- 他に行き場所の無い作品を投稿するスレ4
254 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/03/09(土) 16:25:45.48 ID:GNWdI4bf - ちょっと失礼いたします。
普段書き物はしない上に公開予定もないのですが、 知人の呟きを読んでいて、ふと書き散らしたものを落とすべく、こちらにお邪魔してみました。 駄文ゆえお見苦しいですが、投下をいたします。 お題は [プラネタリウム、図書館、手紙、つた、あめそら] 即興ゆえ推敲が甘い事極まりなくお恥ずかしいですが。
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255 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/03/09(土) 16:26:18.73 ID:GNWdI4bf - 「図書館」
「うん?」 「プラネタリウムもいいなぁ」 本に向けていた視線をキッチンへ移すと、彼女はゴム手袋を放る所だった。 ゆるく、くにゃりとしなる脱皮。 定位置であるシンク縁への着地。 小さく跳ねる水滴。 お見事。 「出かけたいの? いいよ、準備しようか」 視線を戻す勢いを殺さず、手元の本を通過して窓まで。 レースカーテン越しの光は掴み所がない。 日差しはお預けになりそうな気配だ。 雨空というほどでもないが、夕方は少し冷えるかもしれない。 上着と昼食と行き先の候補を脳裏でシャッフルしながら聞くと 意外にも言いだしっぺは軽く眉をひそめてあやふやなかぶりを振っていた。
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256 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/03/09(土) 16:27:04.68 ID:GNWdI4bf - 「出かけたく、は、ないかも」
「……うん?」 「出かけたいけど、別に出かけたいんじゃなくて」 ディレイ。 考え込んで噛む唇。 脳内のどこかを一生懸命見つめている目。 引っかかっていた歯から外れ、アヒルの様になった唇に伝達される命令。 「どこに行きたいって言うんじゃなくて、隣に座れるところに行きたいな」 [eureka!] と書いてありそうな笑顔。 日本語だとさしずめ[ドヤ顔] って表現になるだろうかと思いながら笑う。 もう少し上品な単語を探すなら、何が良いだろうか。 「確かに我が家は広くはないけどね?」 「そーうーじゃーなーくーてー」 じたばた。
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257 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/03/09(土) 16:28:08.26 ID:GNWdI4bf - 「家の中にいてもさ、例えば久しぶりの人からのメールとか手紙を読んでたら、
なんだか家じゃないみたいな気がするじゃない? ちょっとした非日常?」 「なかなかのファンタジィだね。最後は吸い込まれちゃう?」 「そうそう、そして蔦絡まる古城でどきどきわくわく大冒険、ってそうじゃなくてさ!」 「いいツッコミ」 ヒト顔面頬部生息型河豚の生態観察。 威嚇行動。 でもつついたらやわらかい事は以前の観察で確認済みだ。 帰巣する河豚。 脳裏へフォーカス。 サーチ。 リード。 メモリに移行。 ディレイ。 言語化プログラム実行。 エラー。 再実行。 構築中……。 eureka! くるん、と僕の顔に戻る焦点。 「図書館とかプラネタリウムとか、流行らない博物館とか、なんかそんな感じの所。 外だけど中で、人もいるけどちょっと遠くて、手をつないで並んで座れて、 で、家の中では見られないもの、そこに行かないと見れないものがあって、 ちっちゃな声で『すごいね』とか『あれ知ってる』とか、言えるの」 そのわがままをどれ程いつくしんでるか、 この観察のプロセスをどれ程たのしんでいるか、 君は多分、知るまい。
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258 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/03/09(土) 16:29:26.69 ID:GNWdI4bf - 「訪問頻度を基準で決めるならプラネタリウムだけど、片道どれくらいまでがいい?」
「どこでもいい!」 時々君はイヌ科にも変態する。 頭上にはエクスクラメーションマークとピンと立った耳。 背後に音速の尻尾を幻視。 妄想のパラメータを落とす。 「若干遠くてもよければ某スカイツリーと某サンシャインシティ、 近場で歩きで済ませるのをご希望なら某市民向けプラネタリウムかな?」 「その脳は何処のデータベースに接続してるの……?」 「残念ながら電脳化はまだ実現されてないよ。タチコマすらいない世界だ」 「うちの旦那はデカトンケイルだったのか」 「そこはもうちょっとこう、HALとか京とかさ」 「スカイネット?」 「……完全に俺悪役ですやん」 「じゃあ譲って、マトリックスでもいいよ」 「どっちにしろ敵ですやん」 「ふぬぬ。じゃあ折角だし電車でお出かけがいい」 「どこから『じゃあ』に接続したの?」 「女って感性の生き物らしいよ。理屈じゃないんだって」 「開き直りよって……」 「だから王子様にエスコートしてもらわないとすぐさらわれちゃうんだよっ」
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259 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/03/09(土) 16:30:19.94 ID:GNWdI4bf - 一体どこから『だから』に接続するのだろうか。
君は僕の世界では最強の未知の生物だ。 観察しても観察してもまた理解不能な所が増える。 まぁ、いいか。 「傘は折り畳みでいいよね? 星を見に行くのに長いのは野暮だし」 「折角のファンタジィに持ち込むならせめてライトセーバー型傘でないとなあ」 「あなた緑にしてね」 「あんなにくるくる回れません」 「ちぇー、じゃあ赤でもいいや」 「あんなにコーホー言えません」 「えー、けちー」 「ちょっと待って、今のどこにけち要素があったの……? 」 とんとん、とアスファルトを蹴る音を背に鍵をかける。 冒険の始まりだ。 「そんな装備で大丈夫か?」 「大丈夫だ、問題ない、ぐわー風が強いー」 「もう外ですよ奥さん」 「そっちが振ったんじゃん……」 河豚。 出現条件の観察はいつもながら興味深いものだ。 愛すべき日常というセーブデータは、こうやって増えていくのだろう。 こんな些細な非日常を含んで。
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260 :創る名無しに見る名無し[sage]:2013/03/09(土) 16:31:10.66 ID:GNWdI4bf - 以上御目汚しでありました。
ありがとうございました。
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