トップページ > 創作発表 > 2010年12月14日 > vu5pwmMt

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創る名無しに見る名無し
代理投下
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449 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/12/14(火) 01:47:41 ID:vu5pwmMt
支援するのがナイトではない支援してしまうのがナイト
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450 :代理投下[sage]:2010/12/14(火) 02:11:04 ID:vu5pwmMt
「そりゃそうだ。そのまま再現するわけねえだろ。
 氷精一人圧倒する程度なら何の問題もないが……
 首輪だけで力が制限されている状態のベジータなら、
 スーパーサイヤ人になれば俺がこの能力を使おうと勝利は確定だ。なぜか。
 無理に完全再現すると、死んじまったり元の世界に帰れなくなったりするからな。
 ――お前のようにな」
「えっ……」
「なぁんだ、気付いてなかったのか?
 限界を越えて能力を行使しているお前は、平行世界と存在が混ざってきている。
 お前はお前でありながら、更に別の存在まで内包しているのさ。
 この会場は特別だし元々『チルノ』がいる世界じゃないから、
 そういった存在も許容できるが……
 お前がその剣で引き出した『チルノ』がいる世界や、
 お前自身がいた世界はその矛盾に耐えられない。
 ――世界そのものがお前の存在を否定し、弾き出そうとし、受け入れない。
 博麗大結界なんてものに入ろうとすれば、更に結界も同じことをするだろうねェ。
 こういうことになっちまうと転移に支障が出るから、俺は完全再現しない。
 俺がこの能力を得て最初に始めたのは、できるだけセーブして能力を使う鍛錬……
 それをしないてめえはバカで、それをした俺は器用な副産物に目覚めたのさ」

そこまで話したところで、右上はやれやれと肩をすくめる。
表情に貼りつく笑み、構えているとはとても言えない姿勢。
明らかに、チルノがまともに戦えるなどと思っていない顔だ。

「ま、今の段階ならまだ結界に大穴ブチ開ける程度でなんとか戻れるだろう。
 まだ使い続けるようなら知らねえがな。
 嘘だと思うならご自由に。嘘だと思えるんなら、の話だが。
 自分がどれだけバカなことをしていたか、理解したかよ?」
「…………ッ!」

チルノは、悔いるように、唇を噛み締めて……
けれでも、握った葉団扇を手放さず。むしろ、握る力を強くしている。
その様子に、右上は皮肉などを抜きに純粋に感嘆した。

「驚いた、まだ戦意を喪失しないのか。
 その様子だと、さっきの話を理解できなかったってわけでもねえだろうに。
 なるほど……変わってしまっても最強になる、か。言葉だけじゃないようで。
 素晴らしい精神の強さだぜ。実力が伴ってないのはあまりにも残念だ」
「アイシクルフォールッ!」
「ベギラマ」

炎と氷、互いに放たれたのはそれぞれの左手から。
だが、右上は相手が放ったのを見てから撃ったというディスアドバンテージがあった。
そんな条件でも、右上の放った炎はチルノの氷を完全に相殺する。

「パーフェクトフリーズ!」
「ふん――イオラ!」

次も、同じ。
右上に迫っていた吹雪は、途中で起こった爆発で阻まれて消えていく。

「確かに、不完全な再現しかできないと言った……
 だが、俺自身にはお前と違って首輪による力の制限がない。
 ちょいと剣が使えるだけの氷精ごとき敵じゃねえ。平行世界のお前なら別だがな。
 ましてやてめえが牽制程度に使う氷なんざ、中級の閃熱呪文や爆烈呪文で十分……
 っと」

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451 :代理投下[sage]:2010/12/14(火) 02:12:04 ID:vu5pwmMt
無駄話に答える気はないと、無言で斬りかかってくるチルノ。
それを右上は、王者の剣ではなく敢えてバスタードチルノソードで受けた。
切り結ぶ葉団扇とバスタードチルノソード。
決して遅くはない連撃を、鼻で笑いながら右上は弾き飛ばした。

「基礎は残っているようだが、所詮は残滓。
 俺が手本を見せてやろう」
「誰が!」

そう言い返しながら、チルノは前の地面を蹴り突進しようとして……
瞬間、その地面がある空間は圧迫されていた。少なくとも、チルノにはそう見えた。
振り上げられた剛剣が、風を斬り、迫る。葉団扇を叩きつけ、剣を防ぎながら風を起こす。
自分を吹き飛ばし、後退するために。
それは間違いなく、自分が何度も力を借りた剣術だった。

