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155 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:01:17 ID:oInMrVBR -
「なるほどな」 「…そろそろ放送だ。適当な用で俺があいつらを呼ぶから、その間にやれよ」 「………」 「どうした?」 「いや、……何でもないさ」 殺せない。 メリットデメリット云々の問題ではない。 もっと根本的な、根源的なものがそれを拒否させる。 タケモトの目が細くなった。 迷いを見抜いたか、しかしまだ言葉をかけない。 強要はしない。あくまでも自分で決めさせる。そうでなければ意味が無い。 と、その時。 六度目のアナウンスが流れ始めた。 「時間か……」 いつもどおりの内容の放送。 人死にの情報と禁止エリアの情報。 流されるのは、それだけだと思っていた。 ◆◆◆ 「――――――」 ワードが細々と反復されていく。 ルールの厳罰化。12時間以内。残り一人。時間切れ。 最後の放送。6時間後。 これが、意味する、ところとは。 「な、にを……」 馬鹿げている。 それしか言いようがない。 今まで積み上げたものを全て突き崩されるような感覚。 開いた口が塞がらない。意味が分からない。ここに来てこんなルールを提示するのは―― 「クソッ!」 タケモトの表情には明らかに怒りが滲んでいた。 拳をテーブルに叩きつけ、歯を食いしばっている。 俺も落胆せざるを得ない。 座ったまま、動く事が出来ない。 台無しだ。12時間以内に全てが完了するわけが無い。逃げて時間を稼ぐ事も出来ない。 戦えば間違いなく死ぬ。少なくともドナルドと咲夜に敵うはずが無い。
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156 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:02:30 ID:oInMrVBR -
「何故だ……?なんでいきなり……!」 そうだ。確かに不自然だ。 首輪の事がバレた?有り得るかもしれないが、それでもここまでするだろうか。 そもそもこんなものを混じらせたのはあちら側の不手際に拠るものだし、この程度でゲームそのものが危うくなるとは思えない。 残り12時間とするほどのものだろうか?何か別の可能性がありそうだ。 悲観的な考えをしたくなかったからかもしれない。一番妥当と言える可能性ではあったが、その程度の事態で ここまでされる筈が無いと思ってしまった。 バタバタと階段を駆け上がってくる音が聞こえた。 おそらくスネーク達だろう。放送を聴いたなら、当然の反応か。 「どういうことだ!?」 「俺に訊くなよ…」 半ば投げやりに応えるタケモト。 それに対し馬岱は少しばかり俯いた。 「ど、どうするんや?このままじゃ皆…」 「死ぬな。間違いなく」 その事実以外に何があるというのだろう。 逃げるも地獄。戦うも地獄。足掻く気力すら根こそぎ奪う、そんな事態。 「そもそもドナルドに勝てる可能性が確立出来ないから逃げの一手を選択したんだ。向こうも本腰入れてかかってこない わけがない。俺達はジリ貧どころかどん詰まりだよ」 ここで5人集まっても殺し合いが始まらないのは、それが無意味な行為だと分かりきっているからだ。 「どうする?チルノ達はもうすぐ帰ってくるが…」 「待とう。その時間はまだ残されてる。まあそれがどうしたって話だが……」 突如、階下で轟音が鳴り響いた。 「なっ…!!?」 床がミシミシと揺れる。 どこかでパラパラと音がする。 それはこの建物がそろそろ危うい事を表していたが、そこにまで気を留められる者は誰もいなかった。 ドナルドや咲夜ではない。 数十分前に確認したが、ここまで近づけるほどの距離ではない。 出張組が帰ってくるには速すぎる。というより、こんな音を出す必要がない。 ならば消去法では、ただ一人ということになる。 「馬鹿な!あいつは何も出来ない筈だ」 「行ってみるか?」
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157 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:03:51 ID:oInMrVBR - 「誰が?」
