- ロスト・スペラー
58 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/12/13(月) 18:03:22 ID:uR20QBzm - 「魔法大戦の伝承」
「魔法大戦の伝承」とは、魔法大戦に纏わる逸話を記録した、最古の古文書である。 著者は不明だが、『共通魔法使い<コモン・スペラー>』である事は先ず間違い無く、 一定以上の地位にあった『魔導師』か、それに近い者が遺した物と推測されている。 伝承は、『偉大なる魔導師<グランド・マージ>』の高弟達が、『旧い魔法使い<オールド・マジシャン>』達の 追跡から逃れ、グランド・マージに助力を請う所から始まる。 グランド・マージは言った。 権力は、法に拠って、確立される。 魔法に依る身で、権力に固執する者は、蒙昧無知である。 魔法の法は、法を歪める。 法が歪めば、魔法の世界。 我が子弟よ、寝食の暇も惜しみ、唱えよ。 三月の後、魔法の世界、来る。 グランド・マージと、その子弟達は、三月の間、寝食を断って、詠唱を続けた。 果たして、三月の後、魔法の世界は、訪れた。 魔法の法は、無知なる者に、鉄槌を下し、親族を、友を、土地を、国を奪った。 世界には、剰りに、無知なる者が、多過ぎた。 天地は崩壊し、唯一つの陸を除いて、全てが、水底に沈んでしまった。 そして、魔法使いが、生き残った。 魔法使いは、一つの陸に、集まった。 魔法の世界で、生き残った、魔法使いは、魔法の法を賭けて、戦った。 ↓
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59 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/12/13(月) 18:04:41 ID:uR20QBzm - ↓
この「一つの陸」とは、現在の『禁断の地』の事である。 何が起こったか判らないが、三ヶ月もの間、グランド・マージの高弟達が詠唱を続けた結果、 禁断の地を除いた、全ての陸地が海に沈んだと云うのだ。 地殻変動か、大津波か、その類の魔法と推測されるが、俄かには信じ難い。 そして、ここから『魔法大戦<スクランブル・オーバー>』が始まる。 魔法大戦の内容も大概だが、一番の問題は、魔法大戦が共通魔法使いの勝利に終わった後の事。 千日に亘る、戦いが終わり、数多の魔法使いが、その魔法と共に、永久の眠りに就いた。 グランド・マージは言った。 一つの陸に、一つの魔法が、生き残った。 しかし、この地は、血に塗れ、穢れてしまった。 最早、人が住める所では、無い。 それに、これでは、多くの者が暮らすには、狭過ぎる。 我が子弟よ、一つの魔法の、一つを詠唱しよう。 そして、三日の後、水底から、一つの世界が蘇った。 グランド・マージは言った。 唯一つの世界に、一つの魔法。 これからは、一つの魔法が、法となり、世界の法となる。 子弟は、グランド・マージの言に従い、一つの魔法を、一つの世界の法とした。 ↓
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60 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/12/13(月) 18:08:38 ID:uR20QBzm - ↓
「一つの魔法」は『共通魔法<コモン・スペル>』、「一つの世界」は『唯一大陸』の事である。 グランド・マージと高弟達は、海に沈んだ大陸に代わり、新たに大陸を浮上させたのだ。 「故に」と言って良い物か、判らないが、唯一大陸は、西から東に、緩やかに傾斜している。 海底から旧暦の遺産が引き上げられる度に、海に沈んだ大陸は話題になるが、如何に、 古代が魔力に満ち溢れていた時代だったとしても、そこまでの事が出来る物か、流石に疑わしい。 この後、グランド・マージの高弟達は、大戦で生き残った人々と共に、第一魔法都市グラマーを建設し、 『八導師』となって、『魔導師会』を組織した。 しかし、グランド・マージの行方については、伝承には全く記述が無い。 封印を守る為、禁断の地に残ったとの見方が有力だが、大戦で死亡した可能性もある。 魔導師会は、「魔法大戦の伝承」について、肯定も否定もしない。 この伝承が嘘か真か、判ぜられる魔導師は存在しない。
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61 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/12/13(月) 18:09:58 ID:uR20QBzm - 『海』
「魔法大戦の伝承」にある通り、この世界に、大陸と呼べる陸地は、『唯一大陸』しか存在しない。 広大な海の底には、旧暦の大陸と文明が眠っているが、海底探査は、全く手付かずの状態である。 その理由は、海棲生物にある。 この世界の海棲生物は、陸上の生物とは別進化を辿ったのか、桁外れに巨大、且つ、獰猛なのだ。 生物学者は、『魔法大戦<スクランブル・オーバー>』で、全ての大陸が沈み、海が広がった事と、 関係しているのではないかと推察する。 カターナの海洋調査隊が、航海軍と呼ばれたのは、海棲生物を退ける為に、武装したからである。 海棲生物の襲撃を避ける為、漁民は比較的陸地に近い海や、遠浅の海でしか操業出来ない。 海は危険過ぎ、『開花期』が終わるまで、唯一大陸に住む人間の興味が、海外に向かう事は無かった。 海底探査など論外だったのである。
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