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創る名無しに見る名無し
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」

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「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
46 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 00:40:38.97 ID:mMOqq/KB
「えーと・・・。」

「余計なお世話。あんたが心配する必要ない。」

主犯の言葉は、最もだった。

色白でうすっぺらい身体をもつ主犯にとっては、縁のない心配事だった。

なんでそんなことを聞いてしまったんだろうと自分に問いかけた。

主犯が本当は自分に合わせてくれてるんじゃないかとか、本当は食べたくないんじゃないかとか。

でも、私にそう思わせる原因として、デザートを食べる時に主犯に迷いがあったことは、事実だった。
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
47 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 00:41:19.03 ID:mMOqq/KB
それから私達は、たらふく食べた後、街をぶらぶらして、再び学校へ向かった。

学校へ向かった理由は、そう、死ぬため。

向い始めの時は、特に何も考えずにぼーっと歩いてた私だったが、

徐々に学校に近づくにつれて、足取りは重くなっていった。
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
48 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 00:41:59.21 ID:mMOqq/KB
校門をくぐり、朝に降りたはしごを登る。

今度は、私の足も主犯の足も、よたよたとしていた。

屋上につき、二人はうつむく。

そして、重い空気の中、私はずっと聞きたかった事を、口にした。

「私は、もうすぐ死にます。でも、ひとつだけ聞かせて下さい。」

「ん?何。」
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
49 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 00:42:33.43 ID:mMOqq/KB
主犯の茶色い巻き髪が、風に揺れる。

冷ややかな空気が全身をつたう。


「なんで、なんでいじめてた私なんかを、助けてくれたんですか?」
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
50 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 00:43:40.81 ID:mMOqq/KB
主犯は下に広がる住宅街をながめたまま、こちらも見ずに言った。


「は?」


彼女の横顔から見える瞳には、深いなにかが隠されているように見えた。


「私、死のうとしてたんですよ。なのに」


「助けてなんかない。第一、あんたのその格好はなんのためだと思ってるの?」


「・・・」


「今日一日は、いつのために過ごしたと思ってるの?」


「・・・!」


「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」



彼女の言っていることは正論であったが、納得のいかないことが一つあった。
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
51 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 00:44:58.90 ID:mMOqq/KB
「でも、もう、よ、夜ですよ。」



そう、もう夜なのだ。彼女の望んでいた青空は、もうない。



だから、青空にふさわしい格好をしたことも、今日一日を楽しく過ごしたことも・・・。




「あ、あなたが今日したことも、わたしが今日したことも、す、すべて無駄だったんですよ。」




わかってる。こんな変な言いがかりを付けて、自分は死を免れようとしてるなんてこと。

簡単に命を絶とうとして、簡単に命を守ろうとして、自分は命をなんだと思っているんだろう。

そんなへんな罪悪感と嫌悪感が私の頭の中に渦をまく。
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
52 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 00:45:38.56 ID:mMOqq/KB
相変わらず、視線を変えようとしない主犯は、考え事をしているようにも見えた。



夜風が強くなる中、主犯がつぶやいた。



「無駄じゃない」



風のせいでうまく聞こえなかったが、そうつぶやいたのはわかった。



「・・・どういう意味ですか?」



私は、小さい声で聞き返した。







「だって、今日の朝屋上であんたとあたしが会わなかったら、二人とも死んでたから。」
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
53 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 00:47:23.61 ID:mMOqq/KB
衝撃だった。


「・・・どういう意味ですか・・・・」


驚きが隠せなくて、かすれた声で私は言った。


「二人は、同じ死因でね。」


「・・・!」
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
54 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 01:13:12.41 ID:mMOqq/KB
主犯が・・・あの、何もかもが上手くいってそうに見える主犯が。



「あたしが汚いものが嫌いなのは知ってるでしょ。だから、屋上行って死のうと思ったけどあんたを見たときに、


 最後くらい、いじめっこくらい、綺麗にしてやろうと思ったんだよ。」


「・・・」
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
55 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 01:32:56.52 ID:mMOqq/KB
「あたしの周りの人間、汚い人ばっかで。お金お金って、いつもお金の話ばかり。

 ママだってパパだっておばあ様だってお爺様だって・・・あたしの親族は皆そればっかり。」


主犯の家はお金持ち。代々続く老舗ってわけでもなく、歴史を残しているわけでもない。


いわば、成金というものらしい。


「生まれた時には既にあたしの周りはお金や新しいもので溢れてた。お金はあるけど普通の幼稚園に通ってたから、

 すぐに周りの子との違いに気付いたの。」

「でもそれなりにあたしはそのことを理解して、周りとの違いに耐えながらも頑張ってきた。」
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
56 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 01:34:07.40 ID:mMOqq/KB