「……俺が行こう」 行くしかあるまい。 しかしこうなれば好都合と言えば好都合だ。 何かしらの方法で暴れたのならば場合にとってはすぐさま処断できる。 しかしそうだとこちらの身の危険もあるのは間違いない。 アクションを起こしたのならばそれ相応の手を打ったのだろう。 何も言わずスネークもついてきた。 心強い事は確かだが、動くには少々邪魔だ。 身の危険が迫ったときには自己責任でご了承ください。 所々に皹の入った階段を降り、1Fに向かう。 つきあたりでちょうど倉庫が見える筈だ。壁に身を寄せながら、奥のほうを覗き込む。 (………?) 音の原因は判明した。 倉庫のドアがものの見事にブチ壊されている。 一般人の力では到底不可能な技だ。 《何か隠し持ってたのか?》 《多分そうだろうな。今まで使わなかったのは迷ってたからか……。けどさっきの放送で弾けたんだろう》 《ときちく》 《どうした》 《お前はこれから、どうするつもりだ?》 《……》 一々余計なところを突いてくる。 察してくれと言いたい所だが黙ると変に疑われかねない。 《どうにも出来そうにないな。死にたくはないが殺し合いで俺が生き残れると思わない。お前はどうなんだよ?》 《俺も同じようなものだ。せめて一人でも多く生かして帰そうと思っていたが、時間的にも状況的にも間に合わないだろう》 《まあ、な》 《だが諦める気はない》 《…》 《救いの道が完全に閉ざされているわけではない。だから最後まで生きるべきだ》 《そうか…》 スネークは外部からの救援を期待しているのだろう。 出来れば俺もそう思いたい。だが、もし運営の今回の対応がその外部からの介入に過敏に反応したものだとすれば…。 表情から見る限りスネークが本気で期待しているわけではないようだが、ここで自暴自棄になるのも確かにどうかと思う。
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158 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:05:28 ID:oInMrVBR -
(ああ、そうだ。確かに状況は絶望的だが、ここで自殺するのは得策じゃない。限界まで足掻いてやるさ) 最後に救いが無かったとしても、今までやってきたことが無意味だとしても。 この状況から活路が見出せるとも思えないが、何もせずに、ただ殺されるなんてのはごめんだ。 まあ奮起のために思ってみたものの、やはり無駄な気がするのはどうしようもない。 《しかし…言葉は何処に行った?》 《今調べてる。デパートの外に出てないのは確かだが…くそ、どの点が言葉だ?》 探知機で見たものの、複数の点がデパート内にあり、そのうちどれが言葉か見分けるのは難しい。 しかし拡大機能を使ってみれば一個だけ孤立した点があるのが分かった。 「この階の奥……食品売り場だ。確か向こうに裏口があったよな」 「逃げる気か。追うしかないな」 「ああ、だが手加減はしないほうがいい。向こうもどんな手を持ってるか分からないからな」 後ろからここいないはずのタケモトの声が。 振り返ってみれば当人がそこにいた。 ついてきたのか。危険は少ないと踏んだのだろう。 「向こうがその気なら遠慮なくやれよ。躊躇するとこっちがやられる」 単に念押しに来ただけだったようだ。 言葉通りにするならいきなり暗殺という手は使えませんがどうしますかね、と。 食品売り場は棚が多い。 つまり死角が多いということだが、こちらに探知機がある以上隠れても無駄だ。 距離は約50m。まあ向こうに気づかれないように気をつける必要もあるのだが。 ちなみにタケモトはもう二階に戻った。 (……点が動かない。こちらに気づかれたか?それとも隠れてやり過ごすつもりか?) 後者ならやり易い。 30秒ほど待っても動く気配がないから、やっぱり気づかれてないのか。 スネークが棚の間を走り抜け、端で止まる。 そして顔だけ覗かせ、右を見て左を見て。 その瞬間、スネークのいた場所が爆音と共に吹き飛ばされた。 「!?」 一部始終は目に留めていたが、それはほんの一瞬だった。 スネークは間一髪で気づき難を逃れたが、前方の棚は無残にも崩れている。 これは、拙い。俺の自力に負える相手じゃない。 おそらく自立活動型の支給品だろう。ポケモンとか、DMとか。 スネークと俺は一目散にその場を離れた。 追ってくる敵の影がチラリと見える。 黒を基調としたローブを着ているヒトガタ。 手には杖を持って、厳しい眼光で俺達を睨んでいる。 懐かしい記憶が呼び起こされる。確か遊戯王でも割と有名なDMだよなぁ。
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160 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:07:28 ID:oInMrVBR -
