- 【荒しは】萌キャラ『日本鬼子』制作 5【スルー】
832 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/10/29(金) 00:25:37 ID:GVeab/al - >>818
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- 【蔑称ではない】鬼子SSスレ【萌なのだ】
211 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/10/29(金) 03:32:24 ID:GVeab/al - 寝落ちからおはよう。とりあえず書けたので寝なおす前に置いておきますね。
時代背景とかの細かなツッコミはなしでお願いしますw
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212 :おにを狩る娘 1/4[sage]:2010/10/29(金) 03:33:09 ID:GVeab/al - 秋深まり、紅や黄色に色づく木々を薄絹が覆い隠すように、しとしとと霧雨が降る。
そんな風景を山腹にある神社の、住居を兼ねた社務所の縁側に腰掛けながら、霧雨にしっとりと濡れるのも気 にならないといった様子で、その少女はぼんやりと眺めていた。 少女がぶらぶらと脚を揺らす度、山の色付く紅葉をそのままあしらった様な見事な柄の着物の裾も、落ち葉が 風に吹かれるようにぶらぶら揺れる。 少女は小さく「ふぅ……」と息を吐くと、鴉の濡れ羽色と言う表現がぴたりと似合う美しい黒髪を靡かせなが ら、ころりとその場に寝転がった。 その拍子に床にばらりと髪が広がり、少女の頭からひょこりと生えた二本の角を、僅かに覆い隠す。 少女はそれを鬱陶しそうに、寝転がったまま軽く手で整えると、もう一度「ふぅ……」と小さく息を吐く。そ してその艶に濡れた愛らしい唇から、ぽつりと小さく音が漏れる。 「…………ひま」 ここ、鬼ヶ瀬神社は今日も平和だった。 … …… ……… 「……っくしゅん」 自分のくしゃみで目が覚めた。どうやら少し眠ってしまっていたらしい、と、少々ぼんやりする頭で考えなが ら、むくりと起き上がる。 もう神無月も終わりに近く、霧雨といえど流石に濡れっぱなしは寒かったらしい。 小さくぶるりと身を震わせた少女は、それでもやはり暇である事には変わりなく、さてどうしようかと思った ところで、どこかで小さく「くぅ……」と鳴った。 空を見やる。 曇天で覆い隠されているものの、太陽は既に頂点。お昼時だ。 お腹も空いたしとりあえずご飯にしよう。何を食べようかな、と考え出したところで、そう言えば昨日魚屋の 政さんから秋刀魚を頂いていたのを思い出した。 うん、秋刀魚。秋刀魚を焼こう。さんま、さんま。 政さんは色々と良くしてくれるのだけれど、少々色目が多いのが玉に瑕。ごめんなさい、政さん。貴方はわた しの好みじゃないんです。でも秋刀魚はありがとう。 そんな事を考えながら台所へ向かう少女。 秋刀魚よし。七輪よし。大根よし。醤油……あれ、醤油が無い。 頭を抱える。なんてこと、醤油が切れているなんて。どうしよう。どうしようもこうしようもないですよね。 そう一人ごち、お昼は少々我慢して里に醤油を買いに行く事にした少女。 社務所を出て、鎮守の森を背に、くるりくるりと白地に赤目の蛇の目傘を回しながら、長い長い階段を里に向 かって降りて行く。 カロコカラコロ。下駄が鳴る。 「……あ、般若ちゃん忘れた」
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213 :おにを狩る娘 2/4[sage]:2010/10/29(金) 03:34:43 ID:GVeab/al - 「あー、おにこだー!」
そんな事を叫びながら、だーっと駆けてきた女の子が少女に抱きついた。 子どもは可愛いから好きだ。決して美味しいからではない。食べないよ、鬼だけど。 そんな若干不穏当な考えを浮かべながら、少女は自分に抱きつく女の子の頭を撫でる。 少女の名前は日本鬼子。その名が示す通り、鬼である。 鬼ではあるが、決して悪い鬼ではない。それは自他共に認める事であり、寧ろ鬼なのに怖がられてすら居なか ったりするのだが。 そう、例えば有る時こんな事があった。 この里に越してきたらしい、新しく見る男の子が、やはり初見の人間は少しは怖がるのだろう、鬼子の角を見 てびくりと震えた。 それを見た鬼子は、ふと天啓の如く閃いた言葉を口にする。 