トップページ > 創作発表 > 2010年11月22日 > ZGeJZE2T

書き込み順位&時間帯一覧

3 位/199 ID中時間01234567891011121314151617181920212223Total
書き込み数00000000000000000000009817



使用した名前一覧書き込んだスレッド一覧
◆4eLeLFC2bQ
不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部

書き込みレス一覧

ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
168 : ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 22:10:58 ID:ZGeJZE2T
エシディシ、山岸由花子、サンドマン、リンゴォ・ロードアゲイン、テレンス・T・ダービー投下します
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
169 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 22:12:48 ID:ZGeJZE2T

切り取られ、不自然に固められた歪な世界。
虫も住まわぬ地面を踏みしめ、張り付けられたような月に照らし出される不揃いな蠢くモノ達。

その影は二つ。

一人は男。
どんな彫刻師も彼を目にしては自らの作品を砕くだろう、完璧な肉体美を持った恐るべき怪物。

一人は女。
どんな絵師も彼女の黒曜の瞳を描くに能わず自ら筆を折るだろう、美しい漆黒の瞳に漆黒の意志を宿した少女。

歪な熱意と歪な愛情。
狂ったものはなぜこれほどまでに美しいのか。

この世界に、彼らほど似付かわしいモノはなかった。



少女の数メートル先を凄まじい歩幅で歩くのは、スタンドを得た怪物エシディシ。

彼は同族をすべて失い、彼らの希望をその双肩に託された。
その割に彼が心底愉しそうに笑みさえ浮かべているのは、太陽を克服する術をその身に宿したからだけではない。
彼の後ろをチマチマと時間を稼ぐように歩く少女、なんともいえない高揚感の原因が彼女にある。
この見るからにひ弱な、軽くひねりつぶせそうな少女が『DIO』を追い詰めることができたという。
「デマカセ」か「事実」か、真実は秘されている時が最も面白い。

――どちらにせよ、このエシディシにとって愉快な展開にしかなり得まい。

隠そうともしない笑い声が口元から零れ、空気を揺らす。


ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
171 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 22:16:09 ID:ZGeJZE2T
――さて、この厄介な同行者、どうにかならないものかしらね。

黙っていれば男を引きつけずにおれない美貌を曇らせ、山岸由花子は考える。

クツクツと笑う背中は無防備そうに見えるけれど、手を出そうとすれば自分は一瞬で肉塊に変わる。
エシディシの『能力』は不明でも、そう確信できるほど圧倒的プレッシャー……!!
だけどこのまま連れ立って歩き続けるのも危険。
DIOの館へ赴き偽早人を殺すとしても『DIO』を慕う人間が側にいれば、無傷でいられない。
前回のようなディオを人質に取る作戦もエシディシの前では無意味。
DIOの館へ到着する前になんとかしないと……。

隙を見て逃げ出す?
いえ、この男が隙を作ったとして、すぐにばれる。
一瞬で追いつかれ、きっと………

「足が疲れたようなら背負ってやってもいいんだぞ ユカコォ?」

「ありがたい申し出だけど、結構よ」

時間を稼いでいることは見抜かれている。
次は本気で催促してくるかもしれない。

――参ったわね、いま殺されないだけマシかしら。

下手に希望が見えた分、絶望が訪れる瞬間が恐ろしかった。
自分のおかげで音石明は無傷で永らえたのかと思うと、彼に対する憎悪は深い。

――でも、康一君のためよ、すべては、すべては、愛する彼のため………。

愛する人のため、山岸由花子は思考を止めない。


  *  *  *  *  *


荒木は『君だって18時間命をかけて戦ってきた』といった。
それは本人も自負するところであり、絶対的な庇護者の盾がいつ自分を貫く矛へと替わるか恐怖しながら、彼はこの18時間戦い抜いてきた。
しかし、彼は『不運』であった。

ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
172 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 22:17:35 ID:ZGeJZE2T

「私には気付かずに行ったようだな……」

大柄な男と年端もいかぬ少女という、珍妙だが危険な香りを漂わせた二人を物陰から見送り、テレンス・T・ダービーは溜息をついた。
支給品を確認した時には、その情報量の多さに思わず頬が緩んだが、
見通しの悪い宵闇の中、15分も歩いた頃には緊張感で足がすくんでしまっていた。

夜目に利く殺人鬼がそばにいたとしたら?
地面に爆発物でもしかけてあったら?
最初に説得を考えたオインゴが、私に恨みを抱き私がこの舞台に降りることを望んでいたとしたら?