「黒・魔・導(ブラックマジック)!!」 数十センチ後方で爆発が起きる。 スネークも銃を撃つ暇もないようだ。 「二手に分かれるぞ!マークが外れたどちらかが仕留めること!」 「了解した!」 共に左右に分かれる。 二人一緒にいれば的同然だ。しかしこういう場合ペアだと臨機応変に対応できるからありがたい。 ……いや、全然ありがたくない。 あの魔導士(?)、明らかにこっちに目を向けている。 ならもう逃げるしかないだろう。わざわざネイティオを出して異種バトルゲームをやる余裕は無い。 そのついでに、言葉を暗殺するのがてっとり早いからだ。 少し遠回りだが俺の脚ならものの10秒程度でたどり着く。 ブラックマジシャンはスネークが後ろから仕留めてくれることだろう。 しかし走り出した数秒後。 「うおおっ!!」 ガシャンガシャンと何かが床に落ちる音と同時にスネークの叫び声が聞こえた。 まさかとは思うがやられたんじゃないだろうな。 恐る恐る振り返ってみると棚が2つほど思いっきり横倒しになっていた。 多分下敷きになったものと推測される。 しかしこちらの方が速い。 こういう場合は使用者本人である言葉を狙った方が確実に倒せる。 殺すのは気が引けていたが状況的には整っている。 再び後ろで爆発が起きたが、距離的にもう勝ちも同然だ。 俺はそのまま裏口につながるルート…つまり言葉のいる場所に飛び込んだ。 「悪いがこうなっ……に……?」 いない。 さっき探知機で確認した場所に、言葉がいない。 ブラック・マジシャンを陽動として外に逃げたか? だが切り札ともいえる貴重な支給品を放っておくだろうか? (何処に行った…) しかし判断する時間は無かった。 振り返ればブラック・マジシャンにもかなり近づかれている。 俺だけで対処するより他にない。
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161 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:08:35 ID:oInMrVBR -
再び魔弾が飛んできて頭上を掠め壁に当たった。 ここにいては追い詰められる。上に行く階段があるが、足場の悪い場所で闘うのは避けたい。 咄嗟に飛び出し、また食品売り場に躍り出た。 「行け、ネイティオ!」 トゥートゥーと暢気に鳴き声を上げる。 さて、ここからどう切り抜けるか。 まだ手はあるし、状況はこちらが少しばかり有利な筈だ。 ところでスネーク。 さっきから声が全く聞こえないんだが、まさか気絶してたりはしないよな? ◆◆◆ 「長いな…まだ解決しないのか?」 時間帯はちょうどスネークがブラックマジシャンを発見したところだ。 馬岱は若干愚痴っぽくこぼすと、鍬を手にとって階段に向かった。 「何処に行く気だ」 「下だよ。加勢に行ってくる」 「えっ!?」 「何をそんなに悲壮な顔をしている。ここなら安全だから問題ないだろ。むしろ下のほうが危険じゃないのか?」 そう言うと止める間も無く馬岱は降りていった。 残されたのは藤崎とタケモト。空気がしんと静まり返った。 静寂に耐えられなかったのか、すぐに藤崎はタケモトに話しかけた。 「な、なあタケモト……」 「俺が優勝を目指して殺し合いに乗ったとしよう」 「は?」 「それで、勝てると思うか?」 「……悪いけど、思わん」 「それで正しい。まあお前にも当て嵌まるがな」 「嫌味かい」 「話しかけたのはお前だろうが。ともかく、誰も勝てると思わない。だからこの場の誰もが突発的な行動を取らないのさ。 つまり、全員この状況に諦めているってことに他ならないだろ?」
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162 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:09:37 ID:oInMrVBR -
違わない、と藤崎は言えなかった。 事実彼自身もそう思っているのだから。 現状はまさに絶望的。脱出のために生き残るにはあまりにも時間が足りない。 「しかし自殺する気もない。どんなに足掻いてもどうせ12時間後には御陀仏だからな。まあ、何と言うかさ。やる気がなくなった」 「……」 「何をしても無駄。結果は同じなら何もしないほうがマシだと思うんだが、お前はどうだ?」 「それなら、殺されてもいいってことか?」 「…ハッ、誰かを殺す気も、自分を殺す気も、殺される気もない」 正常な思考力を持っていたら否応無しに気づかされてしまう。 まだ力が均衡しているなら勝ち目もあるだろうが、まだ危険因子は残っている。 そんな中での最弱に、何を奮起しろと言うのだろう。 「…………ところで、このルールの変更おかしいと思わへんか?」 「お前が気づくとは思わなかったな。