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企画委員 ◆PqVHuYP2.caw
勇者シリーズSS総合スレPart4

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勇者シリーズSS総合スレPart4
16 :企画委員 ◆PqVHuYP2.caw [sage]:2010/10/17(日) 06:04:21 ID:lZtUpzrk
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勇者シリーズSS総合スレPart4
17 :企画委員 ◆PqVHuYP2.caw [sage]:2010/10/17(日) 06:05:03 ID:lZtUpzrk




 −4−


「地震!?」

 誰かが叫んだ。
 そのときには既に教室という空間は、半狂乱になって中のすべてを掻き回そうとしてい
た。硝子張りの窓が穏やかならぬ悲鳴を上げ、机と椅子はまるで歯の根が合っていないよ
うにがたがたと震え慄く。
 えーいち朗の通う小学校を突然に襲った“地震”。
 怒号にも近い担任教師の指示に、えーいち朗たちはほとんど反射的に従って、速やかに
学習机の下に飛びこんだ。
 謎のロボットや怪獣による巨大スケールの戦闘が続発しているという最近のこの街の状
況もあり、つい先日に全校を挙げての避難訓練が実施されていたが、この学級に限ってい
えば、それが功を奏したといえるだろう。
 震動が収まるまでに、さほど長い時間は掛からなかった。えーいち朗などは、些か拍子
抜けに感じたほどだ。
 天井は、落ちてこない。
 しかしその学び舎を外から見た者は、雨と塵を吸って変色した白壁に、痛々しい罅割れ
が走ったことを知るだろう。そうなるだけの衝撃があったという事実。

「おっきな地震だったね……」
「うん」

 えーいち朗は隣席の女子のぎこちない笑みに応える。すかさず教師の注意が飛ぶが、既
に教室の緊張感は和らぎつつあった。
 この後は、余震に警戒しつつ、整然と列になって安全な場所に避難することになるのだ
ろう。そんな見通しを立てることも容易い。

(……でも、ほんとに地震?)

 えーいち朗は漠然とした不安を覚えていた。
 むしろ、どうして誰もその可能性に言及しない?
 あるではないか、天災以外にも。
 ああ、そいつらは、忘れぬうちにやって来る!
 下界を震え上がらせる。いわば“悪夢の仕掛け人”。もっとも、ひとであるかは、大い
に疑わしい。
 怪物。
 そう、彼らは、まぎれもない怪物だ。ここではないどこか、今ではないいつかに出現し
たという、人類に逆襲するためにひとりでに動き出した機械仕掛けたちや、闘争本能と破
壊衝動を存在証明とする生体兵器群、あるいは地上に躰を求めた宇宙の虚ろなる騎士たち
と同様に。
 半年もの長きに渡ってそれらを見続けてきたえーいち朗だ。
 異変を探して、机の下から外を覗き見た。どれほどの震度でも、それがただの地震であ
るならば、そうそう空の様相は変わらぬはずだ。
 窓の外、ベランダの向こう側には、さっきまでと変わらぬ、青空が――
勇者シリーズSS総合スレPart4
18 :企画委員 ◆PqVHuYP2.caw [sage]:2010/10/17(日) 06:05:57 ID:lZtUpzrk
 ――いや。
 青空に浮いて、何か在る!
 あろうことか、それは“人影”だった。
 もはや何者と問うまでもない。
 逆光にいくらか黒ずみながらも、毒々しい紅白の段だら模様は一目瞭然。貌に塗りたく
られたドーランは、陰のために凄惨な蒼白を発していた。巨大生物の臓物のような唇がそ
の中を伸縮する。見てくれだけの涙が、目許に七色の光を添える。

「――ひッ!?」

 えーいち朗の全身の毛穴という毛穴が開いていた。
 悲鳴は消せたか? 分からない。
 ただ、もう声など発せられる気がしなかった。ただ恐ろしかった。恐ろしかった。

 ――ホホホホホホホホホホホホホホーッ!!

