- 【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
302 :時の番人[sage]:2010/12/13(月) 19:27:05 ID:2A3LYgz7 - これから日本鬼子 第二章「奇妙な仲間?」を投下します。
話しの流れ上、登場人物が増えてますが二次創作なので あしからずん。
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303 :時の番人[sage]:2010/12/13(月) 19:28:55 ID:2A3LYgz7 - 「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第二章〜【奇妙な仲間?】
初霜降りる肌寒い秋の朝。色鮮やかに染まった紅葉(もみじ)が風にゆれチラチラと風の中を泳いでいる。 鬼子は初めて光の世で目を覚ました。白絹仕立ての寝間着(ねまき、寝室で着る着物)姿の出で立ち。 遠い所で神社の鐘が鳴り、鬼子の耳に心地よく聞こえてきた。 上半身を起こし、「ふっわあぁぁ〜」と手を伸ばしながら大きなあくび。 誰も見ていない、静まり返った部屋。闇世ではあまり無い静けさだ。 もう一度身体を精一杯伸ばし大きなあくびをした。 「おまえ、乳無いな」 突然、そんな言葉が何処からか飛んで来た。 「え?」鬼子は、もちろん言葉は理解出来るが、その内容が理解出来ない。いや、内容は解るんだが 言葉が理解出来ない・・・。頭の中でそれがさまよっていた。 「え?」また鬼子が無意識に言葉を漏らす。鬼子の右側、ふすまの手前に何か居る。 「おまえ、乳無い」 鬼子は声のする方に恐る恐る目線をやると、鶏のような鳥が鬼子の方を見て、 羽で鬼子の小さな胸を指差しながら喋っていた。 ・・・じっとお互い見つめあう・・・。この空間だけ、とても静かに空気が張り詰めていた。 http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=352 挿絵 「キャアアアアァァァァァァァ〜」鬼子の大きな叫びが部屋を揺るがす。 【バッ】っと足元のふすまが開いた。きび婆が血相を変えて鬼子の部屋に駆け込んできた。 「なんじゃ?何事じゃぁ?」きび婆はそばまで飛んで行こうと鬼子の方に目をやった時、 飛び込んできた光景は、鬼子が薙刀で何かを突き刺していた。 「きび婆ああぁぁ・・こいつが、こいつが・・・。」 鬼子は薙刀の先に突き刺さった鶏のような鳥をそのままきび婆の前に見せた。 きび婆の顔色が徐々に元に戻っていく。そして、おもむろに突き刺さった物の足を鷲掴みにし、 薙刀から引き離し、自分の目の前に持ってきた。 「ヒワイドリ・・・お前さん、鬼子が部屋から出てきたら、色々案内する様に命じたろうが。」 鬼子の頭の中は初霜が降りたかのような状態。半分固まり、半分溶けて・・・。 言葉が何も出てこないみたいだ。 きび婆はそのヒワイドリの足を持ったまま鬼子に向かって突き出した。 「こやつの名はヒワイドリ。鳥の民の中ではとても弱い存在の鶏の民。今日一日鬼子の 世話役をさせようと思ったんじゃがのう・・・。最初からこれでは。」 きび婆はヒワイドリを揺らしながらそう言った。雑な扱いである。 ヒワイドリの日頃の行いがきび婆をそうさせているのだが。 鬼子の頭の中の霜が晴れる。やっと現状を理解したようで、 「あ・・そうだったの。ヒワイドリさんごめんなさいね。」 と膝上に手を載せ小さく頭を下げながら言った。 「おめぇさん。暴力的だな」ヒワイドリは自分の非を全く考えずそう口走った。 きび婆が突然狐火に姿を変えて、大声で怒鳴り散らした。ヒワイドリの言葉がきび婆の怒りを買ったのだ。 「こら〜!そんな事を言うから、おまえさんはいつまで経っても世話役になれんのじゃ。 仲間の鶏の民の皆は、各地で一生懸命守り役(神社、寺、祠を任されてる民)に仕えとるっちゅうのに ほんっっっとにおまえさんは・・・・・食ってやろうか!」 ヒワイドリは狐火と化したきび婆の手に揺さぶられながら、そして泣きながら 「ご・・ごめんなさ〜〜〜いぃ」と言った。
