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国防省 ◆Oppai.FF16
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】

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【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
4 :国防省 ◆Oppai.FF16 []:2010/11/16(火) 00:23:42 ID:/SjT2U5z
即死防止+景気付けの為に7回連続の長編を投下します。
宜しいでしょうか?
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
7 :国防省 ◆Oppai.FF16 []:2010/11/16(火) 00:30:41 ID:/SjT2U5z
>>4
7回ならオケかと。それでは失礼致します。

<前回までのあらすじ>

 2010年 秋
某国国防省は、アジアの或る国からサイバーテロの攻撃を受けた。
その内勤であるケンとその上司のボスは、ネットから出現した電脳の“虎”が、同じく
ネットから現れた謎の電脳少女(鬼子)に殲滅される様を見る。
その後、アジアの出張から戻った同僚から純銀の銃弾を受け取ったケンは、C■Aからの
スパイの存在や局間の確執等から、ネット世界の激動を予感した。

 そして、ケンの学生時代の友人である山都武士は、仕事で赴いた日本の山奥の廃村で二
人の妖(鬼子と小日本)に出会い、弔った犬が着けていた銀の銃弾のペンダントからUSB
メモリを手にする。役場の人間に胡散臭いものを感じた武士は、彼らが来る前にメモリの
中身を確認しようとするが果たせず、ケンに衛星電話で相談を持ちかけるのだが――

