょ?」
「確かにそうですけど……。
 お前を見てると、コロッと騙されないか不安になるです」
「ううん、翠星石ちゃんはそんなことしないって信じてるから」

屈託のない笑顔を浮かべ、つかさは翠星石の瞳を覗き込んでくる。
数秒の間、彼女達は互いを見つめ合う。
しかし恥ずかしくなったのか、翠星石は顔を熟れた果実のように赤く染めてそっぽを向いた。

「そそそそそそんな目で翠星石を見んなです! さっさと契約をするですよ!」
「う、うん。でも私はどうすればいいの?」
「この指輪にキスしやがれです」

左手を差し出す翠星石。
その薬指には薔薇の装飾が施された黄金の指輪が嵌められている。
キスと聞いてつかさは頬をほんのりと赤くするが、やがて決心したように指輪にくちづけをした。

「熱っ……」

翠星石の指輪が緑色に輝き、共鳴するようにつかさの左手も光に包まれる。
その光が収まった時には、つかさの薬指に鮮やかな緑色の花弁に彩られた指輪が装着されていた。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
69 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:14:16.39 ID:jQ2D6Xxu
「力が……力が溢れてくるですよ……」

胸の前で手を組み、翠星石は目を瞑る。
するとその身体は様々な色の光に彩られ、まるで翠星石を祝福するように交じり合う。
翠星石の身体から溢れているのは、キングストーンの強烈過ぎる閃光ではない。
彼女の内側で眠る姉妹達の魂が放つ優しい色合いの光だ。
正規の手順で契約を結んだことで、翠星石の力は格段に強くなっている。
いや、それだけではない。
かつて水銀燈が蒼星石のローザミスティカを強奪した時、彼女の身体になかなか馴染まないという現象が起きた。
今の翠星石に起きているのはその逆。
ドールと媒介者が心の底から信じ合ってるからこそ、この輝きは生まれているのである。
兄貴分から力を託され、信じ合える友を得て、翠星石は本当の強さを取り戻した。

今の翠星石はキングストーンすらも乗り越える。

「じゃあ、行ってくるですよ」

お互いに笑い合い、翠星石は戦いへと戻る。
その足取りは何処までも軽かった。

「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

埒が明かないと判断したヴァンは、刀を分割して二刀流に持ち変えていた。
一撃は軽くなった分、手数が増している。
これで有利に事が運ぶと考えたが、シャドームーンはその上を行っていた。
一方の刀をサタンサーベルで受けつつ、もう一方の刀は格闘でいなし、隙を見せれば即座に反撃を行う。
シャドームーンの一撃は、ダンの頑丈な装甲すらも容易く破壊する。
煉獄を相手にした時のように、身長差など物ともしていない。
形勢はシャドームーンに傾きつつあった。

「貴様の力はその程度か、口ほどにもない」

頭上に迫る刃を最小限の動きで避け、カウンターの要領でシャドービームを発射する。
電磁シールドを展しようとするが間に合わず、シャドービームは左肩の装甲に着弾。
大きな爆発を起こし、その周辺を抉り取るように粉砕した。
シャドームーンの翠緑の双眼には、ダンの弱所がハッキリと映っているのである。
それだけではない。
マイティアイは相手を解析し、その全てを白日の下に曝す。
相手の一挙手一投足が情報であり、シャドームーンの改造された脳に収集されていく。
初撃では有効だった電磁シールドも、今は強度や発動までの時間が把握されてしまっている。
長期戦になればなるほど不利になっていくのだ。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
73 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:16:03.00 ID:jQ2D6Xxu
「なら、これならどうだ!」

背中のブースターを駆動させ、上空へ飛び上がるダン。
そのまま二本の刀を一本に戻し、加速をつけて急降下しようとする。
だが、シャドームーンは同じ高さまで跳び上がってきた。
レッグトリガーの超振動による脚力を用い、ダンと同じ高度まで跳躍したのだ。
地上からおよそ百メートル。
シャドーチャージャーが明滅し、サタンサーベルの刀身にエネルギーが集合する。
ダンはとっさに防御しようとするが、シャドームーンの方が速かった。
キングストーンの加護を受けたサタンサーベルが、装甲が砕けて剥き出しになった左肩へと侵入する。
そのままサタンサーベルは機械を切り抜き、やがて出口へと到達した。
血液のように飛び散るG-ER流体。
ダンの左腕が切断され、地上へと落下した。

「ぐおおおおおぉぉぉぉッ!!」

ダンのダメージが電流となり、操縦者へと襲い掛かる。
耐え難い苦痛であったが、ヴァンは操縦桿になった蛮刀の柄を握り締めて堪えた。
しかしそんなことは関係ないというように、シャドービームの体勢を取るシャドームーン。
この一撃が命中すれば、ダンであっても破壊は免れないだろう。

「しゃんとしやがれです!」

シャドームーンの身体を真下から成長した巨大な植物が呑み込む。
下を向くと、植物の根本に翠星石の姿があった。
腰に刀を溜め、即座に急加速するダン。
そのまま居合い切りの要領で刀を抜き、拘束されているシャドームーンに一閃を加える。
巨剣の斬撃を喰らったシャドームーンは、為す術なく地上へと落下した。

「大丈夫ですか!?」
「……うるせえ」

翼を広げて横に並んでいる翠星石を一瞥し、ヴァンは不愉快そうに吐き捨てる。
そんな態度に翠星石は文句を付けようとするが、真下から放射された光線がそれを阻害した。
ダンと翠星石を同時に狙ったものであり、拡散されているため威力は削がれている。
それでも元の威力が高すぎるため、直撃すればただでは済まなかった。

