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聖夜、咲き乱れた桜
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
【小日本】萌キャラ『日本鬼子』製作19【決定】

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【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
109 :聖夜、咲き乱れた桜[sage]:2010/11/23(火) 15:27:19 ID:Ce1oP2r4
ちょい長SS

大急ぎで作りかけの手袋と編み物道具一式を片付け、台所で朝食の用意をあらかた終えた頃、外で妹のはしゃぐ声が聞こえてきた。もう起きたのか。
「……珍しい」
玄関から表の様子を見た瞬間、日本鬼子は呟いていた。薄い木の板に麻紐を通しただけの粗末なそりの上で、小日本が頬を上気させている。
「行けー! トナカイわんこー!」
そして頭の上に二本の木の枝を差した日本狗が、無軌道にそりを曳き続けていた。世にも不機嫌そうな表情で。
サンタごっこをしているのは一目で判るが……
「わんこー、あんたが小日本に付き合ってあげるなんて、どういう心境の変化なのー」
「訊くな! とにかく俺は、借りた恩を返してるだけだ!」
そこで気付いたが、彼らの後ろを、全身傷だらけのヤイカガシが猟犬さながらの勢いで追い続けていた。
「この薄情天狗小僧! お前のせいで昨日の夜は散々な目に遭ったんだぞ!」
「知るか! あの後こっちだって踏んだり蹴ったりだったんだよ!」
二人が言い争っている最中、山中からヒワイドリが姿を現してきた。てくてく二足で歩きながら、その妖怪は疲れた声で言う。
「おやまあ賑やかなことだ……そうそう聞いてくれ。昨日ひどい夢を見たんだよ。世界に満ちた非リア充の邪念が乗り移って、最強の翼を――」
その姿に気付いた日本狗の眼の色が、一瞬で変わる。
「ヒワイドリ……よくもノコノコ出てきやがったな……おいサンタ! クリスマスには鶏の丸焼きを食うのが
しきたりらしい! あいつを今日の晩飯にするぞ!」
「え、そうだったの!? よーし、この刀のサビにしてやるんだからー!」
鞘に収まった巨大な刀を振り回す妹と、それを乗せたそりを曳く少年に猛然と追い立てられる鶏が叫ぶ。
「ちょ、何この理不尽な流れはー!?」
鬼子は首を傾げた。良く判らない。とりあえず自分が寝ている間に、日本狗は妹に借りを作り、
ヤイカガシは日本狗にひどい目に遭わされ、ヒワイドリは日本狗を怒らせたらしい。
「……とりあえず、楽しい夜だったんでしょうね」
『んなわけあるかあぁぁ!』
完全に的外れな見解を述べて、小日本を除く全員に怒声を浴びせられた鬼子は、朝食を居間に並べるべく、涼しい顔で屋内へと戻るのだった。
――しかし気になる。
昨夜、一体何が起きていたのだろう?

その前夜。
山奥深くで、一匹の妖怪が苦しんでいた。
名前はヒワイドリ。人の情欲を喰らうことで存在を維持する、鶏に良く似たその妖怪は、自らを取り込もうとする暗い思念に蝕まれていた。
勝者と敗者がいなくては成り立たないのが恋愛だ。そんな詩的なことを、ある幼い少女が自慢げに語っていたことがある。
ならこれは、敗者の思念か。
自らを侵食する悪意の正体を理解するのと同時に、妖怪は漆黒の翼を背に持った、黒づくめの青年へと姿を変えた。