「『ブレイバー』」

休むまもなく、よく知った踏み込みで迫る右上。振り下ろされる愛剣。
盾にした葉団扇は、それでも耐え切った。耐え切れなかったのは、チルノの腕。
衝撃をこらえきれずに手放した葉団扇は、風に舞う枯葉のように吹き飛ばされる。
それを追う余裕は、今のチルノにはない。左へ――チルノから見て――体をずらす。
右上に王者の剣を使う様子がない以上、そちらを持っている方へ回りこめばいい。
そうすればいくらか距離が出来て、剣筋を見やすくなる。
だがその間に、右上とその剣は迫る。
とっさに氷で作り上げた剣を両手で構え、防ぐ。
けれど、そんな急造の剣は一度きりしか用を成さず粉砕され、チルノ自身も吹き飛び……

「ブレ……イ、クッ!」
「なに!?」

粉砕された剣は、氷の弾となって右上に殺到した。
チルノがこの殺し合いで得たものは、異世界における自分の能力だけではない。
今までの戦いの中で磨き上げた実戦経験――
呂布、フランドール、文、ドナルド、格上の相手と戦う中で学んだ技術。
それは彼女自身のものとして、今も彼女の身に残り……
限られた力を最善の形で具現化させる。
右上が自分の剣で氷の弾を凌ぎ切った時には、もう彼の視界にチルノはいない。

「――アイス」
「むッ!」

チルノは、飛んでいた。
その足に、マッハキャリバーが強化する魔力を纏わせて。

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452 :代理投下[sage]:2010/12/14(火) 02:13:19 ID:vu5pwmMt

「マッハキャリバー、キックッ!」

急降下する具足と、振り上げられる剣。
マッハキャリバーがバスタードチルノソードとぶつかり合い、水色の魔力光が爆ぜる。
押し勝ったのは、前者。
重力を加えて放たれた錐揉みキックに耐え切れず剣は弾き飛ばされ、
右上は靴を地面と擦れさせながらよろけるように後退する。
成功だと判断しようとして……チルノは見た。
既に王者の剣を構え、よろけこそしていても転ぶ様子のない右上を。そこから迸る、魔力の流れを。
まるで、バスタードチルノソードが吹き飛ばされることは、計算済みだったように。

王者の剣が振り上げられる。建築物である図書館の天井に、暗雲が生み出される。
響く、右上の声。

「お前の奮闘は何もかも無駄だ、絶望しろ!
 走れ――」

ライデイン。



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453 :代理投下[sage]:2010/12/14(火) 02:14:19 ID:vu5pwmMt

「ベジータ! ベジータ……くそっ!」

メタナイトが叫んでいる間にも、オートマトンはベジータへと向けて殺到していく。
赤い光に照らされた格納庫の中でも、血の赤は際立つ。
メタナイトは体を反転させると、そのまま剣を地面に突き立て竜巻を起こした。
それでベジータを狙っていたオートマトンの一部は破壊され、或いは姿勢を崩す。
だが、ただでさえ酷使されていた右腕は、それで限界だと訴えるように震え始め……
その痛みにメタナイトが停止した瞬間、今度は左腕に銃弾が直撃した。
地面に叩きつけられ、もんどり打って転がるメタナイト。
震える右腕を床に付け、体を起こした瞬間、目の前には……オートマトンの姿が。
剣を振ろうとしても、もはや腕は動かない。

(――ここまでか!)

メタナイトが観念して、目を閉ようとした……瞬間だった。
目の前のオートマトンが、悉く爆砕したのは。
とっさの事態に、向きを変える。
先程まで血の赤に染まっていた場所に……立つ、人影。
鈍い赤光を払うほどに光る、金色のオーラ――

「悪いな……
 反応が遅かった」
「あぁ……! 全くだ!」

仮面の下、メタナイトの表情は思わず緩んでいた。
瀕死からの蘇生を遂げたスーパーサイヤ人――ベジータが、そこにいる。
自分へ向けて飛来してきた銃弾をベジータは全てあっさりと掴みとると、
なんでもないことのように指で弾いた。
それだけで、銃弾を打ち返されたオートマトンはあっさりと鉄屑と化した。
……改めて、メタナイトは戦慄する。
今この会場に存在する者の中で、ベジータは紛れもない最強なのだ。

「一旦退いていない連中を集めてこい、メタナイト。
 道は俺が作っておいてやる」
「道を……作る?」
「その程度の事しかこの俺ができんと思うのか?
 このウザッたい機械どもはもちろん、あの扉もぶっ飛ばしておいてやるぜ……!」

銃撃を悉く弾き返しながら、力強い声で言うベジータ。
この調子ながら、紛れもないそれは容易く成し遂げられるのだろう。
だからこそ、メタナイトの脳裏に疑問が浮かぶ。
……そう。
扉を破壊するならわざわざ急がなくとも、全員が揃ったときにすればいいはずなのに。
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454 :代理投下[sage]:2010/12/14(火) 02:15:09 ID:vu5pwmMt