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304 :時の番人[sage]:2010/12/13(月) 19:30:14 ID:2A3LYgz7 - 鬼子は昨日貰った紅色の着物を着て、廊下を歩いている。その前にはヒワイドリがお尻に大きな
バンソウコウを貼り、トボトボと歩いていた。 「ここ」とヒワイドリは無愛想な口調で洗面台の方を指差した。 鬼子はヒワイドリを刺してしまった事には申し訳ないと思っているが、 心の表れなのか、自然と眉間にシワを作らせていた。それもそのはずで、ヒワイドリの態度が悪いからだ。 「ここで何するの?」と鬼子は聞いた。 「歯を磨く」とヒワイドリは一言・・・。 「えぇ?薬草と木の、歯を磨く道具は部屋に置いてきたけど・・・」 「おめぇさん何にも知らねぇんだな。ほら、これ。」と洗面台の上に飛び乗り言った。 この紅色の歯ブラシと歯磨き粉を使うんだ。この歯ブラシ、鬼子のだから覚えとけよ。」とヒワイドリは偉そうに言う。 「えぇ〜?なにこれ。こんな道具で歯を磨くの?」 「だから闇世育ちの民は嫌なんだよ。おめぇ・・・口くせえよ。」 【プッス】・・・。ヒワイドリは鬼子の薙刀の先にくっついていた。 鬼子は歯ブラシに歯磨き粉を付け、歯を磨き始めた。 「おぇ・・うぇ・・。」えづいている。 「何これ〜〜〜。すごく辛〜い。」鬼子は始めての歯磨き粉に悪戦苦闘している。 「早くしろよ〜。色々やる事があるんだから。」とお尻から薙刀を抜き、無愛想な口調でヒワイドリは言った。 「うるさい。今頑張って・・・うぇ・・おぇ・・。光の世の民はこんなものを口にいれるの・・ おぇ・・うぇ・・。」 ヒワイドリは勝ち誇った様に腕組をしながら「朝食が終わったらもう一度歯を磨くんだぞ!」と。 目が点になっている鬼子の顔が洗面台の鏡に映っている。 鬼子の光の世での初めての戦いである・・・。相手は歯磨き粉・・・。 きび爺、きび婆との朝食も終り、今日一日はのんびりする様にとのきび爺の言葉もあり、 鬼子は寝室の近くにある縁側に座って、綺麗に色づいてる木々を見ながら足をブラブラさせていた。 「鬼子」横に座っているヒワイドリがそう言った。呼び捨てである。綺麗な風景が台無しだ。 「ん゛?」鬼子は無愛想に返事をした。 「乳の話しでもしようじゃないか。」唐突なヒワイドリの言葉。 【ガツッ】鬼子の薙刀が・・・ではなく今回はほうきの枝が何処からか飛んで来て ヒワイドリの額を直撃した。 「ま〜たイタズラしてるんでしょ。」と言いながら誰かがヒワイドリをほうきの枝で【ツンツン】している。 白い小袖(白衣)に赤い緋袴(ひのはかま/ひばかま)姿。ショートカットで見た目二十歳くらいの女性が立っていた。 http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=353 挿絵 「私はこの神社に仕える巫女(みこ)の舞子。鬼子ちゃん、宜しくね。私を含めて五人ここに 住み込みで仕えてるわ。女は私一人だけど。昨晩は皆遅く帰って来たから鬼子ちゃんには会えなかったね。」 舞子は鬼子の角をジッと見ていた。「へぇ〜。