「ぱぱ、あのお人形さん欲しい!」


「あんなものが欲しいのかい?バカだなぁ。お前にはもっと高貴なものが似合う。」


「でも、あれが」


「ほら、こっちのジュエリーショップへ行ってみよう」


「・・・」



「まま、今度の金曜日、授業参観があるんだ!」


「あらそう、じゃあその日のために新しいお洋服買いましょうか。」


「あ、うん、それでね、授業参観にままも・・・」


「ままはお店の取引のお約束をしなきゃならないの。わかるでしょ?今一番大事な時期なの。」


「・・・」


「どうしたのそんな顔して、何か欲しいものでもあるの?」


「ううん、なんでもない。」
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
57 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 01:34:47.17 ID:mMOqq/KB
「まま!ちょっと見て」


「ほら、これあげるからあっちいって頂戴。」


「いいよお金なんか!あたしが言ってるのはそうじゃないんだよ!」


「・・・なあに?」


「・・・母の日だから・・・ままにハンカチを買ってきたの。」





「・・・どこのよそれ?どこのブランド?」


「そこの・・・お店で・・・」


「あなた、自分の立場わかってらっしゃる?そんなどこのものかわからないもの、人にプレゼントして恥ずかしくないの?」


「えっ」
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
58 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 01:35:26.60 ID:mMOqq/KB





次第に主犯は、欲しいものを欲しいと言えず、嫌なことも嫌だと言えず、好きなものも好きだと言えなくなっていったそうだ。


親の愛情を注がれずに育った主犯は、きっと他人に対してバリアを張るようになってしまったのだろう。


だからかもしれない。学校での主犯は本当にお嬢様で、ニコニコしていて、気品があって、何もかもが完璧なロボットのように見えた。


けれど、なにかしらの理由で私だけに対するバリアが壊れてしまった。
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
59 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 01:36:10.85 ID:mMOqq/KB
「所詮ぱぱとままはあたしの愛よりお金なの。あたしへの愛よりもお金。あたしが赤ちゃんの時の面倒は全てベビーシッターに任せたって話を聞いたときは、


ぶん殴ろうかと思っちゃった。みんなの前でおしとやかなお嬢様装うのも精神的にすごく辛いし。ああもう死のうって。」









けれど、どんな理由があろうと私も自殺まで追い込まれたのは紛れもない事実。


ここで主犯を許してしまったら、私はお人好しになるのだろうか。


でも、許さなかったとして、それがなんになるのか。
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
60 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 01:37:19.37 ID:mMOqq/KB
「本当はあんた嫌いだったけど、どうせあたしはすぐ死ぬから、もういいやって思っちゃってさ。」


「・・・」


「・・・」


私と同じような言い分だった。



「デザートを食べちゃおうか食べまいか迷ってたのも、死のうか死ぬまいか迷ってたからですか?」


「ご想像にお任せするわ。」


「・・・食べたってことは、死ぬんですか?」


自分でもわからないけど、涙が出てきた。


「何ないてんの。」


そう言いつつ、主犯も涙をこらえているのがわかった。


「死ぬんですか?」


私はもう一度言った。


数秒間の沈黙が流れた。


葉っぱと葉っぱのこすれる音が敏感な耳に届く。
「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
61 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 02:04:38.66 ID:mMOqq/KB
私はわずかながら、主犯に生きて欲しいと思っていることに気がつき始めた。

なぜだろう、私を自殺まで追い込んだ人なのに。なぜなんだろう・・・。









そしてふと、私は主犯と出会った日のことを思い出した。




「今、あなたが飛び降りるためでしょ?全て。」
62 :創る名無しに見る名無し[]:2013/01/08(火) 02:05:16.78 ID:mMOqq/KB
1年前、高校一年生になったばかりの頃。


根暗で内気で負のオーラをぷんぷんと漂わせている私は、完全にクラスで浮いていた。


友達が出来るどころか、どことなく避けられるほど。


そんな時、初めて声を掛けてくれた人がいた。


「緊張するよね、こういうときって。」


不意にぽん、と背中を叩かれたので振り向くと、笑顔で主犯がいた。


私はおどろいた。


主犯の見た目はそのときから、決して派手ではないけれど目を離せなくなるような


華やかさと凛々しさを持っていた。


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