- ジャスティスバトルロワイアル Part2
356 :代理投下[sage]:2010/11/22(月) 07:39:27 ID:yPvy6P4Z - ――――――――――――――――――――――――
パンドラ。 ハーデスの姉の役目にして、冥王軍を纏める者。 しかし、彼女の人生は不幸の連続であった。 その幼少時代、彼女は幸せな人生を信じていた。 世界はバラ色で、永遠に光に満ちているものだと。 しかし、それは「母親の胎内にいた弟が消える」という異常をキッカケに崩れ去った。 人生とは、一瞬の不幸が起こるかどうかで、幸せではなくなる。 バットマンが、その幼少時代に両親を失ったように。 天野雪輝が、神をめぐる闘いの末に、両親を失ったように。 衛宮士郎が、大火災で全てを失ったように。 テンマが、親友と闘う宿命を負ったように。 本郷猛が、ショッカーに改造されたように。 蝶野攻爵が、病魔を患ったために、人間の超越を考えたように。 DIOですら、母が死に、父が人間のクズでなければ、違う人生もあったであろう。 では、パンドラの今の状態を語ろう。 海藻巻いてパンツ一丁、しかもお子様サイズのかわいいパンツ。 これは不幸か、まぁ不幸であろうが、笑い話の類である。 触手陵辱の末に心臓を潰されたり、ゴッサムタワーを建設するのに比べれば全然である。 だがしかし、だがしかしである。 「な、なんなのだっ、この森は!!」 不幸とは、連鎖するものでもあるのだ。 パンドラの現状更新。 海藻=喪失。 大事な杖=喪失。 パンツ=健在。 現状詳細=森内部……ツタに絡まり逆さ吊りで手ブラ。 「まったく……何が掛かったかと思えば」 その様子を、下から眺める、植物の愛好者、アイビー。 森への侵入者を感知し、来てみればヒョコヒョコ歩くストリークイーン。 あっさりとツタを絡ませた拍子に杖を落とし、無力化に成功したのだった。 「ゴッサムにも、色々いるけど……ここまでストレートな痴女も珍しいわね」 「何ぃ!? 誰が痴女だ! 貴様、この私にこのような恥辱を……万死で済むと思うなッ!!」 ツタを千切る勢いで、体を震わせるパンドラ。 「ツタが痛むでしょ。やめなきゃ……」 新たに伸びてきたツタが、パンドラのパンツの端に絡み、ゆっくりと引っ張り出す。
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357 :代理投下[sage]:2010/11/22(月) 07:40:08 ID:yPvy6P4Z - 「ナァ!? キ、キサマ、やめろ千切れる!! さ、最後の生命線を奪うつもりかぁ!!」
「それが嫌なら大人しくしなさい。まったく、テンマたちの方がよっぽど大人しかったわ……」 「テンマ……だと!?」 その名に、パンドラの表情が変わる。 「あら、知り合い……というには、怖い顔じゃない」 「テンマはどこだ! あいつは、私が殺さねばならない!」 その言語に、アイビーは自分とバットマンの関係を思い浮かべた。 「(それとも、ジョーカーとバットマンの方が近いかしらね) もう居ないわ。今頃、森を抜けてるはずよ」 「ならば、こんな奇怪な森に要はない! 今離せば、この一刻はその生命を見逃してやっても良いぞ!」 パンドラの態度に、アイビーはストレスの溜まる一方だ。 別に我慢する必要はなく、殺してやればいい。 だが、それをたけるは嫌がるだろうことを考えると、少しその決断が鈍る。 そんな時―― 「えっ!?」 森の中心で起きている異常に、アイビーが気づいたのは、そんな時だった。 「なっ、なんだ?」 アイビーの様子にパンドラも気が付き、訝しげに眺める。 すると、まるでパンドラのことなど眼中がないようにアイビーは森の奥へ走り去ってしまった。 「ま、待てキサマ! このツタをどうにかし……アーッ!?」 もがいた途端、あっさりとツタが解け、地面へとパンドラの体が落下する。 