- クロスオーバー創作スレ5
112 : ◆9ww4lHcaLU [sage]:2010/12/14(火) 15:06:51 ID:ithcXARW - ご指摘に従い、微修正したものを投下します。
◇ 「……見ない力ね」 ―――確かに、珍しい力ではある。 異能がなければなにかあるようには見えない。 学園都市の身体検査【システムスキャン】では反応すらしてくれず無能力者【レベル0】判定。 不良の一人も倒せなければ、テストの点も上がらないし、女の子にモテたりもしない。 しかし、今となっては幾多の修羅場をくぐりぬけた、相棒でもある、右手。 確かに、珍しい力だ。 ―――気に障ったのか? どう見ても不機嫌だ。 一体、何が起こるか想像がつかないし、何が起きてもおかしくはない。 一応機嫌でも取ろうと上条は試みる。 「えっと、萃香の力はどんなのなんだ?」 学園都市では、スプーンぐらい曲げられて当たり前。 萃香は、自分の能力【チカラ】が通じなかったからこそ、憤っているのだと上条は確信していた。 一人に一つの能力、という認識は正解だ。 幻想郷でも、特別な力を持っていること自体は珍しいことではない。 ただ、上条の能力は異質【イレギュラー】。 そこに『何か【異能の力】』がなければ発揮されない能力など、まさに『無能の境地【レベル0】』―――!! ―――萃香は疑問に思う。 上条は、外来者。 なのになぜか能力を持っている。 それも何かがなければ反応しないような、半端な能力。 なまじ周りには強力な能力を持つ者が多いだけに、『持っているくせに大したことのない力』というのはどうも腑に落ちない。 ―――知る由もないが、それは学園都市でも無能力者【レベル0】の落第生【おちこぼれ】扱いである。 結果訪れるのは、一つの挑戦。 「私は密と疎を操る能力を持っている」 「おい、上条。勝負しろ」
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113 : ◆9ww4lHcaLU [sage]:2010/12/14(火) 15:08:12 ID:ithcXARW - wikiに載せていただけるのであれば、
>>112←こちらをお願いします。 お手数をかけて申し訳ございません。
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114 : ◆9ww4lHcaLU [sage]:2010/12/14(火) 15:11:18 ID:ithcXARW - それでは、続きです。
◇ こつ、こつ、こつ。 余裕を持って歩む。 その男は、荒耶宗蓮。 人間の性に絶望した男。『静止』を操る起源覚醒者である。 「こちらの世界に来るも来ないも、全ては気分次第か」 相手にするのは、幻想郷でも最高位の力をもつ者。 「当たり前でしょう?」 境界を操る―――それは三次元上の部屋の中と外とか、そういったレベルではない。 現実と虚構。 概念の『境界』でさえ操ることが可能。 「」も、境界である。 荒耶の目指す、全ての始まりの知識、「」。 そう。 ...................... 八雲紫は意図せずとも『根源』へ辿り着いている―――ッ! 「そこまで、『根源』とはすばらしいものかしら」 「私は人間を見限っている。お前のような人智を超越した存在は羨ましい限りだ」 何度も目にした。 人間とは、もはや―――。 「しかし、ただの人間にすぎぬ私が人智を超えるには、『抑止力』を退け『根源』へと辿り着く他、手はあるまい」 「そう。まぁどうでもいいことよ。―――ずいぶん簡単に右手を棒に振るのね」 「あれはあの少年が身につけなければ意味を成さない。実際、アレイスター程度にすら届かなかった」 ただの魔術すら、あの右手は殺せなかった。 それは、右手が弱かったからではない。扱う者が『神浄の討魔【かみじょうとうま】』でなかったからだ。
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115 : ◆9ww4lHcaLU []:2010/12/14(火) 15:13:00 ID:ithcXARW - 荒耶は、ただ談話しに来たわけではない。