 『すでに私以外のすべての人間が問答無用の殺し合いを肯定していたら?』

心理戦に強い能力など、絶対的な『暴力』の前ではなんの役に立つだろう。
私に劣っていたとはいえ、優秀なギャンブラーとして名を馳せた兄はあのように無様な最期を迎えたのだ。
質問することなしに心を読めぬ『アトゥム神』をこれほど恨めしく思ったことはなかった。
ギャンブルや会話など意に介さない奴と対峙した時点で私の生は終わる。

動かないで、使えそうな奴が通りかかるのを待つのが得策か?
拠点となりうる施設に出向いて、大勢を利用したほうが賢明か?

結局、彼は自らの方針を定めることなく、現状の対処に追われる破目になった。

「おまえに、尋ねたいことがある」

彼の『不運』は、ただ一人『感覚』を尖らせる経験を積めずこの場に降り立ったこと。
彼が得意とするテレビゲームで例えるとするなら、
敵も味方もレベル30に育ったゲームの中盤、レベル1で放り込まれたようなもの。

「スーツを着た、爆弾のスタンド使いを……見なかったか」

見えぬ敵に警戒を怠らず、18時間生き残ってきたプレイヤーと、
その間、荒木と対戦者のみに警戒をするしかなかったプレイヤー。
両者の差は画然としていた。


 *  *  *  *  *
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
175 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 22:19:24 ID:ZGeJZE2T


――身の丈2メートルを越すモンスター、奴のことだろうな。

彼はコロッセオの頂上部から北東へ向かう男女を見下ろしていた。
電気など通っていない広い荒野に生きてきた身、人よりは目が利く自信があった。
昼間は人が集まりすぎる危険性を考えて近付かなかったが、日が沈んでしまえば自分には有利。
彼の背には羽など生えておらず、特別な道具を保持していたわけでもないが、
常人にはない『脚力』が、コロッセオの頂上部という高所に彼を鎮座させていた。

彼の名は“サウンドマン” 音をかなでる者。

彼は鳩のメッセージを受けとるや、即座にDIOの館へと向かった。
放送直前に到着した彼を待っていたものは、生臭い血の匂いと、殺人鬼達の暗い嗤い声。
1.2.3…声を数えてみれば5人もの殺人鬼がその館に集結していた。

密約を交わした相手の本名も、声も、顔も知らない。知っていたのは『早人』という偽名のみ。
本性を現した奴が5人の内の誰かで、俺を始末しようと鳩をよこした可能性は大いにある。
それとも血の匂いは『早人だったモノ』が漂わせているのかもしれない。

――わざわざ殺人鬼の間に割って入ってお前を助けてやる義理はない。

所詮信頼に足る人物ではなかった。『早人』を救えなかったとして、心に負うものはない。
殺人鬼達の同盟が結ばれる様子を音に聞き、彼らが動き出そうとしたところで、サウンドマンはひっそりとDIOの館を離れた。
この殺人鬼集団の情報も、伝えてまわらねばなるまい。
念のため北のタイガーバームガーデン、豪華客船、倒壊したジョースター邸を早足で駆け抜け、
コロッセオに辿り着いたのは今から数十分ほど前。
億泰が『コロッセオへ向かう』といっていたが、それは半日ほど前の話だ。彼の不在を疑問に思うことはない。
しかし、まさか誰もいないとは……。

地図を広げ、次の行き先を思案する。
未踏の東側施設へ向かうか、ナチス研究所へ向かうか、ここに留まり通りかかる人を待ち受けるか。
東側へ向かう案は第一に破棄した。
そこに至るまでに禁止エリアが多く、誰かが留まっているという確信もないため。

この舞台からの脱出を志す者たちが集まっているだろうF-2ナチス研究所。
殺人鬼共が揃い踏みしていたC-4DIOの館。
この2施設を結ぶ線上にコロッセオは存在している。