 極大の悪意の籠った哄笑が、ひとびとの心胆を寒からしめる。
 えーいち朗はもしやと思っていた。そして、やはりと思った。誰より正しくこの最悪の
事態を予想していた。
 それでも、それがそこにいることに、ぞっとしないわけにはいかなかった。その姿には
今や、誰であろうが戦慄を禁じ得ない。
 出で立ちは“道化師”そのものだ。事実、彼は驚嘆すべき奇術の使い手だ。魔術といっ
ても、あながち、間違いでは。
 激しい踊りの一瞬を切り出したかのような大仰な体勢のまま微動だにせず、気球の緩や
かさで降下していく。道化師に足場など不要。万雷の喝采を浴びるためならば、空さえ飛
んでみせることだろう。
 世界のみんなが覚えている。彼のことを。
 滑稽な愚者の演技で楽しませてもらった記憶? とんでもない!
 摩訶不思議な魔術にびっくりさせられた記憶? とんでもない!
 それは、刻みつけられた恐怖の記憶。脱線したジェットコースターに乗せられているよ
りもスリリングに、命を脅かされたのだから!

(あいつは、ダークラウン!)

 あらゆる次元に通じるという狂宴の遊園地“超次元ワンダランド”、その経営に携わる
大幹部ワンダラーズのひとり。
 今この刻に何をぞ企む? 闇の道化師、ダークラウン!

(早く、早く、ディム郎に知らせないと……)

 ただごとではない。えーいち朗は迷うことなく、机の中に忍ばせていたものを掴んだ。
 その名は“ディムコネクター”。手の平に納まるほどの大きさで、膨らんだ卵型をして
いるそれは、一見してごくありふれた防犯ブザーにしか見えない。しかし、その正体は、
えーいち朗がディムロードから預かった、彼と同じライトグリーンの通信端末だ。
 その性能をもってすれば、あらゆる隔たりを越えて想いは届く。声に出さずとも、強く
念ずるだけでだ。だからダークラウンは気づかない。あるいは気づいていながら、人類何
するものぞと高をくくるか。

(ディム郎っ!)

 えーいち朗は、助けを求めて心の声を張り上げた。いつも危機に際してそうしているよ
うに。その先に自分たちを待ち受ける運命など、知る由もなく――。
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19 :企画委員 ◆PqVHuYP2.caw [sage]:2010/10/17(日) 06:06:55 ID:lZtUpzrk

「ここが、“足らざる世界”の開放点」

 ところで、道化師は、運動場の中央を見ながら口の端を吊り上げていた。零れた独り言
からは、いつものおどけた調子が消えていた。土埃混じりの乾いた風だけがそれを知る。

「ズリグリー! 例のものを」

 ダークラウンの台詞に、再び校舎が揺さぶられる。先ほどのものよりも明らかに強い。
 生じた歪みのために、窓ガラスや蛍光灯が一斉に弾けた。誰もが上の階が落ちてこない
ことを祈りながら、机の下から抜け出せないでいた。
 誰と問うのも詮ないほど多くの者達が、この世の終わりのような悲鳴を上げた。
 果たして、広い校庭に影を落とす巨体。その数、八、九、……いや、もっと多い!
 口ぐちに天上を驚かす咆哮を上げ、白昼に嵐の夜を演出する。
 腐りきった生肉を溶かしこんだゼリーのような、スライム状の巨大生物たちだ。異臭を
訴え、えーいち朗の隣の席の女子が喉だけでえずいた。
 ディムロードも手こずる難敵、ズリグリーの、“軍団”だった。未曾有の数。悪夢のよ
うな光景に、えーいち朗は気を失いそうになる。
 そのうちの一体が、何か奇妙なものをごぽりと吐き出す。全長1メートルていど。平べ
ったい前方後円型の金属塊。まるで巨人の住み家の扉を閉ざす、“鍵”のような。

「ここに取り出しましたるは、ゲートを開く鍵の剣。その名も安易に“キーソード”。種
や仕掛けはなきにしもあらず。定めの座標に刺したなら、あーら不思議と扉が開く!」

 一体のズリグリーが、何やら怪しげな祭祀でも執り行うかのように、キーソードなるそ
れをうやうやしく空に掲げた。

(だめだ、だめだ!)

