トップページ > 創作発表 > 2010年11月11日 > Lfqwikq9

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『能面』 ◆BY8IRunOLE
『能面』
◆BY8IRunOLE
創る名無しに見る名無し
和風な創作スレ 弐
狙って誤爆するスレ8

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和風な創作スレ 弐
36 :『能面』 ◆BY8IRunOLE [sage]:2010/11/11(木) 14:20:22 ID:Lfqwikq9
【第四幕】

黒場会は、一連の辻斬り騒動を、丘田屋の仕業に相違ないと睨んでいた。
賭場を押さえて胴元の口を割らせた結果、案の定、賭場のカネは丘田屋へ流れていた。

そして、丘田長慶は幕府の家老連中を高級料亭で接待していたという。
奉行所を丸めこんで、自分たちの悪行をもみ消すためであろう。
しかし、これには決定的な証拠が欠けていた。


牟島たち黒場会の若衆は、夜な夜な町を見回っていた。
現場を押さえるため、接待が行われそうな店の前で張ったりもした。
いつでも丘田屋に踏み込めるよう、その機を逃さないようにするためである。


〆 〆 〆


「仕置き人? なに、それは」
早朝の走りこみから戻った彩華は、水浴びで濡れた髪を手拭で拭きながら尋ねた。

「ま、言ってみれば悪い奴を懲らしめる連中だ」
山芋をすりおろして出汁でのばしたものを、丼に盛った麦飯とともに盆に載せ、茶卓に置いた。

「わ、山かけ飯だ。やった!」
彩華は卓に就くと、両手を合わせて一度拝んでから嬉しそうに箸をとった。
「……でもこれ、食べちゃっていいのかな?」
バツが悪そうに慎太郎を見る。

「いつ来るかもわからない客のために、取って置くこたぁないさ」
食え、というふうにあごで示し、前掛けを外して自らも卓に就く。

「表に出ないよう、悪いことをしている輩は大勢いる。証拠が無けりゃ、奉行所もしょっ引けない」
慎太郎は冷茶を注いだ。

「例えば、『丘田屋』は悪い奴か?」
山芋を飯にかけ、軽くかき混ぜながら聞く。

「かも知れん。この半年でずいぶん稼ぎを増やしたが、その伸びには後ろ暗い噂が付きまとっている。
幕府へ金品を握らせたとか、賭場の元締めとして上納金を集めているとかな」
浅漬けをつまみながら、慎太郎は言った。

「あの辻斬りは?」
そう言って飯をかきこむ。彩華の顔が丼で隠れる。

「あいつは、丘田屋に雇われた用心棒か、始末屋だろうな」

言う傍から、疑問がわき起こった。

――となると、叡仁和尚が殺られたのは何故だ?

.
和風な創作スレ 弐
37 :『能面』[sage]:2010/11/11(木) 14:22:43 ID:Lfqwikq9

「叡仁和尚は、知っていたのかもしれない」
「何を?」
飯粒を口の端に付け、彩華は聞いた。

ふと、閃いたことがあった。
彩華を連れて仙石寺を訪れたときのことである。


寺を出る間際に叡仁は言った。

「子延どの。先代より受け継いだあのお店は、決して他人に譲り渡してはなりませぬぞ」


そのときは、和尚の親心からの忠告と思って、軽く受け止めた。
しかし、思い返すと、叡仁和尚はいつになく強い調子でそれを言い聞かせようとしていた。


借金取りは、異常なくらい執拗にやってくる。

店を手放せ、とも言う。

その借金取りと、丘田屋は繋がっている可能性がある。

丘田屋はめぼしい両替商を抱え込み、不正にカネを集めている噂があるのだ。

――となると、丘田屋は、この店を是非手に入れたいと思っている?
――というより、この店には、丘田屋にとって都合の悪い何かがあるのかも知れない。

叡仁和尚は、確信は無くともそれに気づいて慎太郎に忠告した。

それが気になり、仙石寺を再び訪れた時、叡仁は件の辻斬りにやられてしまった。


おそらく、口封じだろう。

次に狙われるのは、間違いなく慎太郎自身だ。


〆 〆 〆


和風な創作スレ 弐
38 :『能面』[sage]:2010/11/11(木) 14:34:44 ID:Lfqwikq9

先代から勤めていた板前が、彼を詰って店を去っていく。
幼い頃、よく遊んでもらった仲居はすまなそうな顔をして辞めていく。
あとに残ったのは寂れた店と、ひとりぼっちの「二代目」である……


