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創る名無しに見る名無し
『月下の魔剣〜遭遇【エンカウント】〜』
testスレッド2
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】

書き込みレス一覧

testスレッド2
401 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/11/27(土) 19:18:18 ID:eVaMi//x
てすと
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
371 :創る名無しに見る名無し[age]:2010/11/27(土) 21:53:23 ID:eVaMi//x
やーやーなんだかお久しぶりです。
ここしばらくゲームその他にはまりこんで創作に手が出せませんでした。いやはや申し訳ない。
ショコラかわいいよショコラ。もにゅぱー!
ぶっちゃけもう冬ですが、作中時間は真夏です。ご了承ください。

『月下の魔剣〜遭遇【エンカウント】〜』

>>237-240の続きです。
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
372 :『月下の魔剣〜遭遇【エンカウント】〜』[age]:2010/11/27(土) 21:54:53 ID:eVaMi//x

投げたナイフを追うように急速にファングとの距離を詰めるクロス。新たに取り出す、先端に返しのついた特殊形状ナイフ2本。
最初に投げた顔面狙いが右腕の一振りで払われた直後、時間差で飛来したナイフが反射的に出た左手に刺さる。
ファングの視界が自らの手に覆われるその一瞬を逃さず、間合いまで踏み込んで肩に突き刺すは特殊ナイフ。
反撃の横薙ぎを頭を下げて回避、同時に太腿にもう1本を突き立て、直後に飛んでくる蹴りをバク転で回避しながら距離を取る。
肩と太腿に刺さった2本の特殊ナイフからは細いコードが伸びて、クロスの腕の金具に繋がっていた。

「グガッ!? ガッガガガアガガガッガガガアッ」

瞬間、奇妙な声を上げ激しく痙攣を始めるファング。電気の迸る音が響き、肉の焦げ付く臭いが漂い始める。
一歩引いて見ていた鎌田は驚きの声を上げた。

「これっ…電撃っ!?」
「まだ触れるなよカマタ、常人なら5秒で死に到る威力がある。奴の動きを数秒止める程度ならできるはずだ。あと6秒でバッテリーが切れる」
「6……わかりました」

鎌田は痙攣を続けるファングに決意の目を向けると、両手の鎌を広げて構えた。クロスは静かにカウントを始める。

「3…2…1…今だ!」
「はあぁっ!」

クロスがナイフを引き抜くと同時に、鎌田は痙攣して動かないファングの懐に踏み込む。上がっていた右腕を左の鎌で引き寄せて掴み、
右手は下から上腕部を掴み、獣毛に覆われた胸に硬い背中を密着させる。可能な限り深く踏み込んだ一本背負いの体勢。
掴んだ右腕を思いっきり引き、同時に腰を跳ね上げると、ファングの足が浮き上がる。

このまま一番高い場所で放して投げ飛ばす。かなり重いが予想の範疇、いける! そう思った。

「ふんっぐっ!?」

次の瞬間鎌田は驚愕する。掴んでいる右腕の肘が曲がり、自分の服を掴んだのだ。あれだけの電撃を受けてもう動くというのか!?

ここから行動を変えるのは不可能。強引に投げ飛ばそうとするが、鋭い爪は生地に食い込んで離れず。
あえなくファングの体は半円を描いて地面に落ちる。硬い地面に背中を叩きつけられてなお、ファングの右手は胸元を掴んで離さない。

直後、失敗に落胆する暇もなく、自由な左の剛腕が鎌田に襲い掛かった。
反射的に出した両腕のガードがギリギリ間に合ったが、巨大な衝撃が腕の外骨格を、全身を軋ませる。
同時に限界を迎えた服が千切れ、鎌田は横に大きく弾き飛ばされた。