「クソッ、なんて野郎だ」

必死に操縦桿を動かし、網のように張り巡らされたシャドービームを避け続ける。
避け切れない分は電磁シールドで相殺するが、それでも限界があった。
直撃する度に装甲は削れ、内装が剥き出しになっていく。
シャドービームの性能は威力や飛距離等、あらゆる方面で大きく向上している。
しかし一番の問題は技の威力ではなく、発射口であるシャドームーン自身の異常な耐久力だ。
首輪の爆発に巻き込まれても、ダンの斬撃を受けても、シャドームーンは立ち上がってくる。
それに加えて、キングストーンによる回復力も驚異だ。
シャドームーンを倒すには、一撃で相手を葬るような大技が必要なのだ。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
77 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:18:10.23 ID:jQ2D6Xxu
「……」

シャドービームの追撃を抜け切り、ヴァンは極限まで張りつめていた緊張の糸を僅かだが解す。
全身を覆っていた装甲は大半が砕け、G-ER繊維で形成される肉体が剥き出しになっていた。
今のヴァンと同様、ダンの身体も傷だらけである。
だからだろうか。
操縦者とヨロイの状態が重なったせいか、今のヴァンの脳は澄み切っていた。
痛みで意識が飛びそうだというのに、嵐のように思考が溢れていく。
エレナのこと、カギ爪の男のこと、エンドレス・イリュージョンで連んでいた連中のこと――――シャドームーンのこと。
C.C.が死んだ今、シャドームーンが最も古い付き合いの参加者になっている。
東條や縁と争いを始めようとしていた最中、シャドームーンは突然現れた。
サタンサーベルの奪還が目的だったようだが、最後は殺戮の限りを尽くしていった。
その後も何度か顔を合わせ、一時ではあるが肩を並べて戦ってもいた。
だが、結局は敵なのだ。
共闘することはあっても、決して仲間ではない。
最後には殺さなければいけない存在なのだ。
そして、その最後とは今だ。
銀の月との関係を清算するのは今なのだ。

「長過ぎたな」

寄り道をし過ぎた、と感じる。
シャドームーンも所詮は通過点であり、カギ爪の男に辿り着くまでの道程なのだ。
だから、ここで終わりにする。
言葉は必要ない。
シャドームーンとの関係の中にあるのは、結局のところ戦いだけだ。
他のオリジナル用のヨロイと違い、重火器は搭載されていない。
ヴォルケインのキャノンのような高威力の兵器もない。
ダンの武器はあくまで刀。
刀一筋で戦うのがダン・オブ・サーズデイなのだ。

「おい、アンタ」
「翠星石ですか?」
「そう、アンタだ」

あくまで名前で呼ばないヴァンに対し、翠星石は呆れたように溜息を吐く。

「少しだけでいい、アイツの動きを止めろ」

それだけ告げると、ダンは飛び去っていってしまう。
突然の申し出に翠星石は混乱するが、シャドームーンが跳躍するために膝を屈めているのが見えた。

「この辺でいいか」

ひたすら上昇を続けたダンは、高度二百メートルのところにいる。
シャドームーンの姿を認識できる最大限の高度を保った距離だ。
この距離から下降すれば、刀にも勢いが乗る。
シャドームーンの頑強な鎧を打ち破るには、もはやこれ以外の手段は無かった。
片腕で剣を振るっていても勝機は薄く、必殺の一撃を放つ必要があるのだ。
残った右腕で刀の柄を握り締め、ゆっくりと下界を見下ろすヴァン。
翠星石が奮闘しているようだが、まだシャドームーンの動きを止めるには至っていない。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
79 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:19:43.93 ID:jQ2D6Xxu
待つ。
刃を下に向け、虎視眈々とシャドームーンの動きを追う。
刹那の隙も逃さぬよう、無言で刀を構え続ける。
先程までは溢れていた思考が、今はぴたりと鳴り止んでいた。
ヴァンの頭にあるのはたった一つだけ。
シャドームーンを殺す。
それだけだ。

「ッ!」

そして、その時は訪れる。
茨、蔦、花弁、黒羽の四つが同時にシャドームーンの四肢に絡み付いたのだ。

「チェエエエエエエエエエエスッ!!!!」

ブースターを最大出力で稼働。
強烈な推進力により機体が押され、ダンは瞬く間に空を駆け降りていく。
地上にいるシャドームーンを斬り殺すため、一騎当千の勢いで走り抜ける。
そして、刀を大きく振り被った。
二百メートルの距離は滑走路。
ここで助走を付け、飛行機が陸から飛び立つように相手を叩き斬る。
シャドービームで四肢を拘束していた物体を凪ぎ払うシャドームーン。
だが、遅い。
ダンは既に地上へと到達し、その刀を振り降ろしていた。

「トオオオオオオオオオオオオウッ!!!!」

サタンサーベルを振り翳し、ダンの一撃を受け止めるシャドームーン。
その瞬間、再び空間内を巨大な振動が襲う。
大地は悲鳴のように唸り声を上げ、大気はそれを克明に周囲へと伝達する。
巨大な金属の塊が二百メートルの高さから急降下したのだ。
シャドームーンであってもそれを易々と受け止めることはできない。
みしみしと強化外装・シルバーガードが軋みを上げる。
その身体は地面へとめり込んでいき、人工筋肉・フィルブローンからは蒸気が立ちこめる。
両手でサタンサーベルの柄を握り、さらにキングストーンのエネルギーを刀身へと送り込む。
エルボートリガーの超振動とキングストーンのエネルギーが加わり、サタンサーベルの威力は大きく向上する。
それでもまだシャドームーンの方が押されていた。

「こうでなくては……面白くないッ!」

今まで冷酷を貫いていたシャドームーンが、ここに来て興奮したように声を上げる。
生身で世紀王と渡り合った男が、今は創世王と化した自分を打ち倒そうとしているのだ。
自分が創世王を取り込んで成長したように、ヴァンも次々と新たな力を披露している。
創世王となっても敵が存在することが、シャドームーンは純粋に嬉しかった。
強者を完膚なきまでに叩きのめしてこそ、王の威厳は保たれるというものだ。

「シャドービームッ!!」

キングストーンにエネルギーを密集させ、螺旋状の光線として放射する。
ダンに避ける術はなく、機械の身体はあっという間に翠緑の光で呑まれていく。
今までの戦闘で装甲の大半が剥がれていたため、光線は直にその身体を苛んでいった。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
85 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:21:41.64 ID:jQ2D6Xxu
「ぐああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