「ぐっは、っ〜〜〜〜お、おのれぇぇ……!」 勢いより尻から落ち、痛みと屈辱に震えるパンドラ。 「ぬう、おのれ奇怪な肌をした女め……! だが、テンマの奴が森を抜けたとなれば……」 杖を拾い、怒りに震えるが、テンマを追うことの重要度が圧倒的に上。 「次に会った時が最後だ。今はせいぜい、その生命を謳歌しておくがいい!」 捨て台詞を吐くも、ほぼ全裸なこともあり締まらない。 ヒョコヒョコと、情けない姿を晒しながらパンドラは森を後にするのだった。 ―――――――――――――――――――――――― 「ああ……なんてことなの!? どうしてこんなことに!」 走り続け、目的の中心部に戻ったアイビー。 そこに広がる光景は、僅か前とは完全に異なっていた。 緑生い茂る植物たちが、悶え苦しんでいる……赤く染まって。 植物に取って、最大の敵である炎が、中心部を飲み込んでいたのだ。 鬱蒼とした森は、秒刻みで燃え広がり、その範囲を広げていく。 「なんとか火を消さないと、この子たちが……この、子……た、たける!?」 思い出した。植物を偏愛するアイビーとしては、むしろ思い出しただけ素晴らしい変化ともいえた。 この中心部には……たけるがいるはずなのだ。 「たける、返事をして! みんな、たけるを、たけるを見つけて!」 植物を操ろうとするアイビー。だが、炎に包まれようとしている植物たちは、そのコントロールを失っていた。 人間や動物で言えば、恐慌状態。アイビーとて、この場に長く居たいと感じない。
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358 :代理投下[sage]:2010/11/22(月) 07:43:51 ID:yPvy6P4Z - 「ああ、たける……もう、今頃は……」
「アイビー!!」 悲しみに沈むアイビーの耳に、誰かの声が聞こえる。たけるではなかった。 「その声……マッティー?」 声のする方角から駆けてくるのは、数時間前に別れたばかりの松井だった。 「良かった、アイビーに怪我がないかと心配だったんだよ!」 「ええ、ありがとうマッティー……そうだわ」 アイビーは、良い方法を思いついた。 「マッティー、大変なの! たけるがこの炎の中に取り残されてしまって……お願い、助けてあげて!!」 「そりゃ大変だ! 任せてくれ、アイビー!」 何の迷いもなく、炎の中に飛び込んでいく松井。 その姿を見て、ほくそ笑み……しかし、すぐに表情を暗くする。 「ああ、でも生きているとは思えないわ……とにかく、火の勢いを止める方法を考えないと」 たけるの身を案じながら、アイビーは火の手の上がっていない方面へと身を翻す。 パンッ、パンッ 「……?」 地面が、アイビーに向かって迫ってくる。 「あ……なにこ、れ……?」 「……君が、子どもだけは大切にしていることは、良くわかったよ、愛しのアイビー」 その背後から、足音が聞こえる。ゆっくりと近づいてくる。 「……マ……ティー……」 「でも残念だ。君が、キラと同類の人間であることが」 松井が、そこに立っていた。硝煙の匂いを纏う、拳銃を片手に。 「彼に言われて、少し考えたけど、ようやくわかったよ」 アイビーは気がついた。 「粧裕ちゃんを好きか、なんてわからないけど……少なくとも、君を好きになる理由なんて、ないはずなんだ」 自分のフェロモンの効果が……切れている。 「君は、キラと同じだ! 人の行動を操って、その命を自分の目的に利用しようとした!!」 「人間……みんなそうでしょ。自分の為に、誰か、を利用して、る……植物も、動、物も……人間、さえ、も……」 そして、自分の状態にも気がついた。撃たれたのだ、拳銃で。 「それは否定しない……だけど、その力は、死神の力と同じ、人には過ぎた力だ!」 ぼやける視界が、松田の目を捉える。 そこに映るものは……恐怖。 「操られてわかった……キラが、なんて恐ろしい犯罪者なのか……それに類するお前も、同じ……殺すしか無い、悪魔だ!」 「ひとつだけ……聞かせて。たけ、る……たけるは、無事なの……まさか、殺したの……?」 拳銃を突きつけたまま、松田はその答えを教える。