「がっ!!」
「カマタっ!?」

横に転がること二回、三回、仰向けに止まる。思考はぼやけて全身が痺れ、腕の感覚はほとんどない。

「カマタっ! 大丈夫か!?」
「っく……だ……大丈夫です」

走り寄ってきたクロスの呼びかけで、鎌田の思考はクリアになる。身体も痺れてはいるが動く、腕の感覚も少しずつ戻ってきた。
思ったよりダメージは少ないようだ。自身の頑丈な身体に感謝しながら、鎌田はふらつく身体に活を入れ立ち上がった。
臨戦態勢を取るクロスの向こうで、ファングは仰向けのまま小さく痙攣を続けている。電撃の影響がまだ残っているようだ。
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
373 :『月下の魔剣〜遭遇【エンカウント】〜』[age]:2010/11/27(土) 21:56:14 ID:eVaMi//x

「すいませんクロスさん、せっかく作ってもらったチャンスを……」
「いや、カマタはよくやってくれた。奴の耐久力を読み違えた私のミスだ」

振り返らぬままにクロスは続ける。

「動けるか、カマタ」
「まだいけますよ。幸い頑丈にできてるので」
「それはよかった。ならば今すぐ彼女を連れて逃げてほしい。やはりこれは私の問題だ」
「逃げませんよ。ヒーローは逃げないんです」

鎌田はクロスの隣に立って構えを取り、大きく息を吐いて倒すべき敵を見据える。クロスは小さく息を吐いた。

「カマタ。残念ながら、この現実世界にヒーローなど存在しない」
「いますよ、ヒーローは。人を守る心があるならば、誰だってヒーローになれるんだ。そう、あなただってヒーローだ」

鎌田の言葉にクロスは少しだけ驚いた顔を見せると、ふっ、と微かに微笑んだ。

「私はそんな大それた人間じゃあないさ」
「僕だってまだまだ、道を求めている途中ですから」

そんなクロスを見て鎌田も小さく微笑み、それに、と続ける。

「撤退するにしても、やれることを全てやってからでも遅くない、でしょ?」
「何か作戦があると?」
「ひとつだけ、提案があります」

そうして鎌田はクロスに作戦を提案する。ファングの完全復活は時間の問題。要点だけを手短に話した。

「どうですか? 信用できないと言われても仕方ないですけど……」
「なるほど……」

少し考え込むクロスを、鎌田は不安げな目で見つめる。クロスはすぐに顔を上げた。

「信じようカマタ。その作戦で行く。他に手もないしな」
「あ、ありがとうございます!」

虫の顔で、無表情なはずの鎌田がパッと明るい表情をしたのがわかって、クロスはふっと微笑む。
そして空の左手を腰の後ろに廻し、小さく舌打ちをした。

「…まさか奴相手にここまで消費することになるとはな」

膝を屈し、左のブーツから大型ナイフを抜き出す。両手に構えたナイフの奥で、ゆっくりと立ち上がるファングを睨みつけた。

「5秒。恐らくそこが限界だ」
「十分です。やってみせます、今度こそ」
「よし。では行くぞ!」
「はい!」
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
374 :『月下の魔剣〜遭遇【エンカウント】〜』[age]:2010/11/27(土) 21:57:10 ID:eVaMi//x

合図と同時にクロスが地を蹴って突撃。ファングの始動前に一気に距離を詰め、あろうことかあと一歩の距離で立ち止まった。
そこはファングの全ての攻撃が直撃する危険地帯。そんな場所でクロスは地面を踏みしめてファングを挑発する。

「さあファング、決着をつけようじゃないか。私は逃げも隠れもしない!」
「ガアアアアァァァッ!!」

本能のままにファングは爪を振りかざす。
首を跳ね飛ばす威力の横薙ぎを、クロスは身体を反らして躱す。胸を貫く突きを、横から斬りつけ方向を変えて捌く。
頭を砕く振り下ろしを、両手のナイフで無理矢理受け止める。手を跳ねのけると同時に斬りつけて反撃する。
躱し、捌き、捌き、躱し、受け止め、反撃。その間約1秒。

ファングとクロスの間およそ1.5メートル四方の空間で、高密度に爪と刃の嵐が吹き荒れる。常人の目には影しか映らないであろう
超高速の攻防。絶え間なく続く当たれば大怪我、あるいは死が確定するような攻撃を、クロスは一歩も引かず受け続けていた。