 というワケで、以下その続きです。


 ヒューウヒュルル ヒュルルルヒュウウウー……
 ブツッ
「……well」
「ハ、ハロウ、ディスイズタケシ・ヤマトスピーキン、メイアイ……」
「タケ! マジか!? 久しぶりだナ!」
「おおう、朝早くにスマンな、ケン!」
「No! ちょうど起きる時間さ、気にスンナ!」
「そうか? それかなりウソだろ、無理すんな!」
「……何故分かるwhy? まさか読心術でも始めたのかイ?」
「実はな、我が国は先日、世界に先駆けて“時差の再発見”に成功したんだよ」
「ワァオ! そいつは凄いなボブ!」
「誰がボブか」
「それで車輪の再発見はいつヨ?」
「逆行してどうする!」
寝起きだろうに、あっさり主導権を握られる。やはり肉が主食の国には敵わないのか?
「で、最近調子はどうよ? 転職したんだっけな、確か、えーっト」
「ハウスキーパーだ」
「そそ、そのメイドさん。ミニスカで脛毛まる出しで『おかえりなさいませご主人様〜』
つって土下座するオシゴト!」
「ちげーよ! 別荘とかの管理人!」
「え〜っ、その後ご主人様を押し倒して顔をピンヒールで踏むとかじゃないノ?」
「おい、趣向が変わってるぞ。……まあそれは兎も角」
 もうそろそろ目が覚めただろう。
「実は緊急で相談に乗って欲しい事があるんだが、いいか?」
「よし、いいぞ」
相変わらず切り替えが早い。電話を通じて空気が張る。
「とは言っても長い話になるので、書いておいたメールを送る。だからPCを」
「だと思って既にボタンは押してある。OSは……今立ち上げ完了した」
やはり流石だ、これなら相談しても。……って何か横の方が明るく?
「すまんな、衛星電話のバッテリーが心許なくって……」
横を見ると、LANケーブルを玩んでいる妖(あやかし)の幼女が光っていた。
いや、光っていると言うか、丸い光に包まれている。服も先程のものから変わっている。
気になって見た蝋燭は、放つ光を幼女の丸い光が吸い込んでおり、蝋燭の残量も残り1セ
ンチほどに急減していた。
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
8 :国防省 ◆Oppai.FF16 []:2010/11/16(火) 00:31:37 ID:/SjT2U5z
そしてその所為なのか、電話機のバッテリーは全回復していた。……ノートPCも。
「残量はどの位だ?」
気遣わしげなケンの声。しかしこれなら。
「あ、いや、問題無い。メールも今送信した」
「そうか、って、もう来たぞメール」
早いな。それに電話の時差も?
「それと電話の感度も良くなった様だな。本当に時差の再確認を?」
「バカな。いや、幼女の方の妖が光ってて、それで」
幼女は相変わらず丸い光の中で、3mのLANケーブルを、触らずに空中で様々な形にし
て遊んでいた。
「あやかし? ようじょ?」
「あーすまん、先ずはメールを読んでくれ」
頭が変になりそうだ。物には干渉出来ないんじゃなかったのか?
「ああ、そうする。……では電話はこのまま?」
「繋ぎっぱなしでいてくれ」
ネット関連に強い妖なんだろうか。やはり副業で怪しい事とかやってるんだろうか?
と思ったところで、門の外で虚空を凝視していた少女の方の妖が縁側に戻ってきた。
少し急いでる感じだ。
昔の時代劇のように、蝋燭の火に顔と片手を近づけ、吹き消そうとする。
しかし火はピクリとも揺らがない。少しムッとした表情になる。