夜更けに、慎太郎は目を覚ました。
「……また、夢か」

このところ、同じ夢ばかり見る。


慎太郎に商才は無かった。

先代、子延半兵衛が亡くなって慎太郎に当主の役が回ってきた。
彼は休み処を経営するということに特段興味は無かったが、とりあえず、現状維持するということと、
周囲の人間、古くからの職人や仲居達が期待したものだから、その座に収まった。


元来、慎太郎は趣味人であり、利益追求に頓着しなかった。その為、発展性は無かった。
折しも周りに新しい商いが出来たりして、慎太郎の店への客足は遠のいた。

やがて、現状維持はおろか、給金の払いもままならない状況にまでなってしまった。
幸い、先代が残した田畑や山があったので、それを切り崩すことで財源に充てていたが、それも限界があった。

――過ぎたことだ。どうあっても、あの頃には戻れない。


職人たちが誰も居なくなった頃、慎太郎のもとに金貸しがやってきた。
曰く、切り崩した田畑や山は子延のものではない、先代の時に我々が貸したものだ、
勝手に処分されたのでは堪らない、かくなる上は相当分の金銭で贖ってもらいたい、そのような内容を並べ立てていった。

以来、店には借金取りが毎日のようにやってくるようになり、反対に、客は誰も来ないようになった。


先日水郷に出かけたのも、はじめは商材になりそうなものを貰ってくる心算だった。
けれど、考えるうちにどうでも良くなってしまった。
この店が、客を呼べるとは思えなかったからだ。

かつて鳶や左官などの職人たちがひと息入れに集まった茶屋も、今は見る影もない。
何とかしようと思っていた時期もあった。
けれど、徒労感ばかりが募る。
いつの間にか慎太郎は、物事を自覚なしに諦めてしまう性分になっていた。

和風な創作スレ 弐
39 :『能面』[sage]:2010/11/11(木) 14:38:30 ID:Lfqwikq9

慎太郎は、床の上で自問自答する。

――最早どうにもなりはしない。俺も叡仁和尚のように、ばっさり殺られれば良いのだが。

全てを、無に帰したいと思う。
あらゆるしがらみに、もう疲れていた。


鈴虫が鳴いている。
障子を開け、夜空を仰ぎ見る。今夜は満月だった。
蒼い光が畳を照らす。冷たくもなく暖かくもない風が緩やかに吹き抜ける。

慎太郎は、月光を浴びてしばし虚ろになっていた。


彩華という謎の少女。
その生立ちも家族も故郷も、何一つ分からない。
確かなのは、類まれなる剣の腕と、少々異な風貌だけ。

彩華は、何も諦めない。
目的を定めると、真っ直ぐに向かっていく。
そこに迷いや打算は全く見られない。

――あいつは……何を支えに生きているのだ? あの真っ直ぐさは、どこから来るものなんだ……


ふと、離れの様子が気になった。

離れはもともと蔵として使っていたが、蓄えるものなどもう何もない。
今は、彩華が寝泊まりしているだけだ。

何を思ったのか、今でも分からない。

ただ、慎太郎が離れを開けた時、彩華はそこに居なかった。


和風な創作スレ 弐
40 : ◆BY8IRunOLE [sage]:2010/11/11(木) 14:40:15 ID:Lfqwikq9
↑本日はここまででございます
狙って誤爆するスレ8
297 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/11/11(木) 23:50:37 ID:Lfqwikq9
嬉しいからこっちに書いちゃおう

>18
いや、エロスもなにも、消防ですよあなた。
そもそも巻くほどあんのかとww(あ、でもブラだったら……)

>28
あ、厳密には前スレではなくて夕鶴さんに仕分けされたスレのうちのひとつでした
おぼえてくれてた人がいたなんて!

>35
あはは……スレタイがスレタイですからねww
難しいですけど、がんばって書きます!


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