電流が迸る音に紛れ、耳を覆いたくなるような絶叫が鳴り響く。
電気に近い性質を持つシャドービームは、ダンを通じてヴァンの肉体すらも破壊する。
掠っただけでも被害をもたらす光線が、途切れなく肉体にまとわりついているのだ。
意識は酩酊し、皮膚は爛れ、筋肉は痙攣し、血液は沸騰する。
強烈な電流によって神経繊維は焼き切れ、人間が感じることのできるあらゆる激痛がヴァンの全身を蝕んでいった。

「何故だ」

それなのに。

「何故、まだ私が押されている」

未だにヴァンの力は衰えない。
それどころか刀に込められた力はさらに増しつつあった。

「……何でかって、そんなの決まってんだろ」

シャドーチャージャーは途切れることなくシャドービームを発射し続けている。
ダンは全身から火花を飛び散らせ、至るところから黒煙を昇らせている。
この損傷具合で、創世王に勝る力を出せるわけがない。
マイティアイによる分析結果は完璧だったはずだ。

「お前を殺すために決まってるだろうがあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

ピシリ、と音が鳴る。
その音源はダンの身体からでも、シャドームーンの身体からでも無かった。
音の正体、それは――――
絶対に折れることのない、折れてはならない証。
ゴルゴムの、創世王の象徴。
魔剣・サタンサーベルに亀裂が入った音だった。

「馬鹿な!? サタンサーベルが折れるだと!!」

象徴は砕け散る。
サタンサーベルの刀身は根本から折れ、真っ二つになって宙を舞う。
そして――――

「チェストオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

サタンサーベルの防御を破った斬撃は、シャドームーンの装甲すらも斬り裂いた。

「ぐ……おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

ダン・オブ・サーズデイは刀を象徴としたヨロイ。
故に斬れないものなど存在しない。
ダンの刀はシルバーガードを突き抜け、フィルブローンすらも一刀両断した。
シャドームーンは仮面の下から低い声を漏らし、おぼつかない足取りで後退していく。
傷口から火花と煙を飛び散らし、その度に銀色の破片が足下へと落ちていった。
たった一撃だが、その被害はあまりにも甚大。
創世王と化したシャドームーンですら、まともに立っていることができない。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
91 :叶えたい願い-ヴァン ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:24:09.26 ID:jQ2D6Xxu
「これで……全部終わりだ」

だが、それはヴァンにとっては最大の好機。
長過ぎた因縁を清算し、次に進むための好機なのだ。
十メートルほど背後へと下がり、突き出すように刀を腰に構えるダン。
そうして、再びブースターを点火。
G-ER流体と同色の青い光を噴出し、ダンはシャドームーンへと突進する。
今のシャドームーンは反撃も、迎撃も、回避も、防御すらもままならない。

「死いいいいいいいいいいいいいいいねええええええええええええええええッ!!!!!!」

多くの思いを乗せた刀が、ついに銀の月を突き抜ける。










――――はずだった。










シャドームーンに刀が到達する直前、ダンの動きはピタリと停止してしまう。
ブースターの噴出も止み、身体から光が失われていく。
あと数センチでシャドームーンを串刺しにできるのに、ダンは刀を突き出したまま動かない。
まるで時間が止まっているようだ。
しかし、ダンの身体からは火花や煙が上がっている。
先程よりもその強さは増し、パチパチと音を鳴らしていた。
翠星石とつかさは、呆然としながらダンを見上げている。

「どうしたです、なんで動かないんです? あと少しであいつを殺せるじゃないですか」

ダンを見上げながら、翠星石は狼狽している。
あれだけシャドームーンを敵視していたヴァンが、何故この期に及んでトドメを刺さないのか。
翠星石はその理由を理解することができない。
ダンの瞳からは、燃え盛る炎のような赤は消えている。
だが、翠星石は気付かない。
つかさも気付かない。
気付いたのは、シャドームーンだけだった。

「……死んだか」

淡々とした口調でシャドームーンは言う。
ダンの刃は届かなかった。
今までの傷に加え、シャドービームを長時間も浴び続けたのが原因だ。
あと一歩、あと数センチのところで、ヴァンの命は尽き果てた。
操縦桿を握り締めながら、無職のヴァンは死んでいた。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
96 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:26:17.71 ID:jQ2D6Xxu
ゾルダとリュウガの戦いは佳境を迎えていた。
ミラーワールドに侵入してから五分が経過し、互いのデッキのカードも半分ほどに減っている。
だが、戦況は五分ではない。
一方的ではないが、やはりどちらかに傾きつつある。
ただし、リュウガの方ではない。
僅かだが、ゾルダの方が優勢だった。

ゾルダの身長以上の大きさを持つ巨大な一門砲・ギガランチャーから砲弾が発射される。
リュウガがレーザーでそれを迎撃すると、大きな爆発と煙を起こした。
大量の煙が視界を塞ぐ中、ゾルダはひたすらにギガランチャーを乱射する。
相手の居場所は分からないが、広範囲攻撃で全てを制圧するのがゾルダなのだ。
一片の容赦もなく、リュウガへの殺意をもって、ゾルダは砲撃を続ける。
圧倒的なまでの絨毯爆撃に押されているのか、リュウガの反撃が飛んでくることはない。
だが、ゾルダは奇妙な違和感を覚えていた。
あまりにも呆気なさ過ぎるのだ。
暖簾に腕押しと言うべきか、いくらなんでも手応えが無さ過ぎる。
今のリュウガはヒノカグツチを失い、大きな傷を負っている。
だとしても狭間やシャドームーンにすら匹敵する力を持っていたリュウガサバイブにしては、あまりに弱すぎるのではないか。

