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182 :わんこ ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/22(月) 21:17:54 ID:3l9o7OC5 - >>141の石川きゅんに魅せられて!
北陸の方、ごめんなさい!と九州から。
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183 :アイスは何処に消えたのか ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/22(月) 21:19:18 ID:3l9o7OC5 - 「ない!ぼくのアイスがない!」
自慢である着物の裾を踏んでいるのにも気付かずに、石川は自宅の冷凍庫の中を掻き乱していた。 買っておいたアイスクリーム。これでも凍てつくような冬で暖かい部屋で食べると、また格別な味わい。 スーパーで買っておいたとっておきのハーゲンダッツが見当たらない。石川にとっては、そう。一大事。 そんな石川の楽しみが日本海の荒波のように、砕けて散っていった。開けっ放しにしている冷凍庫からは、 ひんやりとした冷気が流れ小柄な石川の体を震わせていた。色白な石川の頬が季節外れの桜色で染める。 「こらー、石川ー!冷蔵庫を開けっ放しにしたら、電気がもったいないでしょ」 ぺたぺたと恐竜の足をしたスリッパの音がする。いにしえの時代の足音が、この21世紀に蘇る。ぺたりぺたりと そして、きらりとメガネが光り、石川を押しのけて開けっぱなしの扉をバタムと閉めたのは隣の福井だった。 彼女はメガネが自慢の女の子。冷静さを保ちつつ、レンズの奥から人を見透かす術を心得ていた。 なので、人の良い石川にとっては苦手である人物なのは言うまでも無い。福井はお姉さん目線で石川を叱りとばす。 「電気がいくらでもあると思ったら大間違いでしょ」 「そんなことより、ぼくのアイス知らない?」 「寒いのに。あんた、バカ?」 「ば、ばかじゃないもん!!ぼく」 素っ気無く石川の言葉を返す福井の腕に石川の頭の雪だるまがぶつかった。 「もしかして、ぼくのアイス……福井ちゃんが食べちゃったんでしょ!おいしそうからだって、だから女の子は!」 ずるずる着物を引きずりながら涙目で訴える石川の姿を見て、福井が黙っているわけがない。メガネを摘んでかけ直し、 獲物を見つけた恐竜のように目を光らせながら、小さな石川を睨んだ。動けなくなった石川の頭には、もうアイスのことはない。 「わたしね、ちょっと胸が熱くなってきたの」 「……ひっ?」 「石川くん、きみ……北陸のリーダー、だよね」 ペタリと石川がしりもちをつく。 「たかがアイスのことで、やいやい言ってるようだったらね、わたしが北陸のリーダーになっちゃおうかな。だって、大阪に近いし」 「ぼ、ぼくだって兼六園とか、輪島塗とか、いろいろ昔のものもってるもん!すごいだろ!!」
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184 :アイスは何処に消えたのか ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/22(月) 21:20:43 ID:3l9o7OC5 - 冷静な福井は見るからに熱くなっているようだった。隣同士だからこそ、いいところと悪いところが見える。
よそ者から見ればどうでもいいようなお話でも、当人たちはどうでもよくないお話。 「福井ちゃん!こうなったら兼六園のハトをけしかけてやる!くるっくー!って」 「ふーん、やってみたらおもしろいね、それ。それじゃあ……わたしはきみを真っ暗闇の東尋坊からロープできみを吊るしてあげようかなー」 「うぐううううう!!!ふ、ふくいちゃんのばーか!一人じゃ何も出来ないくせに……。京都さんとか、大阪くんとかがいないと」 「……なによ、歴ヲタくん。百万石の石高ならアイスぐらいわたしに奢りなさいよ。見せかけだけなのかな……ん?」 「う、うぐうううう……。ぶぁーか!福井ちゃんなんか、羽咋に飛んできたUFOに連れ去られちゃえ!」 「面白いかもね、それ。UFOが来ればの話だけど」 顔を真っ赤に腫らして石川は部屋を飛び出していった。からんころんと、下駄の音がむなしく響く。 小さな石川の後姿を見て、福井は大きくため息をつき、メガネをクリーナーで寂しそうに拭いていた。 ―――家を飛び出した石川は兼六園に鎮座する、威風堂々なヤマトタケルノミコトの銅像の前にいた。 園内に群がるハトの群れもこの像のまわりには寄り付かない。この国が産声を上げた時代に生きた悲運のヒーロー・ヤマトタケルノミコトの後光に 空を征する彼らも慄いたのだろうか。いやいやいや。ハトが寄り付かない理由は誰もが知っている。 