「―――協力するとはどういうことだ?」 「あら、簡単なことよ。ヒントを上げるだけ」 ―――荒耶は、この妖怪には絶対に敵わないと確信している。 そもそも、ヒトの身ではバケモノなどに敵うはずはない。 「―――『両儀』。言葉くらいは当然知ってるわね」 「……。それが」 「陰陽の太極、シキ【式】とシキ【識】。そして―――」 「―――『両儀式』。この三つを体に宿す者がいれば―――」 「確かに、間違いなく『根源』への鍵だ。だが、そのような存在が―――」 「いるかどうか。さぁ?そこまで丁寧には教えてあげない。ただ、探すなら駒を用意しなさい」 ―――そして、『相克スル螺旋』へと招くのよ――― ―――『死に依存して浮遊する二重身体者』 ―――『死に接触して快楽する存在不適合者』 ―――『死に逃避して自我する起源覚醒者』 ――――――。 一つ一つ、パズルのピースを埋めるように。 荒耶宗蓮:了 next stage......《矛盾螺旋》
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116 : ◆9ww4lHcaLU [sage]:2010/12/14(火) 15:16:20 ID:ithcXARW - ◇
「だぁーもうちくしょう!」 ぷんすか、という擬音が似合うような状態である。 あれから何度も萃香は上条相手に攻撃を仕掛けたが、ただの一度としてダメージになることはなかった。 ただし、上条も人の身、それもけが人である。 萃香のあふれ出る体力の前に根気負けし、ギブアップを宣言していた。 「……一回も当たんなかった。なんだその右手は……?」 「……喋らせる気かよこんな仕打ちをしといてコンチクショウ」 げんなり、上条。 時刻は昼飯時である。 グぅ、と、腹を鳴らす。 「……腹減ってるのか?」 ―――萃香は心配してるけど、そもそも疲れさせたのはお前だという本音は置いておく。 おもわず、「お蔭様で」と呟いてしまう。 ちょうどいいところに霊夢がやってくる。 「朝っぱらからドンパチやってんじゃないわよ。あ、上条。あなたは昼飯作っといてね」 霊夢自身、作れないということではないのだが、それでも自身で作る飯には飽きが回る。 せっかくの人手なのだ。活用しない手はない。 「……はい?霊夢様特製和食フルコースという俺の希望は……」 「生涯叶うことはないでしょうね」 冷たく言い放つと、そそくさと部屋へ戻る霊夢。 はぁ……と重たい息を吐く。 気づけば萃香もどこかへ行ってしまったようだ。 仕方がないので台所の方へ行く。 食材だけは、和風のものが一通りそろえてあるようで、バリエーションには困らないだろう。 料理をはじめようとする。 ―――しかし。 キィイン 聞きなれた音と共に、食材は触れただけで砕け散った。 「……霊夢。悪いが俺には料理は無理みたいだ……」 霊夢は先ほどから後ろでのぞいていたらしい。 「……の、ようね」 他に料理ができる人のあてがないのか、心底落胆する霊夢。 が、突然、 「あ」 と、頭の上に電球が輝いたかのように思いつく。 「あいつなら、まぁ……料理ぐらいできるでしょ」 「……知り合い?」 ええ、と霊夢。 「家、近いのか?」 「そこそこね。ただ、歩くんじゃつらいし飛ぶしかないかぁ……」 霊夢は、「ふぁああ」と背伸びする。 ―――年中眠いのか。 「えっ、てか飛ぶってどういうことだよっ!?」 「文字通り。あ、あなたは無理か……」
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117 : ◆9ww4lHcaLU [sage]:2010/12/14(火) 15:17:59 ID:ithcXARW - ……
「……つかまって」 「無理です」 「こっちも恥ずかしいんだ早くしろこの野郎ぉおおお!!」 ガバッ、と勢いよく上条の左手を握り、抱き寄せる。 上条は霊夢に抱きかかえられながら、霊夢は上条を抱きかかえながら。 二人は空へと舞い立つ。 目指すは、とある魔法使いが住む家。 ◇ そのまま眠りに就いていたらしい。 気がつくと外から入り込む朝日が、部屋を柔和な光で包みこんでいた。 「あれが、私の記憶を奪ったモノ」 誰となく、呟く。 ―――透明な、竜王の顎。 ―――体の芯までを喰らい尽されるような感覚。 体中を駆け巡った『死』の奔流。 思い出したくもないが、頭の中でその記憶だけが異常な存在感を放っている。 「おはようございます。スーツで寝にくくないのですか?」 「……誰だ。昨日とは違う顔だな。釈然としない」 「……師匠もすっかり気に入られたみたいですね。私は鈴仙・優曇華院・イナバ。呼び方はご自由にどうぞ」 「自然、レイセンが適切か」 自らに問いかけるように、言う。 ―――ウサギの耳のようなものが、頭にある。 「その格好はどういうことなのだ?意図あってのことか」 「……耳は外れませんよ?