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『閂(かんぬき)』 ◆BY8IRunOLE
『閂(かんぬき)』
◆BY8IRunOLE
創る名無しに見る名無し
和風な創作スレ 弐
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】

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和風な創作スレ 弐
100 :『閂(かんぬき)』 ◆BY8IRunOLE [sage]:2010/12/23(木) 22:53:40 ID:FGwq7AWp
【第五幕】

この界隈を荒らしまわっていた物盗りが死体で発見された、という報せはすぐに町人に知れ渡るところとなり、
皆、胸を撫で下ろした。
いつか襲われるかもしれないという漠然とした不安が取り除かれたので、町には活気が戻ってきた。

「良かったねぇ、ホントに」
「やっつけたのは、例のお武家さまらしいよ。剣の腕が一流なんだって」
「ずっとこの町に居てくれないものかねぇ」

人々は口々に、咎人を倒した侍を賞賛した。



件の侍は藤屋に逗留していて、嘉兵衛はそこへ、同僚とともにお礼を言いに行った。
その帰りのことである。

「いやしかし、これで一件落着だね。嘉兵衛さん」
同僚が、やれやれという様子で話しかける。

「なかなか気持ちの良い若者だね。まだ独り身のようだし、お妙ちゃんと、お似合いじゃないかい」
「……」
嘉兵衛は黙っている。

「どしたい、嘉兵衛さん。ははぁ、寂しいんだね。あんたにとっちゃ、お妙ちゃんは娘みたいなもんだから」
笑いながら、冷やかした。

「なに言ってんでぇ。まあ、若い二人だからな。儂はただ、見守るだけよ」

たしかに、歳を考えると二人はぴったりに思えた。
年若い侍は、端正な顔立ちで溌剌とした印象だった。

剣の腕が立つ若者が、悪党を倒した。
ただそれだけであるはずなのに、嘉兵衛はどうにも気持ちの悪いものを胸のあたりに抱えている。

――……。

嘉兵衛は、腑に落ちない気持ちで通りを歩いていた。

辻のところで同僚と別れ、うちに帰るつもりだったが――、思うところがあり、足を別の方向に向けた。


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和風な創作スレ 弐
101 :『閂(かんぬき)』[sage]:2010/12/23(木) 22:58:30 ID:FGwq7AWp

「いらっしゃい!」
暖簾をかき分けると、元気な声が聞こえた。

鮮やかな黄色の髪の少女が、お盆を持ってちょこんと立っている。

「おう、奉公の童(わらべ)か。お妙は忙しいか」
「出かけてる」

嘉兵衛は、ちょっと引っかかった。
もうあと一刻ほどで日が暮れる。普段ならこの時分には、仕込みを始めているはずだった。

「そうかい、……しかしこんな時に出歩いてちゃ、危ねぇな」
「危なくないよ。物盗りは居なくなったんだから」

少女は赤い瞳で、真っ直ぐに嘉兵衛を見つめた。

「ん……まぁたしかに、そうかも知れねぇが……」
嘉兵衛は考えながら、呟いた。

「まだ、悪い奴がいるの?」
彩華の言葉が耳に入ったかどうか分からない。
嘉兵衛は、独り言を言うように話しだした。

「たしかに物盗りは斬り殺されてたが……
 物盗りの死体についていた太刀筋は的確だった。あの侍、やはり剣の腕は相当に立つ。

 実際、番所で立合いを見たから間違いない。……ただ、その斬り口がな。
 まるで鋸を引いたみてぇにぎざぎざなんだ。これは、物盗りが殺しをしてた時の斬り口と同じだ。
斬れねぇ刃物を力任せに振り回した感じのな。

 ……剣の腕が立つ奴が、斬れない刀を持つか? しかも、現場に折られた刀が残ってたんだが、
これはちゃんと手入れもされている立派な代物だった。これは一体、どういうことなんだ……」

彩華は、黙って聞いている。

嘉兵衛は、ふと我に返ると
「おっと、こんなこと話してもしょうがねぇ。また来るよ、これ、良かったら食ってくれ。蜜いるか?」

来る途中の茶屋で買い求めた餅の包みを差し出した。
黄粉がまぶされたもので、黒蜜が添えてある。

彩華は嬉しそうに
「無いほうが好き」
と言い、そのまま頬張った。

嘉兵衛は目を細めて彩華を見ていた。


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和風な創作スレ 弐
102 :『閂(かんぬき)』[sage]:2010/12/23(木) 23:01:35 ID:FGwq7AWp