鬼って本当に居たんだ。」 鬼子はたじろぎながら「わ、私の名前を知っているんですか!?」と少し驚いた様子。 しかし、角を見られてるのが解り、そっと手で隠した。 「は、初めまして舞子さん。わ、私ひのもとおにこって言います。私の事、こ、怖くないんですか? 人間の民は力を持つ民の事を知らないんじゃ・・・?」 舞子が【クスッ】と笑う。 「基本そうね。でも私達みたいに神社やお寺に仕える者は皆理解して知ってるつもりよ。 この奇妙な奴も含めてね。」舞子は、ほうきでヒワイドリの頭を【ポン】と叩いた。 「狐火様の言う闇世の存在も知ってるわ。でも、怖いから行きたくないけど!」と右目でウィンク。 「そ、そうなんですかぁ。私、人間の民の皆様は知らないとばかり。」 鬼子は歌子に合わせる様に、【クスッ】と笑顔にしてみた。 「解らない事があったら何でも聞いてね。私以外に後四人ここに仕えてる人達がいるから その人達に聞いてもいいし。」 「難しい事は、ヒワイドリに聞かない方がいいわよ。そっけない間違った答えが返ってくるから。」 舞子はたっくさん体験済みなのだろう。 「ふん。いい年して未だに乳が無い舞子に言われたくねぇ〜よっ。」とヒワイドリは早口で言う。 舞子はとっさに胸を押さえる。鬼子も何故か自分の胸を押さえていた。 「さらば!」っとヒワイドリは勢い良く飛び立って・・・だが、飛ぶスピードが非常に遅い。 それに高く飛べないのだ、ちょうど目線辺りをパタパタと・・・。 【バキッ】舞子のほうきで、力いっぱい叩き落とされた。
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305 :時の番人[sage]:2010/12/13(月) 19:31:52 ID:2A3LYgz7 - 縁側から少し離れた所、2,3分くらい歩くだろうか。そこに神社の本堂がある。
鬼子はその本堂に向かって歩いていた。もちろんヒワイドリも一緒だ。 先ほど会った、縁側周りの落ち葉を掃除している舞子から、お寺に仕える後の四人が 本堂と鐘楼(しょうろう、鐘突堂・釣鐘堂とも言う。梵鐘ぼんしょう、 釣鐘を設置しておく専用の建造物)で掃除をしているから挨拶しに行ったらいいと言われたからだ。 本堂に近づくと男性が2人、本堂の中で掃除をしている姿が見えた。 「おはようございま〜す。」鬼子は元気良く本堂の手前から挨拶した。 こちらに気付き彼等は仕事中だが近くまで来てくれた。「おはようさん!」 一人は体格のいい五十歳代くらいのおじさん。もう一人はモヤシ風のひょろ長い三十歳くらいの人。 「初めまして、私、ひのもとおにこっていいます。」 すると、大柄な男が笑顔で応えてくれた。「狐火様から聞いてるよ〜君が鬼子ちゃんか。可愛いね。 鬼には見えないなぁ。あっ俺は織田ってんだ。でこいつはモヤシ・・じゃ無くて秀吉」 モヤシと言われた秀吉は少しムスッとした表情で、「鬼に見えないって、角、ありますよ。」と織田に言った。 「それくらい解っとる。舞子には会ったかい?」 織田は秀吉にヘッドロック(別名頭蓋骨固め)をしながらそう言った。 「はい。舞子さんから聞いてここへ・・・。」鬼子は苦笑いしている。 「鬼子ちゃん。ヒワイドリには気をつけな!舞子もそいつには手を焼いてるからな。」 と、言いながら織田はまだヘッドロックしている。 「はい、もう十分理解出来ましたから。」キッパリとした口調で鬼子は返答した。 ヒワイドリは腕組しながら明後日の方を向いている。
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306 :時の番人[sage]:2010/12/13(月) 19:33:21 ID:2A3LYgz7 - 鬼子は丸太で出来た長く続く階段を登りながら辺りの景色を堪能していた。