言っておきますけど私はこれでも月の人なので」 ―――からかっているのか? 「当然、貴様の師匠から私の症状は聞いているはず。その上でからかうか」 「本当【しんじつ】ですよ!まぁ、外来人の方に『信じてくれー』というのも無理な話ですけどね……」 ―――嘘、ではない、のか? 表情に偽りの色が見られない。 にわかには信じがたいが―――月の人というのは本当なのだろう。 透明な―――何もない、『記憶』という皿の上には次々とモノがのっかるように。 ―――自分で言うのも変な話だが、私はあまりにも『純粋』なのだ。 「……あなたは、お優しいんですね。そんな簡単に信用してくれるなんて―――あ、すいません、私大まかにですけど人の心の中が見えるんです」 「優しい、か。依然、私にはその感覚はつかめん」 「思い出せると、いいですね。おっと、忘れるとこでした」 はい、と何か錠剤のようなものを渡してくる。 「お薬です。師匠から、『飲ませるように』と預かっているので」 「了承した。いただく」 ―――ゴクリ。 得体の知れぬものを飲むことに抵抗はあったが、不思議と、あの女の顔を思い浮かべればそんな雑念などかき失せた。
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118 : ◆9ww4lHcaLU [sage]:2010/12/14(火) 17:05:57 ID:ithcXARW - ◇
ヒュゥ 風を切って空を進むというのは、爽快なことに違いない。 しかし、上条の心に爽快などという気持ちはこれっぽっちもなかった。 (当たってるぅっ!当たってるってぇ!) 口にしては絶対にダメな気がするので、とにかく口を結ぶ。 「……いい?絶対に右手で触らないでよね……!?」 恥ずかしいことなど置いてけぼりにするかのように、霊夢は言う。 実際、霊夢も顔は真っ赤だし心臓はばっくばくだし、余裕などないのだが、 (取り乱したら私の負け……取り乱したら私の負け……!) そう言い聞かせて何とか『華麗』と言わせるほどには安定して空を飛んでいた。 「見えた」 呟き、少しずつ下降する。 一軒の家が見えた。 「おう、霊夢じゃん。―――誰だ、それ?」 着地するなり何なり、如何にもな格好の『魔法少女』が話しかけてくる。 「こんにちは魔理沙。突然であれだけど、あなた料理できたわよね?」 「何だよ料理ぐらい自分でしろよ」 「さすがに自分の飯には飽きたのよ。それにこいつは使えないし」 冷たい視線を上条へ向ける霊夢。 「使えないとか言うなっ!」 思わず反論。だが、先ほどの飛行が相当応えているのか、霊夢は俯きそれ以上何もいわない。 「……まあいいや。三人分ぐらいなんとかなるでしょ。私は霧雨魔理沙だ。お前は?」 「俺は上条当麻。言っておくけと外来人だからな」 見りゃあわかるよ、と魔理沙。 やはり、この世界の住人には独特の雰囲気があると、上条は感じる。 ―――だからこそ、自分は馴染むことは出来ないだろう、とも。 ―――いや、馴染んではいけないのだと、確信している。 「まぁ、入れよ。すぐに作るから」
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119 : ◆9ww4lHcaLU [sage]:2010/12/14(火) 17:07:44 ID:ithcXARW - ◇
「あの女は出かけているのか」 「ええ。場所は聞きませんでした」 ―――そうか。 短く答える。 彼女がいないからといって、別段不自由することはない。 ―――薬のお蔭か。 いくらかの記憶は戻り始めている。 『我が名誉は世界のために【Honos628】』 己が内に掲げた名も、思い出した。 そして。 ―――アウレオルス=イザード。 自らの、名前。 しようとしていたことは、簡単なことだ。 ―――ある少女が助けたかった。 ―――それは、叶わぬことだった。 ―――ある時、ヒトの身に余る力の持ち主を知る。 ―――『吸血鬼』。 ―――人智を超えた力ならば、少女を救えるはずだったのだ。 ―――だが、それはやはり、叶わぬことだった。 ――――――自分が救わずとも、少女はすでに救われていたのだから―――――― 「吸血鬼、か……果たして自然に存在し得るものなのか……?」 「はぁ、『吸血鬼』ですか。居ることにはいますけども……」 ―――何ッ!? 「そうか……そうかそうかそうかそうかそうかそうか……」 「大丈夫……ですか?」 ――――――復讐――――――ッ! ―――吸血鬼などいなければッ! ―――私が道を踏み外すこともなかったッ!
