トップページ > 創作発表 > 2010年11月10日 > nbpk82SM

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創る名無しに見る名無し
わんこ ◆TC02kfS2Q2
タヌキの鏡 ◆TC02kfS2Q2
創作大会しようぜ! 景品も出るよ!
【三題使って】 三題噺その3 【なんでも創作】
狙って誤爆するスレ8

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創作大会しようぜ! 景品も出るよ!
153 :創る名無しに見る名無し[]:2010/11/10(水) 18:48:17 ID:nbpk82SM
まだまだ「カッコいいダンディなおじさま」作品募集age
【三題使って】 三題噺その3 【なんでも創作】
72 :わんこ ◆TC02kfS2Q2 []:2010/11/10(水) 23:00:48 ID:nbpk82SM
「タヌキ」「公園」「鏡」で書いてみました。
【三題使って】 三題噺その3 【なんでも創作】
73 :タヌキの鏡 ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/10(水) 23:02:57 ID:nbpk82SM
「すいませーん。タヌキですぅ」
仕事に煮詰まり、わたしは近所をふらふらと歩いていた。閑静な住宅街と言えば通りが良いが、はっきり言えば何の特徴の無い町。
のどかな山に囲まれて、人々の住む町が遠慮するように栄えているわたしの住む町。他の言葉で言えば新興住宅街。
山のケモノの代わりに人間が住み着き、ケモノが狩りに出かける代わりに人間が都心に仕事に出る。
「おねえさんーん。タヌキですが」
原野を切り開いた模型のような町をいくらふらついても、何もときめくようなアイディアは開けない。
わたしは漫画家。名ばかりの漫画家。マイナーな雑誌で貴重な紙面を頂いている、ぽっと出の絵描きだ。
わたしのような新人にも、眼だけ描いてればいいような大御所にも等しくやって来るのは『締め切り』。ネタ探しを大義名分に
忍び寄る締め切りの足音を聞き逃そうと、自分の耳を塞ごうとしているのは、もう否定はしない。

歩いても、歩いても、代わり映えの無い景色。刺激は無い。求めることが間違っているような気がする。
「タヌキです!すいませーん!」
秋風を防ぐパーカーはわたしにとって貴重なおしゃれ着。女を捨てたファショナブルな着こなしが自慢だ。
文学少女が大きくなったそのままのショートヘアにメガネっ娘。わたしのアイデンティティは単純すぎる。
そう言えばきのうは夕方が来るまで大雨が降っていた。夕焼けが美しかった覚えがある。それ故、空気が肌寒い。
一雨ごとに季節が変わる四季折々。毎年のことなのに、この時期になると人恋しくなるのは不思議でしょうがない。
「お、ね、え、さーん!タ、ヌ、キ、でーす!!」
でも、この国に生まれてよかった。何気ない毎日に感謝……しようとしていたわたしに訪れた日常の中の非日常。

さっきから突き刺さる聞きなれぬ声に、不思議なフレーズ。誰もいないはずの道に背後からこだまする声。
振り向くと道路の真ん中にタヌキが立っていた。まるでぬいぐるみのよう。眼がビー球のように丸くて濁りが無い。
ケモノなのに人間のような声でわたしに話しかけてくる。ただ、この子の瞳が全てを許した。ウソをついているように見えなかったのだから。
ただ、灰色の空でも暖かそうな毛並みは少し羨ましかった。ケモノに対してこんな感情を抱くわたしを許して欲しい。
【三題使って】 三題噺その3 【なんでも創作】
74 :タヌキの鏡 ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/10(水) 23:05:07 ID:nbpk82SM
「あの、おねえさんにお礼を言いたくて、さがしていました」
正直、タヌキから感謝されるようなことをしたことをまったくもって覚えがない。ここ最近といえば、部屋に篭ってネームを描いて
電話で編集者にひたすら謝って描き直して、そこそこ家事をこなして昨晩はゴミをキチンと出したぐらいだ。
水曜の夜は生ゴミの日なのはこの町での常識。このように一人暮らしの小市民を名乗るのが相応しいぐらいに慎ましく暮らしてきただけだ。
タヌキは続けてわたしに深々とお辞儀をしながら、丁寧な言葉遣いでわたしを君子聖人のように崇める。
「この間のお礼に、おねえさんにわたしのたからものを見せたくて、さがしていたんです。みつかってよかった!」
誰かから感謝されたり、感激されることは悪い気持ちがしない。わたしが漫画を描き続けるのは読者から喜んでもらう為。
それを考えるとタヌキの喜ぶ姿が非常に愛しくて堪らない。わたしの漫画を読んで頂いたみなさんもこんな気持ちなのだろうか、と。
「見せたいものは公園にあるんですよ。こっちこっち!」
タヌキがそう言いながら駆けるので、わたしはその子について行くことにした。