――禁止エリアの増えた今、人は必ずこのコロッセオ周辺を通る。

情報は出来るだけ早く、確実に伝えなければならない。
今まで遭遇していない人物、一人で戦ってきた人間に伝えられればなお良い。

周囲への配慮は怠らず、彼はただ待った。
そして、見つけた。
警戒を促されたモンスターと、その後ろを黒光りする美しい髪を揺らして歩く少女の姿。

彼はそのモンスターに既視感を覚える。
殺し合いが始まってまもなく出遭った、風を操るモンスター『ワムウ』。
盲目の友人を、自分と同じ能力を持つ少年を、誇り高き男を殺害したあの怪物。
奴の敏速かつ蛮勇な動作、スタンドとは異なる妙技。
マウンテン・ティムをあのような状態にせしめたのも、奴と同種のモンスターというなら納得がいく。
後ろの少女は昼間DIOの館に居た少女だと思うが、奴の仲間だろうか。
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
176 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 22:20:54 ID:ZGeJZE2T

先ほど見た5人の同盟に加え、2人がDIOの館へ向かおうとしている。
殺人鬼共の中にも自分と同じようなメッセンジャーがいて、DIOの館へと殺人鬼を導いているのかもしれない。
だとすれば事態は想定したよりも悪い方向へ傾き始めている。
奴らをやり過ごしたらナチス研究所へ向かったほうがいい。

メッセンジャーには、メッセンジャーなりの戦い方がある。


  *  *  *  *  *


「ひっ……」

悲鳴をあげずにいられたのは、我ながらよくできたほうだと思う。
二人組みに集中するあまり、背後しかもほんの1メートルほどの距離に人が寄ることを許してしまった。

がっしりした長身に、荒く刈り込まれた頭髪、口元にはドクロを象ったような奇妙な鬚、
そしてなにより目を引くのが、月を映しテラテラと輝く抜身のナイフ。
『スーツ』がどうのといっていたが、私を油断させようという魂胆だろう。
そんな大層な武器を見せつけて、情報交換だと? 馬鹿げているにもほどがある。

こういう場合、私が取るべき行動は一つ! 逃げる!!
やりすごした大男とは逆の方向へ、敵の急襲も考えられ全速力というわけにはいかないが、ともかく逃げる。

……200メートルは走っただろうか。
息があがってきたところで、追っ手がいるか確認するため、振り向いた。

「………!!!!?!!????」

ドクロ鬚の男は、私からほんの10メートルの距離に立っていた。
ハァハァと肩で息をつく私に対し、男は1ミリも動いていないかのように悠然としている。
いや、事実、動いていない。
男は私に話しかけた位置から全く動いていない。
そして私も10メートルほどしか走っていないことになっている。
私には確かに100メートルほど走ったという実感がある。しかし実際には10メートルほどしか進んでいない……。
まさかッ!! DIO様と同じ能力……!!??

ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
178 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 22:22:56 ID:ZGeJZE2T
「驚かせたようですまないが、おまえはオレから逃げることはできない
 オレのスタンド『マンダム』はきっかり6秒時を戻す
 走ったという結果は消え去り、おまえには走ったという記憶だけが残る
 繰り返すだけ無駄だ」

「――――ッ!!!!」

顎から汗をたらす私に対して、男は淡々と語る。
その一連の口上はすでに何百回と発してきたのではないかというほど流暢だ。

「居場所を知っているなら教えて欲しい
 この殺し合いの場においてすかしたスーツを纏った男だ、『キラヨシカゲ』という」

「す、スーツを纏った男、だとぉ……」

ひとまず男に自分を襲う気がないことを認め、ようやく私は冷静になる。

この男、情報交換が目的のようだな。
たとえ嘘でもそれを餌にすれば、この『6秒時間を巻き戻す』とかいう強力なスタンド使いを、
とりあえずの味方として引き入れることができるのではないか。

「ォホン、知っているとして、どうするつもりだ」

テレンスに渡された「参加者詳細データ集」に掲載されているのはあくまでゲームが始まった時点での情報。
吉良吉影の現在地など知っているはずがない。
“キラヨシカゲ”が名簿にある“吉良吉影”と同一人物であるかも実は自信がない。
だが、自分の引きが良いように見せかけるのは、ギャンブルの基本的手法。
そしてギャンブルなら、私が負ける道理はない。

「どうすればその情報を教えてもらえる?」
「そうですね、賭け事はどうでしょう?」

そうはずだったが……

「オレに交渉の術はない
 あるのは、『公正』なる果し合いのみ」

テレンスがもしもそのまま「知らない」と答えていれば、リンゴォは去っていただろう。
交渉の余地があるのならばと欲目を出したのは仕方ないが、今回は相手が悪かった。

「オレの武器はこのボウィーナイフのみ……」

リンゴォが説明を始め、その手の内にあるナイフがギロリとテレンスの方を向いたとき、
彼は己が論理の敗北を悟った。


(誰でもいい、助けてくれ……)


ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
180 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 22:24:11 ID:ZGeJZE2T
「割り込んで申し訳ないが」


どこからか声が降ってくる。

「俺はその男の居場所を知っていると思う」

あらわれたのはインディアンのような格好をした精悍な顔つきの男。
メッセンジャー、サウンドマン。


  *  *  *  *  *


「そうか、あの男、再びDIOの館に……」
「ああ、能力まではわからないが、『吉良』と呼ばれているのを聞いた
 加えて下手に出ているようで上から見下しているような話し方、あいつで間違いないだろう」

ドクロ髭の男とインディアン風の男は先ほどからテレンスなどいないかのように情報交換に勤しんでいた。
自分への関心が全く向けられないことに対して、ほっとしながらも苛立ちを隠せない。

(なんなんだ、この男共。私を完全に無視して仲良く内緒話だなんて)

しかしタダで情報が得られるチャンスを自ら放棄することはできず、二人から数歩離れた位置でじっと聞き耳を立てている。
知った名も混じるマーダー共の居場所、脱出を志す者たちが集うナチス研究所、そしてやはり危険人物だった先ほどの大男。
現況がなんとなく理解できてしまう、素晴らしい情報量だった。

「俺はこれからナチス研究所へ向かう
 おまえに協力してやることはできない」
「神聖な決闘を汚した、あの男との決着はオレ自身がつけねばならないもの」

助けを借りるつもりはない、そういってリンゴォが立ち上がった。
その長身を見上げ、サウンドマンは彼にしては珍しくひとつの疑問をぶつける。

「DIOの館へ向かうのならば、どこかで例のモンスターと遭遇するだろう
 『男の世界』とやらがなんなのか、俺にはどうでもいい話だ
 だが、あからさまな強敵には目を瞑り、決闘の邪魔をされたからという理由で下衆な男を追い続ける行為
 オレには『男の世界』とは真逆の受身の対応、おまえの嫌悪した吉良となんら変わりない行動のように思える
 たきつけるつもりはないが、このまま避け続けるのか? 真に強い敵を」
「…………………」

リンゴォは怒りも驚きもなく、無表情のままサウンドマンの言を聞いていたが、
ふいに視線を外し、北へと歩を進め始める。

「情報感謝しよう……サウンドマン……」

そしてそのまま夜の闇へと吸い込まれていった。
あとに残されたのはサウンドマンと、とうとうリンゴォと会話することのなかったテレンス。
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
181 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 22:25:12 ID:ZGeJZE2T

「おまえ、「わ、私はお前に助けを求めた覚えはない」

テレンスにとってサウンドマンは危うい場面を救ってくれたヒーローといえた。
しかしそれを契機にホイホイ信用するような単純な精神をテレンスは持ち合わせていない。
弱みを握られるようなことがあれば、スタンドにも影響が出る可能性がある。
恩を売られるなんてまっぴらだ。

「違いないな」

サウンドマンにとって会話に割り込んだ目的は、危険人物吉良に敵対心を持つと思われたリンゴォとの接触。
もとよりテレンスに期待をしていたわけでもなく、その言い分に憤慨することもない。

「それより、メッセンジャーとして情報を伝えてまわっているといっていたな
 お前は『荒木』に勝てると、本気で思っているのか?」

荒木の下でゲームをしていたときも、打倒荒木を志す者は見てきた。
しかしこの殺し合いの場に立ってみて、改めて理解した。
こんな状況に我々全員を落とせしめた荒木、彼を打ち倒そうなどと妄言も甚だしいことを。
理知的に『脱出を目指す』と語ったサウンドマンが不思議で仕方がない。

「……?
 俺は、俺自身の目的のために、できる限りのことをする
 それだけだ」

サウンドマンは言い切った。
『勝てる』『勝てない』ではない。
それは『どう生きるか』という命題に対する彼の答えのようにも感じられた。

「もう、いいだろうか? 時間が惜しいんでな」

――突然『荒木』の名を口にするから、今まで会った奴とは違うのかと思ったが、時間を無駄にしたな。

この男から得られるものはないと判断し、サウンドマンはすぐにもその場を去ろうとする。


そのとき



きゃあああああ―――――っ



闇夜を切り裂いたのは少女の叫び声。
両名即座に身構えるも、次にとった行動は全く正反対のものだった。
声の発生源へ駆け出そうとするサウンドマン、それに対してテレンスは逃げ出そうと反対側を向いていた。
自然、距離のあいた背中合わせになり、居心地の悪い空気が場に流れる。