「……ベジータ? お前、まさか」
「早く行け。貴様を庇う気さえ惜しいんだ。ぶっ飛ばされたいか」

躊躇いながらも、メタナイトは残った力で剣を掴み、飛び立った。
その姿がエレベーターの昇降路へ消えていくと同時に、ベジータは吐血した。
……今のベジータは、消える前の蝋燭のようなもの。
瀕死からの蘇生だけで、ここまでのことは出来はしない。
ただ、できるだけ、後先考えずに気を高めているだけのこと。
それだけ制限に逆らおうとしているのだから――その分、反動も、凄まじい。
恐らく、ここで退いて体を落ち着かせようとすれば、
体の損傷により制限下では二度とここまで気を高められないだろうし……
そもそも、無事に仲間の元まで辿り着けるかどうか。

「ここにいる限り、俺の肉体には負担が掛かり続ける……永遠に。
 だが恐らく、あの扉をぶっ飛ばし奴らの基地にダメージを与えられるのは、
 スーパーサイヤ人となった俺だけだ。
 きさまらに吠え面かかせる方法がわかったぜ……意外と簡単にな」

それでも、更に気を高めていく。口から血を吐きながら。
残存するオートマトンの攻撃など全く意に介することなく、
ベジータは扉へ向けて手を向けた。
元々スーパーサイヤ人は、身体に凄まじい負担を掛ける。
更にベジータは、スピードを殺してできるだけ気を高める変化……
パワー重視のスーパーサイヤ人化を行っていた。
消耗は加速度的にその度合を増し、内臓にまで反動が及んでいる。
今のベジータが身体から垂らす血は、銃弾で受けたものではない……
そもそも、今のベジータに銃弾など掠り傷すら与えはしない。
血は全て、限界を越えた血管が破裂して流されたもの――
その状態で尚、ベジータの気は更に高まり続ける。

「この状況下において最大限に戦闘力を使える方法は、
 短時間にできる限り気を高めて、撃ち出すことだ……!」

答えは、一つ。
扉――そしてその向こうにあるだろう敵基地――に向けて、
制限に押し負けて気が下がってしまう前に、自分の成しうる全てを引き出し、解き放つことだ。

「サンレッド。今、借りを返すぜ……!」

――さらばだブルマ、トランクス……そして、カカロット




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455 :代理投下[sage]:2010/12/14(火) 02:16:01 ID:vu5pwmMt

「ああ……なんてことだ。サイコフレームを持ってきて正解だった」

図書館の中。
恍惚とした表情で、右上は天井を仰いだ。
その手にあるのはチェーン・アギが持っていたものと同サイズのサイコフレーム。
無論、右上用に改造が施されているそれは、
その能力によってある程度のアムロ・レイの能力を――
ニュータイプ能力を、彼自身に与える。

「なんて素晴らしい人種なんだろうな、ニュータイプは。
 見える……心が。悲哀が、絶望が――憎悪が。
 そう、お前はお前自身を憎悪している、無力な自分を!」

その目前には、チルノがいる。
全身を黒く焦がし、うつ伏せに地面に倒れ込みながら……
未だに起き上がろうと、床をひっかくチルノの姿が。
そんな光景を見て、右上は脳内麻薬が溢れ出るような笑いを全身で表現していた。
これ以上の快楽はないと。これ以上の愉悦はないと。
その股間は、スーツ越しに分かるほどに勃起すらしている。

「あぁっ、素晴らしすぎてイキかけそうだ!!!
 そりゃあカミーユ・ビダンは廃人になっちまうってもんだぜ!
 他人の心が、死の間際が感じ取れるだなんて、どんな麻薬よりもトんじまう!
 動け、もっと……まだ死ぬなよ、もっと生き地獄を見せろ!
 ……なに?」

絶頂すらしかけている彼に水を差したのは、突如して発生した地面の揺れだった。
当然、揺れているのは図書館ではない……会場が、だ。
ベジータが扉へ――運営基地へ向けて全身全霊を賭けて放った気功波、
ファイナルフラッシュ
最期の光は格納庫の扉と天井を容易く撃ちぬき、地面を抉りながら走る。
揺らぐ地面。立ち上る光の柱。続くように、右上に入った通信。
それらは全て、ただならぬ事態を意味していた。
一転して、右上はつまらなさそうな表情になる。

「……このタイミングで水入りかよ。しゃあねぇな。
 安心しろ左上。すぐに戻るさ、二秒もかからん……イオラ」

そう返すと右上は左手を向け、魔法を放つ。
それで終わり。チルノ相手ならば、これが直撃するだけで死ぬだろう。

『protection』

直撃し、たのならば。
電子音声が響くと共に、イオラは中途で爆発した。
考えるまでもない、マッハキャリバーが自己判断で魔力を充填し、抵抗している。
所詮は基本の防御魔法だ、イオラの威力を完全に減失させるほどのものではないが、
しかし……バリアジャケットと合わせれば、チルノを生き長らえさせるには十分に足る護り。