熱いのを我慢して芯の根元を摘んでやる。消えかける火。反対に明るくなる表情。
指を離す。再び点く火。驚いた表情。
肩を竦めて見せると、さっきより更にふくれっ面になる。
その百面相に思わず笑ってしまった。
からかう人はキライです、という感じで他所を向く少女。その視線の先には幼女とPC。
「ああ、すまんすまん、ほら消したから」
一気に吹き消した。
それでも月明かりと幼女の光で、周囲は何とか見渡せた。
「誕生日パーティーでもやってるのか?」
しまった、電話機を握りっぱなしなのを忘れていた。
「いやスマン、少女の方の妖が戻って来てな」
見ると、少女は幼女と向かい合わせでLANケーブルを掴んでいた。
ケーブルから光が溢れ、彼女らの体に流れ込んでいく。
「もしかして、その妖の大きい方は、16歳から18歳くらいの日本女性か?」
「いや、俺の見たところでは14歳くらい……」
そして、少女の体と着物が少しだけ大きくなった。加えて僅かに光も帯びた。
「ああ、いや、17歳前後になった、今」
「今、なった? やっぱり誕生日……いや、角が有って着物は赤い紅葉柄ではないか?」
「ん? よく分かるな、その通りだ」
「なっ、なんということだ……」
「おいケン、なに一人で納得してるんだ!? 俺にも分かる様に……」
「地球の裏側に居る親愛なる友よ、いますぐ其処から離れるんだ!」
口調が急に切羽詰ったものになった。
「だから車は使えないし、役場の人間は山の麓で待ってるだろうし」
「裏山があるだろう、そこに逃げ込め!」
「何を焦ってるんだ? 明日の朝になれば役場の人間が来るだろうから適当に……」
「いや、多分そろそろ来るだろう。そしてそれは、タケが考えてるのよりもずっと怖い
人間の筈だ」
「何故そう思うんだ?」
「その大きい方の妖は、恐らくヒノモトオニコだからだ」
ヒノモト? 何処かで聞いたことがある様な……
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
9 :国防省 ◆Oppai.FF16 []:2010/11/16(火) 00:32:27 ID:/SjT2U5z
「彼女は虎の天敵だ。その彼女が居るという事は、其処へ来る人間も虎と同じ目的を持っ
ている筈だからだ」
「虎? 何の話な、んだっ!?」
俺の前に立った少女(いや、ケンが言うところのオニコか)から紅い光が溢れ出す。
そして、両手を胸の上で重ねて目を閉じ、軽く俯いた。
(先ずは狗の埋葬のお礼を申し上げます)
な、なんだこの声? 直接頭の中に響いてくる様な!
(間もなく狗を追っていた者達が来ます。危険ですから貴方はここから動かないで下さい)
「おい、キミは何を!?」
「Hey!!」
「〜〜〜……!!」
ケンの怒鳴り声で左の鼓膜が破れそうだった。あ、という事は。
「ケンにも聞こえたのか? 今の」
「ああ、オニコは綺麗な英語をしゃべるんだな、驚いたよ!」
英語? 完璧な日本語じゃねーか、と言おうとしたところで。
「!……本当にお出でなすったようだ」
山から集落の入り口辺りに出てくる車のヘッドライト。エンジン音も微かに聞こえる。
無粋な、という表情で門の方を見るオニコ。
(これより散らして参ります)
言い残して、滑る様に門の外へ走り去った。
「よし、俺も……」
そう言って立ち上がろうとしたところで、幼女にブルゾンの端を掴まれる。
よく見ると、涙目になって首を左右に振っていた。行くなと言うのか?
「門からは出ないよ」