素直に驚きだ」 「殴ってええか?」 「断る。で、どの点がおかしいと?」 「急ぎすぎや。というか、まずルールの変更なんてのが有り得へんやろ。こんな感じになる事予測してなかったわけないやろうし」 「そこだよな。通常通り運行していればルールの変更は無い。つまりこう考える事もできる。変更せざるを得ないような 状況に陥ってる、とかな」 「それって……」 「希望的観測をするつもりは無い。ただ、連中はこう考えられる事も承知でやっているんだろう。バレたところで特に問題は出ないからな。 しかし半ば投げやりにも見えるがゲーム自体は一応終わらせたいらしい。そこまでしてこだわる必要があるのかな?」 知ったところでどうにも出来ないのは確かだが。 「こうなったら優勝しても運営の奴らが願いを聞くとは思えないな。それに優勝しても放って置かれる可能性もありそうだ」 藤崎は、ふと不思議に思った。 やる気が無いとは言いつつやたら運営に関して考察をしている。 何か思惑があるのだろうか?そう彼が思ったとき、 「なぁ、そうは思わないか?桂言葉」 「えっ!?」 タケモトの目線の先。 藤崎は振り返ると、そこには確かに言葉がいた。 下での戦闘は一体どうなっているのか。そして言葉が何故ここにいるのか。 藤崎は若干混乱したが、息を整えてこう切り出した。 「下のはDMカードとかでの囮やな?それでこの中で比較的力の弱い俺らを狙いに来た。そういうことか?」
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164 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:12:25 ID:oInMrVBR -
「比較的、は余計だ。けど隙が無くてどうしようと思ってるうちに俺達の話を聴いてしまった、てな感じだろう」 (だからやたら大声で話しとったんか……。確かにタケモトの位置やったら気づきそうやな) 言葉はあくまでも一般人だ。 日常的に隠れるという動作はあまり行わないので慣れている筈がない。 人間はむしろ見つけるという行為の方が得意なので、より見つかりやすい状態になる。 2階には藤崎とタケモトしかおらず余計な物音はしない。何より、言葉の行動は突発的だった。 周到な準備など行っているわけがない。発見するのは容易だったと言えよう。 「それがどうかしたんですか。あなた達が危険な事に変わりはありませんよ」 「おいおい、ハッタリはよせよ。お前が奇襲に来なかった時点で何の武器も持っていないのは明らかなんだから」 「……」 全く以ってその通りだった。 「どうせさっきの放送を聴いて行き当たりばったりで飛び出したんだろ。いや、スネーク達の監視が逸れた時点で 出たから少しは考えたんだろうが……」 行き詰ったのだろう。 結局のところアレしか武器は持っていなかった。 放送前なら逃げる事なら出来たかもしれないが、今は残り12時間で全員を殺さなくてはならない。 都合よく仲間割れが起きるとは思えない。それにドナルドがまだ生きているという事実が彼女の思考を乱した。 結果は無策。非力な相手に対して、為す術を失っている。 尤も、武装の点で言えば藤崎もタケモトも非力とは言えないのだが。 「お前、どうするつもりだよ?」 言葉は無言だった。 逃げる事は可能かもしれない。しかし逃げたから何だというのか。 どうせ12時間後には死んでしまう。殺されてしまう。 そしてタケモトの言うとおり、運営側にアクシデントが起こって優勝者を救うどころか願いも叶えないとなると。 「私には、何も――」 自分が死んだとしても、伊藤誠さえ蘇ればいいと思っていた。 あんな理不尽な死から救ってあげたいと思っていた。 だが、その願いも叶うかどうかわからない。 絶望的な状況はゲームの初めから終始正常でなかった思考をだんだん冷えさせた。 そして自分のしている事が全て無意味だと、実感させられた。 「私、わたし……せっかくここまで生き残ってきたのに、どうすれば、いいん、ですか」 「知るかよ」 一言でタケモトは突き放した。 訊かれても困る。彼もまさしく、そう思っているのだから。 今までしてきた事は全て無駄になった。 運営が自分達の動きを読んだか、それともそれ以外の原因かは分からないが、こういう手段に出た彼らがここにまで来て脱出経路が 残しているなどという考えが浮かばなかった。あったとしても間に合わない。 その現実に、憤る気も嘆く気もなかった。
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165 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:13:46 ID:oInMrVBR -