 えーいち朗の心に焦燥が募っていく。
 子どもにだって分かる。ワンダラーズはこれから、ここで、あの鍵のようなものを使っ
て、何かとんでもないことをしようとしている!

(止めなきゃ!)

 せめて、ディムロードが来るまで時間を稼がなくては!
 少年の使命感が、勇気に引火する。握り締めた手が震えている理由は、もはや恐怖では
なかった。
 心の中だけで担任の先生に謝り、周囲に目くばせでフォローを頼んで、こっそりと机の
下を抜け出した。
 校庭に飛び出した頃には、えーいち朗の息はすっかり上がってしまっていた。声が出な
いのは怖いからじゃないと、これを言い訳にしたい気分だった。

「おや、おや。これは坊ちゃんこんにちは」

 荒い呼吸音に気づいたダークラウンが、地を這う蛆虫を見るような目をえーいち朗に向
けた。
 さらに、ここぞとばかりに視野を広くとり、大声を張り上げる。

「注目注目注目注目ッ! 当園自慢のアトラクション! 題しましては“狂言ヒーロー・
ディムロード”! いつも見に来てくれてるね! 声援感謝さスタッフ一同ッ!」

 どんなときでも、闇の道化は黒い噂の流布を忘れない。
 ときにマスメディアやサクラを利用するその情報工作の効果は絶大で、ディムロードの
必死の戦いもすべて、ひとびとには遊園地側の自作自演ということにされている。
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20 :企画委員 ◆PqVHuYP2.caw [sage]:2010/10/17(日) 06:09:12 ID:lZtUpzrk

「狂言だって……?」

 えーいち朗の声は、知らず低いものになっていた。
 汚名を着せられ、石もて追われ、ひとりぼっちで拳を握り締めていた英雄の後ろ姿を、
えーいち朗は忘れない。
 だから、

「それは嘘だっ!!」

 えーいち朗は吼えた。
 少年の澄んだ眸には光があった。ダークラウンに対する恐怖を、より強い感情が凌駕し
たようだった。

「いい加減にしろよっ! ディムロードは正義の味方で、ヒーローで、友達でっ! だか
ら、お前らなんかと、いっしょにするなぁっ!」

 噛みつかんばかりの剣幕に、ダークラウンは仮面のような笑みを向けた。ひとを馬鹿に
しきった表情の中には、しかし微量に“面白くない”とでもいいたげな不快の色が含まれ
ていた。

「坊ちゃん、ことわざをひとつ教えてあげましょう。“信ずるものは足元を掬われる”」

 いつものふざけた口調ではなかった。まるで狂気に侵されたような。

「賢者は立ち去り、覇者は興味すら抱かず、愚者は見ての通り嗤うのみ、残りはみぃんな
恐怖に震える人間ばかり。それが、何とも悲しくも可笑しい、この“足らざる世界”の法
則であるのです」

 えーいち朗には、道化が何を言っているのか、ひとつも分からなかった。
 ただ、“賢者”“覇者”“愚者”という三つのことばだけは、何故だかひどく印象に焼
きついた。

「いっそ、絶望するがよいでしょう。せめてもの気晴らしには、ぜひとも当園をご利用く
ださ――」
『Form Change――DIM−LOAD!』
「い?」

 大いに語るダークラウンのことばは、しかし途中で遮られることになった。

「無事か、少年っ!」
 
 悪意を祓うように、大人びた声が勇壮に響く。
 えーいち朗が一番聞きたかった声。待ち侘びていた仲間が発する優しげ声だ。

「DDアタック……!」

 爆轟の勢いで急接近するDD51ディーゼル機関車の“ばけもの”。タイムラグも最小
限に人型に変形、そのまま必殺技を発動。
 迎撃にずいと進み出たズリグリーのうち一体が砕けて散った。まるでウイルスに侵され
た細胞の末路を見るよう。掌から放出された“次元の歪みの力”の効果。
 明朗快活のライトグリーンを発して、機械仕掛けの巨人、ここに立つ。えーいち朗から
の報に応じて駆けつけた正義のロボット、ディムロードだった。
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21 :企画委員 ◆PqVHuYP2.caw [sage]:2010/10/17(日) 06:13:07 ID:lZtUpzrk