「ほう……機械風情が」
『彼女は、私の「仲間」です。
 彼女は強いけれども、あまりにも脆い……だから、私が力を貸します』
「浮気性だねぇ。てめえの主人はそいつじゃあねぇだろう」
『あちらは主人ではなく「相棒」ですが……
 私の相棒は、ここで彼女を見捨てるようなことなどよしとしませんよ』

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456 :代理投下[sage]:2010/12/14(火) 02:17:59 ID:vu5pwmMt

右上は口を開いてこそいるものの、ただ徒に話しているだけではない。
こうして話している間にも、右上は腕を振っている。
追撃するためではなく、空間に道を作るために。
この会話は、転移を待つごく僅かな時間の暇つぶしに過ぎない。
依然としてこの状態のチルノを殺すことが容易いことには変わり無いが……
それでも、五秒から十秒程度は掛かるだろう。
その僅かな時間が、致命的な時間となるのが今の状況なのだ。

「――命拾いしたな、バカ氷精」

右上の姿が消える。
それを確認すると同時に、マッハキャリバーは電子音声を張り上げた。

『聞こえていますか!? 意識は?』
「あ、る……」
『なら、右手を伸ばしてください! その先にあるデイパックから、あのパンを!』

震える腕で、チルノはかろうじてデイパックへ手を突っ込み、
なんとか自分の口へと至高のコッペパンを運ぶ。
それだけで、閉じかけていた視界が一気に鮮明なものとなり始める……
が、一瞬で完治というわけにもいかないようだった。
立ち上がろうとした四肢はふらついて、あっさりとその場に尻餅を付く。

『彼らが心配なのはわかりますが、少し休みましょう』
「そう……だね」

そう返して、無事だった本棚に背を預けるチルノ。
天井を仰いで体を休めていると……どうしても、考えこんでしまう。
完敗、だった。けれど、そんなことよりも、何よりも……
右上が言ったこと……チルノはやがて帰れないということが真実であれば。

それは「不幸にも」という形容詞で表現することは適当ではない。
ただ、今までチルノが得てきたものに対する対価を要求しているに過ぎないからだ。
今まで彼女を生かしてきたもの。これから彼女を生かすであろうもの。
その対価が彼女の知己への損害、或いは知己との絶縁であるというだけの話。

『あの剣は、ここに置いて行かれたようです。
 ……今後、貴方はあの能力を使うのですか』

あまりにも冷たい沈黙に、先に耐えかねたのはマッハキャリバーだった。
その答えは、理屈の上では決まっているはずだ。
そもそも生き残らなければ、故郷云々の話は意味が無い。
そして、使わなくては生き残れないと、とうの昔に立証されている。
自分の力だけで戦った結果が、さっきの戦いなのだから。
だから、使える状態なら使うしか無い。それが理屈だ。
けれど、膝は震える。喉は詰まる。

「………………っ……」

答えが、言えない。
言葉が凍ったまま。話の流れに、風が吹かないまま。
ただ、四つん這いになって――剣を拾った。




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457 :代理投下[sage]:2010/12/14(火) 02:19:08 ID:vu5pwmMt

「……すまない」

エレベーターから自力で飛行して地上に舞い戻り、その惨状を見たメタナイトは全てを理解した。
屋根に上り、北を見れば……格納庫があった場所の上、C-3にぽっかりと穴が開いている。
だが、地表に見える形で破壊の跡が見えるのはそこだけ。
ベジータは他に被害が及ばぬよう、そして狙う方向に出来る限り効果を成せるよう。
限界まで効果範囲を絞り、気を凝縮したのだ。
この会場を容易く破壊できるほどの気を、ただ地下の施設にのみ走らせた。
己の身を、犠牲にしてまでも。

「あれだけの大物が登場したということは、間違いなく地下の格納庫は重要拠点。
 おとりやダミーということはあるまい……
 そして、ベジータが撃った方向からして、あちらは格納庫に繋がる方角」

その結果がこの曇天の中、この遠距離でもわかるほどの、風景の変化。
北……山だけがあった風景が、明らかに違う。
今まではただなだらかな斜線だけが空との境界を作っていたのが……
現在は山の大きさが伸び、今まで存在しなかった何かの施設が見える。
施設が存在する位置は、格納庫のちょうど真北。
ここまで材料があるのなら、答えは一つだろう。

あれはループによって隠されていた、運営基地。
ベジータの攻撃により……恐らく、ループを維持していた何かが破壊されたのだ。

「私は一旦戻る。チルノも探さねばならん。
 だが――無駄には、せん」






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