- P「復帰初日の事務所の空気が最悪だった
247 :安価六月一日[sage]:2013/06/02(日) 20:54:58.11 ID:VeSyb3cS - ゲームパットを手渡された。
「今日は彼方さんに花を持たせてあげましょう。ええ大事な日ですから」 部屋には不釣り合いな、大きなモニターの前に座らされた。 そういえば彼の使ってるパソコンも買えば二十万円は下らないハイスペックな物だ。高校生でバイトしてるとも聞いた事ないから、親にねだって買ってもらったのか。 「とんでもない。ちゃんとバイトしてお金貯めたんですよ。買ってすぐ辞めましたけどね。ふふふ」 そのまま続けてればいいのに。 でも、引きこもり対人恐怖症で出不精な上に引っ込み思案で優柔不断な彼がバイトしてたってのは意外だった。 ともあれ、ゲームパットを渡されてモニターの前に座ったって事は、今からゲームをやろうという事なのだろう。 「ちょっと待ってよ。遊びにきたわけじゃないんだけど」 「ええ知ってますとも。でも息抜きが大事だって言ったのはそちらでしょう」 「なんかあったの? いつもと雰囲気ぜんぜん違うけど」 「そりゃもちろん。今日は大事な日なのです」 小さなちゃぶ台を持ってきて、その上にアケコンを乗せた。 って事は格げー? 「こらこら少年よ。私、格げーなんてしないよ?」 「もちろんハンデありですよ。これを機にやってみたらいいんじゃないですか?」 「そもそもゲームそんなしないし。持ってるのも携帯機だけだし」 私の話に聞く耳持たずお構いなしにゲームを立ち上げた。 「ちょっと、おる太くん?」 「いいじゃないですか。ちょうど相手が居なくて暇だったんです」 「相手になれるとも思わないけどいいの?」 「その為のハンデです」 モニターにはシリーズ発売から二十周年を迎えた有名ゲームのタイトルが表示されていた。ホントに小さい時にちょこっとやった事があるシリーズだけど、すぐに飽きてやめてしまった。 何年振りだろうか、と思ったけど私はゲームしにきたわけじゃなく真面目に彼のテレパス訓練を指導するのが目的であって、こんな場面を例の自称彼女のヤンデレ少女に見られたら仲よく遊んでましたと勘違いされる。 それが一番怖い。 それにおる太くんの雰囲気もいつもと違う。そういえば前に偶然にゲーセンで見かけた時は鬼の形相で、しかも周りにギャラリー作るほどの腕前だ。 ハンデがあろうと私が相手になるはずもないのだが。 そうこうしている内に彼があっという間にハンデの設定を終えて、もうキャラクター選択に入っていた。 よく知られた手足が伸びるインド人を選んでいた。 「あー! 違いますよ彼方さん! なんでリュウなんて選ぶんです!?」 「ダメなの?」 「せっかくそっちに花を持たせると思ったのに! ここはザンギ一択でしょ!?」 「えぇ?」 なんか知らないけど私は赤いパンツのアマレスラーを使う事になった。 余談だが、見た目から悪役と思われがちだがシリーズ一貫して実はすごい善玉のキャラクターらしい。某アニメ映画でも悪役キャラにならんでいたが実際は誇り高きレスリング世界王者という設定だ。 すごくどうでもいいけど。 ステージはなんか味気ない、背景が真っ白なポリゴンのみの場所。 さっそく試合開始。 と思ったが。
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248 :安価六月一日[sage]:2013/06/02(日) 20:55:26.64 ID:VeSyb3cS - 「あれ?」
やられた。 「何が起きた?」 「安易に近づくからです。馴れたダルシム使いに簡単に近づけると思わないほうがいいです」 「知らないよそんな事」 「これから覚えましょう」 「いやいいけど」 第二ラウンド。 私はガードしつつ前進し、相手のしゃがみ強パンチのタイミングを見てジャンプしてさらに接近した。対空性能のあるキックで反撃してくるが空中でガード。 これくらいなら初心者の私でも出来る。 「うにゃ?」 接近して束の間。ヘッドロックされてそのままゲンコツがロシア人の頭に連打され、解放された瞬間燃やされた。 起き上がってとりあえず反撃と思ったけど、起き上がりざまに伸びるパンチが飛んできて、また距離を離された。こっちは接近しないとどうにもならないので、また近づいていったら待ってましたとばかりにまた燃やされた。 ダウンして、起き上がったところにキックが来てKO。 まさに手も足も出ない。 「……」 「しっかりしてください」 なにこれ初心者狩りか。その初心者の目の前でやるとはいい度胸じゃないか。 「なんのためのハンデですか。そっち当たれば勝てるくらいにしてあるのに」 「あのね。私初めてやったようなもんなの。そっちアケコンまで持ち出して本気じゃない」 「なら逆にしてみますか?」 「いいよ。使った事ないもん」 「キャラを逆でもいいですけど、なら負けるわけに行かなくなるんですよ」 「なんで?」 「ふふふ」 普段おとなしい少年の目がギラついていた。 いつもこうならいいのに、と一瞬考えたけど不気味で嫌だ。これなら怯えた子犬みたいな普段の彼のほうがいい。 「なら次は僕がザンギ使いますよ……くす」 次の対戦。 彼は言った通りザンギを使った。 私はお馴染みの昇竜一家の飛び道具が強い方。 しかし。 私の繰り出す飛び道具はするする交わされ、手で消滅させられ、あっと言う間に接近されて、ボコボコにされたと思ったら、ファイナルアトミックバスターで華麗に敗北した。 「……勝てるか!」 ゲームパッドを投げた。 ワイヤレスだから気にする事はない。 「なによこれ! 私イジめてたのしいわけ!?」 「そういう訳じゃありません。普段ならちゃんと教えながらやるんですけど」 「じゃ今教えなさいよ! 勝てるわけないじゃん!」 「でも今日は負けるわけにはいかないのですよ。彼方さんだって今日の負けはダメなんですよほんとは」 「なんでよ!」 「知らないですか? 今日は何日だと思ってるんですか?」 「六月一日」 「ザンギエフの誕生日なんですよ」 「知るか!」
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249 :安価六月一日[sage]:2013/06/02(日) 20:55:57.68 ID:VeSyb3cS - / ̄ ̄\
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