煙が晴れ、リュウガの身体を視認できるようになる。
そこに新しい傷は存在しなかった。

「おたく、やる気あるの?」

抱いていた疑問をぶつける。

「おいおい、少しは自信を持てよ。お前の砲撃が強すぎるから防御するしかないんだろうが」
「嘘を吐くなよ」

リュウガは明らかに嘘を吐いている。
攻撃的な性質を持つリュウガであれば、ゾルダの砲撃を強引に突破して接近戦に持ち込むなど容易いはずである。
ゾルダとしては遠隔戦の方が都合がいいが、それでもあまりに上手く行きすぎているのだ。

ゾルダとリュウガサバイブの間にある戦力差を北岡は理解してないわけではなかった。
単純な数値の大小もそうだし、変身者の力量差もある。
真っ向から挑めば、やはり勝機はない。
しかし、ゾルダは志々雄真実のたった一つの弱点を知っている。
大火傷で体温調節が出来なくなった志々雄は、十五分しか戦うことができない。
だからこそ人間離れした力を持っていながら、十本刀を始めとした組織を作った。
この弱点を突けば、勝利を掴むことができるのではないかと考えたのだ。
詳細な時間までは分からないが、リュウガは自分達よりも早く戦闘を始めていた。
今の時点でも十分以上は経過しているだろう。
ライダーの変身が解除されないのは、おそらくデッキ自体に特殊な制限が設けられていたからだ。
十分しか変身できないという制限は、本来はミラーワールドの限界滞在時間を表しているものだ。
連続変身が出来なくなっていたのと同様に、主催側がデッキに細工をしていたのだろう。
それがキングストーンの影響で解除され、ライダーは本来の力を発揮できるようになったのだ。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
101 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:28:57.25 ID:jQ2D6Xxu
「アンタの目論んでることは分かるぜ、俺が燃え尽きるのを待ってんだろ?」

考えを見透かされ、ゾルダは僅かに目を見開く。
仮面を被っていなければ、その反応でリュウガに答えを伝えることになっていただろう。

「そう言うってことは、やっぱりお前は十五分しか戦えないんだな」
「くくっ、ああ、そうだぜ」

自らの弱点を曝け出すリュウガ。
あえて口にする理由は分からないが、これが事実なら余計に疑問は深まる。
時間制限の存在を自覚しているなら、何故全力で相手を潰しに行かないのだろうか。

「どうして俺にそれを言うんだ」
「ああ、そうだな、強いて言うなら……」

笑いを堪えながら、リュウガは言葉を紡いでいく。

「冥土の土産ってやつだ」

その瞬間、ゾルダの身体はガクンと崩れ落ちた。

「そろそろ来ると思ってたぜ」
「お前、何をした……!」

異様なまでの虚脱感が全身に伸し掛かり、ゾルダは立っていることすらままならない。
視界はぐにゃりと歪み、黒い靄で埋め尽くされていく。
ギガランチャーが彼の手から離れ、白い空間内を転がった。

「俺は何もしてないさ」
「ふざけるな……そんなはずないだろ!」

意識が暗闇の中に吸い込まれそうになる。
全身の感覚が無くなり、自分の肉体が意識にまとわりつく不快な異物へと変わっていく。
自らの身体に突然起きた異常に、ゾルダは理解が追い付けずにいた。

「俺は何もしていないが、お前は既に何かされていたのさ」

かつかつと足音を立てながら、リュウガは一歩ずつ歩いてくる。

「真っ先に脱出したV.V.から色々な話を聞いていた
 大半がくだらねえ与太話だったが、いくらか興味深いことを吐いてやがったな」

余裕の表れか、リュウガは喋りながら歩を進めている。
ゾルダは迎撃しようと力を振り絞るが、身体が立ち上がることはなかった。

「例えば、俺達に課せられた力の制限とかな」

力の制限。
シャドームーンや狭間の能力低下や、翠星石やルルーシュの特殊能力の制限が該当する。
カードデッキのように支給品が制限を掛けられているケースもあった。

「俺達の制限は、大体がギアスかラプラスの自在法で賄われていたらしい
 大半はそいつを弱くするためだったようだが、たった一人だけ例外がいた」
「例、外……?」

リュウガの言葉の真意が読めず、ゾルダは地面に這い蹲りながら疑問符を浮かべる。
体力を奪われつつあるせいか、呼吸も途切れ途切れになっていた。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
104 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:30:36.12 ID:jQ2D6Xxu
「重病を患っていたせいで、本来なら既に立ち上がることすらできなかった奴だ」

心臓が大きく脈打つ。

「テメエのことだよ、北岡秀一」

リュウガの身体が、目と鼻の先にまで来ていた。

現代の医学ではどうすることもできない奇病。
それがゾルダを、北岡を蝕み続けてきた不治の病の正体だった。
そして北岡がゾルダの仮面を被ることを決意した理由でもある。
この場に誘拐された際、病は完全に治癒されていたので意識の外へと追いやっていた。

「アンタの病気はラプラスの自在法で一時的に治癒されていたようだが、キングストーンがそれを解いちまったんだろうな」

キングストーンの光が全ての参加者を力の制限から解き放った。
大半の参加者は己の本当の力を取り戻したが、北岡だけは病を復活させてしまったのである。

「俺が燃え尽きるのを待つっていう着眼点は悪くなかったが、自分が大して変わらない身体だってのを自覚するべきだったな」

リュウガの足先がゾルダの脇腹にめり込む。
カードを装填したわけではない、ただの蹴りだ。
それでも志々雄自身の人間離れした力に、リュウガサバイブの性能が加わった蹴りである。
衝撃は強化スーツを突き抜け、彼の内蔵すらも揺り動かす。
北岡は仮面の下で血を吐き、無様に地面を転がった。