「ディム郎っ!」

 喜色を浮かべるえーいち朗と対照的に、ダークラウンが瞼と口元を引き攣らせた。ただ
しそれは、いかにも芝居掛かってわざとらしい。

「またまたお出ましお邪魔虫。今日も今日とてディムロード。およそ半年経ってまだフォ
ルムチェンジじゃ芸がない、イメージチェンジが必要じゃ?」
「DD――」

 最優先で撃破すべきダークラウンは、既に間合いの内。ならば差し当たりズリグリーの
ごときに注意などしていられない。
 チャンスだ。
 そう判断したディムロードは、ダークラウンに向かって爆発的に踏みこみ、――

「むっ!?」

 どうしたことか、そこで急制動を掛けていた。そうせずにはおれなかった。
 寸でのところでディムロードを押し止めた違和感は、捻じ曲がった空間が発する独特の
パターン。だが、そんなことがあり得るのか?
 それはディムロードのものと同じ。

 “次元の歪みの力”――!?

「こちらは手を変え品を変え、新戦力を投入さッ! しくじり?――NOッ! 出し惜し
み?――NOッ! 今度ばかりは本気かも!」

 調子づいたダークラウンの声を、ディムロードは遠くに感じていた。探知と演算を司る
あらゆる装置が、その他の機能に障害を引き起こすほどに警鐘を鳴らす。
 それ以上は一歩たりとも進んではならない、さもなくば死あるのみ。
 冷たく、硬く、鋭い“何か”が、兆しもなくディムロード前方の空間に出現していたか
らだ。
勇者シリーズSS総合スレPart4
22 :企画委員 ◆PqVHuYP2.caw [sage]:2010/10/17(日) 06:15:05 ID:lZtUpzrk
 敢えて言うなら、それは剣だった。あまりに鋭利な黒の刃。
 心凍てつかせるその切っ先こそが、ディムロードの喉元に突きつけられた必殺の意志!

「さあさ、それではご紹介ッ! ご喝采あれ彼こそが、ワンダラーズの愉快な仲間ッ、警
備はお任せニューカマーッ!」

 正体は、負の漆黒に染まった航空機。
 翼胴一体の形状が特徴的な戦略偵察機SR−71“ブラックバード”に似ている。攻撃
的なフォルムがそれを魔剣の類いに見せ掛ける。

『Transformation――“STRADER”』

 電子音声。馴染み深いものより、重く低い。
 ディムロードの喉を刺す機首の、左半分が視界から消滅。動体視力の限界を越えた神速
のため、消えたように見えたのだ。
 残り半分でディムロードをその場に縫い止めたまま、それは機体のフレームを組み換え
ていた。
 あまりに早すぎたためにプロセスの全貌は不明。ただし、主翼の半ばに挟まれていたエ
ンジンを脚とし、機首を縦に割って巨大な手刀を宿した両腕としたことは確かだった。
 ディムロードが計測した体高は、23メートルを越える。
 流麗な戦略偵察機は、瞬きひとつのうちに二刀流の剣士となっていた。いいや、そんな
まっとうなものか、それは“殺し屋”と言うべき。漆黒の全身から、赤い眼差しから、荒
事を生業とする者特有の殺伐とした空気を噴き上げていた。

「流れの傭兵、“ストレイダー”ッ!! 黒い翼のストレイダーッ!!」

 ダークラウンが、興奮を煽るように叫ぶ。
 語られた情報を解析する暇もなく。
 ディムロードの剛なる右腕がひと太刀に刎ねられ、宙を舞った。


 
勇者シリーズSS総合スレPart4
23 :企画委員 ◆PqVHuYP2.caw [sage]:2010/10/17(日) 06:16:12 ID:lZtUpzrk


今回はここまで。

超やっつけだけど、許しはこわないよ(キリッ
読みにくいだろうなー話の流れがよく分からんだろうなーと自覚はしている。
しかしもうそんなこといってるバヤイじゃない。
クロス企画でいつまでもこんなとこにいるわけにはいかん。進めなければ終わらん。
よってざらっと流してでもっ!


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