PCと電話を持ち、衛星アンテナを動かさないように注意しながら門まで移動する。
「…………」
幼女が何か言ってるようだったが、面倒なので一緒に抱えた。ほとんど重量を感じない。
庭先に置いてある衛星アンテナから門までは、ケーブルがぎりぎり届いた。
間に雑草が無ければ余裕だったろうが。
「おい、タケ」
門の横にしゃがみ込む。何故か門扉は無くなっていた。
「あいよ」
リュックサックから暗視ゴーグルを取り出し装着する。まさかこんな事に使うとは。
「何が見える?」
追っ手は車三台だ。
「あれは軽トラが三台だな。いま150m前で止まって降りてきた。全部で六人だ」
別の家の庭に止まった。そして荷台から何やら下ろし始めた。
「そいつらは武装してるか?」
ゴーグルをズームアップする。あれは……猟銃?
「ああ、少なくとも三丁の猟銃を持ってる」
更に、荷台の上で、天井に付けた何かを調整し始めた。あれはパラボラアンテナか?
「いきなり突っ込んでこないところを見ると、そいつらはある程度軍事的な訓練を受けて
る様な気がする。危険だな」
荷台の上の奴以外の五人が、その家の玄関辺りを叩き始める。
「離れたところにある家に突入するようだ」
「先ずは拠点の確保か」
「いや、なんか様子が変だ」
まるでその家が目標であるかの様な動きに見え……あっ!
「オニコが接触!」
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
10 :国防省 ◆Oppai.FF16 []:2010/11/16(火) 00:33:14 ID:/SjT2U5z
五人の前に立つオニコ。何かを両腕で抱えているような姿勢だ。何も無いが。
五人は……何やらにこやかにオニコの両手の上から取り上げてる。何も無いが。
そして、美味しそうにそれを食べ始めた? いや、何も無いんだが。
「おいタケ、接触してどうなった?」
小脇に抱えていた幼女が、身をよじって此方を見上げる。問題無いという風な笑顔で。
「ああ、奴ら何か食ってる」
「そして腹ごしらえか。これは本格的に軍事の……」
そして五人が次々に倒れた。
それを見て、荷台に残ってた一人が猟銃をオニコに向けた。何やら叫んでいるようだ。
そして撃った。二発!
「おい、タケ!?」
オニコにはまるで効いてないようだった。
そして虚空から長物を取り出し、その男を薙ぎ払った。
距離的には届かない筈だが、その一撃で最後の一人も倒れた。
あの長物は薙刀か? もしそうだとしても、頭に“異形の”を付けねばならんだろう。
「……!!」
小脇の幼女が急にむずがりだした。降ろしてやる。
「今のは銃声じゃないのか!?」
「あっ!!」
パラボラアンテナが付いている軽トラの運転席あたりが光り、その中から金色の大きなも
のが飛び出してきた。あれは……虎? それも俺の車と同じ位の大きさの。
後ろに飛び退き距離を置くオニコ。彼女にとってもこれはヤバい相手のようだ。
間合いを計る動きになったところで、同じ場所からもう一体虎が出て来た。
「くっ、卑怯な! ……って?」
幼女がブルゾンの端を引っ張っていた。オニコのところへ連れて行け、という風に。
「む……よし、行くか」
詳しい事情は不明だが、今は役場の人間よりも、謎の巨大な虎よりも、この妖二人を助け
なければならない様な気がした。
それは焦燥感にも似た、矜持に根ざした使命感。
「おいタケ、行くって何処へだ? 現状を報告しろ!!」
「ケン、すまんが電話を切るぞ」
ゴーグルを外し、リュックに仕舞う。
「ちょっと待てタケ! それはお前が行かなきゃならない事なのか!?」
義を見てせざるは勇無き也。俺はオニコに“義”を感じたのだ。
「命があったらまた会おう!」
「タケ! おい……」
電話を切った。ケーブルも外した。
「行くぞ」
大事そうにノートPCを抱えた幼女を抱き上げ、車に走り寄る。
ドアを開錠し、幼女と共に乗り込む。
門扉の有無、庭の雑草の有無、此処へ来た時の屋敷の中の料理、今の男たちの振る舞い。
オニコには、人に幻影を見させる能力があるに違いない。だから車のエンジンも。
キーをポケットに入れたまま、スタートボタンが有る辺りを押す。
(見えているのは、以前乗っていた車のダッシュボードのそれだ。今乗っている車は、
スタートボタン方式だからな。俺は幻影を見せられてるだけなんだ)
すると、ボタンに指が触れるか触れないかのあたりで、エンジンがかかる。それは待たせ
過ぎだと言わんばかりのタイミングと轟音で。
それと同時に、ダッシュボードが今のワンボックスのそれに戻る。
幼女はセンターコンソールの上でシートにしがみ付いて、こちらを見上げてる。
準備良しと見て、ギアを一速に入れ車をスピンターンさせる。
エンジンの轟音、デフがロックした金属音、小石がフェンダーの内側を叩く音、舵戻し。
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
11 :国防省 ◆Oppai.FF16 []:2010/11/16(火) 00:34:06 ID:/SjT2U5z