「テメエみたいな雑魚相手に、この俺が本気を出すと思ったのか」

リュウガがデイパックを漁り、中から魔の香を取り出す。
それの蓋を開けると、リュウガの欠けていた装甲やスーツが修復されていった。

「ククッ、これでクーガーは無駄死にってわけだ」

目の前に転がるゾルダを、死んでいったクーガーを嘲るようにリュウガは笑う。
そして、一枚のカードを召喚機へと装填した。

――――SWORD VENT――――

ブラックドラグライザーツバイが鉛色の刃を吐き出す。

「色々な武器を試してきたが、やっぱりこいつが一番しっくり来るな」

リュウガはうつ伏せで倒れているゾルダの首を掴み、そのまま身体が浮くまで持ち上げる。
薄弱な意識の中でゾルダが行えたのは、急所である腰のカードデッキを守ることだけ。
リュウガはその動きを傍目に捕らえながら、精一杯の力で刃を走らせた。
小さな悲鳴を漏らすゾルダ。
ピシリ、と頑丈な装甲に罅が入る。

「口ほどにもねえ、こんな奴が最後の相手なんて興醒めもいいところだぜ」

反撃もできないゾルダを見て、リュウガはつまらなそうに肩を落とす。
カードデッキを破壊するのは簡単だが、それでは溜まった鬱憤を晴らすことはできない。
戦闘が開始してから十分以上が経過しているため、大技を使えば身体が危なくなるのも事実だった。
このような雑魚を相手に燃え尽きたのでは笑い話にもならないだろう。
故にゾルダは剣で始末することにする。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
111 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:33:34.60 ID:jQ2D6Xxu
「ここから戻ったら、まず真っ先にあのつかさって餓鬼を殺してやるぜ
 最後の決戦に弱い奴はいらねェ」

何度も何度も剣を振り上げ、ゾルダの身体を斬り付ける。
ナイトサバイブのダークブレードと同威力の剣に、志々雄の腕前が加わったのだ。
ゾルダを破壊するまで大した時間は掛からない。
肩や胸の装甲は何度も切り裂かれ、あっという間に砕け散っていく。
声を上げる気力ももはや無く、ゾルダは無言で攻撃を受け続ける。
その醜態を見て、リュウガは不愉快そうに吐き捨てた。

「ふざ……けるな……!」

リュウガの言葉に激昂したゾルダは、マグナバイザーの銃口を漆黒の鎧に当て引き金を絞る。
零距離射撃だ。
発射されたエネルギー弾は二人の間に衝撃を生み、リュウガの腕からゾルダの身体を引き離した。
地面を転がるゾルダ。
まともに受け身を取る余力すらなく、その身体はだらしなく地面に横たわる。

「つかさちゃんを殺させなんて……絶対にしない!」
「ほう、まだ少しはやるってことか」

ゾルダの病気の末期症状は、意識を一瞬で刈り取ってしまうほどに凶悪なものだ。
それでも彼が立っていられたのは、己が死んだら世界が終わってしまうという責任感に他ならなかった。
リュウガは倒れているゾルダを愉しそうに見下ろすと、その顔面に蹴りを叩き込む。
仮面が砕け散り、血塗れの素顔が曝された。

「いい面してるじゃねえか」

仮面の破片が突き刺さり、額から血が流れ出る。
いや、今までの戦闘で既に血は流れていた。
血液がゾルダの視界を遮り、青白くなった肌を赤に彩っていく。
自分が生きているのか、死んでいるのか、それすらも定かではない。
小さすぎる呼吸音が耳に届き、ゾルダは辛うじて自分が生きていることを理解した。

「そろそろ地獄に送ってやるぜ」

カードデッキに向けて、リュウガは刃を突き立てる。

――――その時だった。

鏡が割れる音が連続して響き、ミラーワールド内を反響し始める。
状況を理解できず、辺りを見回すリュウガ。
その背後に信じられない者がいることを、ゾルダの血に塗れた眼球は映し出していた。

「……ッ!」

背後を振り返り、刃で斬り付ける。
そこにいたのは龍。
全てを斬り裂く牙と爪を持つ深紅色の龍。
無双龍・ドラグレッダー。
仮面ライダー龍騎と共に消滅したはずのミラーモンスターの姿がそこにはあった。

「何が起きてやがる……」

それだけではない。
ダークウイング、ベノスネーカー、デストワイルダー。
他にも多くのミラーモンスターが出現し、リュウガの視界を埋め尽くすかのように蠢いていた。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
117 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:35:28.41 ID:jQ2D6Xxu
「チィッ……!」

メタルゲラスとエビルダイバーがリュウガへと迫り、同時に体当たりを仕掛けてくる。
素早い身のこなしでそれを回避するが、今度はブランウイングが滑空を始めていた。
背後へと後退していくリュウガ。
その時、上空に浮いていたコアミラーから次々とモンスターが湧き出ているのが見えた。

大量のミラーモンスターの出現。
それの発端は、現実世界でナイトに変身していたヴァンが死亡したことだった。
ミラーワールドが人間の命を吸い、願いを叶えるためのエネルギーとする。
だが、ミラーワールドは本来の主である神崎士郎の手から離れていた。
その後はラプラスの魔が管理していたが、彼も死んだ。
結果として管理者は不在となり、ミラーワールドは非常に不安定な空間となった。
そこにヴァンの生命が吸収され、エネルギーとして変換されたのだ。
多くの命を吸ったミラーワールドはエネルギーの膨大さに耐えることができず、暴走を始めたのだ。

ミラーモンスターは強い魂を求めて行動する。
襲い掛かってくるモンスターをリュウガは次々と撃退していくが、それでもまだ足りない。

「ハンッ、世界が俺を拒絶してるわけか、面白え!」

ミラーモンスターを両断しながら、リュウガは愉悦を噛み締めるように吠える。
この事態の元凶は管理者の不在とヴァンの死だが、リュウガはあえてそう捉えた。
世界が弱肉強食の理を拒んでいる。
甘い泥濘のような世界を望み、それを破壊しようとしているリュウガの動きを妨げているのだ。

「なら俺がテメエすらも支配してやる」

世界が志々雄を拒むなら、世界すらも服従させるまでだ。
所詮この世は弱肉強食。
世界よりも志々雄真実の方が強者であることを証明し、この世を地獄へと変えるまでである。
デッキから一枚のカードを抜き、ブラックドラグバイザーツバイへと装填。
そうして絵柄が変わったカードを、再び読み込ませる。