フン、と息をつきサウンドマンはやや侮蔑的な表情をテレンスに向けた。
だがそれも一瞬のこと、サウンドマンは北へと視線を移す。

ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
183 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 23:09:11 ID:ZGeJZE2T
「お前が注意を促したモンスターだぞッ!!!?? なぜ向かおうとするッ」
「先ほどは少女も奴の仲間だと判断した
 しかし、敵の敵は『味方』の可能性が高い」
「本気か……」

『YES』『YES』『YES』

テレンスが躊躇した瞬間に、サウンドマンはもう走り出していた。

――あの少女を助け出すことも、『荒木』を倒し故郷へ帰ることも、奴は本気で成し遂げようとしているのか……。

なんともいえない諦念のような、感動のようなものが胸の底から湧き出し、その奔流はプライドや目論見を易々となぎ倒す。
凄まじい勢いで遠ざかる後姿に向かって声を張り上げた。しっかりと届くように。

「サウンドマン、私が渡せるものは情報しかない!!
 それでもかまわないというなら、半刻後コロッセオの外部西側で待っている
 5分は待たない。それで貸し借りなしだ!!」

サウンドマンが片手を挙げる。了解のサインだろう。

荒木に勝てるとはこれっぽっちも思っていない。
しかしそれと荒木に関する情報を漏らすのは別問題だ。
もしも、ありえない話だが、もし荒木に勝てる人間がいるのだとしたら、ここで恩を売っておくのは悪くない。
それに『荒木に勝てる』という幻想をちらつかせておけば、『対主催』がこぞって『優勝狙い』に転ぶ危険性も低くなるだろう。
非力な私のスタンドでは、うまく他人を利用していく他ない。

「悪くない話だ…、対主催の信頼を得て、安全を確保すること…」

あくまでも、優勝するためのプロセス。
そう自分を納得させたわりに、胸にこもった熱は引いていくことをしらない。
大声を張り上げた、目立つ施設を合流場所に指定した、そもそも自分はあの男のことをよく知らない。
自らを窘めるミスやリスクは後からいくつも浮かんだが、不思議と後悔は感じなかった。


  *  *  *  *  *
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
184 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 23:10:25 ID:ZGeJZE2T


山岸由花子は、思い込みが激しくはあったが、情報を理知的に判断できる狡猾な少女だった。
自分が他人の目にどう映るか、相手とどれほどの実力差があるのか、
正しく判断を下せる知性が『身体能力』『攻撃範囲』というハンデを埋め、彼女をここまで生かしてきた。

もし彼女が『柱の男』に関する情報を人づてに聞いていたならば
彼らの戦闘をどこかで目にしていたならば
せめて彼らに敗れた死体でも見るチャンスがあったのならば………


「コロッセオ、誰もいないようだなァ……」

怪物の残念そうな呟きに、山岸由花子は胸をなでおろした。

“ディオが現在も同じ場所留まっているかわからない”
時間稼ぎが見え見えでも、正論をぶつけコロッセオに立ち寄ることを許可させたのはつい先ほど。
しかもコロッセオを過ぎてしばらくしてからの提案。
さすがに怒るかしら、と内心ヒヤヒヤしたがエシディシは自分のその態度をも楽しんでいるようだった。
コロッセオに本当にディオがいたら、という別の不安もあったが、
偽早人にしろ本物のディオにしろこんな目立つ建物は拠点にしない、と思いたかった。
結果的にはそれで合っていたのだから大丈夫、問題ない。

――でも、もう時間を引き延ばす方法がない……。

死ぬよりマシと考えて、エシディシの後ろに従ってきたが、正義のヒーローにも頭の悪いマーダーにも遭遇することはなかった。
再び歩き出し、一路DIOの館へ。
チンピラ風情の男やホル・ホースを利用してすんなり通ったのが、夢だったかのように思える。
日差しの中、これが康一君とのピクニックなら最高だった、なんて思ってたわね。

そう、死ぬわけにはいかない。
DIOの館に着く前に、やれるだけの時間稼ぎはすべてやってみせる。

「ねぇ、その腕、そのままで大丈夫なのかしら?」

出血はないようだが、本人が口に出していたくらいだからそこそこの怪我なのだろう。
怪我を負っていたほうが隙に繋がるかと思い放っておいたが、これから隙が訪れるチャンスは多分ない。