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359 :代理投下[sage]:2010/11/22(月) 07:45:07 ID:yPvy6P4Z - 「……無事だ。今、巴が森の外へと運んでいる」
「そう……それで、安心したわ!!」 突如、松田の体が宙に舞う。 アイビーは、コントロールできたツタで松田の足を絡めとったのだ。 「(生きていることがわかれば、もう用はないわ、マッティー!)」 重い体を動かし、松田へトドメを刺すべくツタを操作するアイビー。 カチャ 鈍い金属音に、アイビーは顔を上げる。 松田は、前回と異なり、未だアイビーへの照準を外してはいなかった。 逆さ吊りのまま、その銃口はアイビーへと向けられたまま。 パンッ 乾いた音が耳に届いたと同時に、その脳天の、穴が空いていた。 「(ああ……でも。アサイラムの無機質な部屋よりも……森で死ねることは幸福なのよ、ね……)」 最期に、愛する植物の胸の中で逝けることを、まだ幸せなのかもと。 しかし、僅かに残されたたけるの事を考え……その思考は、永遠に霧散した。 「ハァ、ハァ……う、オェ……!」 松田は、燃える森から逃れながら、嗚咽していた。 キラに匹敵する犯罪者とはいえ、殺人を犯してしまったことに。 「いや、違う……正しいんだ! これは、正義……僕は正義を執行したんだ!!」 今まで、キラ事件は同僚や世間の死を受けながらも、自分には及ばない世界での出来事だった。 しかし、アイビーに操られたことで、キラ事件での被害者たちへの共感を松田に与えてしまった。 被害者たちとの違いは、それが生死に関わったか否か。 「殺すしか、ないんだ! あんな恐ろしい力を持った奴は、殺すしか……人を守る方法はない!」 Lは頼れる探偵だ。月くんも、もちろん……だが、それがここで何の役に立つ? 首輪を外す、なんてことをやっている内に、人はたくさん死んでいく。 今、なにより力を持つのは……この拳銃でしかないのだ。 「いや、それでも頼りない。……結果は同じなら、これも使うか……」 笑いガス噴霧器……毒ガスによる殺人なんて、考えただけでも非道であり、実行などしたくない。 だが、それが悪なら構わない、と松田は思いを変えた。 操られた恐怖を、人々を守るという使命感……正義漢にすり替えて。 「待っていてくれ、粧裕ちゃん、たけるくん……僕が、君たちを守って見せる!!」 そう決意し、松田は走る。 既に逃がしてある、たけるが待つ場所。 511キンダーハイムへと。
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360 :代理投下[sage]:2010/11/22(月) 07:45:53 ID:yPvy6P4Z - 【ポイズンアイビー@バットマン 死亡】
【D-9 森(火災)/一日目・深夜】 【松田桃太@DEATH NOTE】 [属性]:その他(Isi) [状態]:健康 [装備]:背広と革靴、コルト・ニューサービス(弾数2/6)@バットマン [道具]:基本支給品一式*2、ジョーカーベノムガス噴霧器@バットマン、巴の笛@MW、松田桃太の遺言書、不明支給品1〜3 [思考・状況] 基本行動方針: 謎を解き、実験を辞めさせ、犯人を捕まえる。 1:キラのような悪は殺害する。 2:たける、巴と511キンダーハイムで合流 3:弱者を守る。 [備考] おそらく、月がキラの捜査に加わってから、監禁されていた時期を除く、ヨツバキラとの対決時期までの何れかより参戦。 ※D-9の森中心部で、火災が発生しています。 ―――――――――――――――――――――――― ところで、何故森は燃えたのか。 松田が燃やした、わけではない。 森に火をつけたのは――たけるである。 話は、冒頭の荷物を探るたけるへと戻る。 「うわー、なんだろうこれ! カッコイイなぁ!」 出てきたのは、黄金色の篭手だった。 腕にはめてみるが、たけるには大きくブカブカであった。 「あ、でもこういうのって、アニメとかで観たことあるなぁ。こう、隙間から剣とかがズバーッって……」 漫画や特撮で、ヒーローがそうするように、何かを斬るように振り下ろしてみる。 すると、それは実現した。 ザシュ! 「えっ……う、うわぁ!!」 思ったとおり、篭手からは剣が飛び出していた。 しかし、それはたけるの思うような玩具ではなく本物。更に言えば、それは炎を纏う剣だった。 かつて、バットマンはヴィランの一人、ヴェノムによって半身不随に陥ったことがある。 その間、二代目のバットマンとして戦った、アズラエルという人物がいた。 結局、バットマンの職務に押しつぶされ、暴走を始めてしまうのだが……その人物の武器こそ、このガントレット。 オーバーテクノロジーで作成された、伸縮自在の炎を纏う刃である。 そんなものだとは知らないたけるの目の前で、炎は繭に燃え移り、瞬く間に広がっていく。
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361 :代理投下[sage]:2010/11/22(月) 07:46:42 ID:yPvy6P4Z - 「う、うわぁ! 大変だ、早く、早く消さないと!!」
篭手を閉まっても、炎は消えない。 周りの植物が苦しむように暴れだすが、たけるには炎を消す手段がない。 「どうしよう、どうしよう! アイビー姉ちゃんが大好きな植物が燃えちゃうよ!!」 半狂乱になるたける。その耳に、犬の鳴き声らしき声が聞こえる。 「君……こ、これはいったい!?」 「あ……兄ちゃんは……」 そこにいたのは、松田と、その犬、巴だった。 「に、兄ちゃん、ごめんなさい! ひ、火が、バーって燃え広がって、それで……」 「君がやったのか……大丈夫、気にしなくてもいい。今すぐ、たける君を助けてあげるからね」 松田は、たけるの頭を撫で……そのまま流れるような動作で、その襟首を絞めた。 「うっ」 たけるは、一瞬呻き声を上げ……そのまま、気を失った。 「……子どもに、殺人の現場なんて見せるわけにはいかないからな」 気絶したたけるを、巴の背に乗せる。 松田は、承太郎との会話の後、疑問に襲われた。 ――なぜ、自分はこんなにアイビーを愛しているのか、と。 そして、徐々に不安が増すにつれ、フェロモンの効果は急速に薄れ――― 自分の意思が操られていることに気づき、この地に戻ってきたのだった。 「いいか、511キンダーハイムへ行くんだ。そこで、たける君を守っているんだ」 巴に命令し、笛を吹き行動を実行させた。 そうして、松田はアイビーを仕留めるチャンスを得るため、一時その場を離れた。 そして、その望みは成功するのだった。 ―――――――――――――――――――――――― 「ひ、酷い森だった……この姿ではまるで歩けぬ……」 森で撤退をしていたパンドラ。 テンマを探しながら歩いて行くと、なにやら施設が見えてきた。 「ふむ……寒いし、とりあえず中に入るか」 服が見つかるかもしれない、と期待も込めて中に入る。 「うわぁぁぁぁん!!」 「くっ!?」 突然の声に、パンドラは警戒を強める。 だが、よく考えれば今のは子どもの、しかも泣き声。 その方角へと向かい、ゆっくりと歩みを進める。
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362 :代理投下[sage]:2010/11/22(月) 07:47:34 ID:yPvy6P4Z - 「姉ちゃん、目を開けてよ、姉ちゃんーー!!
