- 続・怪物を作りたいんですが
64 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/11/10(水) 22:21:08 ID:QNlDGc6W - ついにGフォースは「アナザーワン」、朝子たちが言うところの「怪獣X」の痕跡を捕まえた。
場所は大田区大森の国道15号に産業道路が合流する三角地帯。そして最寄りの駅は大森駅。謎の貧血が多発した京急本線の駅だった。 警察の更なる調査により、203号室に住む母娘のうち38歳になる娘の遺体だけが見当たらないことも判明した。 この行方の知れぬ娘こそアナザーワンであると判断した黒木一佐は、近接戦闘ユニットの編制を指示する一方、更なる情報収集に当たらせるため、副官格である豊原二尉を現地に派遣した。
|
- 続・怪物を作りたいんですが
65 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/11/10(水) 22:27:40 ID:QNlDGc6W - 「あ、失礼ですが」
岸田がいるという3階の部屋の前で、豊原は若い私服刑事の誰何を受けた。 「陸自……Gフォース所属の豊原です」 「これは失礼しました」 若い刑事は、陰惨な現場には不似合いな笑顔を見せた。 「まるでモデルみたいな方だったので。もっとごっついゴリラみたいな方が見えるものとばかり……」 「ありがとうございます。それより岸田警部は?」 「この部屋ですが……」 と言って若い刑事は304と表示された部屋をしめした。 「でも入るのは止めた方がいいですよ。警察関係者も、三人そこで……」 豊原は、踊り場に誰かの吐しゃ物が三つあったのを思い出した。 「だから……」 「重ねてありがとうございます。しかし任務ですから」 相手に謝意を示しつつも、豊原は302号室へと入っていった。 数秒後、真っ青な顔で口元を抑え、転げるように豊原は駆け出して来た。 そして、踊り場の吐しゃ物は四つになった。 「おい凍条!」 302号の中からどなり声が聞えてきた。 「Gフォースが来ても、中にゃ入れるなって言っといただろうが!」
|
- 続・怪物を作りたいんですが
66 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/11/10(水) 22:53:37 ID:QNlDGc6W - 「遠路はるばるお疲れさん。オレが警視庁の岸田警部だ。この昼時に車で都内の移動は大変だったろ」
岸田と豊原は場所を変え、今は3階と4階の間の踊り場で顔を合わせていた。 「いえ、警視庁が先導のパトカー出してくれましたから。……それより警部、さっき……何をしてられたんですか?」 豊原はついさっき302号室で目にした光景を思い出した。 しゃがんだ姿勢の警部が豊原の方に顔を上げた拍子に、彼の体に遮られていた物が、豊原の前に露わになった。 ……切断された女性の生首だった。 「おい、また顔色が悪くなったぞ」 豊原の様子を窺いながら、岸田は質問に答えて言った。 「あんた、プラモデル作ったことあるかい?」 「プラモデル??」 「Aの18とかBの2とか記号が振ってあってよ。それを所定のトコにくっつけてくと、戦車とか飛行機とかができるアレさ。あれの組立説明図を作ってたのさ」 つまり警部は「バラバラ死体の組立説明図」を作っていたらしい。 胸にこみ上げる酸っぱいものを意思の力でねじ伏せながら、豊原は更に尋ねた。 「それがこの事件となにか?」 「なにか……おかしいみてえな気がすんだ」 肩越しに302号室を顎でしゃくって警部は言った。 「他の7部屋も似たようなもんだが、この部屋だけ被害が特に酷でえ。それで刑事のカンが騒ぐんだ。何かこの部屋には秘密があるってよ。まあ、あくまでオレのカンだがな。なにか違うんだ。最初は部品が足りないと思ったんだが…」 「でもその……つまり……『部品』は揃っていたんですよね」 豊原にもようやく、さきほど岸田がやっていたことの意味が無理解できた。 「ああ、部品はちゃんと揃ってた。あの部屋に住んでたのは4人家族だったらしい。 おい凍条!そんなトコでくつろいでねえで、オマエが調べたことをこのGフォースのアンちゃんに話してさし上げろ」 「はいただいま」 さっきの若い私服がメモを取り出しながら階段を上がって来た。 「この部屋に住んでいたのは戸主である47歳男性、42歳の妻、17歳の長女3人です。他に長男もいますが、今は大阪の会社に勤めており、ここには住んでいません。電話でですが無事も確認できました」 「つまり、昨夜302号で寝起きしていたのは3人だったということですね?……それでその……『部品』は……」 「男の首が一つに女の首が二つ、手首が六つ、胴体も三つってな具合に全部な……お、おいおいアンタ、ホントに大丈夫か?」
|