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120 : ◆9ww4lHcaLU [sage]:2010/12/14(火) 17:11:50 ID:ithcXARW - 「莫迦なことは、やめておきなさい」
唐突に、声がかかる。 「あ、咲夜さん。いらっしゃい」 「こんにちは。お薬頂きにいたわ」 「何だ……貴様は……?」 「そうね、あなた程度が挑めるほど、『吸血鬼』は程度が低い種族ではないわ」 「そう、思うか?ならば呼べ。『訪問者、貴様は吸血鬼をここに呼べ』」 キィィン、と。 何かにかかったかのように咲夜は向き直り、 「吸血鬼を……ここに……」 そのまま、帰る。 「ちょっと!……アウレオルスさん、あなた何をしたんですか」 「―――当然、我が術式『黄金錬成【アルス=マグナ】』は、『言葉通りに世界を歪める』―――ッ!」 構える。 それは、武術における『構え』ではない。 悠然と。 ただ、視線だけで敵意を向ける―――ッ! 「……戦うんですか」 「貴様がそれを必要とするならば」 「こちらの世界には『スペルカードルール』というものがあるのですが……」 「当然、」 「『私』『私』と『貴方』『貴様』だけなら必要はないっ!」 殆ど似通ったことを言い合うのを合図に、二者は戦を始める。 「狂え―――ッ!」 狂気の魔眼。 赤く染まったそれは、ヒトの精神をたやすく崩壊させる視線に違いない。 「『貴様の目は私に対して効果を持たない』」 冷静に、呟く。 それだけで。 「……効か……ない……ッ!」 目は通じない。 それなら、とばかりに。
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121 : ◆9ww4lHcaLU [sage]:2010/12/14(火) 17:12:35 ID:ithcXARW - 「―――幻朧……月睨【ルナティック……レッドアイズ】!!!!!!!」
強力な弾幕がアウレオルスを襲う。 しかし、アウレオルスは無駄だ、と嘲笑う。 「『攻撃は無効化。月の者は攻撃の終了と同時に死ね』」 そして。 その場に倒れこむのは、ただの敗者。 ◇ 神社の縁側。 ―――そっと、歩み寄る。 強力な者が、二人並んだ。 それだけで、その場の空気は果てしなく重い。 当人たちはそんなことを微塵も感じはしないだろうが。 「なぁ、紫。あんまり上条を見くびらない方がいいよ」 「私は彼を敵にしてるわけじゃないわ。むしろ鍛えてあげてるのに」 「―――でも、元の世界に帰ったらまた死ぬだけじゃないの。強くさせてどうするのさ?」 「……あっちの世界には、果てしなく気に食わないやつがいるのよ。その気になれば、こちらにも侵攻してくるでしょうし」 「向こうと幻想郷で戦争か!どっちの方が強いんだろうな」 「……貴方には一番最初に戦ってもらいましょう」 紫と、萃香。 友人同士。 それは、お互いが強さを認め合っているからなのだろう。 「―――アウレオルス。派手にやってるみたいね……」 「……どうしたんだ?」 「いや、何でもないわ。用事が出来たから失礼するわよ」 突如として『スキマ』が現れるが、今となっては最早おなじみの光景である。 ―――。
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