わたしも知っている近所の公園。山を切り開いて出来た街のせいか、まだまだ垢抜けないのがいじらしい。
それ故、タヌキが現れてもおかしくは無い雑木林が、まるで手に届くように群がっている。子供たちが学校から帰る前の時間なので、ひと気は殆ど無い。
公園のグラウンドをタヌキが横切る。仔犬のように、短い四肢で足跡をつけてゆく。尻尾が揺れていた。
「すごくきれいなところなんですよ。そこでわたしたちは化けるれんしゅうをしているんです」
タヌキのふかふかな尻尾を追いかけながら、わたしはこの子が目を輝かせている顔を想像する。だって、自慢の宝物ですもの。
きっと、きらびなかな宝石のようなものなんだろう。お金に出来ないものなんだろう。と、みなさんは思うかもしれない。
だけども言おう。この子の言う宝物はきっと「公園の池」だ。この公園に池があることぐらいは知っている。
しかし、わたしはタヌキに心打たれて知らない振りを演じる。もう、なんの恩返しかどうかはこの際関係ない。
雑木林をくぐる。小道を駆け抜ける。風が通り抜ける。はらはらと落ち葉がタヌキに舞い落ちる。久しぶりに心揺さぶられ、
日常とともに雑木林を抜け出すと、大きな池がわたしたちの目前に広がった。だが、わたしを連れたタヌキは尻尾を力なく垂らしていた。
【三題使って】 三題噺その3 【なんでも創作】
75 :タヌキの鏡 ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/10(水) 23:06:56 ID:nbpk82SM
「ない……。わたしのたからものが」
きのうまでの大雨のせいで池の水は濁り決して『たからもの』と呼べるような輝きを持っていなかった。
タヌキは泥水のような水面を覗き込むと、まるで捨て猫のような声でわたしに教えてくれた。
「ここの池でわたしたちは『化ける』れんしゅうをしているんです。自分たちのすがたをうつして、みんなで化けかたをけんきゅうしているんです」
確かに池の周りには水銀燈が並び、夜行性の彼らにはお誂えの広場であることは言うまでもない。
タヌキはちょんと前足を冷たい水面に付けると、動物らしく反射的に引っ込めて耳を震わせていた。
「この前まできれいにわたしたちのすがたがうつっていたのに、きょうはうつってません……。どうしよう」
この子の後姿を見つめていたら、わたしも何かをしてやらねば、と言う恩義が芽生えてきた。
誰かを悲しい気持ちにさせたままだなんて、人を楽しませる為の仕事を生業としている者として黙ってられなかったのだ。
わたしは「ここで待ってて」とタヌキに言い残して自宅へ駆け戻った。『締め切り』なんかは……知らん。

―――タヌキの待つ公園の池に戻ると、ちょこんと池のほとりの石にその子は腰掛けていた。
わたしが自宅から持ってきた物をタヌキの目の前に差し出すと、円らな瞳が輝きを増していくのが目に見えた。
「わあぁ!わたしだあ!」
「気に入った?これ、あげるよ」
タヌキでさえ喜んでもらえることはわたしだって嬉しい。
「いいんですか?」と謙虚な姿勢を見せるもの、ケモノだったら遠慮はいらないよ、とばかりにわたしはA4サイズ程の鏡をタヌキに差し上げた。
わたしがいつも使っているごく普通の鏡。いたって変わりは無い。魔法なんぞは使えない。それでもタヌキは喜んだ。
「これでいつでも化けるれんしゅうができます!!」と諸手を挙げて喜ぶ。もっとも「諸手を挙げる」ことは出来やしないのだが、
わたしだったらそうするだろう、とタヌキの姿を想像したのだった。心がすっとするのはどうしてだろう。気持ちがよい。
【三題使って】 三題噺その3 【なんでも創作】
76 :タヌキの鏡 ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/10(水) 23:08:42 ID:nbpk82SM
―――タヌキとの出会いから一週間後の水曜。
タヌキから何かを得たせいか、わたしの筆は留まることを知らなかった。『締め切り』という言葉が心地よい。
今ならページ単価が倍になってもいいんじゃないかと言う、勘違い甚だしい錯覚さえ覚えてきた。
深い夜、わたしのGペンの音だけが闇を裂く。言い過ぎかもしれない。それに突っ込むように表で音がする。
どうしてもそれが気になって、休憩がてらに筆を休めて、窓から外を覗くとどこかで見た人物がいた。わたしだ。
そっくりだ。そっくりすぎる。女っ気を捨てたパーカー、文学少女そのままのショートなメガネっ娘。どう見てもわたしだ。
いや、わたしはここにいる。じゃあ、誰なんだ、お前って言う前に窓の外のわたしは返事を返してきた。

「おねえさん!この間はありがとうございます!おかげで毎晩、化けるれんしゅうができるんですよ」
わたしに化けたタヌキに相槌すると、タヌキはわたしの顔をして薄暗いなか目を輝かせていた。
それにしてもそっくりだ。わたしの顔、眼、服装、メガネまでこと細かに再現されている。タヌキが化けると言うのは本当だった。
それに、わたしが贈った鏡のおかげで練習に練習を重ね、このクオリティを極めることが出来たのだとタヌキは語る。
「それもこれも、おねえさんのおかげです!今夜もおくりもの、ありがとうございます」
そのようにタヌキは言いながら、わたしの姿でわたしが出した生ゴミを美味しそうに漁っていた。


おしまい。
【三題使って】 三題噺その3 【なんでも創作】
77 :わんこ ◆TC02kfS2Q2 [sage]:2010/11/10(水) 23:10:47 ID:nbpk82SM
投下終了!!
狙って誤爆するスレ8
279 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/11/10(水) 23:27:36 ID:nbpk82SM
分かりづらかったのかな…。何度も読めば、「生ゴミ」の曜日で分かると思ったんだけど。
猛省。


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