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【長編SS】日本鬼子SSスレ3【巨大AA】

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【長編SS】日本鬼子SSスレ3【巨大AA】
13 :GoGo! ひのもとさん1/2[sage]:2010/12/19(日) 19:49:44 ID:tFaLEPEm
「んしょ」と勢いをつけて葛籠から出てきた小日本(本作ではケモミミ金髪美少女)は、小梅の芳醇な香りを放つ袖を振ってくるりと回転した。めくれ上がった裾の下には子供用の襦袢しか身につけていない。
 小日本は地獄絵図のように変わり果てた駅前を眺めながらくすくす笑っていた。
「源氏との戦いから八百年、日の本もずいぶんオシャレな島国になったものですよねぇ」
「小日本……」
 駅前を眺めている小日本は、よく見ると体つきや見た目の年齢は鬼子さんとほとんど変わらなかった。
 しかし、何かが自分とは決定的に違っていた。まだ化かされているような不安な気持ちになった。これが妖狐という種族の特性なのだろうか、彼女の一挙手一投足が不気味な存在感に満ちており、鬼子さんは封印によって生じる重力に抗いながら少しずつ後ろ退っていった。
 目の前に居るのは正真正銘の大妖怪だった。鬼を相手に百戦錬磨の鬼子さんですら「これぞ妖気だ」というものを初めて見せつけられた、そんな風にさえ思われた。
「あなたが……本当の、小日本? 嘘でしょう、だって小日本は……」
 鬼子さんには、かつて小日本という名の妹がいた。
 鬼子さんと血が繋がっているのだから小日本ももちろん鬼の子だろう、戦乱の世に生まれたその子はやむにやまれぬ理由で一時妖狐の元に預けられており、その後鬼ヶ島に渡った鬼子さんの一族とは長い間離れ離れになってしまったのだった。
 今はその妖狐の行方さえも分からなくなっている。
 小日本を名乗る少女は、においたつ袖から今度は桜花を撒き散らし、桃色の花びらの渦のなかでふわりと姿を消した。
 同じ事は自分でもできるのに鬼子さんは「わっ、消えた!」と子供のように驚いた。
 鼻がぶつかりそうなほど目の前に小日本が現れると、鬼子さんは腰を引きずって退いた。しかし、結界の力のせいでじりじりと元の場所に押し戻されてしまう。
「わっ、わっ」
 小日本は小さくかがんで鬼子さんが戻ってくるのを待っていた。鬼子さんは思わず頭を下げてしまい、額同士がぶつかってごちんと音がした。
「ご、こめんなさい・・・・・・!」
「ねぇ」
 のけぞる鬼子さんを、小日本は同じ目の高さから覗きこんでいた。
「考え直してさしあげてもいいのですよぉ?」
 小日本はくすくす笑った。内心この展開を待ち望んでいたかのようにわざとっぽい言い方をしている。鬼子さんは胸をはって精一杯虚勢をはった。
「ど、どういう事かしら?」
「もし、私の言うことをなんでも聞くんでしたらぁー、私たちの仲間に入れて差し上げましょー」
「なっ……」
 鬼子さんは頬を真っ赤に染めた。
「仲……間?」
 友達が居ないどころか遊びに誘われた事もない鬼子さんである、効果はてきめんだ! 鬼子さんの背景に大輪の花が咲き、虚勢は完全に崩れた。このさい相手が本当に小日本だとか偽者だとかそんなのはお構い無しである。
「そう! 私と日本狗はぁ、いま、共に戦う同志を募っているのぉ。チームの名前は『三大妖怪クラブ』っていうの!」
「さ、三大……!?」
 鬼子さんはますます息を呑んで「なにそのクラブたのしそう!」といった風に目を輝かせた。
 それがますます小日本の高飛車な心を刺激したらしい、彼女は自慢げにうんうん頷いて説明を始めた。
「日本三大妖怪の末裔が軍団を結成してぇ、安倍晴明の末裔をやっつけちゃえーっ、ていうノリの痛快なクラブなんですぅ。
 幕末までは鬼族の末裔も含めてずっと三人でやってたんですけどぉ、ほら源氏は徳川家を最後に政権から退いちゃったでしょぉ、陰陽道が廃れちゃったら安倍晴明もすっかり凋落しちゃっててぇ。
 鬼族の末裔は今さら戦ってもあんまりメリットがないって言って脱退しちゃったのよねぇ、ほら鬼族って妙に矜持にこだわる所があるじゃない?」
「それで二人になった今は何してるの? ただの仲良しクラブに形骸化しちゃった感じなの?」
「鈍そうな顔してズバリ言っちゃいますねぇその通り。けど、どうせならぁ、何かこう胸がすっとするような、おっきな事をやってみたいじゃない?」
 小日本は立ち上がって大きく両手を広げた。いまだに分からないといった顔をしている鬼子さんを見下ろし、小さな顔に妖艶な笑みを浮かべている。焦れたようにぶんぶん両手を振った。
「ああんもう、国盗りですよぅ! 日の本を妖怪の国にするの!」
「ええっ!?」
 鬼子さんは青鬼かというぐらいに本気で青ざめた。
【長編SS】日本鬼子SSスレ3【巨大AA】
14 :GoGo! ひのもとさん2/2[sage]:2010/12/19(日) 19:56:35 ID:tFaLEPEm
「そんな事を、するの……? もし妖怪の国になったら、わ、いえ・・・・・・日の本に住んでいる人達は? 人間は、どうなってしまうの?」
 わんこそばの心配をとっさに人間の心配にすりかえたあたり、鬼子さんはそこそこ欺瞞が使えるようだった。