2秒。千切れた銀髪の一筋が宙を舞う。
3秒。中指の爪が白い頬に真っ赤な線を刻む。
4秒。五回目の爪の直撃を受けたナイフがミシリと軋む。
次の攻撃を捌いた瞬間、遂に限界を迎えたナイフがバキンと根元から折れた。
尚続く攻撃をクロスは大きく屈んで回避し、曲げた膝に力を溜めて一気に解放、後方に跳ぶ。
距離を取った相手を逃がすまいとファングが地を蹴った、その瞬間。

足元に突然、屈んだ状態の鎌田が現れた。

「ライダー…!」
両手を地面に、両足を天に。逆立ちのような体勢で、渾身の力を込めて蹴りこむ。狙うは重心の中心部。
「反転キイィック!」
「ガフゥ!?」
無防備な鳩尾に両足がめり込む。ファングはそこでようやく鎌田の存在に気付くがもう遅い。
勢いをそのままに、ファングの身体ごと天に向けて伸びていく両足。

「はああああああぁぁぁぁ!!」

全てはこの一瞬のために。
外骨格が軋む、筋繊維が歪む。構うものか。全身が砕けたって構わない。全ての力をこの一瞬に集中する。
どこかの誰かを守るために。見ず知らずの自分を信じて、決死の攻撃を仕掛けてくれたクロスに報いるために。

「ああああっ!!!!」

鎌田の全身が伸びきり、足を離れたファングの身体が空中に浮き上がる。
踏み込みの横ベクトルと蹴り上げの上ベクトルが合わさり、斜め上に高く上昇していく。
目前に飛来するファングに、クロスは右手の平を突き出す。

「slow!」

その瞬間、ファングは身体をくの字に曲げた体勢のまま、空中に縫いつけられるかのようにピタリと動きを停止した。
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
375 :『月下の魔剣〜遭遇【エンカウント】〜』[age]:2010/11/27(土) 21:58:15 ID:eVaMi//x


鎌田の提案した作戦は、そう複雑なものではない。
直立した重量級の相手を打ち上げるのは難しい、かと言って向かってくる所を狙うのも、あの速度相手には自殺行為だ。
だから加速が付く前の初動狙い。逃げた相手に身体と思考が向いたその瞬間、完全な不意打ちを仕掛けた。
足元に突然現れたのは、何を隠そう鎌田の昼能力――通常サイズのカマキリへの変身――を使ったのだ。

作戦の概要はこうだ。クロスはファングが動き出すより先に接近し、足を止めての接近戦に持ち込む。
その隙に鎌田は小さな虫に変身して移動、ファングに気付かれぬまま足元にスタンバイ。
クロスが距離を取りファングが踏み出した瞬間元の姿に戻り、空中に蹴り上げる。そこをクロスの能力で無力化して作戦完了。

足止めは言うまでもなく死と隣り合わせだ。
そしてクロスが足止めに失敗すれば、小さな鎌田は踏み潰される危険性もあった。
互いが互いの力を信じなければ成立しない、綱渡りのような作戦だった。だが、二人は見事にやってのけたのだ。


「立てるか、カマタ」

大の字に倒れたまま荒い呼吸をする鎌田に、クロスの手が差し出される。

「……ああ、ありがとうございます」

その手をとって立ち上がる鎌田。空中で動かないファングを見て、心の底から安堵の息を吐いた。

「感謝するのはこちらのほうだ。私一人ではどうにもならなかった。協力に心から感謝する」
「いえいえ、困った時に助け合うのは当然のことですから」
「カマタ。君は立派なヒーローだと私は思う」
「いっ、いやぁクロスさんに比べたら僕なんかまだまだ」

満更でもないように鎌田はハハハと笑い、そんな鎌田を見てクロスもクスリと笑う。
駆け寄ってくる晶と直輝を、鎌田は大きく手を振って迎えたのだった。


<続く>

あー…バトルパート終了疲れたー。やっぱ自分には技名叫びながらガンガン技出してく少年誌的バトルのほうが向いてるらしい。
晶? 陽太? ああ、大丈夫。彼らはきっと自分以外の誰かが書いてくれるから大丈夫。


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