「ぷるぷる、わたし、こわいおにじゃないよー?」 それを聴いた男の子は、一瞬きょとんとした後、鬼子の顔と胸元を見比べて、こう言った。 「ぷるぷるするほど無いくせに」 その瞬間、確かに世界は凍ったのだ。そしてその後は阿鼻叫喚である。主に鬼子が。 「わ、わたしだってあるんです! 着やせするから小さく見えるだけだもん!」 「だったら見せてみろよー。ほんとはないくせにー」 「いいですよ! そんなに言うなら見てみなさいよ! 脱げばいいんでしょう脱げば!!」 先程まで自分の角を見てびくりと震えていた子どもの言葉に、逆に涙目になりながら叫ぶ鬼子は、あわやその 場で着物を脱ぎ出そうとした所を、すんでの所で八百屋のおかみさんに抑えられて防がれた。 それに対して周囲で様子を伺っていた男共は一斉に「ちっ」と舌打ちし、当の鬼子は我に帰ったあと、真っ赤 になって逃げ出したのだとか。 ……そんな昔……うん、昔よ、昔。昔なんだから……の事を、女の子の頭を撫でながら不意に思い出した鬼子 は、そんな自分にちょっと哀しくなりながら女の子に語りかける。 「こんにちは、ゆきちゃん。遊んでるの?」 「……ううん、おつかいー…………あ、おつかいのとちゅうだった!」 鬼子に撫でられまったりしていた女の子は、ぱっと離れてにぱーっと笑い、「じゃーねーおにこー!」と叫び ながら駆けていく。 そんな様子を苦笑しながら眺めた鬼子は、自分も買い物の途中だった事を思い出して足を進める。 さんさんさんま、さんまを焼こう♪さん……あ、さんま出しっぱなしだ。大丈夫だろうか。大丈夫だよね。大 丈夫なはず。だってあそこは神社。神域だもの。わたしの秋刀魚を狙う不埒なやからは現れまい。この間野良猫 の姿を見たような気がしないでもないけれど。きっとご祭神の月読命も守ってくれるはず。守ってください。わ たしの秋刀魚を。 神様に祈るには失礼なお願いを心の中で想いながら足を進める鬼子だったが、不意にすれ違った男性の“匂い” に思わず足を止める。 ずくずくと、両の角がうずく。 一瞬目を伏せ、再び上げた鬼子の瞳は、深い黒から鮮やかな紅へと変わっていた。 「あの人……ずいぶん『隠鬼(おに)』が溜まってる……」 はぁ、と小さく息を吐く。仕方が無い、秋刀魚はもう少しお預けだ。
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215 :おにを狩る娘 3/4[sage]:2010/10/29(金) 03:36:19 ID:GVeab/al - 人間(ひと)とは、心に光と闇を持つ生き物である。
心の闇、それは陰気と呼ばれ、それは溜まれば溜まる程に黒く深く強くなる。 溜まり、積もり、凝り固まった陰気は隠気となり、隠鬼(おに)となり、心を侵し、やがて身体を異形と化す。 そう、人とは誰しも、心に鬼を飼っているのだ。 「こっち……かな?」 男の『隠鬼』の残滓を辿り、いつしか鬼子は狭く入り組んだ路地を歩いていた。 かろころからころ。彼女の履く下駄の音が小さく響く。 そして一つの曲がり角を曲がった時に、小さく「きゃっ」と悲鳴を聴いた。 ──瞬間、駆け出す鬼子。 三歩を一歩で駆け、十歩を二歩で踏破する。 跳躍。かんっと乾いた音を立てて壁を蹴り、速度を落とさず角を曲がる。 見えた。 男は誰かを壁に押し付け、下卑た笑みを浮かべている。それは果たして、如何な意味の笑みなのか。その視線 は随分下だ。押し付けられた人物は男の陰になり、その姿は見えない。それに嫌な予感を覚えた鬼子は、更に速 度を上げる。 かんっ。 下駄が鳴り、男が鬼子に気がついた。 彼女が下駄を履く理由にコレがある。相手の注意を、自分に向ける。 更に一歩。押し付けられた人物の姿が見えた。 「──っ!」 一気に男へ肉薄する。 加速の全てを一撃に乗せ、男の脇腹へと肘撃を見舞う。 加速状態からの急停止に、彼女の纏う紅葉がばさりとがたなびいて、同時に轟音を立て、向こうの壁にナニカ が激突する音が響き渡った。 それに構わず、壁に押し付けられていた“女の子”を抱きしめる。 よかった、怪我は無い。乱暴された様子もない。気は……失っているけれども。 「……ゆきちゃん、もうちょっとだけ待っててね」 鬼子は女の子を静かに寝かせると、今しがた吹き飛ばしたモノへと向き直る。 それはすでに起き上がり、ひたりと彼女を見据えていた。まるで、先の肘撃も、壁に叩き付けられた事実もな かったと言わんばかりに平然と。 「……くひっ」 引きつるような笑い声を上げ、“男だったもの”の口が耳まで裂ける。 ケタケタと笑いながら、こきんごきんとその背が伸びる。