だけど、きょうはその訳を石川くんに譲って欲しい。 「ぐすん……。ぼくもヤマトタケルさまや前田さまみたいになりたい!立派な日本男児になるんだ!!」 天を突くような巨大な銅像は、澄み切った金沢の空に良く映えていた。まるで歴史を伝える街を見守るように。 しかし、ヤマトタケルから尊いお言葉を頂いているような、そんな気持ちが石川にはびしびしと伝わってくる。 「日本男児が涙を見せるのは、親があの世に向かったときだけだ。心せよ、石川よ。お主もこの国の男だろ」 石川は手ぬぐいで瞳の光るものを拭き取る。育った土地の土が揺れて見えた。 兼六園は観光地とあって、きょうも賑やかだった。よその土地の言葉が織り交ざるのも、観光地ならではの光景。 とくに目立つのが関西の訛りだ。その中から石川が見覚えある人物がひょいと抜け出した。 「おお?石川ちゃんやん、どないしたー?」 「おおさかくん!」 金髪と黒髪のハイブリッドな髪色に、イチョウの刺繍のGパン。いるだけで賑やかな青年・大阪が兼六園に来ていたのだった。 大阪の姿を見て安心したのか、石川は時雨のような涙を見せて一切合財を話した。 途中、石川がアイスをねだるので大阪はしぶしぶアイスを売店で買ってやることに。もう、冬だというのに。 寒いのに石川と大阪はアイスを舐めながら、兼六園のハトの群れを眼で追う。 「そやなあ。ほんまに福井ちゃんがアイスを食うたか分からんし」 「……ですよね」 石川のアイスはみるみるうちに減ってゆき、大阪がやっと四分の一食べたと言う頃には、二つ目が欲しいとまで言い出した。 「ほんま、アイスが好っきゃなあ」 「はい。この間、朝起きたらアイスの容器が何個も枕もとにありました」 それを聞いた大阪は、ふとひとつの案を思いつく。
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185 :アイスは何処に消えたのか ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/22(月) 21:21:33 ID:3l9o7OC5 - 「ほんとは買うてなかったちゃうん?」
袖を振って石川がはっとする。もしかして、買ったつもりでいたのかも。 毎日のことだからうっかりして『本当に自分が食べて、無くなってしまっていたのかもしれない』と。 石川のアイスを食べる速さを見て、大阪は石川に『あくまでひとつの可能性』として伝えた。 彼のことだ、きっと夢中で食べてしまっているに違いない、と。確証はない。だが、今の石川を納得させるには十分な仮説。 「とにかく、ウチに戻ってみたらどうや」 「え……」 「それで、男らしゅう福井ちゃんに謝りいや。『騒がせたなあ』となあ。それが男のけじめや」 胸を熱くした石川は再び目に涙を湛え、そして溢れ出させていたが、大阪には少し困ったものだった。 ヤマトタケルノミコトはその姿をじっと岩の如く眺めていたに違いない。 それでもハトが青い加賀の空を舞う。大阪は石川の姿を見て、少し笑って携帯電話を取り出した。 ―――石川が自宅に戻り、冷凍庫を開けるとマジックペンで『いしかわ』と書かれたハーゲンダッツが一つ入っていた。 「あ?あった??」 隠れるように福井がその姿を見て携帯電話をいじっていた。とんとんと恐竜のスリッパのつま先で床を鳴らす。 石川が持つアイスが非常に美味しそうに見えたせいか、少し嫉妬を感じる。これ以上は何も言わないことにする。 福井の手には『ハーゲンダッツ』と記載された、コンビニのレシートが一枚あった。 「あの……、福井ちゃんさ。さ、さ『騒がせたなあ』!ごめんなさい」 「なんで大阪訛りなのよ、あんた」 「あ、あのー。アイス食べる?」 「これでわたしの頭冷やせって?冗談!」 石川にアイス以上の冷たい目線を突き刺して、頬を赤くしながら福井は部屋から出て行った。携帯でメールを打ちながら。 「大阪くんのおかげで、石川のばかたれは大人しくなりました。良い知恵ありがとう。あと、アイス代は今度会ったときにヨロシク」 そのようにメールを打っていたのは、言うまでもなく福井。 ―――その頃、ハトの飛び交う兼六園では。 「ったく、あいつらは世話が焼けるさかい……。って、おれがアイス代出すんかいな!」 大阪は一人で残ったアイスを北陸の風に吹かれながら食べていた。 おしまい。
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186 :わんこ ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/22(月) 21:23:01 ID:3l9o7OC5 - 北陸に行ってみたい!!投下おしまい。そして、北陸の皆さん、ごめんなさい!
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