数秒遅れて振り返ったエシディシ。
由花子を正視するその顔に感情はない。
無表情。黙り込む。
彼女の次の言葉を待っているかのように。

ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
185 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 23:13:34 ID:ZGeJZE2T
「手当てが必要なんじゃない?」

「そう……だな……… そう、『手』当てがな……!!」

目にも留まらぬ速さで由花子に接近するエシディシ。
何が起きているのか理解できぬまま、本能で後退する由花子。



音もなく――、一閃



遅れて吹いた風に、髪がゆれる。
身体が理解するより先に、頭が理解した。


腕が、私の腕が……!!!!



「き、きゃあああああああああああああああああああ」



山岸由花子は、思い込みが激しくはあったが、情報を理知的に判断できる狡猾な少女だった。

もし彼女が『柱の男』に関する情報を人づてに聞いていたならば
彼らの戦闘をどこかで目にしていたならば
せめて彼らに敗れた死体でも見るチャンスがあったのならば


彼女は右腕を失わずに済んでいただろう。


  *  *  *  *  *


走る、走る、走る。
家々をすり抜け、リンゴォを追い越し、馬よりも早く、風よりも早く。

少女と怪物、目標の二人を確認するや、勢いを殺さず飛び上がる。

スピードと重力を存分に活かした飛び蹴り。
それだけでも並みの大人なら頭蓋骨を陥没させそうな威力だが、そこにさらに「ドヒュウ」の音を重ねる。

サウンドマンとエシディシが触れ合ったのは一瞬。

エシディシの動体視力にも勝る高速の蹴りと、それ以上のなにか。
肉体を摂り込もうと考える間もなく、彼の巨躯は50メートルほど吹っ飛んでいた。
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
186 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 23:15:31 ID:ZGeJZE2T

ワムウのように異常な身体能力で戻ってくる可能性を考え、サウンドマンが足元に音を宿した小石をばら撒く。
山岸由花子は立ち尽くしたままその様子を見ていた。

「こう、いち……くん………?」

呆然と少女が呟く。サウンドマンはその名に聞き覚えがある。
自分と同じ能力を持った少年、億泰の友人、広瀬康一。
この少女も彼の知り合いだったとは……。

「走れるか? とりあえず逃げるぞ」

腕を失ったショックか、永遠に失われたはずの能力に再びまみえた驚きのためか、
依然、目をむいたままの少女を強引に引きよせ走り出す。
幸い彼女に腕以外の怪我はないようだ。

――うまく奴を撒ければいいが……。



「ぐっ、ユカコォォォオ、まさか朋輩を控えさせていたとは……」

圧倒的有利に胡坐をかき、山岸由花子の人間性を愉しんでいたエシディシは、
ダメージこそないが“吹っ飛ばされた”という事実に対して驚き苛立っていた。
腕を千切ったのも、結合させるためというよりは、彼女の『必死』を見るための行為。
それを誰かに邪魔され、山岸由花子は恐らく逃げた。

「あの女、どのような能力を持っていようとかまわん 捻り潰すッ」

自分が吹っ飛ばされた方向を憎々しげに睨み付けるエシディシ。
猛り狂う獣の姿態。

その視界に入り込む影ひとつ。

「オレの名はリンゴォ・ロードアゲイン」

足音が近付く。

「オレの武器は、このボウィーナイフのみ」

長い手足が露わになる。

「オレの能力名は『マンダム』
 ほんの『6秒』
 それ以上長くもなく短くもなく
 キッカリ『6秒』だけ『時』を戻す事が出来る
 それが『能力』」

月が彼の面貌を照らし出す。
その瞳に宿るは、紛れもない『漆黒の殺意』。
彼には「光」が見えていた。
あの時と同じ、進むべき「光り輝く道」が………


「よろしくお願い申し上げます」




ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
187 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 23:17:24 ID:ZGeJZE2T
【E-4 中央より北西/1日目 夜中】

