- 続・怪物を作りたいんですが
35 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/10/14(木) 23:39:57 ID:9AfMqMzp - 「なんだこりゃ?」
最初に口を開いたのは佑だった。 「…太陽か何かですかね??ほら、子供はお日様を描くとき、よくこんなふうに描くでしょ?」 「そんじゃ恵美ちゃんは、太陽が怖くってパニくったとでも言うのか?このバカ野郎め」 「でもオヤジ、この絵が、パニックの元凶を描いたものとは限らないんじゃ?」 「いいえ、私は少佐のおっしやられる通りだと思います」 未希の口調は、静かな確信に満ちていた。 親としての確信ではない。元Gフォースメンバーとしての確信だ。 「恵美は、それを絵に描くことで、心の中から恐怖を追い出したんだと思うんです」 「するってぇと……」 晃はどこからかジッポのライターを取り出すと、カチッと火ぶたを開いた。 「やっぱりゴジラが浦安襲った事件と、関連ありって考えなきゃならんだろうな」 「そ、そうか!」 ここで初めて、興奮気味に朝子が口を開いた。 「佑先輩!ほら、あれですよ。あの未知の怪獣X!ゴジラは怪獣Xと戦うため、浦安に現れた!そして恵美ちゃんはテレパシーで怪獣Xの存在を感知したんです!そうに違いありません!!」
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36 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/10/14(木) 23:50:40 ID:9AfMqMzp - 鼻息粗い朝子の視線を受けながら、しばらくのあいだ佑は腕組みし何か考えているようだった。
それを見ていた晃の目が、次第にすうっと細くなった。 「おい佑。おまえ、何か心当たりがあるんじゃねえのか?」 「………ちょっと待ってて…」 佑は、短く言い置いて一旦店の奥に引っ込むと、しばらくしてノートパソコンを手に、再び姿を現した。 「……携帯の画面より、こっちの方が皆で見られるから…」 ぶつぶつ言いながら、佑の指がキーの上で踊った。 「…朝子、おまえをウチに呼んだのは、これを見て、2人でオヤジと相談したかったからなんだ。」 「…まあ見てよ」と言いながら佑は、晃、朝子、そして未希の方にディスプレイを向けた。 「………た、大量……大量殺人!?」 「そうさ朝子……」
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37 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/10/14(木) 23:53:58 ID:9AfMqMzp - 『ゴジラに破壊されたばかりの浦安で、恐ろしい犯罪が発覚したらしい
熱線の直撃を受け跡形も無く破壊された商事会社ビルの地下室から、女性ばかり7人?の遺体が発見された。 人数に?マークがついているのは、遺体の損傷がひどすぎるためだ。 奇妙なのは、遺体の損傷がひどいにも関わらず、現場に血痕が殆ど見られないことだ。 遺体が一人であれば、別の場所で殺害の上でこの地下室に運び込んだと考えられただろう。 しかし7人?もの人数の遺体を、発見現場に白昼運び込むのは不可能だ。 そのため現場では、吸血鬼か?との声すら囁かれている。』 「……たまたま地下室だったから死体が焼かれずに残ったんだ。もっともネットの書き込みじゃ鵜呑みにはできないけど……」 「でも先輩!」朝子の鼻息がさらに粗くなった。 「その情報と、それから恵美ちゃんの話、ちゃんと辻褄が合うじゃないですか!」 朝子は、佑から鉛筆を借りるとラーメン屋のメニューを裏返してタイムテーブルを書き始めた。 「いいですか?幼稚園から電話があったのはえーと……」と朝子。 未希が直ちに答えた。「正午少し前です。」 「パニックが始まったのは?」 「…その十分ほど前でしょうか」 「ってことは、11時50分ごろですよね」 「ゴジラの出現を防衛省が確認したのは12時08分32秒だ…」 ネットで確認しながら佑が言う。 「……そして浦安が焼き払われたのが約10分後の12時18分と」 「恵美ちゃんのパニックが治まったのは?」 「…私がタクシーで幼稚園についたのが12時半少しまえの25分ごろでしたから…」 「その数分前なら、12時20分ですね……」 タイムテーブルが出来上がると、それまで腕組みしながら見守っていた晃が、ゆっくりと口を開いた。 「……確かに時間的には……合うな」 「でしょ!でしょ!でしょ!吸血怪獣Xが出現して、ビルの地下室で人が殺される。 それを恵美ちゃんがテレパシーで感知。怖くてパニックになる!」 興奮気味の朝子の言葉に、落ち着いた声で佑も続いた。 「…その一方ゴジラも敵の存在を感知。そいつごと浦安の町を焼き払った。怪獣Xが死んだか逃げたかしたんで、恵美ちゃんもパニックも治まったというわけか…」 「まあ待て。結論を急ぐな」 晃は、開かれていたジッポの火ぶたをパチンと閉ざした。 「その考えにゃあな、ひとつ大きな問題があるぞ。いいか?恵美ちゃんがXとかいう怪獣を感知したのは未希譲りのテレパシーだ。だがな、ゴジラはなんでそいつのことを感知できたんだ?」
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