正面100m向こう、道の上に虎の一体。
そのままの動きで一気に三速にシフトアップ、フルスロットル!
轟音と共に加速する車体、目前に迫る虎。
「おらああああっ!!」
一気に虎を撥ね飛ばす!
フロントのアニマルバーが曲がったか、それなりの衝撃が伝わる。
虎はもんどりうって左斜め後ろに飛んでいった。
「どうだっっっっ!」
正面に迫ったオニコをパイロンに見立て、サイドターンで車を止める。
車から飛び降りる。幼女は俺の背中にしがみ付いてる様だ。
「……!!」
何ごとか叫んでるオニコの向こう、残った虎が撥ね飛ばした方の虎に向かう。
そして二体は重なり合い……合体した!
先ほどより一回り大きくなり、細部もよりヤバい形になっていった。
「そんなんアリかよ」
呆れつつ、倒れている人間を見る。
全員気を失ってるだけで命に別状は無い様だ。それどころか何やら幸せそうな表情で。
まあ此方は良いか、と思ったところで軽トラから新たな光が!
「なんだ!?」
またも巨大な生物が。今度は、鷲、か!?
翼長10mになんなんとする巨大なハクトウワシ。羽ばたいてオニコの上空に向かう!
「……! ……!」
背中の幼女が軽トラの運転席を指差す。
ああ、分かった。これ以上お客さんにご登場願うワケにはいかんからな。
軽トラに取り付く。
開けっ放しのドアの外から、案の定有ったノートPCのケーブルを引き抜く。
その最中、幼女が背中から降り、俺のPCを座席に置いた。
ケーブルを繋げという様なそぶりを見せる。必死な顔で。
「大丈夫なのか?」
外ではオニコたちが三すくみの状態だったが、他二体はオニコを最初の標的に決めたよう
だ。間合いと動きが変わっていく。
「……どうなっても知らんぞ」
先程抜いたケーブルを俺のPCに繋ぐ。と同時に幼女がそれに光を与え始めた。
オニコを見る。地上と空中との間合いを計りかねているのか、防戦一方だ。
爪や牙・嘴の攻撃に、長い黒髪は乱れ着物の裾は破れ始めた。
「待ってろ!」
車に戻ろうとした、その時!
「!!!」
丸い光りに包まれた。これは幼女が纏っていたもの、それが膨らんだのか。
桃色、いやそれより更に淡く儚い桜色。
その大きな光の玉が軽トラの運転席と俺を包み、そこから数々のオニコが飛び出していく。
そしてそれがオニコに吸い込まれて行くのと同時に、俺の胸のペンダントが銀色の光を車
に向かって放った。
轟音を上げるエンジン、それは恰も獣の咆哮の様な。
吸い込んだオニコは、角が延び、目の回りに隈取が浮かび、全身に強烈な殺気を纏った。
同時に、轟音を上げ光り輝く車からは、純白の獣が飛び出した!
その体長3m程の獣(いやこれは狗だ)の背中には翼が生え、地上・空中を構わず走りま
わり、他の二体を牽制する。
「くっ、くはっ」
何故だろう、ペンダントから光が放たれると同時に、今まで有った勇気の類が一気に無く
なった様な気分になった。
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
12 :国防省 ◆Oppai.FF16 []:2010/11/16(火) 00:35:07 ID:/SjT2U5z
そんな俺の弱気と対照的に、オニコは空中の狗に飛び乗り、他の二体に対して絶好の位置
をとった。そして――
  一閃!!
着物から舞い散るモミジの葉。オニコが放った一薙ぎで、虎も鷲も十字に断たれた。
その断面が光の粒になり、周囲に舞い散って消えていく。
そして最後には、その体全てが月夜の中に霧散した。
(一振りなのに何故十字の剣戟になるんだ? それも二体に対して同時に)
3m程の高さで停止する狗。
オニコも、まるで其処が地面であるかのような動きで狗から降り立つ。
(それじゃあまるで、時間を操ってるみたいじゃないか!)
不意に周囲が暗くなる。体を包んでいた桜色の光が離れたのだ。
ハッとして軽トラを見る。
そこに居た筈の幼女は、オニコの方にユラユラと飛んでいくところだった。
「あ……終わった、のか?」
桜色の光が無くなると、弱気も勇ましさも無い、普段の自分に戻った。
とりあえず車に近寄る。エンジンは止まっていた。
前部のアニマルバーも大した歪みではなかった。これなら走行に支障は無いだろう。
ホッとして、タイヤを背に座り込んでしまう。
「とりあえず一件落着、で良いのかな?」
中空に集まった二人と一匹(狗は翼を仕舞い、幼女を背に乗せていた)を見上げる。
幼女の放つ桜色の光が、それらを包み込んでいる。
元の姿に戻ったオニコが、先程の様に胸の前で手を重ねて目を閉じた。
(私たちは、同属のこの狗を迎えに来ていたのです)
(しかし、狗の現世の体は謀のモトを持っていました)
(この度は、その諍いに巻き込んでしまい、誠に申し訳ありませんでした。そして)
幼女がオニコの腰にしがみ付く。狗も先程までの険が消え、優しい表情だ。
そして、オニコは目を開け、現実の物に干渉しようとする時の表情になって口を開いた。
それは心のではなく、現実に空気を震わせる本来の意味での声で。