【エシディシ】
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:人間の強さを認めた。右腕の肘から先を欠損
[装備]:『イエローテンパランス』のスタンドDISC
[道具]:支給品一式×2、『ジョースター家とそのルーツ』リスト(JOJO3部〜6部コミックスの最初に載ってるあれ)
    不明支給品0〜2(確認済み)、岸辺露伴のサイン、少年ジャンプ(ピンクダークの少年、巻頭カラー)、ブラックモアの傘
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに優勝し、全生物の頂点にッ!
0.誰だ?ユカコの仲間か?
1.ユカコとその仲間、殺してやる
2.億泰には感謝せねばなるまい。
3.常識は捨てる必要があると認識
4.ドナテロ・ヴェルサスを殺す際にメッセージを伝えるつもりだったが、奴は既に死んだようなものだ。
[備考]
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※スタンドが誰にでも見えると言う制限に気付きました 。彼らはその制限の秘密が首輪か会場そのものにあると推測しています
※『ジョースター家とそのルーツ』リストには顔写真は載ってません。
※『イエローテンパランス』の変装能力で他者の顔を模することができます
※頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。
※イエローテンパランスはまだ完全にコントロールできてません。また具体的な疲労度などは後続の書き手さまにお任せします。

※千切った由花子の腕は吹っ飛ばされた時に落下し、現在も周辺に落ちています。


【リンゴォ・ロードアゲイン】
[スタンド]:マンダム
[時間軸]:果樹園の家から出てガウチョに挨拶する直前
[状態]:身体疲労(中)
[装備]:ジョニィのボウィーナイフ
[道具]: 基本支給品 不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:参加者達と『公正』なる戦いをし、『男の世界』を乗り越える
0.エシディシから逃げていた自分に決着をつけ、『公正』なる果し合いを。
1.エシディシに勝てたのならDIOの館へ。吉良を許すことはできない。
2.遭遇する参加者と『男の世界』を乗り越える。
[備考]
※怪我はゴールド・エクスペリエンスで治療されました。
※ブチャラティのメモの内容を把握しました。
※参加者が時を越えて集められているという話を聞きましたが、自分の目的には関係ないと思っています。

※サウンドマンと情報交換をしました。
 内容は『お互いの名前・目的』『吉良(とその仲間)の居場所』『お互いの知る危険人物』『ナチス研究所について』です。


ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
188 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 23:19:29 ID:ZGeJZE2T
【E-4 中央より西/1日目 夜中】

【サンドマン】
【スタンド】:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
【時間軸】:ジョニィの鉄球が直撃した瞬間
【状態】:健康、暗殺チーム仮入隊(メッセンジャー)
【装備】:サヴェジ・ガーデン
【道具】:基本支給品×2、不明支給品1〜3(本人確認済み)、紫外線照射装置、音を張り付けた小石や葉っぱ、スーパーエイジャ、荒木に関するメモの複写
【思考・状況】 基本行動方針:元の世界に帰る
0.少女を連れてエシディシから逃げる
1.少女にツェペリ(≒康一)の遺言を伝える
2.出来ればテレンスとの約束の場所へ向かいたい
3.ナチス研究所へ向かい、同盟を組んだ殺人鬼達の情報を伝える
4.初めて遭遇した人物には「ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている」「モンスターが暴れている」というメッセージも伝える。
5.荒木の言葉の信憑性に疑問。
6.名簿にあるツェペリ、ジョースター、ブランドーの名前に僅かながら興味
7.もう一度会ったなら億泰と行動を共にする。
[備考]
※7部のレース参加者の顔は把握しています。
※億泰と情報交換をしました。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※早人がニセモノだと気づきましたがラバーソールの顔・本名は知っていません。
※リゾットと情報交換しました。が、ラバーソールとの約束については、2人だけの密約と決めたので話していません。
※F・F、ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミューの容姿と能力を知りました(F・Fの能力は、リゾットが勘違いしている能力)。ホルマジオの容姿を知りました。
※盗聴の可能性に気付きました。
※ティムからはエシディシについては体格しか教わっていません

※DIOの館にて、5人の殺人鬼が同盟を組んだことを知りました。それぞれの名前は把握していますが、能力・容姿は知りません。
※北のエリアをまわってきた際、アイテムや情報は得ていません。
※リンゴォ・ロードアゲインと情報交換をしました。
 内容は『お互いの名前・目的』『吉良(とその仲間)の居場所』『お互いの知る危険人物』『ナチス研究所について』です。


