- 続・怪物を作りたいんですが
45 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/10/27(水) 00:12:36 ID:mQvh1hcN - 「政府、なにをグズグズやってるのかなぁ」と朝子。
ご贔屓の定食屋のカウンター席に、朝子と佑が並んで腰をおろしていた。 2人の見上げるテレビが映し出しているのは、他愛もない主婦向けの情報番組に過ぎない。 「浦安を襲ってから3か月、ゴジラは日本近海から姿を消してるからな。おまけに……」佑が理屈っぽく応える こちそうさまと言い置いて客の誰かが出ていくと、2人に紛れて店内に入りこんだ落ち葉が吹きこむ風にカラカラ音をたてた。 狂った夏は立ち去ったが、続いてやって来た秋は夏とおなじく狂っていた。 夏の狂気は猛暑とゴジラ。 秋の狂気は気温の乱高下と円高だった。 「1ドル……78円でしたっけ?」 「78円47銭」 「……ゴジラに襲われてるのになんで円高になるの?」 「そんなの知るかよ」 社会が最も恐れているのはゴジラから、目前に迫った空前の円高不況へとシフトしてしまっていた。 Gフォース再編法の執行に必要な予算承認は円高対策のため消し飛んでしまい、うやむやのうちに継続扱いとなってしまっていた。 「Gフォースが立ち上げられたとき、日本はまだバブル景気の勢いが残っていたからな。 メーサー光線車?はい10台ね、スーパーX?一台でいいの?…ってな調子さ」 手を伸ばして佑の皿をとると、朝子は自分の皿に重ねて横に置いた。 「バブル景気ってすごかったんだなぁ。アタシ子供だったから覚えてないけど……」 「まあ、幸いいまのところ何か起こる気配も無さそうだけどね。小高さんからも連絡は無いし……」 「小高さん?」 「旧姓三枝さんだよ。いい加減覚えろよ朝子」 小高未希、旧姓三枝未希とは、「また何かあったら連絡する」と約束し別れて以来、音沙汰ないままだった。 「恵美ちゃんも、もう怖い夢は見なくなったんだね」
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46 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/10/27(水) 00:17:19 ID:mQvh1hcN - ……もうゴジラは来ないな。
……あれはたまたま虫の居所でも悪かったんだよ。 ……他に金が必要なところもあるしね。 ……なにより選挙の票にはならんからな。 諺通り喉元過ぎて熱さを忘れた日本に、四度目の襲来の日は間近に迫っていた。 今度の舞台は東京。 キャストはゴジラと、そしてもう一匹。 悪夢のダブルキャストであった。
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47 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/10/27(水) 00:20:36 ID:mQvh1hcN - その夜、都内にある商事会社の経理で働く田中有子は、月締め作業のため部下3名とともに社に残っていた。
「……ったく政府はなにやってんのかしら」 数次を見ているとおもわずボヤキが口から洩れた。 と、いっても手元に上がってきた数字にはまだ円高の影響は出ていない。 数字が変わってくるのは3か月程度先、つまり年度末決算の前ぐらいだろう。 昨年度は数次のやり繰りでなんとか黒字決算にできたが、今年はどうだろうか? もし赤字に転落するようなら、会社は人員整理に踏み切るかもしれない。 ……暗澹たる予感に気分が落ち込む。 「係長。考えたって仕方ないですよ」 社歴で2年下の境がデスクから立ち上がり、給湯室へと向かった。 彼女は正社員としての社歴は下だが、アルバイトとしての社歴を加味すれば田中の1年先輩ということになる。 そのため、田中にとって境は何かと頼りになる存在だった。 「……さてと」給湯室から境の声がする。 まずガス湯沸かし器を点火する音がして、つぎに金属のガチャガチャいう音と陶器が触れ合う音が続くと、他の2人も作業の手を止めて椅子で背伸びを始めた。 境はいつも絶妙なタイミングでティータイムを入れてくる。 それに今朝彼女は、ショルダーバッグ以外に紙袋も抱えて出社してきたから、お茶以外にも何か用意があるに違いない。 ……案の定、境はお茶を配り終えると給湯室に引き返し、再びおぼんを手に戻って来た。 「田舎から送ってきたんですけど、よかったら……」 「あら?境さんって東北の人だったっけ?」 「いえ、田舎は箱根です。色だって白くないっしょ?」
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49 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/10/27(水) 23:22:06 ID:mQvh1hcN - あ……私の駄文は気にしないで怪物系の話題であればどんどん投下して下さい。
くくりは「怪物」というだけです。 それから「熊」の方もちゃんと作ってます。 普通ならヒグマにするとこなんですが、いっそ意表を衝いてツキノワグマでもいいかなと(笑)。
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