 しかし、小日本はその問いにはあえて答えなかった。自分たちが楽しければそれでいい、そんな事は些末な問題でしょうとでも言うように。
「鬼子さんなら、私たちの仲間に入ってくれるでしょ?」
 きゅっと眉を吊り上げた鬼子さん。まるで邪気もない小日本に、鬼子さんは手を差し伸べようとした。肩を揺さぶろうとしたのかもしれない。
 しかし彼女はその手をこわばらせ、ぎゅっと縮こまった。封印の力によって押し戻される前に。
 恐怖が衝動にまさったのだ。本当はどう答えていいのか分からない、彼らの仲間になると何かとんでもない事になりそうな気がする。
 苛められっこのようにかぶりを振るしかできない鬼子さんに、小日本の呆れた声が浴びせられた。
「ぶーう。ざーんねん。これは追試も失格ですねぇ、やっぱり、日本鬼子さんはダメダメですぅ」
 小日本は鬼子さんに対して半身をむけると、両手を左右に精一杯広げた。片方の袖から桜の花びらがふわっとこぼれ、渦を巻いて上下に伸びる。弓だ、その手にはいつの間にか一メートル近い強弓が握られていた。
 弦は張っておらず、常識なら矢の一本も射られそうにないその弓で、鬼子さんに狙いを定め、小日本は見えない弦をぎりりと引き絞った。見えない弦に引っ張られるように弓の両端がしなってゆく。
「そうでなくとも、あなたのような人間寄りの鬼が鬼族最大の異能をまとっているのは目障りですね、他の種族にとってみても鼻つまみ者なのですわぁ。ええ、個人的にも、やっぱり怖い。
 私はあなたが怖い。その力、《酒天童子の酒杯》。回収させて頂きます!」
 まるで恐れる様子も見せずに言った小日本だった。いまや面もなく、身を縛られて満足に動けない鬼子さんの何を恐れることがあるだろうか。薄い笑みを貼り付け、力を溜めたまま、しばらく不自然な間をあけていた。
「ねぇ、鬼子さん、ひとつ聞いていいかしら。あなたはどうして同族殺しをしているの? それさえなければパワーファイターの鬼族としては充分な素質をもっていらしたのに。
 あなたを除け者にして炒り豆をぶつけてくるような人間たちが、どうしてそんなに好きになれるのですかぁ?」
 今にも泣きそうになっていた鬼子さんは、不意に何かのスウィッチが入ったかのように落ち着きはらった。
「お友達にもならないうちに、そんな秘密は言えませんわ」
 鬼子さんは小日本をじっと見つめて、そっと囁いた。
「それに、同族殺しをしているのは、貴女も同じでしょう?」
 冷えた表情を浮かべていた小日本は、ようやく心から笑った。
「そうね、これで私も同族殺し。お揃いですねー、鬼子さんと」
【長編SS】日本鬼子SSスレ3【巨大AA】
15 :GoGo! ひのもとさん3/2[sage]:2010/12/19(日) 19:57:53 ID:tFaLEPEm
 ようやく意を決したという風に、勢いよく弓を引き絞った。
 見えない弦が激しく振動する音が、目に見えるほどくっきりとした波紋を空気中に描いた。
 ただの空気の振動ではない、退魔の魔力を秘めたその波紋に触れただけで、鬼子さんの肌がびりびりと痺れ、地に落ちていた般若の面がパンと音を立ててひっくり返った。
 前かがみになってこらえようとすると、頭が、特に角の根元あたりが折れそうなほど痛い。
(わんこそば、わんこそば、わんこそば、わんこそば・・・・・・)
 鬼子さんは痛みを忘れる呪文を唱える事に没頭した。しかし、意識を保つのが難しくなってくる。そろそろ本格的に死を覚悟しなくてはならなかった。結局、友達は一人も出来なかった。
 遠い昔に交わした約束とか、うれしかった事とか、人間とか、そういったものを思い出そうとするのだけれど、頭はずしりと重く、文鎮のように上のほうにあって、体の方に何が浮かんでも頭まで到達してくれない。
「ねぇ、鬼子さん……」
 小日本が歌うように言った。
「おねーちゃんって呼んでいい?」
 鬼子さんは途方にくれた目で小日本を見つめ返した。
 弦を持つ方の手から、ノイズのようにかき乱された波紋が放たれ、ガス風船が膨らむように急速に広がった。
 びぃぃぃん
 この振音は弦のものだ。響きに圧倒され、鬼子さんは見えない矢で胸を射抜かれたかのように飛び退いた。
 弾かれた般若の面が、再びくるくると宙を舞った。くるくる、くるくると。
 着物の袖からも懐からも大量の紅葉が散り、倒れる鬼子さんを優しく受け止めた。
 小日本の手の中で、身の丈ほどもあった強弓は、いつの間にか大振りな桜の枝になっていた。大きな狐目は、矢を放つ瞬間までまったく揺るがなかった。
 小枝を折って、花弁で唇をなぞり、その柔らかさを確かめていた。
「狩り帰り もみじ拾いつ 歩く人 いづくの人の 御手に似るめり……バイバイ、おねーちゃん」
【長編SS】日本鬼子SSスレ3【巨大AA】
16 :GoGo! ひのもとさん3/2[sage]:2010/12/19(日) 20:07:39 ID:tFaLEPEm
>>1乙!
>>2-7くやしい、けど萌えちゃう・・・!
>>9-11桃太郎、カッコヨス・・・!
SSスレの暗黒面としてタラタラ書いてきてとうとう3スレ目突入。
どこまで書くのか、いつ終わるのか、いまだ不明。・・・ごめんなさい。


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