【山岸由花子】
[時間軸]:4部終了後
[状態]:右腕の二の腕から先を欠損、精神的に不安定
[装備]:サイレンサー付き『スタームルガーMkI』(残り7/10)
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1、承太郎の首輪
[思考・状況]基本行動方針:優勝して広瀬康一を復活させる。
0.あの能力は、康一君……?
1.エシディシ、どうやって私の腕を? 怖い。何が起きたか理解できない。
2.吉良吉影を利用できるだけ利用する。
3.他にも利用できそうな人がいるなら利用する。
4.正直知り合いにはなるべくあいたくない。
[備考]
※荒木の能力を『死者の復活、ただし死亡直前の記憶はない状態で』と推測しました。
 そのため、自分を含めた全ての参加者は一度荒木に殺された後の参加だと思い込んでます
※吉良の6時間の行動を把握しました。
※空条承太郎が動揺していたことに、少し違和感。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※ラバーソールのスタンド能力を『顔と姿、声も変える変身スタンド』と思ってます。依然顔・本名は知っていません。
※スピードワゴンの名前と顔を知りました。
※リゾットのメモを見ました。

※エシディシが近くにいるため走っていますが、腕の怪我は止血が必要な重傷です。


ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
189 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 23:21:47 ID:ZGeJZE2T
【E-4 南/1日目 夜中】

【テレンス・T・ダービー】
[スタンド]:『アトゥム神』
[時間軸]:承太郎に敗北した後
[状態]:健康、覚悟を決めた
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、参加者詳細データ集、『ザ・ワールド』のスタンドDISC
[思考・状況]
0.荒木に対する恐れ…この男には勝てない…
1.優勝して生き残る、そのために利用できそうな奴を探す
2.サウンドマンはたぶん信用できる。再会できたなら『荒木』の情報を教えてもいい。
3.エシディシとか殺人鬼集団とか怖いから、対主催に恩を売っておくべき?
4.DISCについての考察はあとまわし
5.F・Fは兄の敵…? 実際会ったときにどうするかは自分でもわからない。

[備考]
※荒木に科せられていた行動制限はすべて解除されました。
※積極的に参加者を殺して回るつもりはありませんが、最終的には優勝するつもりです。
 なぜなら、荒木を倒すことは何人(なんぴと)にも不可能であると考えているからです。
※利用相手の候補は オインゴ>ジョージ>露伴たち>その他 です
※支給品が元々テレンスに勝ったときの景品である、という仮説は概ね当たっているようです。
※参加者詳細データ集には以下のことが書かれています。
 ・名前
 ・顔写真
 ・種族(人間、犬、吸血鬼、屍生人、柱の男など)
  また、波紋使いやスタンド使いであること。
  スタンド使いならスタンド名まで載っていますが、スタンドの能力までは載っていません。
 ・参戦時期(wikiの参戦時期まとめをより一般化したものです。参戦年月日が載っているようです)
 ・初期支給品(wikiの支給品情報>初期支給品一覧と同一の情報です。未だ不明の支給品も全て載っているようです)
 また、情報はすべてゲーム開始前のものです。
 ディオやエシディシがスタンド使いになったことなどは載っていません。
※テレンスはスタンドDISCの使い方を知りません。
 『ザ・ワールド』のスタンドヴィジョンも見たことが無いようで、関連には気づいていません。
 何か秘密があるとは思っているようですが、少なくとも『頭に刺し込む』という発想は今のところありません。
 テレンスに『ザ・ワールド』のスタンドが使いこなせるかどうかは不明です。
※アトゥム神の右足首から先は回収しました。
※ジョージ・シーザーと会話をしました(情報の交換ではありません)
※ダービー兄、ティッツァーノの死体を発見しました。
 生首がティッツァーノの物であることは確認していません。
 また、F・Fがティッツァーノに寄生していることにも気づいていません。
※DIOへの忠誠心は無くなりました。

※サウンドマンとリンゴォ・ロードアゲインの会話を聞いていました。
 両名の名前・目的を把握し、DIOの館に危険人物が集っていること、ナチス研究所に脱出を志す人々が集っていることを気に留めています。


[備考]
※E-4中央部にさまざまな音の張り付いた小石がばらまかれています。(リンゴォは引っかかっていません)
※E-4に放置されていたエルメェスのパンティは誰も発見していません。

ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第十部
190 :不帰ノ道 ◆4eLeLFC2bQ [sage]:2010/11/22(月) 23:24:51 ID:ZGeJZE2T
以上です。解除されたようので自力で投下。
途中支援してくださった方ありがとうございました!


※このページは、『2ちゃんねる』の書き込みを基に自動生成したものです。オリジナルはリンク先の2ちゃんねるの書き込みです。
※このサイトでオリジナルの書き込みについては対応できません。
※何か問題のある場合はメールをしてください。対応します。