――――STRANGE VENT――――

――――UNITE VENT――――

空間が軋みを上げ、巨大な歪みが発生する。
それはまるでブラックホールであり、周囲で蠢いていたモンスター達を次々と呑み込み始めた。
ストレンジベントが変化したのは、ミラーモンスターを融合させるユナイトベントのカード。
力を増した融合のカードは、野良のモンスターすらも呑み込みはじめた。
大量発生していたモンスターが全滅するまで時間は掛からない。
重厚な種も、翼のある種も、幻獣種も、等しく歪みの中に吸い込まれていく。
そして最後にブラックドラグランザーが吸収され、ブラックホールは弾けるように爆発した。

爆発の奥から現れたのは醜悪な合成獣。
メタルゲラスの胴体に、バイオグリーザの両脚。
臀部からはベノスネーカーの尾が生え、胸部にはエビルダイバーの貌がある。
全身をサイコローグのパイプが繋がり、エネルギーを供給していた。
左腕はデストワイルダーの爪で、右腕はボルキャンサーの鋏。
背中からはダークウイングとブランウイングの翼が対になるように生え、それに覆い被さるようにゴルトフェニックスの両翼がある。
そして、首は二本あった。
紅と黒の二匹の龍の首。
ドラグレッダーとドラグブラッカーの首だった。
それぞれの頭部からゼール系モンスターの角が伸びている。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
121 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:38:09.35 ID:jQ2D6Xxu
二匹の龍が哭くと、耳を塞ぎたくなるような奇声へと変わった。
リュウガの身長を遙かに上回る巨大な生物。
この世に存在するあらゆる生物の特徴を持ち、それでいてどの生物とも似ていない。
あまりにも邪悪で禍々しい合成獣。
その名は、ジェノサバイバー。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

ジェノサバイバーを背後に従えながら、リュウガは高笑いを上げる。
コアミラーから新たなミラーモンスターは現れることなく、ミラーワールドの中で響き渡るのは彼の笑い声だけだった。
ついに志々雄真実は世界すらも支配下に置いた。
背後に従えている獣はその証である。

「邪魔が入ったが、今度こそ……あん?」

ゾルダにとどめを刺そうとして、リュウガは不機嫌そうに舌打ちする。
生まれたての子鹿のように脚を震わせながら、ゾルダが立ち上がっていたのだ。

「まだ立ち上がる気力があったのか、面倒臭え」

徹底的に痛めつけられた上、今のゾルダは不治の病に侵されているのだ。
こうして立ち上がれただけでも賞賛に値するだろう。
だが、あまりにも無意味。
今にも朽ち果てそうな身体で、リュウガとジェノサバイバーに対抗する術などないのだ。

「いつまでもみっともないぜアンタ。もう俺が殺してやるよ」

一歩ずつ歩いていくリュウガ。
悪鬼の足音を耳にしながら、ゾルダはデッキから一枚のカードを抜く。
それをマグナバイザーに装填するでもなく、眼前へと翳す。
すると、異変が起きた。

ジェノサバイバーが引っ張られるように、一歩ずつ前へと踏み出し始めたのだ。

「テメエ、その札は契約の……!」

ゾルダが手にしていたのは、浅倉の死後に回収した支給品。
ジェノサイダーに使おうとして使わなかった契約のカードだ。
契約(コントラクト)は、どんなに強力なモンスターであろうと相手の意志に関係なく強引に従えることができる。
それが複数のモンスターから形成される合成獣だとしても関係がない。
神崎士郎の開発したシステムは、あらゆるミラーモンスターに対して平等だった。
全てを統率するドラグブラッカーはリュウガの契約モンスターだが、それ以外は全てが野良である。
故にジェノサバイバーの因子は圧倒的に野生の方が強く、契約の魔の手から逃れることはできなかったのだ。

「死に損ないが邪魔をしやがって、テメエはもう終わってるんだよ!」

契約モンスターを奪われれば、ライダーは著しく弱体化してしまう。
ドラグブラッカーが抵抗しているため、まだ契約が成立するにはしばらくの猶予があった。
リュウガは走る。
契約が成立する前にゾルダを殺せば、それで全ては終わるのだ。

「……させるわけ……ないだろ」

尽き果てそうな意識を必死で繋ぎ止め、マグナバイザーの銃身を握り締めるゾルダ。
病気と怪我による二重の苦痛が肉体を苛み続けるが、それでも倒れるわけにはいかなかった。
自分が死ねば、世界は志々雄が支配する地獄へと変わる。
そうすればつかさを始めとする多くの人達が苦しむことになるのだ。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
126 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:41:08.44 ID:jQ2D6Xxu
死に逝く意識を覚醒させたのは、聞き覚えのある慟哭だった。
そうして目を開けた時、暗闇の中に映ったのは王蛇のジェノサイダーに酷似した化け物。
それは北岡の罪の象徴だった。
もしあそこで王蛇にトドメを刺すことができれば、つかさに新たな十字架を背負わせることはなかった。
自分が不甲斐ないからこそ、つかさは立てなくなるくらいに追い込まれてしまったのだ。

今こそ、全てを精算する時なのだ。
ふがいない自分に別れを告げ、課せられた責任を果たす時なのだ。
マグナバイザーをゆっくりと持ち上げる。
手に馴染んでいた武器は重く、視界はまともに機能しないほどに掠れている。
それでも、ある一箇所だけはしっかりと映していた。
リュウガの腰に装着されたVバックルの中心。
クーガーの一撃にで罅割れ、脆くなっているカードデッキだ。
これを破壊すれば、ライダーの契約は破棄となる。
ゾルダに残された力では、一発撃つことが限界。
それで命中する確率は限りなく低いだろう。
かつて総合病院で王蛇から逃げようとした時と同じシチュエーションだった。
あの時は次元が助け舟を出してくれたが、今は自分しかいない。
だから、やるしかない。
出来る出来ないの問題ではなく、成功させるしかないのだ。
引き金を引く。
マグナバイザーが仄かに震え、銃口からエネルギー弾が迸る。
遅れて、銃声が響き渡る。
そして――――