同時刻。
日本鬼子の家で眠っていた少年が、むくりと布団から身体を起こした。平素から悪い目付きを、眠気で更に凶悪にしながら、彼は呻く。
「何だ……こりゃ」
ここからそう遠くない山中に、異常なまでに膨れ上がった邪気がある。ひどく屈折していて、底知れず暗い何かが。
この雰囲気では人里に下りて好き勝手始めるのも、時間の問題だろう。
寝室から廊下に出て、居間の様子を窺う。妹に贈る手編みの防寒具を作ろうと、悪戦苦闘していたらしい。
糸玉と棒、作りかけの手袋と一緒に机に突っ伏していた日本鬼子が、炬燵の上に顔を乗せ、寝息を立てていた。
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
110 :聖夜、咲き乱れた桜[sage]:2010/11/23(火) 15:28:50 ID:Ce1oP2r4
「ったく……」
できもしないことを大急ぎでやろうとするからこういう目に遭う。どうせ普段のこいつで勝てそうな相手ではない。
山に生まれた何かは、自分一人で片付ける。
日本鬼子の家を飛び出した少年――日本狗は、月明かりの中、夜の山を疾駆する。
その途中、鰯の身体と柊の四肢をもつ一匹の小さな妖怪と遭遇した。
「あ、わんこ! お前も気付いたのか!」
「当たり前だ。こんな洒落にもならん奴が近くに来たのに呑気に寝てられんのは、うちのお気楽姉妹くらいのもんだ。
ヤイカガシ、あんたはさっさと帰っとけ。怪我するぞ」
一瞬だけ足を止めて再び駆け出した日本狗に、ヤイカガシと呼ばれた妖怪も続く。
「こんなおっかないもんが近くにいたんじゃ、おちおち眠れもしない! 俺も連れてけ!」
「何だよ、自信ありげだな。あの侍もどきには変化できんのかよ」
「まさか! 世間は西洋の祭りで浮かれてんだぞ、全然力が集まらん! だから俺は当てにするなよ!」
そういえば明日はクリスマス――聖夜だったか。小日本と鬼子が浮かれていた気もする。
「ったく、肝心な時に役に立たねえな……いいから乗れ!」
並走していたヤイカガシを摘み上げて自分の肩に乗せ、少年は更に速度を上げる。木々の間を縫い、風のような速度で走り続けた。
そうして数分走り続けた後、視界の端に一人の男を納める。幸運なことに背後を取れた。しかも遠すぎもせず近すぎもしない、絶妙の間合い。
黒髪、漆黒の着物。その背中からは、夜の闇を塗り固めたような黒翼が生えている。
その後ろ姿を見て日本狗が最初に連想したのは、鴉だった。が、肩にしがみついていたヤイカガシの呻きが、それを否定する。
「ヒワイドリ……?」
馬鹿なことを。あの上から下まで白一色の能天気妖怪とは、似ても似つかない。
肩にしがみついている妖怪の呟きを無視して、天狗の少年は素早く右腕を振るった。
それと同時に生み出された真空の刃が、背を向けている男に一直線に飛んでいく。
直後に黒い翼が展開され、一度打ち鳴らされた。男に到達しようとしていた真空波は、その動作であっさりとかき消される。
「不意を突いてそれか……底が知れるな」
肩越しにこちらを見た男と視線が合った瞬間、日本狗は全身の肌が粟立つのを感じた。
「――しっかり捕まっとけよ、ヤイカガシ!」
小さな妖怪に警告した少年は、両の掌を突き出した。黒一色の男の周囲で、円を描くようにして風を巻き起こす。
そのまま加速度的に勢いを増した突風は一瞬で巨大な旋風へと姿を変え、砂塵を巻き上げ、辺りの樹木すらも根こそぎ持ち上げ始めた。
「おい! いくら何でもやりすぎじゃねえのか!?」
「加減なんてしてられるか! 五体バラバラにするくらいの気でいかねえと、こっちがやられる!」
「いや、これじゃあ俺も吹き飛ばされ――」
その言葉を残して、服にしがみついていたヤイカガシも強風に身体をさらわれた。遥か上空に消えていくその妖怪に、気を遣う余裕さえない。
額を伝う汗を拭いながら、日本狗は成り行きを見守る。出せる力を全て叩きつけた。これで終わってなければ、絶望的だ。
少年の祈りも虚しく、荒れ狂う竜巻が突如消滅した。ほとんど更地同然となった災害の中心地で、男は全くの無傷で立っている。
「……児戯だな。天賦の才は認めるが、それだけで我に勝てると思っていたのなら、自惚れていると言わざるを得ん」
黒翼を広げた男が、至極つまらなそうに続ける。良く見ればその顔は、人間の姿を模した時のヒワイドリの物と瓜二つだった。
「まあ、戯れの時間もこれで終わりだがな」
殺される。疲労と眼前に迫った死の恐怖で、少年は無意識のうちに両膝を地面に突いていた。
そして黒翼の男が足に力を込めた瞬間、鈴のついた黒塗りの鞘が、彼の足元の地面に突き立った。
「んな……」
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
111 :聖夜、咲き乱れた桜[sage]:2010/11/23(火) 15:31:32 ID:Ce1oP2r4
見覚えのあるその鞘を見て狼狽の声を上げたのは、日本狗だった。そういえばあいつの姿を確認しなかった。
途中で見つけていれば、家に戻るよう言っておいたのに。
彼の脳裏に浮かんだのは、まともに刀を抜くことさえできない一人の少女だった。
「おい馬鹿餓鬼! こんな時に出てくるん、じゃ――」
が、現れたその姿を見て、日本狗の言葉は続かなくなった。
「――ごめんなさい。貴方が家を出ていく気配があったので、気になって追ってきてしまいました」