寝床で、嘉兵衛は考えていた。


件の物取り、熨斗の屍を検めたのは嘉兵衛ではなく、同僚の同心である。

同僚の話では、熨斗の致命傷は、喉元へ深々と入った突きであった、ということだ。
しかし、それ以外に手首や肩口、脇腹などに浅く傷が入っていた、という。

どれも――「獣が喰いちぎったような」という表現を使った――、ぎざぎざと荒い刃傷だったそうだ。


このことから、熨斗は死闘の末に突きで止めを刺されたのだろうと推察された。

けれど、それは違うのではないか……という、漠然とした考えが、嘉兵衛の頭に浮かんだ。

熨斗を殺った男は、おそらく最初に小手を打つなり太刀を奪うなりして、相手を無力化させたのではないか。

そして突きを入れ、完全にこと切れるまでの間、――まるで刀の切れ味を慥かめるかのように――相手を斬り続けた。

生きている間に斬られたのなら、まだ抵抗したり身を庇う素振りがあっても良さそうだ。
けれど、手首と喉笛の傷以外は、無防備な所へ浅くつけられている。

弄ばれるが如く、だ。


それは、嘉兵衛の想像に過ぎなかった。

しかし長年の経験から、その想像はさほど事実から遠くない線ではないかと思えたのである。


尿意を覚え、床を抜け出し勝手口から厠へ向かう。
用を足して戻る途中、何やら不穏な物音を聴いた。


嘉兵衛は羽織と十手を取り、通りへ出た。

和風な創作スレ 弐
103 :『閂(かんぬき)』[sage]:2010/12/23(木) 23:04:55 ID:FGwq7AWp

耳を澄ましながら、音のする方へ二十間ほど歩く。


辻のところで、気配を感じた。

咄嗟に横へ飛ぶ。

空を切る音。

人影が、太刀を再び振り下ろす。

転げ回って離れる。


侍か浪人のような姿。
闇に隠れて、相手の顔が分からない。

けれどそれが誰であるか、嘉兵衛は分かっていた。


侍は太刀を片手に、ゆっくりと距離を詰めた。
嘉兵衛は立ち上がり、十手を構えて対峙する。

――無謀だ、こんなことは。しかし、儂はここで逃げることは出来ない。

覚悟を決めなければ、と思っていた。
嘉兵衛はこの町の同心であり、目の前にいるのは町人を脅かす存在なのである。

――あの太刀こそ、物盗りを殺した凶器にほかならない。

侍は、何やらぶつぶつ呟いている。

嘉兵衛との距離が詰められる。

「あと二人は、斬らなきゃならん」
侍の声を聞いた。

太刀が振り上げられる。
それを十手で受ける。

重い金属音。
手にかかる圧力。

十手の鈎の部分に太刀を挟み込む。

が、それは一瞬である。
鈎は折れ、嘉兵衛の腕に太刀が食い込んだ。

激痛に顔を歪める。
鋸で引くような音がして、骨が肉もろとも斬られた。

和風な創作スレ 弐
104 :『閂(かんぬき)』[sage]:2010/12/23(木) 23:08:10 ID:FGwq7AWp
嘉兵衛は十手を左手に持ち替え、逆手に持ち、房を解いて拳に巻きつけた。