パリン、と音が鳴る。


エネルギー弾はリュウガのカードデッキに命中し、それを粉々に粉砕した。

「……」

リュウガの変身は強制的に解除され、ミラーワールドに志々雄の姿が曝される。
ドラグブラッカーの契約が破棄になったことで、ジェノサバイバーはゾルダの契約のカードへと吸い込まれていった。

「……」

走っていた志々雄はゆっくりと速度を落としていき、やがてその場に立ち尽くす。
自らの敗北が信じられないのか、無言のまま己の身体を見回していた。

「お前は……やり過ぎたんだよ……」

ゾルダはそんな彼の姿を傍目に置きながら、掠れる声で呟く。
もし志々雄がユナイトベントを発動しなければ、ゾルダに勝ち目は無かった。
大きすぎる欲望が、世界への反逆心が、逆に志々雄をへと追いやったのだ。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
131 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:42:37.19 ID:jQ2D6Xxu
「そうか、俺は負けたのか」

自らの肉体を見回しながら、志々雄は淡々とした口調で言う。
リュウガを失った今、彼に勝ち目は無かった。

「ここまでだな」

その声の中には全ての失敗に対する悲観も、ゾルダへの敵意もない。
唯一存在するのは、祭りが終わった後のような静寂感だった。

「俺が弱くて、アンタの方が強かった。それだけの話だ」

北岡と志々雄の間にあった実力差は圧倒的だった。
それでも最後に勝ったのは北岡だった。
故に志々雄は弱く、北岡は強い。
弱肉強食とはそういうものだ。
敗者は全てを失い、どこまでも惨めでなければならない。
志々雄の身体が溶け、粒子として散らばり始める。
生身の人間がミラーワールドに滞在できる時間は少ない。
それはライダーだった人間も同様であり、敗者は空間の糧として消え行くだけである。

「まあ、それなりには楽しかったぜ」

三村やタバサを従え、主催者との戦を宣言した。
そこから様々な連中と戦い、駆け引きをし、そしてここまで至った。
未来の情勢や異世界の知識を知ることができた。
ここで得たのは、古惚けた小さな島国にいては永遠に届くことがなかったものばかりだ。

「フフ……」

だから、笑う。

「フフフハハハハハハ……」

高らかに、笑い声を上げる。




「ハーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」




身体が少しずつ溶けて行こうが関係ない。
自らが消滅する最後の瞬間まで、志々雄真実は笑う。
心の底から楽しかったと告げるように、狂ったように笑い続ける。
それが幕末の悪鬼と呼ばれた男の最期だった。


志々雄の消滅を確認し、ゾルダはその場に崩れ落ちる。
もはや意識を保つ気力すらない。
全身に大怪我を負っているのに、身体は全く痛みを感じることはない。
北岡の病気は既に末期状態へと進行していた。
バトルロワイアルに参加させられなかったら、あと数分もしないうちに息を引き取っていたはずなのだ。
視界は完全に暗闇に閉ざされ、自分が誰かすら定かではなくなる。
抗いようのない死が、すぐ傍まで来ていた。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
136 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:44:18.00 ID:jQ2D6Xxu
光が射す。
強烈な光が北岡の目前に光臨し、暗闇をあっという間に塗り潰していく。
それは生命の光だった。
自分以外の全てのライダーが死亡したことで、北岡は願いを叶える権利を得たのだ。

「ぁ……あぁぁ……」

手を伸ばす。
己の願いを叶えるため、奇跡へと手を伸ばす。
そして、ピタリと止まった。
脳裏にふと疑問が過ぎたのだ。

今の自分の願いとは一体何なのか、と。

初めは永遠の命を手にするためだった。
だが、時を経るごとに戦いは虚しくなり、気が付いた時にはどうでもよくなっていた。
永遠の命への執着もなくなり、浅倉も死に、志々雄の野望も打破した。
今の北岡に叶えたい願いなどない。
シャドームーンはまだ生きているが、死に損ないの自分が加勢してもどうにもならないだろう。
狭間と翠星石ならば、きっと銀の月を打ち倒してくれるはずだ。
今の自分に残された役目は、静かに朽ち果てるだけではないのか。

――――私が代わりに死んでればよかったんだ

「だ、めだ……!」

ジェレミアの死であれだけ苦しんでいたつかさ。
ようやく立ち直れたというのに、ここでさらに北岡が死んでしまったら。
彼女は今度こそ本当に立ち直れなくなってしまうかもしれない。
それに約束したのだ。
元の世界に帰り、料理を作ってもらうと。

まだ死ねない、死ぬわけにはいかない。
目の前の光に向かって、北岡は精一杯手を伸ばす。








――――そして、世界は終わりを告げる。







  ☆ ☆ ☆
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
144 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:46:19.31 ID:jQ2D6Xxu
ヴァンが力尽き、戦える者は翠星石以外に居なくなっていた。
シャドームーンの胸部には生々しい傷跡があるが、致命傷にまでは至っていない。
ゆっくりとではあるが修復も始まっていた。

「やはり最後の敵になるのはキングストーンか」

サタンサーベルが折れても、未だにシャドームーンは健在である。
サタンサーベルは確かに創世王の象徴だった。
だが、所詮は象徴だ。
創世王は、ゴルゴムの支配者は、確かな存在としてここに生きているのである。

「決着を付けるぞ、人形」
「望むところですよ、この銀ぴか野郎!」

視認できるほどの恐怖に当てられても、翠星石は欠片も物怖じはしない。
守るべき人がいるからこそ、翠星石は心を保つことができる。

そんな時、彼らの頭上を強烈な光が照らし出す。
キングストーンに優るとも劣らない、力に溢れた光である。
思わず目を瞑ってしまう翠星石。
シャドームーンも同様であり、マイティアイを以てしても光の奥を見透かすことはできなかった。
光はゆっくりと地上へと降りていき、やがて翠星石の横へと着地する。
そして光が収まった時、そこには一人の仮面ライダーが立っていた。