まるで不恰好な、出来損ないの人形のように。 鬼子はそんな様子を紅い瞳で見据えながら、右手をすっと左の袖の中へ入れた。そして引き抜いたその手に握 られているのは棒状の何か。 そのままスルスルと、まるで手品のように着物の左袖から棒状のそれを引き抜いていく。そして現れたのは、 彼女の身長以上ある一振りの薙刀。 握り心地を確かめる様に、ひゅんっと一振り。そしてぴたりと、『隠鬼』に侵食され、異形と成り果てたモノ へと構える。 「──すぐ、楽にしてあげます」 ぽつりとそう言ったのと同時に、鬼子が側頭部にかぶる般若の面が淡く光を発し出す。そしてそれに呼応する かの様に鬼子の角がずずっと伸び、髪の色素が薄れていく。闇のごとき深い黒から、雪のごとき白へ。 そして周囲を満たしていく、濃密な気配──鬼子が発する“鬼気”だ。 只人であれば、まともに向けられれば動く事すら叶わぬであろう“鬼気”を向けられた異形は、その長い手足 をしならせて跳躍する。 鬼子の倍はありそうな身長。にもかかわらず細い身体と、同じく補足長い節くれ立った手足。 まるで昆虫のナナフシのようだ、と鬼子は相手の動きに注視する傍ら思った。
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216 :おにを狩る娘 4/4[sage]:2010/10/29(金) 03:37:34 ID:GVeab/al - このまま受けに回っては、ゆきちゃんを巻き込んでしまう。そう判断した鬼子は相手に合わせるように跳躍。
それに対してナナフシはその手を大きく振りかぶり、鬼子に向かって振り下ろす。その瞬間、その手には刃の 様な鋭利な鉤爪が伸びているのが鬼子の視界に写った。 交差する鬼子の薙刀とナナフシの鉤爪は、まるで金属の鈍器を打ち合わせた様な音を立て、反発する勢いに 互いに後ろに弾かれる。 ズドンっと、まるで巨石が落ちるような、その見た目に似合わぬ音を立てて背中から落ちたナナフシ。それ に対し、空中で軽やかに反転し、舞うように地に下りる鬼子。 相手は変異したててで上手く動けない様だ。攻めるなら今しかないと判断し、彼女の履いた下駄が、かんっ と地に打ちつけられる音を立てると同時、消えたと思う程の速度でナナフシへ向けて駆ける鬼子。 彼女のその判断は、最良にして最善の一手であった。 身体を起こそうともがくナナフシは、鬼子の急激な加速に反応しきれず、その長い手を闇雲に振り回すのみ。 鬼子はそれをくぐり、かわし、いなした所でナナフシの眼前へ迫る。 「……おやすみなさい」 ──一閃。 ナナフシはその場に崩れるように倒れ付し、その直後、その身体を黒い靄が包み込む。 そして次の瞬間、その黒い靄は鬼子のかぶる般若の面へと吸い込まれ、それと同時に彼女の髪の色は元の闇色 へと戻っていった。 後には元の男が倒れるのみ。首筋に手を当て、脈を診る。 うん、生きてる。 ほっと息を吐いた鬼子は、男を壁によしかかる様に移動させると、今だ気を失ったままのゆきを抱えてその場 を後にした。 鬼子は、鬼の一族の中でも特異な力を持つ存在であった。 彼女の異能。それは『心の隠鬼を感じる力』。 その力を自覚したその瞬間、鬼子は『般若』と『薙刀』に選ばれた。 その二つが何であるのか、一体どのような経歴をもつのか。それらの事は、鬼の里にも既に伝えられていない。 けれど、彼女は知識ではなく、魂で感じている。感じて、しまっている。 ──その異能も、薙刀も、全ては人間の『隠鬼』を狩るためにあり、般若はその『隠鬼』を喰らうためにある。 『隠鬼』を喰らい続けた般若が一体どのようになるのか──それは鬼子にも解らないのだけれど。 … …… ……… 気を失っていたゆきを、彼女の家まで送り届けた後、鬼子は神社へ続く道を歩いていた。 ちょっと出ただけなのにこの有様。今日は厄日だ、休みたい。 そんなことを考えながら歩く彼女が、醤油を買い忘れていたことに気付くのはもう少し後。 はっと気付いて醤油を買いに、中ほどまで登った長い長い階段を戻った彼女が──ご祭神に文句を言うのは、 更にもうちょっと後である。
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217 :211[sage]:2010/10/29(金) 03:40:20 ID:GVeab/al - 以上で終わり。
お目汚し失礼しました。 いつかスレの絵師が挿絵を書いてくれると信じて……! 冗談、です。
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