そっと部屋を覗くと、そこには倒れている人物……否、死体に泣き叫ぶ少年の姿があった。 「(墓場では感じなかった、本当の死……あれは、死者の弟、か……)」 姉の死に、泣き叫ぶ子ども……ああ、とパンドラの脳裏に過去のトラウマがよぎる。 「(生まれるはずだった弟か妹……それが母の体より消えた時……あの時の私も、あのように泣いたな……)」 一瞬、生まれた感情をかき消し、杖を構え部屋に踏み入る。 「ガウッ!!」 「ハァッ!!」 侵入者に気が付き、跳びかかる巴。 それに対し、杖より放つ雷を放つパンドラ。 「ギャイン!!」 「ひっ……!?」 僅かな閃光の直後、壁に叩きつけられた巴は、ビクンビクンと跳ね、動かなくなった。 「うっく……姉ちゃん、誰……?」 「……そこに転がっているのは、貴様の姉か?」 質問には答えず、逆に質問してきたパンドラに、たけるは弱々しく首を縦に振る。 「ふっ……恐怖に絶え切れず、弟を残し自殺か……流石は人間、罪深い生き物……」 「姉ちゃんは……しない」 パンドラの言葉に、たけるは小さく言葉を発する。 「……なんだ?」 「姉ちゃんは、自殺なんてするもんか!!」 ボロボロと涙をこぼし、叫ぶたける。 その姿に、パンドラも僅かに狼狽える。 「ふ、まぁたしかに凶器も見当たらんところを見ると、殺されたのかもしれんが……いや、確かに妙、だな」 死体に首輪がついていないこと、凶器がないこと。 これは、殺害後に誰かがここに来たことを示している。 さらに、その死体の表情が、パンドラは気に入らなかった。 「随分に楽しげに死んでいるではないか……」 「……死んじゃったのに、楽しくもなんともないよ……」 死体は、笑顔だった。 まるで、死ぬことに安らぎを得たかのように。 そして、パンドラにはそれに相応しい言葉が浮かんでいた。 「……救済、か」 アローン。ハーデス様を押し込め、冥王軍を救済と称して全滅させた真なる邪悪。 あいつは言った。死は断罪ではなく、救済。すべての人を救わなくてはならない、と。 この死に様は、まるでそれを体現しているかのようで、パンドラにとって気に食わないどころではない。 「(まさか……アローンが、参加者に? いや、それはない……だとすれば、つまり……)」 ―――アローンのような人間が、参加者にいる? その推測はパンドラにとって許せるものではなかった。
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363 :代理投下[sage]:2010/11/22(月) 07:50:19 ID:yPvy6P4Z - 「……ん? なんだ、これは」
パンドラは、床に何か煌く物を見つけた。 何か、細長い……毛。 パンドラの物ではなく、たけるの物でもなく、倒れた犬の物でもない。 ―――金色の、見覚えのある、髪の毛。 「フ……クハハハハハハ!!」 突然、狂ったように笑うパンドラに、たけるは身をすくませる。 「ク、ハハ……おい、小僧……名をなんという?」 「え、と……相沢たける、だよ」 「―――たけるよ、私はお前を殺す」 突然の殺害予告に、たけるはそれも仕方ないか……という思いが過ぎっていた。 姉が死に、それに着いて行っても良いのではないか、と。 「……だがな、それは後にしておこう。金髪の女を殺すまでは、な」 その言葉に、目をパチクリさせるたける。 「どうやら、キサマの姉の仇と、私の敵は共通しているようだ」 この髪の毛は、間違いなくあの船を沈め、パンドラを罠に嵌めた者と同一だった。 テンマを、そして杳馬への憎しみと同等までに、あの女への怒りは高まっていた。 「どうせ、人間すべてが最後には断罪すべき存在。か細い首をへし折ることなど容易い。 ならば、キサマの姉殺しの女への断罪を見続け、それを冥界での語り部となるべく見届けさせるのも一興」 そう言い、たけるに向かって手を伸ばす。 「二度は言わぬ。私に着いてくるがいい、たける」 「う、うん……」 有無を言わせぬ口調に、手を伸ばすたける。 「ええと、ひとつだけ、いい? ええと……」 「パンドラだ。くだらない質問はするな」 「パンドラ姉ちゃん、あのね……」 意を決して、たけるは口を開く。 「―――前くらい、隠したほうがいいよ?」 数分後、そこには全裸の、否、かわいいパンツのパンドラ様は居なかった。 そこにいたのは、漆黒の蝙蝠。 「フフフ、気に入ったぞたける。先程の無礼はこれで許してやっても良い」 たけるの支給品を全て奪い、その中から念願の服を見つけていた。 それは、バットガールのコスチューム。ただしマスクは装着していない。 漆黒のボンテージに身を包んだパンドラは、甚くご満悦だった。 ――それが、正義の味方の服だと知れば、酷く怒っていただろうが。
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