「お前が脱出に邪魔だから殺そうかとも思ってたけど、そんなことをしたって何の意味もない。言葉、お前もう好きなようにしろよ。 どうせあと半日の命だ。一々殺しあうのも面倒くさい」 行っていいよ、とばかりに手のひらを振る。 しかし言葉にも行き場はない。ただ呆然と立ち尽くす事しかできない。 各々がそれぞれの家具に座り、しばらく3人ともボーっとしていた。 下では何やら音が聞こえているが、それもあまり気にならない。 そうして数分後、ときちく達が二階に上がっていた。 「なんだ、随分と緩い空気になってるな」 「ここに私がいるのには驚かないんですね」 「まあ、探知機あったし。こいつを倒した後に確認させてもらったよ」 ときちくは右手に持っているカードを少し振った。 ブラックマジシャンのカードだ。 「それにしては時間かかったな」 「実際馬岱が来たから戦闘もスムーズに終わったし。鉄の騎士も使ったけどな。どっちかって言うとスネーク運ぶので手間取った」 スネークは気絶していた。 倒れてきた棚に頭でもぶつけたのだろう。 軽い脳震盪だから直に目覚めるとの見解だ。 「で、言葉はどうするんだ?」 「……勝手にしてください」 「じゃあ殺さないでおく。開き直った奴一方的に殺しても印象悪いだけだしな」 「ニヒル臭い空気が漂ってるな」 「仕方ないだろこんな状況じゃ。ドナルドも咲夜もまだ生きている。加えて残り12時間。俺達一般人にどう生き残れってんだか」 「これからどうする?」 それでもタケモトは敢えて訊いた。 何もせず殺されるのだけは嫌だからだろう。 「その事なんだが…チルノはまだ帰ってきてないよな」 「それがどうし………まさか」 「そのまさかだ。おそらくドナルドと交戦している。さっき確認したから間違いない」 「最悪だな」 ドナルドに勝てる可能性は『わからない』。 ましてやチルノとグラハムだけではさらに不確実なものとなる。 勝敗を判断できればいいのだが、残念な事に探知機の画面左下に集中しているのは4つの点。 つまりチルノとグラハム、そしてドナルドと誰か、という組み合わせだ。 どっちが負けても、どっちが生き残ったか判断する術はない。
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167 :COUNT DOWN(下) ◆WWhm8QVzK6 [sage]:2010/10/21(木) 00:15:04 ID:oInMrVBR -
「ドナルドが勝った場合こちらの場所を訊き出されている可能性は否定できない。だからこの場は一刻も早く去るべきだ」 「待てや。去って何処に行くねん?それにもしチルノとグラハムが生きてたらどないすんねんな」 「こうすればいい」 ときちくは持ち合わせのメモに文字を書きなぐり、机に置いた。 『例のあの部屋へ行きました』 誰得の部屋の存在はこの場のみならず、デパートで説明を受けた全員が知っている。 当然言葉以外は全員理解した。 それならドナルドに判断される心配は限りなく少ない。 ドナルドも一々初めからの情報を聞き出すことはしないだろう。 「なぁ。生き残りで提案があるんやけど…」 「どうせ誰かを自発的に生き残らせてそいつに願いを叶えさせてもらおうって方法だろ。そんな夢物語に縋れるか。 でもまあ、洞窟に着いてからそれも含めて今後どうするか話し合いだな……」 拙い希望ではあるが、それが一番可能性があるのは事実。 それはないかもしれなかったんじゃないんですか、という言葉のツッコミを、タケモトはさらりとスルーした。 「まあチルノ達は放送後生きていたら迎えに行こう。その時は多分ドナルドもどうにかなっているだろ」 そうタケモト言うと、全員は立ち上がった。 スネークは馬岱に背負われたまま、運ばれていく。 どんよりとした空気を流しながら、一行は洞窟にある誰得の部屋に向かった。 「ところでまりさ!なんだかれいむたち、ゆっくり空気になっていってるね!」 「けっこうしゃべってるのにまったくかかれてないからだね!ぷんぷん!」 ◆◆◆ 一方その頃エリア北西部…ようするにオフィスビル付近では。 「ど、どうするの……?」 「ともかく戻ろう。それ以外に何が出来ると言うんだ」 「くそったれが……どこまでも汚い奴らめ!!」 一応オフィスビルにたどり着いたものの放送を聴き、一同は混乱に陥れられた。 ユベルだけは相変わらずニヤニヤしていたが、それに気づく者はいない。 (この分だとデパートは確実に面白い事になってそうだね。ちょっと急かされたみたいのが気に入らないけれど)
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