「お前は北岡……ですか?」

傍に立つ人間を見上げながら、翠星石はライダーの名前を呼ぶ。
だがそれは疑問系だった。
ゾルダの仮面を着けているが、どこか雰囲気が違っているのだ。

「新たな力を手に入れたか」

ゾルダを見据えながら、シャドームーンはそう評する。
かつてとは比べものにならないほどに、今のゾルダは力に満ち溢れていた。

「ああ、ちょっとね」

実際に口にしたわけではないから定かではない。
しかし北岡が光に触れた時に願ったのは、つかさと共に元の世界に戻ることだった。
その結果、全身の負傷と不治の病は消え去っていた。
視界もはっきりと世界を映し、ゾルダの装甲や仮面も修復されている。
自らの肉体からは今までと段違いの力が溢れていた。
そして、デッキには大量のカード。
全てのモンスターと契約し、あらゆる種類のカードが収納されていた。

「その力で貴様は何を望む」

ここに至るまで、シャドームーンは多くのライダーを屠ってきた。
ただの人間が世紀王に坑がうだけの力を身に付けることができる道具、それがカードデッキだ。
一定値まで力を高めるのか、それでも強者が変身すればより力を増すのか。
戦いを重ねていくうちに興味は深まり、そして新たな進化を遂げる者すらも現れた。
狭間との契約で休戦をうやむやになってしまうかと思ったが、再び戦う機会が訪れたのだ。
目の前にいるのは、紛れもなく創世王の敵である。
それを認識したシャドームーンは、最後の仮面ライダーへと問い掛けた。

「決まってるでしょ
 お前を倒して、元の世界に戻るためだ」

背後にいるつかさに視線を配りながら、仮面ライダーはシャドームーンへと宣言した。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
147 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:47:54.55 ID:jQ2D6Xxu
【二日目/午前/始まりの部屋】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅と蒼星石と水銀燈と雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン、キングストーン(太陽の石)@仮面ライダーBLACK(実写)
   ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン、庭師の鋏@ローゼンメイデン、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0〜1)
[状態]首輪解除済み、全身にダメージ
[思考・行動]
1:銀色オバケ(シャドームーン)を殺す。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※ローザミスティカを複数取り込んだことで、それぞれの姉妹の能力を会得しました。
※キングストーンを取り込んだことで、能力が上がっています。
 またキングストーンによる精神への悪影響を克服しました。
※nのフィールドに入る能力を取り戻しました。
※柊つかさと契約しました。


【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、契約の指輪(翠星石)
[支給品]支給品一式×4(水のみ3つ、鉛筆一本と食糧の一部を消費)、確認済み支給品(0〜1) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着、
    食材@現実(一部使用)、パルトネール@相棒(開封済み)、こなたのスク水@らき☆すた、メタルゲラスの角と爪、
    咲世子の煙球×1@コードギアス 反逆のルルーシュ、ジェレミアの確認済み支給品(0〜1)、ジェレミアの仮面
[状態]ダメージ(中)
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
1:錬金術でみんなに協力したい。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※翠星石と契約しました。


【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]:レイの靴@ガン×ソード、仮面ライダーのデッキ@仮面ライダー龍騎、ブラフマーストラ@真・女神転生if…
[所持品]:支給品一式×3(水×2とランタンを消費)、CONFINE VENTのカード@仮面ライダー龍騎
     FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13) 、RPG-7(0/1)@ひぐらしのなく頃に、榴弾×1、デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、
     五ェ門の確認済み支給品(0〜1)(刀剣類では無い)、昇天石×1@真・女神転生if…、リフュールポット×1、デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、
     贄殿遮那@灼眼のシャナ
[状態]仮面ライダーに変身中。
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
1:シャドームーンを殺す。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
※レナ、狭間と情報交換をしました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
※最後のライダーになったことで願いを叶えました。
 最後に思っていたのはつかさと共に元の世界に戻ることでしたが、詳細はお任せします。
※デッキには龍騎に登場する全てのアドベントカードが入っています。
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
153 :叶えたい願い-北岡秀一 ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:49:26.98 ID:jQ2D6Xxu
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)
[状態]:左手の手甲が破壊、全身に火傷、胸部に大きな裂傷(全て修復中)
[思考・行動]
1:他の参加者を皆殺しにする。
2:翠星石を殺してキングストーン(太陽の石)を回収する。
【備考】
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※創世王を取り込みました、基本能力が更に上昇しましたがそれ以上の変化があるかは後続の方に任せます。
※本編50話途中からの参戦です。
※会場の端には空間の歪みがあると考えています。
※空間に干渉する能力が増大しました。
※nのフィールドの入り口を開ける能力を得ました。
※狭間との契約は果たされました。

【共通の備考】
※彼らが戦っている空間は0話にて殺し合いの開催が宣言された場所です。
 天井も床も壁もありませんが、普通に立つことも歩くこともできます。
※空間内にダン・オブ・サーズデイ@ガン×ソードが放置されています。
 その内部にはヴァンの遺体とヴァンのデイパック(支給品一式、昇天石×1@真・女神転生if…、 アドロップ×1@ヴィオラートのアトリエ、調味料一式@ガン×ソード)があります。
※空間の何処かにヒノカグツチ@真・女神転生if...が刺さっています。
※クーガーと志々雄の所持品は消滅しました。


【ストレイト・クーガー@スクライド 死亡】
【ヴァン@ガン×ソード 死亡】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- 死亡】
多ジャンルバトルロワイアル Part.17
157 : ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 02:50:37.70 ID:jQ2D6Xxu
以上で終了になります。
長時間の投下にお付き合いくださりありがとうございました。

誤字等がありましたらご指摘お願いします。
多ジャンルバトルロワイアル Part.16
670 : ◆ew5bR2RQj. [sage]:2013/10/10(木) 03:08:11.90 ID:jQ2D6Xxu
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