咄嗟にしたことで、その行動の意味するものは嘉兵衛自身にも分かっていない。


嘉兵衛は右腕の激痛に歯を食いしばり、相手を睨む。

「斬って、度胸を付けにゃならん。この太刀も、人の血脂で研がれようというものだ……」
声は笑っているようだった。


嘉兵衛は盗人の犯行現場を検めたときのことを思い出していた。
切れ味の悪い刃物を力任せに振り回した、という印象。

熨斗は剣術の心得のない盗人であったから、それは当然なのかも知れない。
しかし日本刀とは、正しく扱わないと斬ることすらままならないものである。

熨斗は、あらゆるものを切断していた。
いま、その太刀を持っているのは剣術の腕に覚えがある人間だ。

――あまりにも分が悪い。

嘉兵衛が考えることは一つだった。

――この剣を破る術を見出して、残さなければ。

侍が、太刀を最上段に構えた。

嘉兵衛は十手を握る手に力を込め、飛び込んだ。

迫る太刀を躱すが、逃れきれない。

膝を斬られ、肉が抉られる。
動きが止まったところへ、二撃めが飛ぶ。

それを十手で辛うじて防ぐ。

嘉兵衛は解いた房をもって刀身を握りこんだ。

侍は太刀を引く。
わずかに引っかかる。

「っくっ、離せ!」
侍が嘉兵衛を蹴飛ばす。

太刀を振り払う。
左手の指が数本斬られた。

嘉兵衛は痛みに悶えながら、蹲った。


「死ね」

侍は、太刀を嘉兵衛の頭へ振り下ろした。
和風な創作スレ 弐
105 :『閂(かんぬき)』[sage]:2010/12/23(木) 23:12:50 ID:FGwq7AWp

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床の拭き掃除を終えた彩華は、奥の部屋の柱に凭れてしばし微睡んでいた。
彩華は早起きだが、代わりに昼寝を欠かさない。仕事の合間を見て、少しずつ寝る。

けれど、さっきからドタドタと歩きまわる足音が絶えない。
同時に、何やら不穏な気配を感じてもいる。

妙が慌しく近くを通ったので、尋ねた。
「どうかした?」

妙は少し逡巡して、
「同心の嘉兵衛さんがね、辻斬りに殺されたって……」
青ざめた顔で言った。


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彩華は妙が通夜の準備に行ったため、それに従いて行った。

嘉兵衛の自宅には数人の同心や岡っ引き、それに近所の商店の女たちが集まっていた。

「清次のやつは?」
あっちだ、と同心のひとりが家の裏手へ親指を向けた。
「嘉兵衛の旦那のいちの子分だ、弔いだからって、自分がやるって言ってさ」

同心たちが話している。

それを聞きながら、彩華は妙の側に付き添っていた。

「彩華、こっちは大丈夫だから……宿に戻っておいで」
妙はそう言ったが、その声は弱々しく掠れていた。

「外に居るよ」
そう言って嘉兵衛の家を出、裏へ回った。


和風な創作スレ 弐
106 :『閂(かんぬき)』[sage]:2010/12/23(木) 23:15:23 ID:FGwq7AWp

「ううっ、旦那ぁ……」
若い男が、みっともなくぐずぐず泣いている。

清次は嘉兵衛の遺体を井戸の水で洗いながら、涙していた。

「手伝うよ」

彩華は清次の側へ来て、井戸水の桶をとった。
清次は泣き面を向けて彩華を一瞥したあと、のろのろと手を動かした。


嘉兵衛の遺体は右腕、左膝、左の手指にそれぞれ斬られた跡がある。
こめかみの辺りに深く刃が入っていて、これが致命傷になったと思われた。

「……?」
指の欠けた左手が、数本の糸か紐のようなものを握っている。

「これ、何?」
「……んあ? あ、ああ……旦那の十手の……房だよ。
くそっ、房までこんなズタズタに……誰がやったんだよ、畜生!」

清次がまたおいおい泣き出す。


彩華はその、引きちぎれたような房を見て考え込んでいた。


和風な創作スレ 弐
107 : ◆BY8IRunOLE [sage]:2010/12/23(木) 23:18:45 ID:FGwq7AWp
↑ここまでです
間あいてしまった、すみません
多分あと1回で終わりです
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456 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/12/23(木) 23:22:08 ID:FGwq7AWp
わ、人がいますね! 感想返ししちゃっていいっすか?

>>446
新スレ、ありがとうです! 役に立たなくて申し訳ない……

>>444
akutaさんおひさです! 相変わらずいい感じのイラストですね!
既製フォント文字がイラストに埋め込んであるの、好きなんですよねー
ルロー&ヨシユキもいいなぁ

>>448
勘違いしないように。バトン渡したので、続きは他の人が書いてくれるはずです(キリッ
つづき、考えてねーですよ! シチュをそれっぽく書くことしか出来ねーですよ!ww

……orz


>>451
お恥ずかしいですww
気がつくと鉄ちゃんやこーちゃんを書いてしまう……
どうもシリアスばっかりで、息が詰まっちゃうかもなぁ

ってか、オリキャラ一人だけじゃね? ほか全部ひと様のキャラ使ってる!
そんな主役で、大丈夫か?
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459 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/12/23(木) 23:33:29 ID:FGwq7AWp
>>457
>クリスマスの小ネタ
前売り券くださいww 



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