 「ありがとう」

その一言で、辛うじて残っていた気が抜けた。
遠ざかり、月夜の中に消えていく二人と一匹。
それは俺の意識にも似て。
…………
……

「……い、……きな」
んん……
「おい、……な兄ちゃん」
う、なんだ、よ
「って?」
目が覚めた。地べたの上で横になっていた。
上を見上げると、見知らぬおっさんがしゃがみ込んでこちらを見ていた。
長靴にツナギっぽい服、その上にベスト、野球帽。
「おおい課長さーん、兄ちゃんが目ぇ覚ましたよー」
夜が明けていた。5時半頃かな。まだ暗い青空。結構寒い。
腹の上にいつのまにか俺のノートPCが。
それを横に置き、半身を起こす。背中からパラパラと小石が落ちる。
普通、こんなところで寝たら風邪引きは確実だが、何かに包まれていたかの様に、体には
何の問題も無かった。
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
13 :国防省 ◆Oppai.FF16 []:2010/11/16(火) 00:36:42 ID:/SjT2U5z
「お、お早うござい……!」
おっさんが右手に持ってる袋、それって猟銃用のじゃないか!?
「ちょ……!!」
一気に夕べの記憶が蘇る。まさか俺、撃たれる!?
いや、でも、袋に入ってるという事は?
「ああ、すまんすまん。起き抜けに銃突きつけられたら、おっかないわなぁ」
そう言って、近くの軽トラの荷台に銃を置きに行く。
そのおっさんと入れ替わりに、スーツ姿の中年男性がやって来た。
「お早うございます。と言いましても、私どもも今しがた起きたばかりなんですがね」
照れ笑いする中年男性。ズレかけた黒縁のメガネを人差し指で直す。
ピンと来た、こいつは昨日の胡散臭い役場の上司だ。
立ち上がり、とりあえず返礼する。
「お早うございます。どうしてこんなところへ?」
「それはこちらのセリフですよ。昨日こんなところに泊まると聞いたものですから」
「ああ、そうですか」
「ここは嘗て人が住んでいたとは言え、怖いところなんですよ? 今では山犬やイノシシ
それに熊も出たりしますので」
それよりも遥かに怖いものが出たけどな。
「日が暮れても山から下りてこないようなら、迎えに行こう、という事になったのです」
そしてそれは、いま俺の目の前に立っているのだが。
「それはお手数をお掛けして、誠に申し訳ありません」
深く頭を下げる。
「でも何故皆で寝てたのでしょう?」
「さて、それが全く」
犬の事を聞いてこない。それ以前に昨日の胡散臭さが微塵も無い。
「俺たち全員、キツネにでも莫迦されましたかね?」
そうかもしれません、と苦笑いする課長さん。虎たちに操られなければ良い人なんだな。
引き上げる準備をしましょう、お疲れ様です、とお互いに言い合って別れる。
奥の屋敷、思った通り廃墟然としたものに変わっていた。
いや、これが本来の姿なのか。
其処へ向かおうとしたところで、猟師たちの会話が漏れ聞こえる。
「いやほんとだって、本当に鬼が」
「まったまたぁ」
「だから、お前らが鬼に喰われそうになってたから、ぶっ放したんだよ、二発!」
薬莢を取り上げてみせる。
「でもお前も寝てたんじゃないかよ」
「いやそれは」
「ああ、そういやあウチのじさまが言ってたなあ」
「緋ノ元の鬼子(おにご)は時間を喰らう、ってな」
はははと明るく笑う猟師たちにお辞儀をする。彼らも明るく手を振ってくれた。
「あ、そう言えば、ケンに電話しとかなきゃ」
そこへ場違いなプロペラ音が空の向こうから聞こえてきた。
「あれは……V22オスプレー?」
その音は、電話が既に手遅れである事の証だった。
「やべ、在日米軍まで動かしちまったか!」
焦って奥の屋敷へ走った。
衛星電話一式を回収しに。
そして、俺を此処へ来させた奴の手がかりを探す為に。



以上です。乱筆乱文にて大変失礼しました!
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
16 :国防省 ◆Oppai.FF16 []:2010/11/16(火) 01:09:43 ID:/SjT2U5z
>>14
ありがとうございます。
そして、前スレで励まして下さった皆さん、そしてなにより私の駄文を読んでくださった方
その皆様に前スレでの愚行をお詫び致します。

すみませんでした。そして、ありがとうございました。


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