丈の短い着物の裾からは、すらりと細い足が伸びていた。自分よりも高い上背。鈴のような美しい女の声。髪型はあいつと同じおかっぱで、
その手には、今まで少年が一度も見たことのなかった、長大な抜き身の刀が握られている。少年の思い描く人物とは明らかに別人だ。
ただ、あいつが成長したらいずれこんな姿になるだろう。そんなことを考えているうちに、男が口を開く。
「不躾な者が多いな」
日本狗と男の間に立ったその女は、凛とした声で応える。
「子供を手に掛けようとする人に言われたくありません」
「何者だ。今までお前程の使い手に気付かなかったとは思えん」
「貴方が負の思念で力を得たように、私もまた、人々の想いの力でこの姿を得たんですよ。今しがたですけどね」
それを聞いた男の唇の端が、わずかに吊り上がった。
「……面白い。我とお前は、浮世を漂う輩の心に巣食う、陰と陽というわけだ」
男が背中の翼を打ち鳴らした。その黒翼と相対している女は、自然体に近い無形の位で刀を構えている。
「今すぐこの場を離れて下さい」
日本狗に背を向けたまま、女が優しげな声を掛けてきた。
「……そうしたいのは山々なんだが、生憎身体が動かない。さっきので力を使い切っちまった――」
「そうですか」
だから俺のことは放っておいてくれ。そう言おうとした日本狗を遮り、一瞬だけ振り返った女は笑顔で続けた。
「なら貴方は、私が守ります」
女の姿が消失したように見えた。しかし実際には、異常な速度で黒い翼の男の懐に飛び込んでいただけだ。
神速とさえ呼びたくなる女の一閃を、男は指に生えた長く鋭い爪で受け止めていた。
二人が交錯するのと同時に、鮮やかな無数の花弁が辺りに舞った。甘い香り。桜だ。
綺麗だ。こんな状況で場違いなことをぼんやり思う。思考が鈍っていく。幻覚作用か。それも相当強烈な――
「小賢しい」
男が女を弾き飛ばし、翼で突風を生み出した。その動作の隙を突き、一瞬で背後を取った女の刀が片翼を切断する。
「悲しい人。貴方は私が鎮めます」
「よく吠える娘だ」
二人の姿が消え、目で追うことすら敵わない戦闘が始まった。
両者とも、完全に日本狗とは別次元の強さだ。時折刀の閃きが見える度に、凍てついた冬の空に桜の花弁が舞い、少年の意識が遠のいていく。
十秒後か、それとも一時間後か。ともかく湿り気を帯びた音で、時間の感覚を失っていた日本狗は現実に引き戻された。
自分の竜巻でできた更地の中央で、二つの影が停止していた。女の肩には男の腕が、そして男の胸には女の刀が、深々と突き刺さっていた。
「哀れな女だ。いくらお前が足掻こうと、我はいずれ蘇る。お前は賽ノ河原で小石を積む童に等しい」
「知っています。それでも、私は私の役目を全うしたい」
男が再び笑う。
「……次に会える日が楽しみだ。その時は、お前を喰らう」
無数の桜の花弁へと分解されていった男は、そう言い残して虚空に散っていった。
後に残されたのは、手の平に乗りそうな大きさの、鶏に似た妖怪一匹だけ。
「……ふう」
地面に落ちていた鞘を拾い上げ、それに長大な刀身を納めながら、女は日本狗の許へ歩み寄ってくる。
「あんた……肩の怪我は、平気なのか」
深紅に染まった肩口を見て、少年は尋ねた。
「さっきの彼と同じで、所詮この身体は一夜限りのかりそめの姿ですから。もう貴方と逢うことも
――いえ、十年もすればこの姿になっているかもしれませんね」
女は背に向けて屈み込んだ。彼女の纏う芳香で、少年の瞼は更に下がっていく。
「それじゃあ家に帰りましょうか。部屋まで送ります」
眠い。が、これだけは言っておかねば。女におぶさった少年は、重い口を開いた。
「……助かった。あんたが誰なのかは知らないけど……」
くすりと、女が笑い声を発する。
「どういたしまして。――あの、お願いがあるんです。貴方が私のことを好きじゃないのは知ってますけど、
たまにでいいから遊び相手になってくれませんか」
ああ、やはりこの女は――
桜の香りを漂わせた女の背中に身体を預け、少年は寝息を立て始めた。
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
112 :聖夜、咲き乱れた桜[sage]:2010/11/23(火) 15:35:12 ID:Ce1oP2r4
翌朝。
姉と一緒に使っている寝室で目覚めた小日本は、寝巻からお気に入りの着物に着替え、
廊下に出た。そしてきょとんとする。
「遊び相手になってやる。何でも言え」
壁に背を預けて立っていた日本狗を見て、少女は顔を輝かせる。
「……じゃあ、サンタごっこ!」
にっこり笑った少女は、そう言った。

終わり。ここまで読んだ方お疲れ様
【小日本】萌キャラ『日本鬼子』製作19【決定】
19 :聖夜、咲き乱れた桜[sage]:2010/11/23(火) 15:39:34 ID:Ce1oP2r4
すいません避難所で話題に出てたんで人柱になるのも辞さない覚悟で
自分のSSに絵をつけてくれる人を募集してみようと思ったんですが
リンクの貼り方がよく分からないんです
SSスレの>>109-112のリンクを誰か貼ってくれませんか
そして気が向いた絵師の方はイラストをつけていただけないでしょうか
もちろん絵が描けない人も読んで下さると嬉しいです
完全に見切り発車ですいません


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