「織田さんに秀吉さんか。面白い人達ね。」と独り言。 ヒワイドリはその言葉を聞いて、「あいつらいつも一緒にいるんだぜ。キモイよなぁ。 それに、あの織田はすぐ暴力を振るうから嫌いだな。」 鬼子はヒワイドリの方を向き細目で言った。 「アンタがイタズラばかりするからじゃないの!?」とうとうアンタ呼ばわりだ。 「お前、乳無いよなぁ。乳の話しでもしようじゃないか!?」 【プッス】ヒワイドリのお尻に例の如く薙刀が刺さる。 「・・・どっから薙刀出してるんだよ・・・」ヒワイドリは薙刀の先に刺さり、ブラブラ揺れていた。 階段を登りきり、紅葉(こうよう)している木々の合間から鐘楼が見えてきた。 その手前で2人のお爺さん、70代くらいの人達が掃除をしているのが見えた。 一人は白髪で、もう一人はツルツル頭。 鬼子は元気良く声をかけた。 「おはよう御座います。私ひのもとおにこです。よろしくお願いします。」 掃除している2人から返答が無い。背を向けたままだ。もう一度大きな声で挨拶した。 「おはよう御座います。私ひのもとおにこです。」 ・・・返答が無い。聞こえていないのだろうか。鬼子は近くまで駆け寄りもう一度大きな声で挨拶した。 「あのぅ、わたしひのもとおにこで・・」そっと顔を覗くと2人は立ちながら寝ていた。 【ヒュ〜〜〜】虚しい風の音が一面を包む。 ヒワイドリが2人に声をかける。「そろそろ病院行きだな、お前ら」 今まで寝ていた?白髪のお爺さんが突然振り向いた。「お前とは何じゃぃ。お前とは。寝たフリをしとったんじゃ」 俊敏な動きでヒワイドリを睨む。 「今のは全部聞こえとるわい。目上の者に対して使う言葉じゃ無いって何度も言っとろうが!!」と急に元気に。 そして、ほうきで叩かれるヒワイドリ・・・。 「ヒワ!(ヒワイドリの事)未熟者〜。ヒワ!厄介者〜。ヒワ!役立たず〜。」と言いながら その白髪のお爺さんは鬼子の方を向いて一言、 「野次ばかり言ってるワシの名は弥次じゃ。フオッフォッフォッフォ。」と何故か自慢げな爺さん。 「・・・や、弥次さん。初めまして。」鬼子は苦笑している。 そして、もう一人ツルツル頭のお爺さんが話しかけて来た。 「おぉ〜来たか来たか、ワシの名は喜多じゃ。フオッフォッフォッフォ。」・・・と自分を親指で指差しながら言った。 「・・・き、喜多さん。宜しくお願いします・・・。」鬼子は肩を落としながら挨拶した。 また、秋の冷たい風が鬼子を包む。 少し間が空く・・・。最初に口笛を切ったのはヒワイドリだった。 「掃除するにはちょうど陽は良い時だな、ひわいいとき、ヒワイドリ・・・と。」 【ブッ!】ヒワイドリは自分で笑ってる・・・。 「ちょっとお前さん強引すぎやしないか?」と弥次さんがヒワイドリに言う。 「いやいや、ワシは有じゃと思うがな。」と喜多さんは弥次さんにレスした・・・言った。 「だはははは〜〜。」野次、喜多、ヒワイ。三人は肩を並べながら笑っていた・・・。 本当はこの三人、気が合うのだろう。 鬼子はその三人をよそに、一人で階段を降りていった。 「日本鬼子ひのもとおにこ」〜第三章〜【街の目】に続く。
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307 :時の番人[sage]:2010/12/13(月) 19:43:36 ID:2A3LYgz7 - 訂正。
>>304下から十行目の歌子を舞子に訂正・・・。
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